【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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タイトル通り、ノイズがライブ会場を襲います。
それではよろしくお願いします。


ライブ会場の惨劇

「……気になるのか? フィリアくん、奏と翼が……」

 

 実験場に向かう途中、弦十郎がそんなことを聞いてきた。

 はぁ、相変わらずあたしの心を見透かしたようなことを言うんだから。

 

「ええ、そうよ。あんな無責任なこと言ったんだもの。気になるに決まってるわ」

 

 あたしは変に隠すのも嫌だったので素直に肯定する。

 気になる理由は他にもあるんだけど……。 

 

「ふっ、そうか。今日は驚くほど素直なんだな。では、これを君に渡そう」

 

 弦十郎は今日のライブのチケットを渡してきた。それも良い席のものである。

 

「たまにはこういうサプライズも良いだろうと、了子くんがな。まぁ、君が気になると言えば渡すつもりだったのだ」

 

 あー、了子の差し金か。だったら納得ね。

 この人がそんな粋なことするわけないもの。

 

「あたしが居なくても大丈夫なの?」

 

「おいおい、新参者の君が居ないくらい何でもないぞ。たまには、親の好意に甘えるのも孝行だ、行ってこい」

 

 朗らかに笑う弦十郎を見て、あたしは彼女らの晴れ舞台を生で見ることにした。

 

 って、もう始まる寸前じゃない。

 

「サプライズだか、なんだか知らないけど引っ張りすぎよ。まったく、気が利かないんだから」

 

「すっすまん」

 

 時間を確認して文句を言うあたしに謝罪する弦十郎。

 あーあ、これはもう着く頃には始まってるわね……。

 

 あたしはそんなことを思いながらライブ会場に足を運んだ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「「見たことない――――♪」」

 

 案の定、あたしが席についたときにはライブは始まっていて、奏と翼は息の合ったパフォーマンスを繰り広げていた。

 

 生で聴くと迫力が凄いわね……。ちょっと圧倒されちゃったわよ……。

 

 ステージの大きさに負けないダイナミックな歌声がオーディエンスを魅了し、会場は大興奮に包まれていた。

 

 

 

 ――ああ、胸の奥にあるあたしの核も今までにないくらい反応している。身体が熱くなって塗料が溶け出さないか心配になってきたわよ。

 

 これは実験もきっと成功したと思う。

 理屈はわからないけど、あたしはそう確信していた……。

 

 

 

 しかし、ライブ会場の熱気が最高潮に上がった時である。

 

「「キャーッ!」」

 

「!?」

 

 突如として、観客席の中央で爆発が起こる……。

 

「こっこれは、演出じゃない……」

 

“人類の敵……”

 

 あたしがそう思った瞬間に身体が感じ取ったのは《ノイズ》の気配。

 それも今までとは比較にならないほど大きくて、尋常じゃない数の《ノイズ》の気配を感じ取った。

 

 

 

「くっ、あの子たちの晴れ舞台を……、まったく馬鹿にして!」

 

 あたしは爆発の方向に走り出す。

 

「コード、ミラージュクイーン……」

 

 銀色の筒から光の刃が放出される。

 そして、身体から迸る熱量で塗料が溶けて人形の姿が露わになる。

 そう、あたしは《ノイズ》を滅ぼすための生きた人形……。

 

 銀色の閃光と化したあたしは音速を超えて、観客を無差別に襲う《ノイズ》に滅びの一太刀を浴びせていった。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl……」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron……」

 

 ――奏と翼の歌が聞こえる。そうよね、あなたたちがこんな状況をほっとくわけないわよね。

 

 いつの間にかシンフォギアを纏った奏と翼があたしとは比べ物にならない火力で《ノイズ》たちを倒す。

 

 特に奏の勢いはいつも以上にすごかった。

 

 ――STARDUST∞FOTON――

 

 槍が大量に増えて広範囲に渡って《ノイズ》を貫き殲滅する。

 

 ――LAST∞METEOR――

 

 穂先を回転させた槍が竜巻を生み出し、巨大な芋虫のような《ノイズ》をも吹き飛ばしながら、消滅させた。

 

「さすがにやるわね……」

 

 あたしは奏の強さに舌を巻いていた。

 

 

 

 しかし、優勢は長くは続かない。奏の時間制限が来てしまったのだ。

 目に見えて衰える彼女に巨大な芋虫のような《ノイズ》が一撃を加えようとする。

 

「奏!」

 

 あたしは自身の最高速度で彼女に接近して《ノイズ》の一撃をミラージュクイーンで受け止める。あたしは威力に押されて足元がぐらつく。

 

「フィリア! だっ大丈夫か?」

 

 こちらに駆け寄る彼女をあたしは手で制する。

 

「下がってなさい。もう限界が近いのでしょう。前にも言ったけど自分の体と命は大切になさい。ここはあたしに任せて……」

 

「だけど、フィリアの攻撃じゃ……」

 

 奏はあたしの身を案じるようなことを言う。

 

 確かに今の衝突でわかった。あの巨大な《ノイズ》にあたしの攻撃が大して効果がないってことが……。

 

 だけど、あたしにはスタミナがある。疲れない身体がある。一撃で倒せないなら――。

 

「何発だって、くれてやるわよっ!」

 

 あたしは《ノイズ》に突撃した。

 

「くっ、奏はどうやってこんなやつを……」

 

 銀色の閃光は脆弱で巨大な《ノイズ》に何度斬りかかってもダメージを与えることは出来ない。

 

 そんな中、奏はあれだけ逃げろと言ったのに、観客の女の子を庇って小さな《ノイズ》を無理をしながら殲滅していた。

 

 

 

 しかし、《ノイズ》は意思があるのかわからないが無慈悲だった。

 彼女の生命力の衰えを感じると、巨大な《ノイズ》たちが集中的に奏を狙いだしたのだ。

 

「ちっ、やらせないわ!」

 

 あたしは奏の前に立ち塞がり、ミラージュクイーンで攻撃を受け止めようとする。

 

「フィリアっ! フィリアっ! うっ腕が……!」

 

 ――あたしの耳に届いたのは衝撃音と奏の叫び声……。

 

 そう、痛みを感じない身体なので気づくのが一瞬遅れたが、あたしは吹き飛ばされて壁に激突していた。

 さらにミラージュクイーンを握っていた右手は千切れて、どこかに飛ばされてしまったのだ。

 

「ちくしょう! こんなもの! ――ぐっ」

 

 巨大な《ノイズ》の追撃を奏はガングニールで受け止めるが、威力が強すぎてシンフォギアが砕け散ってしまう。

 

「なっ、なんてことが……」

 

 あたしは絶句する。

 

 その砕け散ったガングニールの破片が彼女の後ろに居た少女に突き刺さり、少女は胸から血を吹き出して倒れた――。

 そんな……、奏が命がけで守ろうとしていたのに……。なんで、こんな理不尽が?

 

 

「おいっ! 死ぬなっ! 目を開けてくれ! 生きるのを諦めるな!」

 

 奏は少女に駆け寄ってそう声をかける。

 

 奏、あなた……、今後に及んで他人の心配がまだできるなんて……。でも、そんなあなただからこそ、どこまでも果てしなく甘いあなただからこそ、あたしはあなたのことが――。

 

 

 あたしは片腕だろうと立ち上がり、ミラージュクイーンを探す。

 くっ、見つからない! 一体、どこまで飛ばされたっていうの……。

 

 あたしが焦ってる間に、奏はすくっと立ち上がっていた。

 あなた、まだ戦うつもり?

 

「いつか、心と体、思いっきり空っぽにして歌いたかったんだよな……。今日はこんなにたくさんの連中が聴きに来てくれたんだ――」

 

 槍を拾って、奏はそんなことを呟いていた。

 

 その表情(かお)は何? あなた、何をするつもりなの?

 

 あたしは嫌な予感に胸を締め付けられた。

 

「だから、あたしも出し惜しみなしでいく……。とっておきのをくれてやる……、《絶唱》……」

 

 奏は槍を天に掲げた。彼女の頬に一筋の涙が流れる――。

 

「奏? あなたは何を?」

 

「フィリア、翼のことを頼んだ――」

 

 奏はあたしの方を向いて、ニコッと笑った。

 ちょっと、悪い冗談でしょう。

 

 あたしは何が起こるのかわからなかったが、止めないと取り返しがつかなくなるような気がした。

 

「Gatrandis babel――――――……」

 

 奏が歌い出すと周りの空気が変わった――。そして、彼女の身から流星のような大きなエネルギーを感じた。何よ――これ?

 

「いけない、奏! 歌ってはダメー!」

 

 翼が絶叫して奏を止めようとする。

 

「Gatrandis babel ――――――――……」

 

「ダメよ、そんな力を使ったら……」

 

 歌い終えた彼女から猛烈なエネルギーの波動が繰り出され、巨大な《ノイズ》も含めて次々と《ノイズ》たちが消滅していく。

 

「えっ、奏……、あたしは信じないわよ。そんな、あなたが……」

 

 目の前で奏は倒れた……。口から血を流し、力なく微笑みながら、無造作に――。、

 

 翼は急いで彼女に向かって走り出し、彼女を抱きかかえる。

 

 

 

 奏は翼の腕の中で崩れて灰になった――。

 

 あたしはただ見ていることだけしか出来なった――。

 

 

 

 奏、あなたは馬鹿よ。なんで、なんで、あなたみたいな、お人好しがこんなに簡単に逝っちゃうのよ……。

 

 

 

 嫌になるわ、あたしはこんな時でも涙が流れないんだから――。

 

 

 

「翼……」

 

「フィリア……、奏が、奏が……」

 

「ええ、あなたはあたしの分まで泣いて頂戴。そして、奏の分まで必ず生きて――」

 

 あたしはようやく吹き飛ばされた右手を見つけて握られていたミラージュクイーンを左手で持つ。

 

 

「待って、フィリア。あなた……、何を?」

 

「約束したのよ、奏と……。彼女の後始末はあたしがするってことと、あなたを守るってこと……」

 

 そう、奏の《絶唱》とやらは確かに強力だったが、離れた位置にいた巨大な《ノイズ》が数体だけ生き残っていたのだ……。

 

「フィリア、嫌よ! あなたまで居なくなったら、私は――」

 

「大丈夫、あたしは死なない身体なの。そして、奏の歌が思い出させてくれたわ。あたしの中の感情を――。《怒り》と《哀しみ》を……」

 

 あたしの感情に呼応してミラージュクイーンの輝きがかつてない程に強くなる。奏の絶唱はあたしの核である聖遺物を刺激して、蘇った感情と共に頭の中に新たなキーワードを想起させるに至っていた。

 

「コード、マナ、バースト……」

 

 そして、頭の中の声に従い、あたしはキーワードを呟く……。

 

 すると、目の前に漂う光の粒子のようなものが見えるようになった……。これは……。

 

“錬金術こそ、人が神へ抗うために残された、最後の力――。《マナ》は万物の源。その解析こそが神域に踏み込むための一歩――”

 

 頭の声によるとこれは《マナ》という自然界のエネルギーらしい。今日は前と違って幾分と饒舌じゃない。ムカつくくらい……。

 

“《マナ》を自在に操り、無限のエネルギーにより、現象を発現させる。ミラージュクイーンは錬成に必要な媒体にすぎない――”

 

 あたしはミラージュクイーンから《マナ》にエネルギーを送り込む――。

 

“現象錬成……、これが人類の敵を滅ぼすための、大いなる力――”

 

 《マナ》は業火へと姿を変えて、ミラージュクイーンはそれを纏う。

 

 そして加速して《ノイズ》接近――。

 

 ――神焔一閃(カミホムラノイッセン)――

 

 あたしが炎を纏ったミラージュクイーンを振り下ろすと、ノイズは切断面とともに炎上し、灰になった。

 

 

 

 あっけなく、消え去る《ノイズ》の姿はあたしに自責の念に苛まれる。

 この力が、この力が、もっと早く手に入っていれば……、奏が死ぬことはなかったのに!

 

 あたしが、あたしがっ! 彼女を殺したんだっ!

 

 《怒り》の感情に任せて、《ノイズ》に向かって剣を振り、消滅させ、そしていつしかあたしの意識は暗いところに落ちていた――。

 

 だから、友達なんていらなかったのよ――。

 

 奏……、ごめんなさい……。




奏は原作通りの結果に……。書いてて辛かったです。

絶唱でノイズを仕留めきれなかったのは、フィーネがフィリアの分を計算して原作より多めに配置したからです。

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