【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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フィーネ復活ッ! そんな回です。
それではよろしくお願いします!


復活のF

 空港では、既にマリアたちがサンジェルマンたちや、アルカノイズと交戦中だった。

 

 彼女らは何を目的に暴れているの? ティキの身体を回収しそこねた腹いせ?

 

「苦戦してるみたいねぇ」

 

“みたいねぇ、じゃなくて助けなさいよ!”

 

 呑気に空中から見物してるフィーネをあたしは急かした。

 

「はいはい、フィリアちゃんの身体にもなれてきたし、そろそろ動こうかしら――」

 

 フィーネはそう呟くと、手のひらから紫色の光線をサンジェルマンたちに向って連射した。

 

「フィリア! 来てくれたのか!?」

 

「フィリア? いや、この攻撃には覚えがある。お前はフィリアではないな!」

 

 マリアとサンジェルマンは同時にこちらを向いてフィーネを見た。まぁ、向こうからしたら、あたしが光線を乱れ撃ちしたようにしか見えないだろうが。

 

「マリア=カデンツヴァナイヴか。貴様、私を騙ろうとした割には、勉強不足ではないか?」

 

 マリアの傍らに降り立ったフィーネは彼女に向かってそんなことを言う。

 

「なっ――!? フィリア、一体どうしちゃったのよ!?」

 

 フィーネはよく分からない口調でマリアに話しかける。マリアは混乱しているようだ。

 まったく、人の身体でバカなことやらないでほしい。

 

「まさかっ――そんな、おっお前は!?」

 

「私の出現にそんなに驚かなくてもよかろう。久しいな、パヴァリアの錬金術師……。そうだ、私は永遠の刹那に存在し続ける巫女――フィーネだっ!」

 

 異常なテンションでフィーネはサンジェルマンたちやマリアたちに自己紹介する。

 だから、そのキャラは何なのよ!

 

「さて、錬金術師共よ……。数百年の間に少しは成長したのか、確かめてやろうぞ」

 

 そう言うとフィーネは再び光線をサンジェルマンたちに乱れ撃ちしだした。

 

「フィーネの魂がフィリアに宿ったというのは聞いてたけど――まさか、身体が乗っ取られるなんて……。うっ……、うっ……」

 

 マリアはあたしがフィーネに支配されたと思って泣き出してしまう。

 切歌と調はアルカノイズと戦ってるし……。なんか、事態が面倒な方向に進んでるんだけど……。

 

「なーんちゃって、マリアちゃん、冗談よ、冗談。フィリアちゃんは、ちょっとだけ休んでるだけだから、直ぐに戻ってくるわよ」

 

「はぁ?」

 

「詳しいことは後で話すわ。とりあえず、今は弦十郎くんに頼まれて助っ人に来た、お姉さんだと思ってくれれば良いわよ」

 

 フィーネの趣味の悪い冗談に呆気にとられたマリアはポカンと口を開けていた。

 

「お姉さんとは、図々しいワケダ」

 

「そうよぉ、結構な年寄りのババァじゃない」

 

 プレラーティとカリオストロがフィーネの攻撃を錬成した盾で防ぎながら、抗議する。

 

 あー、それ禁句だから……。

 

「今、何て言った? 誰が年増の行き遅れだって?」

 

 フィーネが天に手を掲げると、半径50メートルくらいの巨大なエネルギーの塊が浮かび上がっていた。

 

 いや、あんなの落としたらこの空港が木っ端微塵になっちゃうし。マリアたちも巻き添えになるかもしれないんだけど……。

 

“ちょっと、やり過ぎよ。自重しなさい!”

 

「三流錬金術師共! 死んじゃいなさい!」

 

 フィーネが腕を振り下ろした瞬間に、巨大な紫色の光の玉がサンジェルマンたちに向かって落ちてきた。

 

 まったく、加減ってもんを知らないの? ちょっとはマトモになったかと思ってたけど、やっぱり、とんでもない奴じゃない。

 

 

「くっ、こうなったら、無敵のヨナルデパズトーリでっ!」

 

 カリオストロが無敵の巨龍を再び召喚した。

 

 フィーネの放ったエネルギーの玉は、ヨナルデパズトーリとやらを飲み込んで炸裂する。

 

 しかし、案の定ヨナルデパズトーリは復活して何事もなかったかのように咆哮した。

 

「やっぱり厄介ねぇ」

 

「あの威力で効かないの?」

 

 フィーネとマリアはヨナルデパズトーリの無敵性に舌を巻いていた。あんなのどうやって倒せっていうの?

 

「ようやく宿敵であるフィーネを超えることが出来たワケダ」

 

「我々の長年の研磨が実を結んだな。フィーネよ、大人しくティキの身体を返せ。そうすれば、こちらも引き下がってやっても良い」

 

 サンジェルマンたちは形勢逆転したと感じ取ったのか、勝ち誇った顔をしていた。

 

 やはりティキの身体を取引材料に使ってきたか……。確かに、素直に渡してしまうのも手だけど……。

 

「えー、あなたたちの言うことなんて聞きたくないわ。却下よ」

 

 フィーネは手でバツ印を作って、そう言った。この人って、ホントに面倒な性格してるわ。

 もうちょっと考える素振りとかして、時間を稼ぎなさいよ。

 

「ならば、まずはフィーネに死んでもらいましょう。フィリアの身体を破壊するけど構わないわよね? サンジェルマン」

 

「局長はフィリアは殺すなとは言っていたが、フィーネについては言及してない。いや、するまでもない」

 

「とっとと、面倒なことを起こす前に殺したほうが良いワケダ」

 

 パヴァリアの幹部たちはフィーネを倒すことで意見が一致してヨナルデパズトーリをフィーネにけしかけた。

 

 ――その時である。流星のように輝く拳が空中からヨナルデパズトーリに向かって降ってきた。

 

「フィリアちゃんをやらせはしない! てぇやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 響がヨナルデパズトーリに渾身の一撃を与える。

 

「ふっ効かないワケダ……」

 

 プレラーティの言うとおり、いくら響でもあれを倒すのは――。

 

「へぇ、響ちゃん。やっぱり、面白い子ねぇ」

 

 フィーネはニヤリと口角を釣り上げる。

 

 信じられない。響の拳がヨナルデパズトーリを貫き消滅させた――。

 

 あれだけ大火力で攻めても無駄だったのに……。

 

「もしかしたら……、響ちゃんは神殺しの力を……」

 

 フィーネは『神殺し』というワードを出して響がヨナルデパズトーリを倒した理由付けをしようとした。

 哲学兵装とか、そういう概念的な力で倒したとでもいうのかしら? 確かにそれくらいしか考えられないけど……。

 

「そこまでだっ! パヴァリア光明結社!」

 

「こちとら、虫の居所が悪くてね! 抵抗するなら容赦は出来ないからな!」

 

 翼とクリスも空港に到着して、臨戦態勢を整える。

 ちょうどマリアたちの時間制限が近づいてきたから、どうしようかと思ってたけど、これなら大丈夫そうね。

 

「生意気にぃ〜! 踏んづけてやるわ!」

 

 カリオストロが地団駄を踏んだ。無敵の力のはずが破られちゃったから、悔しいのかしら?

 

「フィーネ、そしてシンフォギア。だけどお前たちの力では人類を未来に解き放つことは出来ない!」

 

 サンジェルマンはあたしたちに向かってそう言い放った。

 

「人類を解き放つ?」

 

「まるで了子さんと同じ……。バラルの呪詛から解放するってこと?」

 

「まさか、それがお前たちの目的なのか?」

 

 マリアと響と翼は口々に彼女の言葉に反応した。

 

「カリオストロ、プレラーティ。ここは退くわよ」

 

「ヨナルデパズトーリがやられたものね」

 

「態勢を立て直すワケダ」

 

 サンジェルマンたちは撤退の姿勢を見せた。

 

「未来を人の手に取り戻すために私たちは時間も命も費やしてきた。この歩みは誰にも止めさせやしない」

 

「未来を人の手にって!? 待って!」

 

 響の言葉も虚しく、サンジェルマンが素早くテレポートジェムを使い……、彼女らはサクッと撤退してしまった。

 

 まぁ、これで引き下がるような連中じゃないだろうけど、これで一先ず、この国のイザコザは一段落つきそうね……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その後、バルベルデ共和国で事後処理に追われたあたしたちが日本に戻った頃には、既にリディアン音楽院の始業式が始まっていた。

 

「こうやって、女子高生気分になるのも悪くないわねぇ。クリスちゃん」

 

「うっせぇ。くそっ、なんでフィーネがまだ居んだよ……」

 

 隣で校歌を歌っていたクリスが嫌そうな顔で、あたしもといフィーネを睨んでいた。

 

「クリスちゃんが足を撃っちゃった子の治療をフィリアちゃんに頼んだからでしょう? 昨日の夜にクロノスモードを使ったから、夜には治るわよ」

 

 そう、クリスがアルカノイズに襲われた少年の体の分解を防ぐために、やむを得ず彼の足を撃って、体全体の分解から彼を救ったらしいのだ。 

 

 その後、クリスはずっと思い悩んで、悩んで、ついにあたしのところにやって来て、彼の足の時間を戻して治して欲しいと願い出た。

 

 あたしはその言葉を聞いて、弦十郎に相談して、こちらの管理下において起こった事故ということで特例で、治療のためのクロノスモードの使用許可を出してもらった。

 

 

 こうしてステファンという少年の足は元に戻り万々歳と思ったが、なんと短時間の利用でも、《Type:G》の副作用は理不尽にもやって来て、あたしの身体は再びフィーネによって動かされることになった。

 

「放課後は一緒に女子高生っぽいことしましょうよ」

 

「フィーネ、テメーはあたしにしたこと忘れちまったのかよ!? よくそんな口が利けるな」

 

「あれは私なりの愛だったんだけどなー。クリスちゃんのこともフィリアちゃんと同じで娘みたく思ってるし」

 

 虐待してる親の理屈みたいなことをフィーネは言う。

 この人の怖いところは悪意がなく、こういう事を言うところだ。

 

「ちっ、勝手にしやがれ」

 

 クリスはムッとした顔でそう答えて、終始不機嫌だった。

 

 

 しかし、放課後はS.O.N.G.の本部からの招集がかかったので、あたしたちは弦十郎の元に集うこととなった。

 

 翼とマリアがバルベルデからの資料を持ち帰るところをパヴァリア光明結社に襲撃されたらしいが、彼女らは無事に資料を持ち帰った。

 

 サンジェルマンたちは日本に侵入した可能性が高いみたいだ。

 

 

「フィリアくんが回収したオートスコアラーの身体を解析したところ……、確かに何らかの座標を割り出すシステムが組み込まれた特殊な構造だということがわかった」

 

「異端技術の結集の上に、動力源が失われていますので、この状態での起動は不可能みたいですね」

 

 持ち帰ったティキの身体は破壊はされずに、そのまま保存という形になった。

 どうやら異端技術の結集というのが大きいらしく、貴重品として保護する対象となってしまったのだ。

 

 予想はしてたけど、これだと、完璧にパヴァリア光明結社が本気で取り返しにかかってくるだろうから全面戦争は免れないわね……。

 

「あの方に喧嘩を売ろうとするなんて傲慢ね……」

 

 フィーネは小声でポツリと呟いた。

 

「ん? 了子くん、何か言ったか?」

 

「ううん、独り言よ。独り言……。そんなことより、弦十郎くん、気を付けたほうが良いわ。連中は死ぬ気でそれを回収してくると思うから――。もしくはフィリアちゃんの身体を……」

 

 フィーネは感情を吐き出した事を誤魔化すようにそう言った。

 あたしの身体を? それってどういう?

 

「フィリアちゃんの身体にもティキと同じ機能が付いているのよ。まぁ、フィリアちゃんはティキをベースにして作られてるっぽいから何かのときの為にそういう機能も付けたんだろうけど」

 

 フィーネ曰く、あたしにもティキと同様に神の門の座標を見つけるための機能が付属しているらしい。

 何それ? 聞いてないんだけど……。

 

“どうせ使わないでしょうから、特に言わなかったの”

 

 フィーネは惚けたような口調でそう言った。

 どうも怪しいわね。本当かしら?

 

 あたしにも付いてるというこの機能――これがこの先の戦いをさらに激化させるものになると、あたしはまだ予測すらしていなかった。

 

 




今回は主人公の身体が操られる回なので、フィリアは基本何もしませんでした。ステファンの足は治しましたが……。
次回もよろしくお願いします!

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