【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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前半はXVの11話を見て急遽入れたエピソードです。特にネタバレにはなってないはずですが、一応ご注意を……。
後半は原作4話に当たる、風鳴機関のお話です。
それではよろしくお願いします。


神の力と大いなる実り

「連中の目的は神の力を手に入れること……。だからこそティキの身体を取り返そうとするはず。今日の動きは何の意味が……?」

 

 ようやく、フィーネから身体の主導権が戻ってきたあたしは今日あったことについて思案していた。

 

 ブリーフィング後にアルカノイズたちの反応を検知したS.O.N.G.は装者たちを現場に派遣。

 フィーネは予備戦力として待機状態であたしは彼女らの戦いを見守った。

 

 シンフォギア装者たちはサンジェルマンたちによって亜空間に閉じ込められてアルカノイズと戦うも、イグナイトモジュールを使った装者たちの敵ではなく、難なく彼女らはアルカノイズたちを殲滅しつつ亜空間から脱出した。

 

 あたしはてっきり連中が出てくるのかと思ったが、そんな事はなく彼女らも直ぐに撤退してしまった。

 

「まるで……、イグナイトモジュールを使わせることが目的だったような戦いぶり……」

 

“シンフォギアの力の把握をしたいってことは、あの子たちにはあるのでしょうよ。シンフォギアを倒す手立てが”

 

 フィーネがあたしの思考に割り込んできた。シンフォギアを倒す手立て――おそらくはファウストローブか……。

 

 完全な肉体を持つ彼女らが完全な物質であるラピス・フィロソフィカスを使ったファウストローブを身に着けたとすると、単純にシンフォギア装者たちの戦闘力を超えるかもしれない。

 

“それだけかしら?”

 

“それだけって? イグナイト以上の力を手に入れただけじゃないってこと?”

 

“そういうこと。警戒しとくように伝えときなさい。あなたの大事な子たちは跳ねっ返りが多いから”

 

 フィーネはあたしの仲間を気遣うようなことを言い出した。やっぱり変ね……。

 

“あなたたちは私を止めたでしょ? パヴァリア光明結社もまたバラルの呪詛から人類を解放しようと動いている。私にはわからないのよ、あの方の怒りによって人類に撒いた罰を、あなたたちは抗おうとせずに、甘んじてそれを受け入れている理由が……”

 

“あたしたちには、そもそも共通言語が無いことが当たり前だったし、無くてもわかり合うことが出来るって証明した子が近くにいるから――。そんなもの為に犠牲を出すほうが問題でしょ”

 

 あたしはフィーネの疑問に答えた。そもそも、今さら共通言語とやらが復活したとしたら、それはそれでパニックになりそうなものだが……。

 

“というか、変な話なのよね。あなたが言うようにバラルの呪詛がホントに人類に対する罰なのかってことが……”

 

“はぁ? フィリアちゃん、前にも話したでしょう。相互理解が出来なくなった人類がどうなったかということを”

 

“それは知ってるわ。先史文明期の人類は《ノイズ》を創って争い出したって話でしょ。確かに、不利益は被っているけど……。本当に人類を見限ったんだったら、手緩くない? だって、世界には何十億って人間が増えて繁栄してるし”

 

 あたしはそんな神様みたいな《カストディアン》と呼ばれた連中が人類を見放したなら、もっと徹底的に滅ぼすような工作をしそうだと思った。

 

“でも、私の想いを届けようとした瞬間にあんな事になったし。絶対にあの方は怒って、バラルの呪詛を撒いたに決まってるもん”

 

“じゃあ、理由はあなたの想像なのね? その好きだった《あの方》からは何にも聞いてないってことよね?”

 

 このフィーネはあたしの親だけあって、思い込みで突っ走りやすい性格だ。そもそもの考えが間違ってる可能性がある。

 

“そりゃ、聞けるわけないじゃない”

 

“好かれてたかもよ”

 

“へっ?”

 

 あたしの言葉にフィーネはびっくりした様な声を出す。新鮮な反応ね……。

 

“あなたが愛した《あの方》はあなたが好きだったけど、何か別に事情があってバラルの呪詛を撒いた可能性だってある。そうしなきゃ、人類が絶滅しちゃうくらいの大きな事情がね”

 

 そう考えると、パヴァリアが目的を達成すると厄介な事態が起こりそうな予感もする。

 情報が少なすぎるから憶測しか出来ないけど……。

 いっそのこと月にでも行ってみたら何か分かるかもしれない。

 

“別の事情ねぇ……。うーん……、そうね……、そう考えた方が幸せかも……。ありがと、フィリアちゃん”

 

 フィーネは納得したような声を出して、あたしに礼を言った。

 この人は最低の母親だけど……、昔からそうじゃなかったと信じたい。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「6番から58番グループの方はこちらに!」

 

 外では付近の住民の安全確保の為の退去誘導が行われていた。

 あたしたちは、厳重な防備がしてある装甲車で目的地に移動している。その目的地は――。

 

「先の大戦末期、旧陸軍が大本営移設の為に選んだここ松代には、特異対策機動部の前身となる非公開組織――風鳴機関の本部が置かれていたのだ」

 

「風鳴機関!?」

 

 弦十郎の言葉で響とクリスが翼とあたしを見る。そう、あたしたちは今、風鳴機関へと向かっている。

 

「資源や物資に乏しい日本の戦局を覆すべく、早くから聖遺物の研究は行われてきたと聞いている。それが天羽々斬と同盟国ドイツからもたらされたネフシュタンの鎧やイチイバル……、そしてガングニール」

 

 翼の言ったとおり、日本の国防の為に聖遺物の研究をいち早く執り行った機関――それが風鳴機関である。

 

 

「バルベルデで入手したオートスコアラーの内蔵データと資料は、かつてドイツ軍が採用した方式で暗号化されていました。そこで、ここに備わっている解読機にかける必要が出てきたのです」

 

 緒川が風鳴機関に向かう理由を説明する。ティキの内部に記録されてるデータや、手に入れた資料には同一方式で暗号化が施されていた。

 パヴァリア光明結社の動きを、詳細に把握するために、あたしたちは暗号を解読する必要性が出てきたのだ。

 

「暗号解読機の使用にあたり、最高レベルの警備体制を周辺に敷くのは理解できます。ですが……、退去命令で、この地に暮らす人々に無理を強いるというのは……」

 

 翼は強制的に退去させられている住民たちについて考えているようだ。

 

「守るべきは人ではなく、国……」

 

 弦十郎はそう言葉を出した。それは、護国こそ最優先に考える、あの男の考えね……。

 

「人ではなく……」

 

 響はその言葉に違和感を覚えたようだ。

 

「少なくとも、鎌倉の意志はそういうことらしい……」

 

 弦十郎はそう締めくくって、あたしたちは風鳴機関へと足を踏み入れた。

 

 

 さっそく、ティキの身体と資料を解読する作業を技術者たちに依頼し、あたしたちは今回ここに来た目的を遂行することになった。

 

 

「難度の高い複雑な暗号だ。その解析にはそれなりの時間を要するだろう。ティキの身体については、パヴァリアが放っておくはずがない。最大限の警戒を敷く必要がある。そこでだ、翼、そしてフィリアくん」

 

 弦十郎はあたしと翼の顔を見て、確認を促す。

 

「ブリーフィング後、私は雪音、立花を伴って周辺地区に待機。警戒任務に当たります」

 

「あたしは、マリア、調、切歌と共に付近に残っている住民がいないか、確認しつつ、パヴァリアの侵入を早急に探知できるよう警戒するわ」

 

 翼とあたしは装者を引き連れて二手に分かれて警戒態勢を敷くこととなった。

 

「敵がフィリアくん自体を狙う可能性もある。油断はするなよ」

 

 弦十郎はあたし自身にも警戒を怠らないようにと、釘を刺した。あたしをティキの予備として狙ってくる可能性もあるからだ。

 

「リア姉は私たちで守るデス」

 

「うん。絶対に敵に渡したりしない」

 

「ありがとう二人とも。頼りにしてるわ」

 

 切歌と調の言葉にあたしがそう返すと、彼女らは嬉しそうな顔をして笑い合っていた。

 あたしもあなたたちを守ってみせるつもりよ……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「政府からの退去指示が出ています。急いでここを離れてください」

 

「はいはい、そうじゃねぇ。けどトマトが最後の収穫の時期を迎えていてねぇ」

 

 マリアの言葉に農家のお婆さんはそう答える。

 付近の住民が残っていないか、あたしたちが見回っていたところ、トマト農家のお婆さんが収穫をしていたところに遭遇した。

 マリアは彼女に退去を促していたのだ。

 

 

「わぁ!」

 

「おいしそうデス!」

 

「おいしいよ、食べてごらん」

 

 調と切歌はきれいな赤いトマトに目を奪われていた。

 

「あむ。うーん……、おいしいデス! 調も食べるデスよ!」

 

「いただきます。ホントだ……、近所のスーパーのとは違う!」

 

 切歌に促されて調もトマトを食べて、二人は美味しいと微笑み合っていた。

 

「そうじゃろう。丹精込めて育てたトマトじゃからな」

 

「あ、あのね、お母さん……」

 

「なるほど、永田農法……、または、緑健農法と呼ばれる作り方をしてるのね。糖度が極めて高いわ」

 

 あたしもお婆さんからトマトを受け取り、食べた感想を口にした。

 

「ちょっと、フィリアまでトマトを食べてるの!?」

 

 マリアはトマトをパクついてるあたしにツッコミを入れる。だって美味しそうだったんだもん。

 

「おや、お嬢ちゃん、小さいのに詳しいねぇ」

 

「リア姉、そのナントカ農法ってなんデスか?」

 

 お婆さんと切歌はあたしの言葉にそう反応した。

 

「永田農法っていうのは、敢えて必要最低限の肥料と水で栽培する農法よ。そうすると、作物の糖度が上がって美味しく出来上がるの。でも、その塩梅が難しくてね。やっている農家は少ないわ」

 

「あなたって無駄に変なことに詳しいわよね」

 

 あたしが説明すると、マリアがジト目でそんなことを言ってくる。

 夜とか暇だから、本とかよく読んでるだけよ。

 

「お嬢ちゃんの言うとおり、むしろ甘やかし過ぎるとダメになってしまう。大いなる実りは厳しさを耐えたこそじゃよ」

 

「厳しさを耐えた先にこそ……」

 

「ふふふ……、トマトも人間も、きっと同じじゃ」

 

 お婆さんの言葉にマリアは感心したような顔をした。厳しさを耐えた先に大いなる実りか……。

 それが本当なら……、この子たちには当てはまって欲しいものね……。

 

「ほら、半分あげるから、あなたも食べてごらんなさい」

 

「フィリア、あなたは知ってるでしょ? 私はトマトはあんまり……」

 

 あたしの言葉にマリアは小声で反応する。

 

「ふふふ……、美味しいから、食べてごらん」

 

「――うっ……。では、ちょっとだけいただきます」

 

 トマトがあまり好きではないマリアは困ったような顔して、トマトを見つめていた。

 

「――はむっ。あっ、甘いわ……。まるで、フルーツみたい! これが、大いなる実り……」

 

 マリアは目を丸くして驚いた。厳しさを耐えたトマトの味に感動したのだろう。

 

 

 そんなときである――。覚えのある気配が突然に現れた。

 

「芳醇だね。このトマトの香りは。いい仕事をしてるじゃあないか、そこのマダムは」

 

「――っ!? まさか、あなたが直々にっ!?」

 

 独特の倒置法で話す男、パヴァリア光明結社の統制局長アダム=ヴァイスハウプトが勝手に人の農家のトマトを手にしながら、あたしたちに話しかけてきた。

 

「やぁ、フィリア。何よりだ、君が元気そうで。また飲みたいよ、君の淹れた魅惑のコーヒーを……」

 

 アダムはニコリと笑みを浮かべてあたしを見る。

 計算外ね……、てっきりサンジェルマンたちに任せきりにすると思っていたが、こうも早くこの男が出てきたか。

 

『フィリアくん、応援を頼めるか!? 翼たちの前にパヴァリアの錬金術師たちが!』

 

 弦十郎からそんな通信が入る。なるほど、翼たちも狙われているのか。当たり前と言えば当たり前。

 つまり、パヴァリアの最大戦力をもってティキを取りに来たと言う訳か。

 

「司令、こっちはさらに大物よ。統制局長アダム=ヴァイスハウプトが現れた。この男を相手にするのはかなり骨が折れるわ。マリアたちに民間人を避難をさせる。その後に翼の元に応援に行ってもらうわ!」

 

 あたしはマリアたちにお婆さんを守りながら避難するように指示を出した。

 

「フィリア! 一人で戦うつもり!?」

 

 マリアは非難めいた顔であたしを見た。

 

「この男はサンジェルマンたちと比べても規格外……。あたしも敵わないかもしれない。だからっ!」

 

 アダムの近くに一年くらい居たが、彼の力はキャロルやフィーネと比べても遜色ないレベルだった。

 だから、マリアたちは戦いに巻き込みたくなかった。

 

「切歌、調、お母さんを安全な所へ連れて行きなさい。その後、翼たちの応援に!」

 

「わかった」

「リア姉を頼んだデス!」

 

 マリアは切歌と調にお婆さんを、連れて行くように言って、彼女らはその指示に従った。

 マリア、あなたは……。

 

「フィリア、私はもう後悔したくない。誰かに任せて失うのはもう嫌なの! 一人より二人の方が勝率は高いでしょ? あなたの独断専行を止めるのは、昔からの私の役目よ」

 

「はぁ、あなたの目を盗むのには昔から苦労したわ。合わせてもらうわよ。出来る?」

 

 あたしはマリアと共闘することを選んだ。その力強い視線に負けて……。

 

「もちろんよ。Seilien coffin airget-lamh tron……」

 

「コード……、ミラージュクイーン……」

 

 マリアがシンフォギアを、あたしがファウストローブを纏う。

 二人は銀色の光を放ちながら、アダムと対峙した。

 

「おやおや、参ったな。見せつけなきゃならないらしい。格の違いというモノを」

 

 アダムは余裕の表情であたしたちを眺めていた。

 規格外の錬金術師との戦闘の火蓋が切って落とされた――。

 




最近は原作の動きを戦々恐々としてチェックしてます。
予想通りだったり、予想外で軌道修正したり、他の作者さんはどうなのでしょうかねー。
ティキを手中に収めてるので、アダムもいきなり黄金錬成をぶっ放したりしませんでした。
故に全裸の錬金術師というサービスシーンが無くて申し訳ないです。彼が抜剣するのはもうしばらく後になりそう。
次回はフィリア&マリアVSアダムです!
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