【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

72 / 99
時系列的には5話の前半くらいまでです。
それでは、よろしくお願いします!


パヴァリア光明結社の強襲

 大地を強く蹴り、アダムに接近してあたしは肉弾の嵐を見舞おうとする。

 

「苛烈だね、君の攻撃は……。だが、生温い」

 

 アダムはポケットに手を突っ込みながら、余裕の表情でこれを躱す。

 あたしの連打をこんな風に避けれるのは、弦十郎くらいなのに……!

 

「援護するわ!」

 

 マリアは次々と短剣を放ちながら、アダムに接近して、アガートラームのアームドギアで斬りかかる。

 

「私とフィリアの同時攻撃が――当たらない?」

 

 とんでもないスピードと体捌きであたしとマリアの攻撃は避けられる。完全に見切られてるわね……。

 

「そのままで良いのかい? あるんだろ? その上が――」

 

 アダムは次々と炎を錬成して、あたしとマリアにこれを放つ。

 

「術式は全然なっちゃいないのに、この威力……! やはり、この男は強い……!」

 

 あたしは両手から炎を錬成して相殺するも、手数が足りずに防戦一方になっていった。

 

「イグナイトモジュール! 抜剣!」

 

 マリアはイグナイトを発動して火力をアップさせる。

 

 ――EMPRESS†REBELLION――

 

 マリアの短剣が蛇腹状になり、不規則な動きでアダムを捉えようとする。

 

「不足だよ。まだ、僕を相手にするには……」

 

 アダムはその動きを見切り、マリアのアームドギアの指で摘んで、そのまま引っ張った。

 

「きゃっ!」

 

 マリアは大きく投げ飛ばされて地面に叩きつけられる。

 イグナイトのパワーをこうも簡単に……。

 

 あたしとマリアは終始防戦一方となってしまった。

 アダムの錬金スピードが異常だからだ……。

 

 ――雷獣ノ咆哮――

 

 あたしはアダムに向かって電撃を放つ。

 しかし、彼は帽子を使ってそれをいなして……。

 

「見せてごらん。神の器としての力を……」

 

 手刀であたしの左腕を切り落した――。

 

 戦力差がここまでとは……。このままじゃ、勝てないかもしれない……。

 

「はぁ、副作用が面倒だからって使わないわけにはいかないか……」

 

 あたしは《Type:G》を首元に注入した。体内に含まれるエネルギーが増大して、千切れた腕は即座に再生する。

 

「コード……、クロノスモード……」

 

 あたしの髪が金色に変化して黄金の光が体から発せられる。

 このモードでもダメなら、あたしは……。

 

「ふははははっ! 楽しませてくれよ! 完全体自動人形(オートスコアラー)というからには」

 

 アダムは上機嫌そうに笑いながら、こちらに手をかざした。

 

 ――因果ノ捻時零――

 

 目を瞑り、時を止めてあたしはアダムに肉薄する。

 コイツには手加減は無用ね――。

 

「いくらあなたでもこれは避けられない……」

 

 ――滅掌雷轟貫手(メッショウライゴウヌキテ)――

 

 数多の残像が発生するほどの超高速の貫手のラッシュを時を止めた状態でアダムの全身に向けて放つ。

 

「――っ!?」

 

 無防備の体に無数の貫手くらったアダムは時が動き出した瞬間に彼方まで吹き飛ばされた。

 

 まだまだ終わらせないわ……。

 

「なるほど、強力だ。時間を止める力というのは」

 

 アダムはさしたるダメージを受けてない様子で空中に浮かび上がった。

 

 ――神掌(ゴッドハンド)――

 

 莫大なエネルギーを掌底に溜めて、アダムの体を目がけてこれを放つ。

 

「良いじゃないか。力強くて」

 

 アダムは帽子を投げつけて、これを相殺してほくそ笑んでいた。

 

「あたしにちょっと気を取られ過ぎじゃない?」

 

「――んっ?」

 

 アダムはあたしの動きを注視しすぎて、マリアの動きを失念していた。

 

「マイターン!」

 

 マリアはアダムよりも遥かに上空に跳び上がっており、彼のスキを完全に突いた。

 

 ――HORIZON†CANNON――

 

 アガートラームを砲身状に変形させて放つ高出力のエネルギー波がアダムにクリーンヒットする。

 

 彼は地面に叩きつけられ、地面は大きなクレーターを作り出す。さすがに堪えたはず……。

 

 しかし、それは甘かった。彼は何事も無かったように起き上がると、天に手を掲げた。

 

「ふむ、ティキの奪還に成功したようだ。サンジェルマンたちが……。だったら用済みだよ。君たちは」

 

 アダムは再び宙に浮いたかと思うと、炎の玉を浮かび上がらせる。その熱量は想像を絶するほどの大きさへと膨れ上がり、彼の衣服が焼失した――。

 

 ――まさか、黄金錬成!? この男、こんなところで核融合を発生させるつもりなの!?

 

「何あれ? あり得ないわ。あんなもの……」

 

 マリアもアダムが発生させた巨大な火球の異常性に気が付いたようだ。

 

 あれは相殺したとしても、爆発によって、それだけで甚大な被害が及んでしまう……。時を止めても大爆発は避けられない。

 こうなったら……。

 

「マリア、あたしがアレを止めるわ。でも、それが限界だから――」

 

「フィリア? 何をするつもりなの!?」

 

 マリアの言葉を背中に、あたしはアダムに向かって跳び上がる。

 

「――終わりだよ。何もかもこれで」

 

「――あとは頼んだわ」

 

 アダムの放った巨大な炎の玉にあたしは手を触れる。すると炎の玉はあたしを飲み込もうとし、瞬く間に大爆発が起ころうとした。

 

 その瞬間にあたしは能力を発動した。

 

 ――ループ・ザ・ワールド――

 

 時間を巻き戻して、黄金錬成の結果できた核融合エネルギーを消失させる。

 両腕は失ったが、何とか被害を食い止めることに成功した。

 

 再生にエネルギーを回したので、クロノスモードの持続時間はここで切れてしまったが……。

 

「待っていた。この瞬間を……。欲しかったんだ。魅力的な身体になった君のことが。恋人にしたいくらいにね」

 

 アダムはそう言いながら近づき、あたしの首を掴む。

 

「ロリコン趣味だとは思わなかったわ。その格好で危ないこと言わないでくれる……?」

 

「分け与えてもいい。神の力を君になら。見せてもらうよ。君の力を」

 

 アダムはあたしの言葉など意に返さず、首を掴んだ腕が発光する。

 

 それに共鳴して、あたしの目から黒い光が天に向かって照射され、空中に黒い天球儀のようなものが浮かび上がった。

 

「フィリアを離せッ!」

 

 マリアが跳び上がって、アダムを攻撃する。

 

「ほう、キレイに映るものだ。昼間だというのに。ここは良い場所みたいだよ。神に喧嘩を売るには――」

 

 アダムはマリアの攻撃を軽く躱して、天空を眺めながらそう呟いていた。この男は何を言っているの?

 

「じゃあ書き換えさせてもらおう。君の人格が僕を愛して従順になるように」

 

 彼はあたしの頭にもう片方の手で触れて、電気ショックのようなモノを流してきた。

 

「――ぐっ!? 頭がっ……」

 

 突如として頭の中に色んなものが侵入してくるような不快感にあたしは襲われた。

 せっ、洗脳しようとしてるの? くっ……、頭が割れそう……。

 このままだと、コイツの良いように操られる人形にされてしまう……。

 

 あたしの意識が断ち切れそうになる瞬間……、頭の中で声が流れた。

 

“貴様、誰に断ってここに入ってきた?”

 

「――っ!?」

 

 アダムは咄嗟に手を離して、あたしを地面に落とした。

 

「忘れてたよ。君の存在を……、フィーネ!」

 

「ほう、私を忘れたというか。ならば、今度は忘れられないようにバラバラにしてやろう」

 

 フィーネの人格とあたしの人格が交代する。いつもより副作用の発動が早い……。

 

『フィリアくん、ティキを奪った錬金術師と交戦した翼たちがやられてしまった。切歌くんと調くんが交戦しているが、形勢は良くない』

 

「ちょっと、弦十郎く〜ん。こっちも手一杯なんだけど……」

 

『ぬっ、了子くんか。そっちの様子も確認済みだ。上手く撤退してくれ』

 

 弦十郎は撤退命令を出しているみたいだった。

 悔しいけど、こっちの敗北ね……。

 

「逃さないよ。君たちは」

 

 しかし、アダムはもう一度、黄金錬成を発動させる。さっきよりは規模は小さいみたいだけど……。

 

「あいつ、まだあんなに力があるの……? こっちはエネルギー不足なのに……。まぁ、多少の被害は仕方ないわね。マリアちゃん、下がってなさい」

 

 フィーネは蜂の巣状の巨大なバリアーを繰り出した。

 どこが、エネルギー不足なのよ……。でも、あれじゃあ、あたしやマリアは身を守ることが出来ても、翼たちが逃げ遅れてたら巻き添えを食らってしまうかもしれない。

 

「文句言わないの。何とか逃げ切れていることを祈りなさい」 

 

 フィーネは諭すようにそんなことを言った。でも、それじゃあ……。

 

「フィリア! 聞こえてるんでしょう? これを使うわ」

 

 マリアは《Type:R》を取り出して、自分の首に注射した。

 ちょっと、躊躇いなく使わないでくれる? それを使ったらあなたは……。

 

「――んっ、くはっ……! はぁ、はぁ……、すっすごいわ……、こんなに大きく……」

 

 マリアは悶えながら、適合係数の上昇を感じ取ったみたいで、アームドギアが巨大化していた。

 

「燃え尽きるといい。何もかも」

 

 アダムは再び火球をあたしたちに向かって振り下ろした。

 

「みんなを……、必ず守ってみせる……! Gatrandis babel――Emustolronzen――Gatrandis――――fine el zizzl」

 

 マリアは絶唱を歌い始めた。アガートラームの絶唱……、あの日を思い出すわね……。

 

 マリアの絶唱のエネルギーがアダムの黄金錬成によって生み出された火球とぶつかり、空中で大爆発が起こる。

 

 爆発の余波はフィーネのバリアによって阻まれて、被害は最小限に抑えられた。

 

「――してやられたよ。見事にね。任せるとしよう。あとはサンジェルマンたちに……」

 

 アダムはそう言い残して、この場から消えて居なくなった。

 

「そうだ、こうしてはいられない。早くみんなを助けに行かなきゃ」

 

 マリアはアダムが居なくなったのを確認すると、調と切歌が戦闘している場所に向かって行った。

 

“行っちゃったわね……。マリアちゃん”

 

“あなたも追いかけなさいよ”

 

“わかってるわ。でも、今のアガートラームの絶唱……、妙な力を感じたの……。魂が共鳴するような……そんな感じが……”

 

“そういえば、あたしが過去に飛ばされた原因もアガートラームの絶唱だった。でも、今はそんなこと、どうでもいいでしょ? 頼むからマリアを……”

 

“はいはい……”

 

 フィーネはそう言って、マリアを追いかけた。

 

 フィーネはアガートラームの絶唱に何か感じるものがあったみたいだ。あたしもセレナの絶唱で過去に飛ばされたとき、不思議な感じを受けた。

 それが、何なのかわからないけど、フィーネの口ぶりはどこか懐かしそうな感じだった――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「敗北だ。徹底的にして完膚なきまでに!」

 

 弦十郎は悔しさで顔を歪ませる。

 

「ついに現れた、パヴァリア光明結社統制局長――アダム=ヴァイスハウプト……、そして……」

 

「錬金術師どものファウストローブ。フィリアにゃ、気を付けろと言われていたが……」

 

「まさか、打ち合った瞬間にイグナイトの力を無理矢理引き剥がされたような衝撃が走るとは――」

 

 あたしとマリアがアダムによって釘付けにされていた頃、翼たちはファウストローブを身に纏ったサンジェルマンたちと戦闘をしていた。

 

 フィーネとマリアが彼女らの元に辿り着いた時はすでに遅く。

 装者たちは皆倒されており、サンジェルマンたちはしばらく二人と交戦した後に、ティキの身体を持って逃げ帰ってしまった。

 

 あたしたちはパヴァリア光明結社に良いようにやられてしまったのである。

 

「ラピス・フィラソフィカス。賢者の石の力だと思われます。ボクとフィリアさんも共に研究していたのですが……」

 

「賢者の石……。確かに言っていた」

 

 エルフナインの言葉に響は反応する。

 

「完全を追い求める錬金思想の到達点よ。その結晶体は病を始めとする不浄を正し、焼き尽くす作用……、つまり浄化する特性がある」

 

「その特性によって、イグナイトモジュールのコアとなるダインスレイヴの魔力は為す術もありませんでした」

 

 あたしとエルフナインは賢者の石、ラピス・フィラソフィカスの特性がイグナイトの力を解除したと分析した。

 これがフィーネの言ってた連中の狙いか……。

 

「とどのつまりはイグナイトの天敵。この身を引き裂かんばかりの衝撃は強制解除によるもの」

 

「決戦仕様であるはずが、こっちの泣き所になっちまうのか!」

 

 翼とクリスはやりようのない歯がゆさを表情に出していた。

 

「東京に搬送されたマリアさんは大丈夫でしょうか?」

 

「新型のLiNKERのプロトタイプ、《Type:R》の副作用で精密検査が必要にはなったけど……、身体に影響は奇跡的に少なくて済んだわ……。本当にびっくりするくらいにね……」

 

 マリアの容態はあたしとエルフナインの予想とは裏腹にそれほど悪くはなかった。

 適合係数の上昇で絶唱のバックファイアは防げたはずだけど、使用したこと自体の負担や汚染はかなり酷くなる見込みだったのに……。

 まぁ、喜ばしいことではあるのだが……。

 

「良かった……」

 

 響はホッとした表情をした。

 

「リア姉とエルフナインが作ってくれたLiNKERは体の負担が小さくなるように出来てるデス」

 

「きっと、そのおかげで……」

 

 切歌と調は勘違いしてるが、《Type:R》はそんなものではない。

 計算外の奇跡で守られたとしか言いようのない事象――二度目はないと思うから……、やはり安全面はもっと強化しないと使用許可を出したら駄目ね……。

 奇跡があるなら、その逆もあるかもしれないし……。

 

「風鳴機関本部での解析任務は失敗した。各自撤収準備に入ってくれ」

 

 弦十郎はあたしたちに撤収の準備をするように指示を出した。

 

 

 そのとき、緒川の通信機が鳴り響き、彼は通信に出た。

 

「――っ!? 司令……、鎌倉より招致がかかりました」

 

「絞られるどころじゃ済まなさそうだ」

 

 弦十郎は緒川の言葉にそう反応する。

 

「――そして、今回はフィリアさんも来るようにと……」

 

「フィリアくんもか? 確かにオレの娘だから、何度か連れて行ったこともあるが……、こういうときに呼ばれるのは初めてだな」

 

 弦十郎は少しだけ驚いた顔をした。そして、翼は物悲しそうな顔であたしを見ていた。

 

 心配しなくて良いわ、翼……。あなたの負担を少しでも軽くすることが……、あたしとあの子の約束なんだから。

 むしろ望むところよ。あの男と対面するのは――。

 

 あたしたちは、日本国家を裏から支える風鳴の一族の長である風鳴訃堂の居る、鎌倉に向かうことになった――。

 




死力を尽くして戦っても、アダムたちには勝てませんでした。
次回は風鳴本家から話がスタートします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。