【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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風鳴訃堂がいよいよ登場です。考えてみると名前すら前回まで出してなかった気がします。
それではよろしくお願いします!


護国の鬼とパンドラの箱の守護者

「――して、夷狄(イテキ)による蹂躙を許したと?」

 

 齢100歳を超えるという、老人、風鳴訃堂は不機嫌そうな声を出した。

 翼は廊下で待機しており、何故かあたしは弦十郎の隣に座らされている。

 

「結果、松代の風鳴機関本部は半壊。大戦時より所蔵してきた機密を多く失うこととなりました」

 

 翼の父、八紘はパヴァリアによる強襲の結果を伝えた。実際、あの黄金錬成をまともに食らってしまっていたら、半壊どころか壊滅してたでしょうね。

 

 

「外患の誘致、及び討ち退けること叶わなかったのは、こちらの落ち度に他ならず、全くもって申し訳――」

 

「聞くに耐えん!」

 

 弦十郎が謝罪の弁を述べようとすると、訃堂がそれを遮る。まったく、この老人は――。

 

「夷狄の目的たる力、そこの人形にも宿るものだと聞く。なれば――奴等より先に護国の力と成すが良い」

 

 訃堂はあたしを指さしてそう言った。まさか、この男の狙いは――。

 

「待ってくれ。フィリアくんは――」

 

「有事に私情は聞くに能わず。得体の知れない人形が風鳴を名乗ることを許した理由を考えろ」

 

 あたしが弦十郎の娘になれたのは――風鳴の道具として利用できるとこの男が考えたからだ。

 当たり前だ。人形を風鳴の養子にしたいなどという弦十郎の我儘が簡単に通るわけないのだから。

 

「人形よ、貴様も風鳴に恩を返す義務をゆめゆめ忘れるな」

 

「もちろんですわ。お祖父様。過分なる待遇を受けたこの身は必ずや護国のために――」

 

「ふんっ! その殊勝な言葉、覚えたぞ――」

 

 あたしはいつもどおり猫を被ってその場をやり過ごすと、訃堂は立ち上がって部屋を出ようとした。

 

「わかっておろうな?」

 

 部屋から出る前に八紘に向かって訃堂は確認するような言葉を吐いた。

 

「国土防衛に関する例の法案の採決を急がせます」

 

「有事に手ぬるい! 即時施行せよ!」

 

 訃堂は八紘に護国災害派遣法――《ノイズ》以外にも、聖遺物や異端技術に起因する災害に対して自衛隊を動かす事が可能にし、予測できない事態にも拡大解釈をすることで、柔軟に対応出来る法律……、この法律の施行を急かした。

 

 この男に脳内メーカー使ったら絶対に護国って言葉で埋め尽くされてそう……。

 

 

 翼が、訃堂が出るのに合わせて障子を開ける。

 

「まるで不肖の防人よ。風鳴の血が流れておきながら嘆かわしい。よそ者の人形風情の戦力以下とは……、恥を知れ」

 

「我らは防人たらしめるは血に非ず。その心意気だと信じております。フィリアは私などよりその心意気が強いのでしょう」

 

「ふんっ」

 

 訃堂は敗戦を喫した翼に苦言を呈したが、彼女はそれに反論した。訃堂はさらに不機嫌さを増して去っていった。

 ホントに相変わらず嫌な爺さん……。あと、翼の中ではあたしも防人なのね……。口調とか変えたほうがいいのかしら?

 

 

「翼お姉様、気にされなくても良いですわ」

 

「フィリアよ、その口調はやめてくれと、何度言えば――」

 

 悲しそうな顔をしていた翼にあたしが声をかけると、彼女は困惑した表情に変化した。

 大丈夫……、あなたはあたしが守るから……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「――というわけで、あたしの力を正確に把握する必要が出来たの。記憶が戻っても、わからないことがまだあるから、その点を探りたいと思ってるわ」

 

 S.O.N.G.の本部に戻ったあたしは、研究室でパヴァリアの目的を潰すためには、連中が神の力を手に入れるための過程を知る必要が出来たとみんなに話した。

 あたしにティキと同じような機能が付随されているのなら、その機能について知ることが出来れば、パヴァリア光明結社の動きも読めるという理屈だ。

 

「んなことどうやって調べりゃ良いんだよ?」

 

 クリスは当然の疑問を口にした。ちょっと危険な方法なのよね。それが……。

 

「これを使います」

 

 エルフナインがゴーグルとヘルメットが一体化した装置を指さした。

 

「これってエルフナインちゃんと前に遊んだゲームだー。えっ? これからゲームするのー?」

 

「フィリアよ、私たちには遊んでる時間などないんだぞ」

 

 響と翼は先日にエルフナインが作ったRPGゲームとこの装置を混同しているみたいだ。

 確かに見た目はほとんど同じだし、あれを元に作ったからあながち間違っちゃいないんだけど……。

 

「違うわよ。ゲームなんかするわけないでしょう。これはウェル博士のダイレクトフィードバックシステムを再現した装置よ。ゲームを作るついでに作成してみたの」

 

「普通、逆デスよ」

 

「ゲームのついでに作るものじゃないでしょ」

 

 あたしの言葉に切歌とマリアがツッコミを入れる。出来ちゃったから仕方ないじゃない。

 

「これであたしの記憶のさらに奥にあるはずの内部データにまでアクセスする。あたしだけで探れればよかったんだけど――」

 

「どうかしたのか?」

 

 あたしがそこまで話すと翼がそう尋ねる。

 本来なら自分で自分の意識の中を解析する予定だった。他人に見せるのも恥ずかしいし……。

 

「何度か使ってみたけど、邪魔が入るのよ……。途中で大きな邪魔がね……。だから、危険は伴うけど誰かにあたしの意識の中に一緒に入って来て欲しいの。その邪魔者を抑えるために……」

 

 そう、あたしの意識の中は迷宮と言えるほど複雑な上に邪魔者までいるカオスな状態だった。

 

「でも最悪の場合、二人の意識は溶け合い廃人となる恐れもあるわ。無理なら他のやり方を――」

 

「良いだろう。私が行こう」

 

 あたしが言い終えるより前に、翼は自らがあたしの意識に入ると言い出した。

 

「この命令を出したのは風鳴の長だ。なれば、この任務は私が遂行するのが筋だろう」

 

 真面目な理由で翼は立候補していた。まぁ、翼だったら――。

 

「エルフナイン、翼とあたしの意識を繋いでくれる? 翼にだったらこの仕事を任せられるわ」

 

「わかりました。フィリアさん、翼さん、くれぐれも注意してください」

 

 ということで、あたしは翼とともに自らの意識の中に入り込むことにした。

 

 私と翼は機材をつけて、準備を完了させる。

 

「それでは、今からフィリアさんと翼さんの意識を共有します――」

 

 エルフナインはダイレクトフィードバックシステムを起動した――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ここは暗い実験室、培養液の中に二人の銀髪の少女が入っていた。

 

「また、ここからか……」

「ここは、どこなんだ? フィリア……」

 

 あたしの隣に居る翼がキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「出てこい。廃棄個体ども」

 

 女が培養液の水を抜いて、少女たちに声をかけていた。

 

「あれは、櫻井女史……、そしてこの少女たちはまさか……!」

 

「そうよ、あたしと妹のフィアナ……。フィーネの実験は失敗して、あたしたちはアメリカに行ったの……。F.I.S.にね……。こっちよ、翼……」

 

 あたしが歩みを先に進め、翼は後ろを付いてくる。

 

 

 

 

「今日からあなたたちには戦闘訓練を行ってもらいます。フィーネの器となれなかったレセプターチルドレンは涙より血を流すことで組織に貢献するのです!」

 

 ナスターシャがムチを片手に檄を飛ばす。

 

「まーた、始まった。マムのありがたいお言葉……」

 

「フィリア! 私語は慎みなさい!」

 

 子供の頃のあたしがナスターシャにムチで叩かれる。

 

「――っ!? これは、痛みを共有してるってことか?」

 

「そうよ、このくらいは序の口だから。覚悟してちょうだい」

 

 あたしと翼はナスターシャにムチで叩かれた痛みを感じていた。

 

「あと4発くらい貰っとくわ。先に叩いてもらっといた方が効率的でしょ? ついでにフィアナとマリアとセレナの分くらいは貰っといてあげる」

 

「――まったくあなたという子は!」

 

 反抗的なあたしにナスターシャは困った顔をしていた。

 

「フィリア、バカなこと言ってマムを怒らせないの」

 

 小さい頃のマリアが注意する。この頃から彼女には面倒かけてたわ……。

 

「何というか、お前は昔からあんな不遜な態度だったんだな……」

 

 翼は呆れ顔をしてあたしを見ていた。だから、嫌だったのよ。

 

 

 

「マムに、内緒よ……」

 

「美味しいデス」

「リア姉ありがとう」

 

 切歌や調にこっそりケーキを渡したりと重要じゃない記憶も通り抜けて、レセプターチルドレン時代の記憶を翼と共に進んで行く。

 

 

 そして、あたしは400年前の世界に飛ばされてしまう。

 

「話には聞いていたが、本当に過去に行っていたのだな」

 

「さっさと行くわよ、立ち止まってる暇はないの」

 

 あたしは翼の手を引いて、先へ進もうとする。

 

「ちょっと待て、フィリア。どうしていきなり急ぐのだ? ん? あそこに居るのは、例のキャロルやエルフナインの父親?」

 

 翼にあの記憶を見られてしまった――。

 

 

「――ええい、言うぞ! きっ君を好きになってしまったんだ。優しくて、キャロルにも好かれている、君のことを……。だから、その、僕と一緒になってほしい。もっもちろん、直ぐに返事をくれとか、そんなことは言わない……」

 

「別にあたしは優しくなんてないわよ……。でも、嬉しい……。あたしもあなたが好きよ……、イザーク……」

 

 あたしがイザークにプロポーズされている記憶を翼に見られてしまった。もちろん、いい想い出なんだけど……。

 

 

「――すっ、すまない。フィリア……、お前の、そのせっ接吻を……」

 

「いいわよ、別に……、さっさと進むわよ。もう少し先なんだから……」

 

 顔を真っ赤にした翼と共に、あたしは更に先に進む。

 

 

 

 キャロルの元に行き、パヴァリア光明結社に潜入してゲイル博士と共に逃げ出して、あたしは自らの体を人形にするところまで、記憶の迷宮を進むことが出来た。

 

「この先にあたしの身体の秘密が隠されているはず。ゲイル博士はあたしに各機能のチュートリアルを残していたの。でも、邪魔者が入ってどうしても開けられない扉があるのよ。翼にはそれを止めてほしい」

 

「心得た。しかし、驚いたな。意識の中の空間でもギアを纏えるのか……」

 

 翼はシンフォギアを纏って、戦闘の準備をしていた。

 

「そりゃあ、ゲームのときと一緒の理屈よ。脳波であたしたちが具現化されてるなら、イメージでギアを纏えないはずはない。あたしもファウストローブを」

 

 あたしはファウストローブを纏い、翼と記憶の奥の扉に進む。

 

 もう少しで――奴が出てくる……。

 

「あら、フィリアちゃん。今度はお友達と一緒に来たのね……。この先にあるのは――フィリアちゃんが知らない方が良いことよ……」

 

 フィーネがあたしたちの前に立ちはだかった。

 

「また、櫻井女史!? しっ、しかし、なぜ衣服を着てないのだ?」

 

「フィーネは基本的にあんな感じよ。翼、あの人を止めてもらってもいいかしら? あたし一人だと手に負えなかったのよ」

 

 あたしと翼は臨戦態勢を整えてフィーネと対峙する。

 

「はぁ、まったく……、私は娘のためを思って言っているのよ。帰りなさい。そして、あの力を手に入れようとするのは、止めなさい」

 

 フィーネはそう言うとネフィシュタンの鎧を身に纏ってきた。向こうもイメージで同じような真似を……。

 

「フィリア、ボサっとするな! 約束どおり私が足止めする! お前は急いで奥に行けっ!」

 

 翼はアームドギアを構えてフィーネに向かって走り出した。

 

 ――風輪火斬――

 

 炎を纏った翼のアームドギアがフィーネを襲う。

 フィーネはムチを伸ばしてこれを受け止める。

 

「あら、また腕を上げたのね。翼ちゃん」

 

「フィリアの邪魔はさせん! うぉぉぉぉっ!」

 

 翼の必死な気迫は剣にも現れて、フィーネのムチによる波状攻撃を受け止める。

 

 今だっ――。

 

 あたしはフィーネの奥の扉に向かって走り出した。

 

「行かせないって、言ってるでしょ!」

 

 フィーネはあたしに向かってムチを伸ばしてきた。

 

「私を相手にしながら、他に気を取られるか!?」

 

 ――天ノ逆鱗――

 

 翼はあたしの背中を捉えようとするムチを超巨大化させたアームドギアで防ぐ。

 

「行けっ! フィリアぁぁぁっ!」

 

「フィリアちゃん、戻りなさい! きっと、あなたは後悔する!」

 

 翼とフィーネの声を背中に受けながら、あたしは奥の扉を開いた。

 

 あたしはそのまま、扉の先を駆けていく……。

 

 そして、その先で待ち受けていたのは――。

 

「やぁ、フィリア。よく来たね……」

 

「はぁ、会いたくないけど、会いに来てあげたわ……。ゲイル博士……」

 

 あたしは意識の最深部で大馬鹿者と再会した――。

 

 

 




次回はフィリアの意識の中のゲイル博士がいろいろと彼女の身体の仕様について説明します。
フィリアもまたティキと同様に神の力を受け止めることが出来るので、訃堂は神の力を手に入れようとしています。
次回もよろしくお願いします!
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