【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「ドクター、取り急ぎ質問に答えてくれるかしら? あたしにはティキと同じ機能が付いているの?」
あたしは今まで幾度となく自分の機能の説明をした彼に質問をする。
ミラージュクイーンも、マナバーストも、ファウストローブもこの男によって教えられた機能だ。
「ティキと同じ機能? んっんーっ、違うんだなー、これがっ! 既存のモノと同じモノを付けるなんてノーセンスじゃないよ、この僕は」
相変わらずのムカつく口調で人を小馬鹿にしながらゲイルは話す。
「ティキの性能ははせいぜい神の門とかいう高エネルギーの収束ポイントを見つけて、そこに集まったエネルギーを掠め取るくらいで、大したもんじゃあない」
「そこが重要なのよ。ていうか、それを邪魔したいからやり方を教えなさい」
ゲイルはティキを軽く見ていたが、その機能こそパヴァリア光明結社が追い求めていた機能だ。
彼は私にも似たの機能が付いているという前提のもとパヴァリア光明結社の計画の全貌を話した。
この男を閑職に追いやったのは連中の失策ね……。
生命エネルギーを大量に使い、各神社にエネルギーを送り、さらにレイラインを利用して地上のオリオン座というモノを作り出す。
そして、天地のオリオン座から織りなされる神の力と呼ばれる高エネルギーの収束ポイントをティキが見つける。
最後にティキがそのエネルギーを身に納めることで、神の力を手に入れる――ここまでが計画の流れみたいだ。
思ったより彼らの計画の詳細があたしの中にインプットされてたのね……。
これなら連中の企みも防げるかもしれない。
「ありがとう。じゃあこの辺であたしは――」
「ホワァイ!? 君はバカなのか? ここからが本番だ。君はクロノスモードを使えば生命エネルギーや祭壇設置の儀式なんてモノが無くても術式を発動させて自力で神の門を見つけてエネルギーを手にすることが出来る! 何故なら、君のその身体にはレイラインを完全に掌握する力が組み込まれているからだ!」
ゲイル博士はあたしとティキの違いを話した。
何その手軽そうな話。こいつ、人の身体にとんでもない機能を幾つ付けたのよ?
「しかし、神の力を手に入れたら、君の魂は一年保たないでしょうねぇ。英雄に相応しい力は手に入るから、代償としては小さすぎるぐらいだが」
ゲイル博士は神の力を手にしたときのデメリットを話した。
「チフォージュ・シャトーなしで発動するクロノスモードの魂への負担は自覚してるだろ? それと同様だ。そもそも、キャロルが万象黙示録を完成していれば話は別だった……。バカな君は神を超えられるチャンスを自分で潰したんだ」
魂の負担? 確かにクロノスモードを使った後は意識が遠ざかるけど……。
「君の同居人に感謝するだね。フィーネが自分の魂をすり減らして君の身体を守って無かったら、今ごろ君は――自分を保っていられたかな?」
「フィーネが? あたしの身体を?」
ゲイル博士はフィーネがあたしを守っていたというような事を言った。
もしかして、彼女があたしを止めていた理由は――。
「最後にキーワードを教えとこう。コード、ラグナロク……、それで君は神域に足を踏み入れるだろう……」
ゲイルはそう言い残して消えてしまった。
あたしは呆然としながら、意識の奥から記憶の迷宮に戻った。
翼は倒れており、フィーネはその傍らで座っていた。
「翼ちゃんなら大丈夫よ。ちょっと寝かせただけだか」
フィーネは見たことのないくらい優しい表情だった。この人があたしの為に?
「フィーネ、あなたはあたしを……?」
「あーあ、こんな顔をするから聞かれたく無かったのよねー。大丈夫よ、フィリアちゃん。これくらいじゃ私は参ったりしないから――。だから……、大切な人を守るために力を使うことを躊躇ったら駄目よ」
あたしの問いかけに、フィーネは微笑みながら、頭を小突いてきた。
――バカね……、躊躇わないわけないじゃない……。
あたしは翼が目を覚ますのを待って、意識の世界から研究室に戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「フィリアさん、翼さん、戻ってすぐに申し訳ありません。アルカノイズと錬金術師たちが現れました」
ダイレクトフィードバックシステムを解除して早々にエルフナインが慌てた表情であたしたちに声をかけた。
「持ち帰った情報を整理したかったけど、仕方ないわね。行くわよ、翼!」
「うむ、一刻を争う事態のようだ。急ぐぞ、フィリア!」
あたしと翼はS.O.N.G.のヘリコプターに乗り込み、現場へと急行した。
「フィリア、その篭手は……、何か武器でも仕込んでいるのか?」
翼はあたしが腕に装着した篭手を見ながらそう言った。
「ああ、これは賢者の石を作ろうとして失敗した副産物よ。やたら硬い物質を創り出すことが出来て――あたしはそれをオリハルコンって名付けたんだけど……。それを加工して刃状にして篭手の中に仕込んでみたの。ミラージュクイーンで塗装して錬金術を纏えるようにしたから、ファウストローブを装着しても剣術が使えるようになったわ」
あたしが篭手に仕込んだボタンを押すと緑色に光る刃が飛び出す。これなら武術と剣術のどちらも使える。
「なるほど、いい剣だ……。しかし、色は銀色じゃないんだな」
「フィーネがこの色がいいって煩かったから。まぁ、色くらいは別に何色でもいいし」
翼の質問にあたしはそう答えた。この仕込み篭手を作ろうとしたとき、妙に機嫌が良かったのよね。
そんなことを話していると、あたしたちはすぐに現場に到着した。
あたしはファウストローブを、翼はシンフォギアを身に纏う。
「あら、アルカノイズたちは全部倒しちゃったのね。じゃあこれで――」
「7対3か、少々気が引けるな……」
あたしと翼はサンジェルマンたちと戦闘中の響たちと合流した。
「思い上がるな! この程度の人数差など問題ない!」
既にファウストローブを纏っているサンジェルマンは銃口をあたしに向けた。
「待ってください! 人を支配から解放するって言ったあなたたちは一体何と戦っているの? あなたたちが何を望んでいるのか教えて。本当に誰かの為に戦っているのなら私たちは手を取り合える」
響は殺気を放っているサンジェルマンに手を差し伸べようとした。
「手を取るだと? 傲慢な……。我らは神の力を以ってしてバラルの呪詛を解き放つ!」
サンジェルマンの目的はやはりバラルの呪詛からの人類の解放だった。
「神の力でバラルの呪詛をだと!?」
「月の遺跡を掌握する!」
翼の反応にサンジェルマンは月の遺跡の掌握を宣言する。
まぁ、月の遺跡の装置を操ることが出来れば、それは可能よね……。
「月にある遺跡……、何のために?」
「人が人を力で蹂躙する不完全な世界秩序は、魂に刻まれたバラルの呪詛に起因する不和がもたらす結果だ」
サンジェルマンはバラルの呪詛による、人類の不具合について述べた。フィーネも言ってたけど、人類同士が争うようになったのはこれが原因だ。
「不完全を改め完全と正すことこそサンジェルマンの理想であり、パヴァリア光明結社の掲げる思想なのよ」
「月遺跡の管理権限を上書いて人の手で制御するには神と呼ばれた旧支配者に並ぶ力が必要なワケダ。その為にバルベルデを始め各地で儀式を行ってきたワケダ」
カリオストロとプレラーティはパヴァリアの思想と目的を話す。
気の遠くなる年数をかけてこの人たちは計画を成そうとしている。説得で何とかなる相手じゃないかもしれない。
「だとしても、誰かを犠牲にしていい理由にはならない!」
響の意見は正論だ。しかし、それはサンジェルマンには通じないだろう――。
「犠牲ではない。流れた血も失われた命も革命の礎だ!」
サンジェルマンが銃から光線を繰り出してきた。
そう、彼女には確固たる決意がある。革命の礎となる人間の数を律儀に数えているのは、彼女が命を背負う覚悟があるからだろう。
あたしたちは分散して光線を避けて戦闘に入った。
「フィリア、合わせられるか!?」
「何年、あなたの鍛錬に付き合ってるとおもうの? 目を瞑ってもあなたの動きはわかるわ」
あたしは篭手から緑色の刃を出して、翼と共にサンジェルマンに向かって走る。
――
あたしが炎を纏った刃から神焔ノ一閃を放ち、翼が蒼ノ一閃を放つ。
全く同じタイミングで放った紅い刃の蒼い刃が混ざり合い紫色の炎刃となりサンジェルマンを襲う。
「――くっ、これは!?」
サンジェルマンは錬金術でシールドを出すも、紫色の刃によってそれは破壊され、彼女は吹き飛ばされてしまう。
「「はぁぁぁぁっ!」」
翼とあたしの連携技でサンジェルマンに追撃を放つ。
彼女は体勢を整えて銃を乱射するが、あたしたちは同時に空中に飛び上がり、それを躱す。
――
翼が巨大化させたアームドギアにあたしが錬金術で雷撃を纏わせて、それをサンジェルマンに向かってそれを落とした。
「錬金術とシンフォギアの連携……、これほど強力とはっ――」
サンジェルマンは素早いバックステップでこれを避けるが、アームドギアが地面に突き刺さった爆発の余波でバランスを崩してしまう。
今がチャンス! もう一度、連携技で……!
と、二人で意思確認をしたとき……。
「「イグナイトモジュール! 抜剣!(デース)」」
調と切歌がイグナイトを使ってしまう。
「ダメよ! 調、切歌、賢者の石によってあなたたちのギアが――!」
あたしは翼と目で合図を出して彼女たちの元にフォローに回ることにした。
「先走るワケダ――」
「当たりさえしなければ!」
あたしが彼女らに近づく前に、プレラーティの武器であるけん玉から赤い稲妻が迸り、調と切歌にヒットしてしまう。
「「うわぁぁっ!」」
「ノリの軽さは浅はかさなワケダ!」
案の定、二人はイグナイトを引き剥がされて、地面に付してしまった。
「切歌! 調!」
あたしは倒れている二人の前に立ち、プレラーティを牽制した。
「足手まといを庇いながらどこまでやれるワケダ!?」
「口を慎みなさい! 二人は足手まといじゃない!」
プレラーティの苛烈な攻撃が二人に当たらないようにあたしは必死で刃と打撃を駆使しながらコレを弾く。
「明日のために私の銃弾は躊躇わないわ」
あたしと翼がサンジェルマンから離れると響が彼女と戦いだしたみたいだ。
「何故!? どうして!?」
引き金を引くことを躊躇わないサンジェルマンに響は投げかける。
「わかるまい……。だが、それこそがバラルの呪詛! 人を支配するくびきっ!」
「だとしても人の手は誰かを傷つけるのではなく、取り合うために!」
「取り合うだと!? 謂れなき理由に踏み躙られたことのない者が言うことだ!」
サンジェルマンは響の呼びかけにまったく聞く耳を持たずに銃を撃った。放たれた弾丸が蒼い狼となり、響に向かって飛んでいく――。
かなりの威力だけど、大丈夫かしら?
「言ってること――全然わかりません!」
響は狼を拳で殴って相殺した。この子の馬鹿力だけは、本当に予想を超えてくるわ。
「何っ!?」
「だとしても、あなたの想い。私にはきっと理解出来る。今日の誰かを踏み躙るやり方では、明日の誰も踏み躙らない世界なんて作れません」
「お前……」
響は絶好の機会でも、サンジェルマンの目の前で拳を止めた。
この子はどこまでもブレずに手を伸ばし続けるつもりなのね……。
そんな中、マリアがカリオストロの攻撃を弾き、その攻撃が響とサンジェルマンの方に飛んでいってしまった。
「こっち!」
響は迷わずにサンジェルマンの体を掴んでこれを避ける。
ホントにバカみたいにお人好しなんだから――。
「――っ、私たちは共に天をいただけないはず……」
「だとしても、です……」
「思い上がるな! 明日を開く手は、いつだって怒りに握った拳だけだ! これ以上は無用な問答……。預けるぞ、シンフォギア!」
結局、響の想いは通じなかったのか、サンジェルマンは撤退をした。
「ここぞで任務放棄ってどういうワケダ、サンジェルマン」
「あーしのせい? だったらメンゴ! 鬼メンゴ!」
プレラーティとカリオストロもそれに続いた。
確かに、変ね……。まだ、余力はあるみたいだし……。あのまま戦いが進むとどちらが勝つかわからなかった。
サンジェルマン……、あなたは……。あたしは一時だけの友人関係にあった彼女のほんの少しの心の揺らぎのようなものを感じた――。
しかし、このままイグナイトが封じられた状態で戦うと、こちらの不利は明らかね……。
クロノスモードもこのままじゃ駄目だ。
使えるように何か方法を考えないと……。
この先の戦いを乗り越えるために頭の中をフル回転させる……。
“あなた、私まで大切な人リストに入れちゃったの? 仕方ない子ね……”
“うるさいわね。あなたも考えなさいよ”
最低の母親でも、いつしかあたしは
フィリアの新武器によって、ファウストローブと剣術の併用が可能になりました。これで、翼やマリアと剣術で合体技が可能に……。
次回もよろしくお願いします。