【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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第8話の序盤までです。
それでは、よろしくお願いします!


愚者の石と特別訓練

「パヴァリア光明結社の目的は月遺跡の掌握。その為に必要とされる、神の力を生命エネルギーより錬成しようとしているわ。その計画は――」

 

 あたしは自分の内部データにいたゲイル博士から聞いたパヴァリア光明結社の計画を話した。

 そして、あたしにも神の力を宿す機能が付いていることも……。

 

「なるほど、レイラインを利用する気か……」

 

 弦十郎は納得したように呟いた。

 

「キャロルが世界の分解解析に利用したレイライン。巡る地脈から星の命をエネルギーとして取り出すことが出来ればそれを可能にするということね」

 

「パヴァリア光明結社がチフォージュ・シャトーの建造に関わっていたのにはそういう背景があったということか……」

 

 友里と藤尭は頷きながらキャロルの計画と今回のパヴァリア光明結社の目的が密接な関係にあることに気付いたみたいだ。

 

「取り急ぎ、神社本庁を通じて各地のレイライン観測所の協力を仰ぎます」

 

「うむ」

 

 緒川の言葉に弦十郎は頷く。これで、対策出来ればいいけど……。

 

「もしもの時は、あたしが神の力を……」

 

「それは許さん! 聞けば、魂への負担で君が死んでしまうみたいじゃないか。そんなことは許可できん! 仮に鎌倉の命令があろうとオレは許さん」

 

 あたしが連中の術式を発動する前に神の力を奪えば確実にパヴァリアの計画を潰すことが出来る。

 しかし弦十郎はそれを許さなかった。

 

「はぁ、だったら、事前に計画を阻止しなきゃいけないわね」

 

「無論、そのつもりだ……。あと――」

 

 弦十郎はクロノスモードについても、フィーネの魂への負担が無くなる方法が見つかるまで使用を禁止した。元よりそっちはそのつもりよ……。

 

“弦十郎くんまで私を……”

  

 フィーネは信じられないというような声を出していた。

 

「あとは装者たちの状況だな」

 

「賢者の石による抜剣封殺。その対策も急いで講じなければ……」

 

 弦十郎と緒川は考え込むような仕草をしていた。

 

「それについては、何とかしてみせる。ねっ、エルフナイン」

 

「はい。ボクたちも賢者の石については研究していました。きっとこの状況を打破する方法があるはずです」

 

 あたしとエルフナインはそう言って、研究室に戻って行った。

 イグナイトとクロノスモード、この2つを何とか使用できる状態にしなくては……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「異端技術に関する資料らしい資料はかき集めてきたつもりだ。他にも必要な物があったら何でも言って欲しい」

 

「ハーゲンダッツ」

 

「他に何かないなら、行くぞ」

 

 弦十郎はあたしの言葉を無視して部屋を出て行ってしまった。何でもって言ったじゃない。

 

「フィリアさんは、こういう時でも落ち着いてますね」

 

「そうかしら? アイスが食べたいって言っただけよ」

 

「ボクは焦ってしまってます。早く対策を考えなきゃって……。何かを口にするなんて、考えてませんでした」

 

 エルフナイン……、それはあたしが図太いって言ってるの? そりゃ、母親に似て多少は面の皮が厚くなってるかもしれないけど……。

 

「こういうときは甘いモノで脳を活性化させた方が良いのよ。あなたの言葉を借りるなら錬金術的にも、ね。――ほら、ハーゲンダッツはないけど、パピコがあったわ。半分こしましょ」

 

 あたしは冷凍庫からパピコを取り出して、半分に割ってエルフナインの頬に付けた。

 

「――ひゃっ、つっ冷たい! ありがとうございます。――チュルチュル……、おっ美味しいです。すごく頭が冴えてきた気がします!」

 

 エルフナインは美味しいそうにパピコを食べて、スッキリした表情になった。

 こうやって見ると子供だし、昔のキャロルを思い出すわ……。

 

「フィリアさん、頑張りましょう! ――うわっ!」

 

 エルフナインがやる気満々の顔で張り切って動くと、足を滑らせて転んで弦十郎が持ってきた資料の山を崩してしまう。

 

「ちょっと、気を付けなさい」

 

「すみません……、あれ? こっこれは――」

 

 あたしが手を貸してエルフナインを起こそうとしたとき、彼女は地面に落ちた資料に注目した。

 

 これって、響のメディカルデータ?

 

 そして、偶然というか何というか、この中に賢者の石への対抗策が載っていたのである。

 

 

 

 

「これは?」

 

「以前ガングニールと融合し、謂わば生体核融合炉と化していた響さんより生成されたガーベッジです」

 

「あっ――! あの時のかさぶた!」

 

 以前にガングニールとの融合が進んでいた響が暴走してしまったあと、彼女は手術を受けることになった。

 そのときに採取した、響の体に癒着していた物質の画像をあたしたちは皆に見せた。

 

「とは言え、あの物質にさしたる力は無かったと聞いていたが?」

 

「世界を一つの大きな命に見立てて作られた賢者の石に対して。このガーベッジは響さんという小さな命より生み出されています。つまり、その成り立ちは正反対と言えます」

 

 エルフナインが翼の疑問を受けて、説明をする。

 うん、絶対に響とか理解してないわね……。

 

「今回立案するシンフォギア強化計画ではガーベッジが備える真逆の特性をぶつけることで、賢者の石の力を相殺する狙いがあります」

 

 賢者の石の力さえ打ち消すことが出来ればイグナイトの力を使うことは可能となる。

 強化というより、防御といったところだろう。

 

「つまり、対消滅バリアコーティング。」

 

「そうです。錬金思想の基本であるマクロコスモスとミクロコスモスの照応によって導き出された回答です」

 

 藤尭の言葉をエルフナインは肯定した。

 

 

「誰か、説明して欲しいけれど……」

 

「調、そんなことを言ったらリア姉が――」

 

「調、錬金術に興味を持ってくれて嬉しいわ。マクロコスモスというのはね、大宇宙的な概念で――」

 

「その話は今度の機会にするデェェェス」

 

 調の疑問に答えようとしたあたしは切歌に口を抑えられる。説明して欲しいって言ったじゃない。

 

 

 

「その物質。どこぞのバカの中から出たってんだから、さしずめ愚者の石ってところだな」

 

「愚者とはヒドイよクリスちゃん……」

 

「クリスに座布団一枚〜。山田くん座布団持ってきて」

 

 クリスが命名した愚者の石というネーミングセンスが気に入ったあたしは、翼に座布団を要求した。

 

「誰が山田くんだ。私は剣だっ!」

 

 いや、翼でしょ。

 

「うむ。なるほど。賢者の石に対抗する愚者の石――」

 

「ああっ!? まさかの師匠まで!?」

 

「それで、その愚者の石はどこに?」

 

「マリアさんも!?」

 

 一瞬で定着した愚者の石に対して、響は複雑な顔をしていた。あながち間違っちゃいないけど、本人は真面目な子のつもりなのよね……。

 

「一通りの調査を終えたあと、無用不要のサンプルとして深淵の竜宮に保管されていたんですが……」

 

「――っ! あたしが吹き飛ばしたから……」

 

 友里の回答にクリスは自責の念に駆られたような表情をした。

 

「クリス、気にしなくて良いわよそんなこと。あたしだって首都庁にチフォージュ・シャトーを落っことしたけど、あまり気にしないことにしてるわ」

 

「オレはもう少し気にしてほしいぞ! まったく……」

 

 あたしがクリスにフォローを入れると、すかさず弦十郎がツッコミを入れる。冗談だってば……。

 

「フォローになってねぇよ、バーカ! ――でも、あんがとな」

 

 クリスは顔を背けながらそう言った。

 

 

 

 愚者の石の眠る竜宮の深淵は思った以上に悲惨な状態になっていた。

 サルベージマシンを操縦できるあたしとマリア、それに加えて翼と響が海中で作業を開始した。

 

 途中、カリオストロとプレラーティがアルカノイズを引き連れて強襲してきたが、調と切歌が見事に歌を合わせたユニゾン攻撃が決まり、プレラーティに大ダメージを与え、彼女たちを撤退にまで追い込んだ。

 

 やっぱり、あの二人はやれば出来る子たちだ。

 

 

 そして――。あたしたちは愚者の石を作業員を増員して発掘に取り掛かり――。

 

「見つけたデェェェス!」

 

 大活躍を見せた切歌が、愚者の石を発見した。その勢いで、調の顔に思いっきり泥がかかっているがそんなことは気にしない。

 

「ほら、タオルで顔拭いて。許してあげなさい。あとでシャワーを浴びれば良いんだし」

 

「むぅー。ありがと、リア姉」

 

 ムッとした顔の調にタオルを渡したあたしは、切歌の持っている石を確認した。

 

「エルフナイン、これが愚者の石で間違いないわよね?」

 

「はい! これが賢者の石に抗うボクたちの切り札、愚者の石です!」

 

「うぅ〜、すっかり愚者の石で定着しちゃってる……」

 

 あたしとエルフナインが頷き合っていると、響が複雑そうな表情をしていた。

 

 さあ、シンフォギアをこれから強化するわよ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「今回は特別に俺が訓練をつけてやる! 遠慮はいらんぞ」

 

「訓練室に呼ばれて何かと思ったら……、あたしはシンフォギアの強化をしなきゃいけないんだけど……」

 

 研究室でエルフナインと作業をしていたら、弦十郎に訓練室に来るように言われた。

 言われたとおりにやって来たら、装者たちを前に構えている彼が居た。

 

「まぁいいじゃないか、フィリアくん。研究室に籠りっぱなしだと、身体が鈍るぞ」

 

「――鈍るって……、あたしの身体のこと知ってるでしょ? はぁ、まぁいいわ。試したいこともあったし」

 

 あたしは実戦前に試したいことがあったので、弦十郎の訓練を受けることを飲んだ。

 

「こちらも遠慮なしで行く!」

 

「――マリアっ、そっちに行ったわよ」

 

 弦十郎が超速でマリアに接近して拳の連打を放つ。

 

「――えっ!? うっ! ど、どうすればいいの!?」

 

 咄嗟に直撃を防いだ彼女だが、吹き飛ばされてしまう。これは、ちょっと厳しいか……。

 

「はあああっ! ――闘ッッッ!」

 

「――きゃああっ!」

 

 マリアはさらに吹き飛ばされてダウンしてしまった。

 

 

「人間相手の攻撃に躊躇しちゃうけど……」

「相手が人間かどうか疑わしいのデス」

 

 調と切歌は既にドン引きしていた。あたしはもう何年も疑ってる……。

 

「師匠! 体打をお願いします! はぁぁぁぁっ!」

 

 特訓バカの響やこういう事が嫌いではない翼も案の定やられてしまい、クリスもミサイルを素手で掴まれてあえなく撃沈してしまった。

 

「あんなトンデモに勝てるわけないデス」

 

「どうしよう、切ちゃん。みんなやられちゃったよ」

 

 残った切歌たちは青ざめながら弦十郎を眺めていた。

 まったく、加減を知らないんだから……。

 

 あたしは弦十郎の前に立った――。

 

「ん? 次はフィリアくんか。良いだろう。どこからでもかかってこい」

 

「コード……、ファウストローブ……。――恥をかいても知らないわよ。娘に蹂躙されて」

 

「ふっ――、望むところだ!」

 

 あたしと弦十郎は同じ構えで視線を合わせる――。

 

 静寂がこの場を支配した。しかし、あたしたちの間で行われているのは、深い読み合い……。

 

 

 今だっ――! あたしは音を置き去りにして、弦十郎の間合いに入った――。

 

 ――滅掌雷轟貫手(メッショウライゴウヌキテ)――

 

 残像が無数に現れるほどの超高速の貫手をあたしは弦十郎に放つ。

 彼はあたしの貫手を片手ですべてガードする。

 

「腕を上げたじゃないか。奮ッッッッッッ――!」

 

「あなたの打撃をマトモに受けるバカは居ないわよ」

 

 あたしは弦十郎の腕を取ると同時に足を首に掛け、頭から地面に叩き落そうとした。

 

「――柔術か……、抜け目ないっ!」

 

「ちっ、片手一本で体をっ!?」

 

 弦十郎は落とされる前にもう片方の手で体を支えた。

 

「はぁぁぁぁっ! ぜやっ――」

 

「くっ、さすがに速い……」

 

 あたしは弦十郎の攻撃をギリギリで躱しながら、心の中で舌打ちした。

 

 彼の拳を避け、カウンターで反撃するがそれも見切られて躱されてしまう。

 あたしと弦十郎はかれこれ30分以上に渡って、お互いに決定打を当てられずにいた。

 

「長げぇよ、おっさんもフィリアも、あたしたち待ちくたびれてんだけど」

 

「ふぇ〜、フィリアちゃんって、師匠の攻撃あんなに避けられるんだ〜」

 

「うむ、確かにフィリアの体捌きは見事だが……、このままだと」

 

 みんな、とっくに復活してこちらを見学している。あたしは弦十郎の連撃を段々と躱しきれなくなってきた。

 こちらのリズムが読まれ始めて来たからだ。弦十郎は相手の呼吸を読む術が実に上手い。

 

「どうしたフィリアくん。動きが単調になっているぞっ!」

 

 威力がさらに高まった、拳圧が耳元で轟音を鳴らし、その威力の高さを伺わせる。この速さ……、本気で仕留めようとしてきてる……。

 

「まるでミサイルね……。それじゃ、そろそろ……」

 

 あたしは弦十郎に完全に呼吸を読まれていることを悟って、試したいことを実践した。

 

「スキありっ! ぬっ――! これは了子くんの……」

 

 弦十郎の拳はフィーネのバリアによって防がれる。上手く行ったみたいね……。

 

「正解よ、弦十郎くん」

 

「――何っ!?」

 

 弦十郎の鳩尾にフィーネの拳が突き刺さった――。

 

「がはっ――」

 

「こんな馬鹿力で攻撃して、うちの娘が怪我したらどうすんのよ! このバカっ!」

 

 いや、訓練だからこれ……。あと、あたしは弦十郎の娘でもあるから。

 

 あたしは、あるきっかけで自分の任意でフィーネと身体の主導権を交代させることが出来るようになった。

 そして、これがクロノスモードによる魂への負担を克服するための第一歩となる――。

 




フィリアの任意でフィーネとの入れ替わりが可能になりました。
これがクロノスモードによる負担の克服の鍵になる理由はまた次回です。
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