【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします!
「はい、あたしの勝ち。思ったよりも気分が良いものね」
あたしは膝を付いた弦十郎にそう言った。実際はフィーネの突然の出現に動揺したスキを突いただけだが、このくらいしないとこの人に勝てる気がしない。
「ちょっと待て、フィリアくん。今のはだなぁ――」
弦十郎はすぐさま立ち上がり弁解しようとした。
「あら、弦十郎くんったら、娘に負けた言い訳するんだ〜。男らしくないわよー」
「うぐっ、それより、君たちはそんなに簡単に入れ替わることが出来るようになったのか?」
フィーネが再び現れると彼はバツの悪い顔をしながらあたしたちのことに話題を変えた。
「そうよ〜。フィリアちゃんの意思で自由自在に入れ替わることが出来るようになってるわ。魂の一部を共有することでねぇ」
「魂の一部を共有――だとぉっ!」
弦十郎は驚いた声を出す。
そう、クロノスモードの問題点は大きすぎるエネルギーによって、一人分の魂だと潰されかねない程の負荷がかかることだった。
ならば、魂の大きさを二人分にすればどうかという話になる。
フィーネは元々、他人の魂を自分の魂で塗り潰して体を意のままに操ってきた。
それを応用して、あたしとフィーネの魂の境界線のみを共有出来るように組み替えたのだ。
元々、フィーネはこうする事は出来ていたのだが、あたしが彼女を嫌っていたことを知っていたので、そんな提案はしなかった。
確かに人格が混ざりあうなんて嫌といえば嫌だが、今後の戦いで守れた命が守れないなんてことが、また起きるなんてことと比べれば、選択の余地なんてない。
こうして、あたしの身体には二人分の魂が常に宿るという状態になった。
これならクロノスモードにも耐えられるかもしれない。
実戦で試さないと、何とも言えないが……。
“理論的には上手くいくはずよ。まさか、フィリアちゃんがこんな提案を飲むとは思わなかったけど……”
「――ふむ、クロノスモードについては、安全性を確保するまでは先走るなよ。はぁ、娘に良いのを貰っちまった……。映画を見る量を増やすか……」
弦十郎は少しだけヘコんでいるみたいだ。何十回も戦ってクリーンヒットしたのが、一撃だけってこっちの方が悲しいわよ……。
「切ちゃん、どうやら私たちのことは忘れてもらったみたいだよ」
「よかったデス。リア姉との戦いを見てたら胃もたれしたデスよ」
調と切歌が嬉しそうにヒソヒソ話している。結構大きな声なんだけどなー。
「では、切歌くん、調くん、少しかっこ悪い所を見せてしまったが、遠慮はいらん! かかってきたまえ!」
「デェェェェェスッ!」
このあと、切歌も調も仲良く吹き飛ばされてしまった。
「忘れるな! 愚者の石はあくまでも賢者の石を無効化する手段に過ぎん! さあ、準備運動は終わりだ!」
「準備運動つっても、おっさんとフィリアが長々と戦ってたから、休憩時間のがなげーよ」
「クリスちゃん、師匠にそんなことを言ったら……」
弦十郎の準備運動発言にツッコミを入れたクリスに対して響は嫌な顔をした。
「ほう、クリスくん。それは悪かった。本番では退屈させないようにしなくてはな」
弦十郎はそう言いつつ、英雄故事のカセットテープのスイッチを押す。この時代になんでカセット?
「うげっ……!」
「責任取れよ、雪音……」
顔を青くするクリスと、ジト目でそれを見る翼。
しかし、何をシンフォギアの強化前に何をやろうとしてるんだろう?
特訓を開始して間もなく、その疑問の答えを彼は話してくれた。
「調くんと切歌くんのユニゾンは強力。だからこそ、その分断が予想される。ギアの特性だけに頼るな! いかなる組み合わせあっても歌を重ねられるように! 心を合わせるんだ!」
ファウストローブを纏ったプレラーティを打ち破った切歌と調がもっとも警戒されることを予測した弦十郎は、どんな組み合わせでもユニゾンが出来るように訓練すべきだと語った。
「絆のユニゾンということね……」
「ふむ、私とフィリアも連携で押し切れそうだったしな」
正確には装者ではないあたしは歌を歌わないのでユニゾンとは言えないが、錬金術を彼女たちの技と組み合わせることで火力をかなり上昇させることに成功していた。
「じゃっ、頑張って」
あたしは手を振って、研究室に戻ろうとした。エルフナインと新発売のチョコレートでも食べながら研究に戻ろうっと……。
「ちょっと、フィリア。自分だけ帰るつもり?」
そんなあたしをマリアが呼び止める。
「だって、あたしは装者じゃないし……。邪魔したくないから」
「いや、錬金術師のフィリアくんには仮想パヴァリアの幹部として実戦訓練に付き合ってもらおう。今、エルフナインくんに確認したら一人でも今日中には強化の準備は終わりそうだとのことだ。それなら、君には装者たちの戦力アップに貢献してもらった方がいい」
弦十郎はエルフナインにまで確認してあたしを装者たちの特訓に付き合わせようとした。
まぁ、この子たちの戦力アップは必要だし、少しは付き合ってあげようかしら。
「わかったわ……、さっさと始めましょ。モグモグ」
「あー、フィリアちゃん。それいいなー」
「ん? 一つ食べる?」
あたしがチョコレートを食べてエネルギー回復をさせてると、響が羨ましそうな顔をしたから一つ渡した。
「ありがとー、よしっ頑張るぞー!」
響がやる気を見せたところで特訓が始まった。
「ほら、また動きが雑になってるわよ。ここを突かれたら、終わっちゃうでしょ」
あたしはクリスとマリアの連携のスキを突いて攻撃する。
「くっ――。お前、容赦ねぇな……、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ……、武術、剣術、錬金術の三通りで攻撃できるから、近距離、中距離、遠距離すべてにスキがない……」
二人は膝を付いて息を切らせている。やはり最初から切歌と調みたいには行かないわよね。
「お互いに遠慮しすぎよ。合わせるってそういうことじゃないでしょ? 信じなきゃ、仲間なんだから」
そう言いながら、あたしは火球を二人に向けて放つ。
「ちっ、話しながら攻撃してくんな!」
「敵は不意打ちくらい幾らでもするわよ」
こんな感じで一通り装者たちに付き合い、弦十郎と共に彼女らがボロボロになるまでひたすら訓練した。
その甲斐あって、多少の問題点はあるものの装者たちのコンビネーションは格段に良くなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
強化版のシンフォギアが完成した次の日、クロノスモードによる足の治療を受けたステファンとその姉のソーニャがバルベルデ共和国から日本に来た。
時を巻き戻すという治療の経過を記録することが、彼の治療をするときの条件だったからだ。
彼らはクリスとの面会を求めていたので、バルベルデ大使館で彼らと会うこととなり、あたしとクリスは大使館に向かった。
そこを強襲してきたのはカリオストロとアルカノイズ。
装者たちとあたしは、総がかりで戦うが、マリアとクリスを除いて亜空間に閉じ込められてしまう。
しかし、クリスとマリアは特訓の甲斐あってユニゾンによりカリオストロを撃破。
あたしたちは勝利をおさめたのであった。
「特訓の成果が出たみたいね。クリス、マリア」
あたしはクリスとマリアに声をかけた。イグナイトも問題なく起動してたみたいだし……。
「へっ、そっちも無事だったみてぇだな」
クリスとあたしは拳を合わせた。何、この挨拶……? 最近、弦十郎から変な映画借りたのかしら?
そして、あたしたちは、ソーニャとステファンを空港から見送って帰路に付くことになった。
あたしはその間、調が浮かない顔をしていることが気になっていた。どうしたのかしら?
「ねぇ、リア姉。今日、お菓子の作り方教えてくれる約束だったでしょ? 家に行ってもいい?」
調は思い詰めた顔であたしにそう言った。何か悩みがあるのね。この子がこんな顔をするときは必ず何か言いにくいことがあるときだった。
「そうだったわね。じゃあ、材料を一緒に買いに行きましょうか。切歌にプレゼントするんでしょ? まったく、仲が良いわね、あなたたちは」
「調が私のためにデスかー? 嬉しいデェス!」
切歌があたしの言葉に顔を綻ばせる。とりあえず、期待を裏切ると悪いからケーキは作っておきましょう。
「ええー、良いなー。良いなー」
「意地汚ぇぞ、バカ」
羨ましがる響にクリスがツッコミを入れる。はいはい、作るわよ。あなたの分も……。
ということで、あたしと調は一緒に帰ることになった。
家に帰る前にスーパーに寄って買い物を済ませるとようやく調が口を開いた。
「リア姉……、ありがとう。話を合わせてくれて」
彼女は暗い表情であたしが話を合わせたことについてお礼を言った。
「マリアや切歌には言いにくいことがあるんでしょ? ほら、誰にも言わないから言ってみなさい」
相談相手にあたしを選んだということは、彼女の抱えてる事情は特殊なモノだということは察しがつく。
あたしは調に理由を話すように促した。
「ユニゾンの訓練が上手くいかないの……。切ちゃんは誰にでも合わせられるのに、私は切ちゃんとしか合わせられない……。このままだと私は、みんなの足を引っ張る」
調はぽつりぽつりと話し始めた。他の装者と上手く合わせることが出来ないこと、そもそも打ち解けることも難しいということ……。
その悩みは同じ連携の訓練をしているマリアや切歌には言い出し辛かったようだ。
「リア姉も昔は私と同じで壁を作るタイプだったから何か分かると思って……」
「えっ? あたしって、壁を作ってたっけ?」
調の発言に驚愕してあたしは聞き返してしまった。
「切ちゃんが話しかけるまでは怖い印象だった。マムにも噛み付いてたし……。アナ姉は陽気な人だったから誰とでも仲が良かったけど……」
そういえば、やたら絡んできたマリアとその妹のセレナ以外には友達が居なかった気が……。
確かに、この身体になってからは翼と腹を割って話せるまで二年以上かかったし、クリスと友達になっても上手く喋れなかったりしたから、それは自覚してたけど……。
あれっ? あたしって人形になる前からコミュニケーション下手だった?
「でも、今はクリス先輩や響さん、そして翼さんとも仲良くしてるし……。連携も取れてる。どうやったら、私にもそれが出来るようになると思う?」
調は真剣に悩んで居るみたいだった。なるほど、他人と合わせるか……。
「調って、切歌が好きでしょ?」
「えっ? うっうん、好きだよ。切ちゃんのことは……、誰よりも……」
調は顔を少しだけ紅潮させて頷いた。やっぱり、この子は素直ないい子ね……。
「多分、切歌とだけ合わせられるのは、彼女になら自分を曝け出しても受け入れて貰えるって安心感があるからなのよ」
「安心感……」
他人というのは何を考えてるか分からない、得体のしれないものだ。バラルの呪詛が撒かれる前は拒絶が怖いとか、そういう感情もなかったのだろうけど、今は――。
「あなたは優しい子。他人を傷付けないために気を使っているから……、行動を起こすのに遠慮をしてしまうの」
「そう、それが私の悪いところ……」
調はしょんぼりした表情であたしの言葉にそう返した。
「別に悪くはないわよ。むしろ、良いところだと、あたしは思ってる」
「良いところ? だって、そのせいで私は――」
「そうよ、気を使わないバカよりも良いに決まってるわ」
これは本心でそう思っている。優しい彼女は他人に土足で踏み込めない奥ゆかしさがある。
それは、欠点でなく美徳だ。否定する要素ではない。
「でも、このままじゃ、私は……」
「そうね、すぐに打ち解けるのは無理かもしれないけど……。ちょっと戦いから離れて考えてみようかしら?」
「戦いから離れる?」
「ええ、戦いから離れるの。待ってて、良いことを考えたから……」
あたしは調にそう断って電話をした――。
そして――。
「どうした、フィリア。それに月読も……。お菓子を作るんじゃあなかったのか?」
あたしは翼を家に呼び出した。調の悩みを少しでも解決するために……。
「翼、お願い。何も聞かずに調と一緒にチョコレートケーキを作ってくれない? それがこの子のためになるから」
「はぁ? ちょっ、チョコレートケーキ? なんで私が?」
あたしは翼と調に力を合わせてチョコレートケーキ作りをさせることにした。
ちょっとでも距離が近づくと良いけど……。
次回は翼と調に料理をさせてみせようという、しないシンフォギアっぽいエピソードを入れようと思ってます。
面白く出来るように頑張ります!