【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
今回はチョコレートケーキ作りからスタートです。
作者は料理はからっきしなので、多少は大目にみてください。
それではよろしくお願いします!
「ということで、調がチョコレートケーキを切歌に作ってあげたいってことだから、翼、お願いね」
「むぅー、これがホントに月読のためになるというのであれば、それもやぶさかではないが……。私は料理は――」
「翼さんの太刀捌きは見惚れるほどの美しさだった。きっと料理も上手ですよね? 私が足を引っ張らないようにしないと」
「えっ、いや……。その……、私は料理は人並みというか……」
キッチンで材料を出し終わった段階ですでに目が泳いでいる翼と、彼女のハードルを上げている調。
人並み? 見栄を張らないほうが良いと思うけど……。
こうして、二人の調理が始まった。
「ええーっと、前にリア姉に教わったときは、最初に敷き紙にココアパウダーを振ってた。翼さん、ココアパウダーを取ってください」
「ココア? 月読、のどが渇いたのか?」
「えっ? クスッ、翼さんも冗談を言うなんて知りませんでした。今のは切ちゃんみたいで可愛いと思います」
翼の天然が早速炸裂して、調はクスリと笑って彼女を見た。どうやら、冗談で調の緊張をほぐそうとしていると解釈されたようだ。
「わっ、私が暁みたい……。可愛いだと?」
翼は顔を真っ赤にして照れていた。なんか、新鮮なリアクション……。
「チョコレートとバターを溶かさないと……」
「ん? 甘いものを作るのだから砂糖も入れるだろ?」
翼はゴソゴソと容器を取り出しながらそう言った。
「チョコレートが元々甘いから、大丈夫ですよ。翼さん、あと、それは食塩です」
「へぁっ? そっそうだったな。うっかりしていた」
調のツッコミで翼は自分が食塩の容器を持っていることに気付いたらしい。
一人で作らせたらこの時点でアウトでしょうね。
「ふふふっ、ありがとうございます。私のことを和ませようと気遣ってくれて……。翼さんって、もっと固い人かと思ってました。意外とひょうきんな人なんですね」
調はニコニコして、翼の顔を見る。翼の新しい一面が新鮮だと感じてるみたいだ。
「――ひょうきん? それでは、私が立花みたいではないか……。そうだ、チョコレートを溶かすんだったな。ほら、火は危ないからな、私に任せるが良い」
翼はフライパンをガスコンロの上に置いて、火をかけて、その上に安売りで大量買いした、アルファベットチョコレートをばら撒いた。いや、翼の方が危ないわよ。
「えっ、翼さん……、チョコレートは湯せんで溶かさなきゃダメですよ」
「湯・せ・ん? ――ああ、そうだったのか。湯を沸かせばいいんだったな」
フライパンの上で油分が分離したり、焦げてグチャグチャになったチョコを翼は焦りながら、流し台に流そうとしていた。
前途多難ね……。でも、いい感じだわ……。
その後、湯を沸かした翼は、お湯の中に直接チョコレートを放り込む。一体、幾つのチョコレートが犠牲に……。
調はいよいよ気が付いたみたいだ。
「あの、もしかして翼さんって――料理が出来ないのですか?」
「うっ――すっ、すまない。月読……、私は見栄を張ってしまっていた。料理はまったくダメなんだ……。出来れば、色々と教えてほしい」
翼は観念した顔をして調に頭を下げた。風鳴翼という人間も昔とは随分と変わったと思う。
そもそも、調と一緒にキッチンで料理をするようなタイプではなかった。
「いえ、良いんです。翼さん。私が勝手に翼さんが料理が出来るって勘違いしただけですし、言い出し辛い雰囲気を作ってしまいました。私こそ、ごめんなさい」
調は翼にペコリと頭を下げて謝った。やはり、彼女は素直な良い子だと思う。
「そうか……、月読は優しいな。では、不出来な私にご教示お願いする」
「はい。リア姉みたいに上手く教えられるか分かりませんが、やってみます」
そこから翼は調に教わりながらチョコレートケーキ作りに励んだ。
調は教え方が上手く、翼も不器用なりに頑張ったので、何とか不格好ながらもケーキが完成した。
「すまない、月読……、私が至らないばかりに……」
「あむっ、もぐもぐ。――うん、とっても美味しい。ほら、翼さんも食べてみてください」
調はニコリと微笑んで、切り分けたチョコレートケーキを翼に手渡した。
「――あむっ……。おっ、美味しいわ。甘過ぎずに、フワッと香ばしい香りがして、温かくて優しい味……」
翼が珍しく女の子らしい口調に戻って感想を口にした。
顔をほころばせちゃって……。なんだか、翼と出会った頃を思い出すわ……。
「翼さんと一緒に頑張ったから、思ったとおりの味が出ました」
「そんなこと……。私は月読の足を引っ張っただけだ」
「いいえ、翼さんと心を込めることが出来たから、美味しいケーキが焼けたのだと思います。これなら、切ちゃんにも喜んで貰えます」
調は随分と翼と打ち解けて話しているようだ。
「うぇぇっ? そういえば、暁にプレゼントするんだったな。ちょっと恥ずかしいな、それは」
翼は照れくさそうな顔をして、そう答える。しかし、達成感はあったみたいで穏やかな表情だった。
「よく分からんが、これで良かったのか? 月読にケーキの作り方を教わっただけなんだが……」
「オッケーよ。思った以上の効果だったと思うわ。明日の訓練が楽しみね。わざわざ、ありがとう」
あたしは翼にお礼を言った。今日の彼女には助けられたわ。いろんな意味で……。
そして、翼は一足先にバイクに乗って帰って行った。
キッチンに戻ると、チョコレートケーキを箱に詰めてラッピングに苦戦している調がいた。
「どうだったかしら? 翼と一緒にケーキを作ってみて」
あたしは調にケーキ作りの感想を聞いてみた。
「不器用なのは私だけじゃなかった。それに、この人はこういう人だって、勝手に決めつけてた」
調はこの短い時間で翼の違った一面を見た感想を口にした。誰だってあんな翼は想像しにくいと思う。
「みんな誰かに優しさを与えたり貰ったりして助け合っている。私も翼さんの助けになれたし、助けられた。だから、その優しさを大事にしたい」
調の目からはさっきまでの自信のなさが消えていた。大切なことに気付いたみたい。
あたしはそれに気付くのに何年もかかったのに、この子はすぐに気が付いた。それが、あたしはたまらなく嬉しかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「月読! 頼んだぞ!」
「はいっ! 翼さんっ!」
翼と調の連携が冴え渡る。切歌とのユニゾンと比べても遜色ない破壊力だ。
「――くっ、降参よ……。まったく、随分と仲良くなっちゃって……」
あたしは一本取られて、両手を上げた。たった一日で見違えるほど成長した。
翼のリードを信頼して頼っている……。
「これで全員がいかなるパターンで分けられたとしても連携が取れるようになったな」
「ええ、戦力の増強としては申し分ないわ。ギアペンダントのメンテナンス不足でマリアとクリスが一時的に出撃が出来なくなっちゃったけど……」
あたしはギアペンダントが反動汚染に侵されたので、その除去をしなくてはならない状況を伝えた。
「八紘の兄貴から連絡があったが、フィリアくんの言っていた、神社本庁の調査から地上のオリオン座についての情報がわかったらしい。どうやら神出づる門の伝承と密接に関わっているようだ」
弦十郎はあたしの提供した情報から進めた調査でパヴァリア光明結社の狙いがかなり絞られたらしい。
「なるほど、この
というわけで、あたしと装者たちは調神社に向かうこととなった。
結論から言うと、調神社の伝承は神の力のことと見て間違いなさそうだった。
レイライン上にある調神社を含む周辺7つの氷川神社に描かれた鏡写しのオリオン座に加えて、ここで受け継がれている伝承で、鼓星の神門というものがあり、この門より神の力が出づるとい伝えられているようなのだ。
これがパヴァリア光明結社の狙いだと考えてほとんど間違いないとあたしたちは結論付けた。
文献から一つでも多くの情報を手に入れようと躍起になっていたら、気付けば夜になり、あたしたちは、神社に一泊することになった。
その夜である。錬金術師が新川越バイパスを猛スピードで北上しているという連絡を受けたのは……。
付近住民への被害の拡大を防ぐために、機動力の高い調と翼を先行させて、これを食い止める作戦を開始した。
錬金術師のプレラーティと接触した調と翼は見事なユニゾン攻撃でこれを撃破。勝利を飾ったのである。
これで残す敵はアダムとサンジェルマンだけのようね……。
パヴァリア光明結社との最終決戦はどうなることやら……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
後日、ブリーフィングでパヴァリア光明結社の神の力への対抗手段は《神殺し》の力だという話題となった。
フィーネがあたしと入れ替わり、ガングニールにその力が宿っているのではという説を話した。
アダムが風鳴機関に二度の黄金錬成を仕掛けたのもその隠匿が目的ではないかと彼女は読んでいた。
そんな話が終わり、あたしたちはみんなで食堂に来ていた。
「ガングニールには、そのような伝承はないみたいだが……」
「あたしもそれは知っている。でも、超火力でもびくともしなかったヨナルデパズトーリを一撃で粉砕した事象は哲学兵装のような力が働いたとしか思えない……」
あたしと翼はガングニールの力について話していた。
そんな折である。自分の食事を持って響がこちらにやってきた。
そのタイミングで楽しそうな顔をした切歌が口を開く。
「皆さんに提案デェス! 2日後の13日、響さんのお誕生日会を開きませんかー?」
切歌は響の誕生日を祝おうと提案した。この子も変わらないわね。
「ふーん、響の誕生日会ねー。良いんじゃない」
「さっすが、リア姉デェェス! ノリがいいデスなぁ」
切歌はニコニコして、あたしの手を握った。
「まぁ、やるのは良いけど、気は引き締めないとね。ギアの反動汚染除去の関係で戦えるのがあたしと切歌と響だけなんだから」
「そうデスけど、ちゃんとした誕生日は大切デス! きちんと祝わなくては!」
切歌がそう力説する。試験管で培養されたあたしも適当に誕生日を決められた切歌も自分の仮の誕生日しか持ってない。
だから、昔からフィアナを含めた三人でちゃんとした誕生日の人を祝うのことが恒例になっていたのだ。
「フィリアちゃんも、切歌ちゃんも、私のために……、嬉しいよ。でも、こんな時だし……。戦えるのは私たち三人だけだし……」
響は手を振って遠慮するような動作をした。
「そうだぞ、お気楽二人組! 困らせるな! 特にフィリアはいい歳なんだから止める立場だろうが!」
クリスがあたしと切歌を叱責する。そんなのわかってるわよ。仕事はきちんとするつもりだし……。
「別に、お気楽でいいじゃない。気を張ってガチガチに緊張してるよりはマシでしょ。あたしはともかく切歌は――」
「リア姉、大丈夫デスよ。私のせいで響さんを困らせたみたいデスし……」
「切歌……」
なんとも言えない空気が流れてこの場は解散となった。
――その夜である。神の力を巡るとてつもない戦いの火蓋が切って落とされたのは。
緊急通信により、あたしは響と切歌とともに現場に急行した。
クロノスモード、そして、ラグナロク……。ゲイル博士が仕込んだ、神の力を手に入れるための機能……。
あたしはこの機能の出番が来るかもしれないと、密かに予感していた。
“フィーネ、もしものときは――”
“ええ、躊躇うことはやめなさい。中途半端な躊躇いは事態を悪くするだけよ――”
空から見える地上にはオリオン座が光り輝いていた――。
いよいよAXZ編のクライマックスバトルが近づいて来ました。
次回もよろしくお願いします!