【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それではよろしくお願いします。
「ここは……」
意識を回復したあたしは見知らぬ部屋で横になっていた。
「フィリア! よかった! あなたは助かってくれた。よかった……」
涙を流しながら翼があたしに抱きつく。『あたしは』助かった――。
でも奏は……。
「ごめんなさい。翼、あたしがもっと早く、ちゃんと力を使えてれば……、奏は……。あたしがあの子を、あたしが……」
哀しいという感情はあるのに一滴も流れない涙に苛立ちながら、あたしは翼に謝罪した。
たったの二か月だが、何の思い出もないあたしにとっては彼女と共にいた日々は人生そのものだった。
そして、翼にとってはあたしとは比較にならないくらい……。
「ううん、私も同じよ。私がもっと強かったら、もっと力があれば……、奏は死ななかった」
翼も自分の力の無さを悔いていたようだった。目には絶望とともに闘志も宿っていた。
「そうね、翼……、あたしたちは強くならなきゃね。奏が救うはずだった命も救うために。そして、もう二度と《ノイズ》なんかに負けないために……。そうじゃなきゃ、あの子が浮かばれないものね」
あたしを突き動かすのは奏を失った《哀しみ》と《ノイズ》に対する《怒り》。
奏があたしに残してくれた、蘇った《感情》。
「うん、私も強くなる。奏が倒すはずだった敵をすべて断ち切れるような、一振りの剣になってみせる……」
翼があたしの言葉に同調する。
この子、纏う気配が変わったわ……。これは良いことなのかしら……、それとも……。
そして、あたしはある違和感に気付いた。
「ところで、翼? あたしの右腕って千切れたはずなのに、どうして腕があるの? 了子が直してくれたの?」
あたしは普通に両腕があることに気付いて今さら驚いた。
「そっそれは、私があなたの身体を抱えようとしたら……、その、急に光に包まれて右腕が再生しだしたの……。櫻井女史によれば、あなたにはエネルギーを消費することでオートで再生する機能が付いているらしいわ。そのせいでエネルギーがほとんどゼロになったみたいよ」
翼の説明を聞いて、ますます自分の化物っぶりがわかって、そんな化物のくせに大切な人ひとりを守れなかった歯がゆさがキツかった。
そんなとき、部屋の扉が開き、弦十郎が入ってきた。
「フィリアくん、目を覚ましたと聞いた。その、大丈夫か?」
彼は哀しそうな顔をしてあたしを見ていた。
大丈夫か? ですって……。
「大丈夫なはずないわよ。でも、前を向かなきゃ、あたしは奏に顔向けできないじゃない……」
あたしはそう言って、ベッドから下りて立ち上がる。
「でも、身体の方は完全に回復したわ。これだけがあたしの取り柄だもの。今からだって《ノイズ》と戦える。司令、あなただってそうしなきゃ、『常在戦場』って言葉があるでしょ」
あたしは弦十郎の腰を叩いた。
「んっ、ああ。まあな」
「常在戦場……」
なんだか、翼の反応が変だったけど、あたしはその日のうちに弦十郎と共に家に帰った。
そうよ、あたしには疲れない身体と、あり余ったエネルギーがある。
もうこれはあたしだけのモノじゃない。あの子との約束と翼の未来を守るためのモノなんだ。
後で聞いた話だが、ライブ会場の惨劇で亡くなった人の数は12000人以上だったらしい。さらに聖遺物の実験は成功したらしいのだが、起動した《ネフィシュタンの鎧》という聖遺物は何者かによって強奪されたそうだ。
あたしはこの日の出来事に何者かの悪意が絡んでいるとしか思えなかった。
その日から翼は人が変わったように鍛錬をし始めた。
あたしもそれに付き合ったが、彼女の気迫は凄まじく、とてつもないスピードで強くなった。
まるで鍛えられた一振りの剣のように――研ぎ澄まされた、鋭い力だった。
さらに彼女は歌うことを止めなかった。アイドルとして活動し、国民的な人気者になったのだった。
あたしはというと、新しい錬金術による力に目覚めたのは良いものの、燃費が驚くほど悪く、強力な技を連発すると強制的に機能が停止するということがわかった。
それなので、気休め程度のエネルギー源だが、あたしは常に何らかの菓子を携帯することとなったのである。
そして、もう一つ。あれから約一年が経って、あたしは高校に通うことになった。翼より一学年下で……。
私立リディアン音楽院高等科に入学することになった。
翼のプライベートのケアは主に緒川が行っているのだが、さすがに女子校は無理ということで、あたしに白羽の矢が立ったのだ。
こんな体だし今さら学校なんか行きたくはなかったが、奏に『翼を頼む』と託されている私は断ることが出来なかった。
そこからは苦痛というか、痛みを感じないのに頭痛に悩まされそうになる日々だった。
この見た目で高校生というのはかなり無理があるのか、小柄な身長と異常に白い肌のせいで、やたらと子供扱いしてくる子たちが寄ってきた。
さらに風鳴翼が思った以上に有名人になっていたので、同じ風鳴の姓で彼女の従姉妹というあたしは好奇な目でも見られてしまった。
そんなわけで、あたしの高校生活は割とストレスが溜まるものだったのである。
まぁ、一年も通えばようやく落ち着いてきたのか、周りが飽きてくれたので、《ノイズ》との戦い以外は平穏な毎日になっていた。
しかし、翼の心の傷は依然として深く刻まれていて、人形のあたしでは彼女を癒やすことが出来なかった。
それが、あたしには堪らなく悔しかった――。
再び春が来て、あたしは二年生になった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「じゃあ、先に行ってくるから」
「ああ、気をつけるんだぞ!」
あたしはすでにもう一年以上着た同じサイズの制服で身を包み、通い慣れた道を歩く。
「何よあれ……」
あたしは自分と同じ制服を着た生徒の奇怪な行動に注意を向けた。
黄色の髪の女の子が木に登って、降りられなくなったであろうネコを助けようとしていた。
まったく、無茶するわね。どっかで見たようなお人好しのような顔しちゃって。
あたしは特に知り合いでもないので放っておくことにした。
「ありゃっ! きゃあっ!」
しかし、黄色の髪の子はネコを抱きかかえたまでは良いが、そのまま地面に向かって一直線に落ちてしまう。
「はぁ、仕方ないわね」
あたしは瞬時に落下点まで移動して彼女を受け止める。まぁ、このくらいなら常識の範囲内の動きでしょう。
「ふうぁっ! えっ、わっ私、あれ?」
「ほら、自分で立てるでしょ」
混乱している彼女を地面に立たせて、あたしは学校に向かおうとする。
「ええっと、助けてくれてありがとう! もしかして中等科、いや小等科の子なのかなぁ? すんごい力持ちなんだねー。おおっ、なんとびっくり超美少女だっ!」
黄色の髪の子はオーバーなリアクションでネコを抱えながら忙しく言葉を捲し立てる。
「あたしはあなたと同じ高等科よ。大体、小中は校舎が全然別のところにあるでしょ。まさか、入学説明をまったく聞いてなかったの?」
小学生扱いされて、ついあたしは面倒くさそうな子に反応してしまう。
「ありゃりゃ、ごめんごめん! まさか、そんなに可愛い感じで高校生とは思わなくってさー。でも、人は見かけによらないって言うし、こりゃあ1本取られちゃったかなーって」
「……もういいかしら?」
よくしゃべる彼女にうんざりしたあたしは今度こそ学校へ向かおうとする。
「あー、ちょっと、ちょっとだけ待って! せめて、助けてもらったんだから名前だけでも教えて! 私は立花響! 15歳、趣味は人助けで、好きな物はご飯アンドご飯!」
あたしの名前を聞いた上で、聞いてもないのに自己紹介する彼女。ふーん、やっぱり新入生か。
なんか、名前を言わないとずっと付きまといそうね。
「風鳴フィリアよ……。これでいいかしら?」
「ええっ! 風鳴ってもしかして翼さんの!?」
思ったとおり響はあたしの姓に食いつく。みんなそうだったし、仕方ないわね。
「そう、翼はあたしの従姉妹。もう十分よね? 早くしないと遅刻するわよ」
手短に答えてあたしは歩き始めた。
「わぁーっ、すごい! フィリアちゃん、翼さんと親戚なんだねー。私、翼さんに憧れてこの学校に入ったんだー」
これ以上付き合いきれないので、あたしは無視して学校に急いだ。まったく、本当に遅刻するところだったわよ。
それにしても、人助けが趣味か……。あの子みたいなお人好し、他にも居たのね……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その日の夜、あたしと翼は《ノイズ》出現による出動要請がかかった。
すでに一課が応戦しているが、現代兵器では《ノイズ》への効果は薄い。
ヘリコプターで現場に向かい、《ノイズ》を確認する。
なかなか大きな《ノイズ》も何体かいるじゃない。
以前なら苦戦してたわね――。
「行くわよ、フィリア」
「ええ、翼……、油断大敵よ」
「ふっ、言われるまでもない!」
あたしと翼はヘリコプターから《ノイズ》たちの正面へ飛び降りる。
「コード、ミラージュクイーン……」
「Imyuteus amenohabakiri tron……」
あたしはミラージュクイーンを構え、翼はシンフォギアを纏う。
『翼、フィリア、まずは一課と連携して、相手の出方を見ろ』
「いえ、私とフィリアだけで十分です」
「ちょっと、翼!」
あたしが翼を諌めようとしたが、彼女は聞く耳持たずに敵陣の真っ只中に駆け出す。
――逆羅刹――
翼は逆立ちと同時に横回転し、展開した脚部の刃でどんどん《ノイズ》を切り裂いていく。
――千ノ落涙――
翼は宙に舞い上がり、空間から大量の剣を具現化し、上空から落下させて、《ノイズ》を広範囲で殲滅する。
――蒼ノ一閃――
大型化させたアームドギア(シンフォギアの主武装)を振るい、巨大な青いエネルギー刃を放ち巨大な《ノイズ》を一刀両断した。
このように多彩な強力な技を使い、翼は一瞬で大型も含めて大量の《ノイズ》を殲滅する。
「はぁ、強くなったのはいいけど先走りすぎよ、翼……。コード、マナバースト……」
ミラージュクイーンの輝きが増して、あたしの目は《マナ》が視覚できるようになる。
――
ミラージュクイーンを上段に構えて振り下ろす瞬間に雷を帯びた刃が降り注ぎ、広範囲の《ノイズ》を貫き殲滅する。
――
ミラージュクイーンの出力を最大限に上昇させて剣を振ることで、銀色のエネルギーの塊を飛ばし、大型の《ノイズ》を一撃で葬った。
こうして、あたしと翼はノイズを全て殲滅した。
まったく大技は燃費が悪いったらありゃしないわ。
あたしは持ち歩いている板チョコを一枚平らげて消費したエネルギーを回復する。
それにしても、最近の翼は……、ちょっと話し合う必要がありそうね。
司令室に向かう最中にあたしは翼に話しかける。
「翼、あなた、最近スタンドプレーが目立っているわよ。ちゃんと司令の意見を聞かなきゃ……」
「敵を一秒でも早く倒すことより優先することは何もない。それが防人としての使命だ。話はそれだけか?」
翼はそういうと、早足で先に行ってしまおうとする。
「ちょっと、待ちなさい。二人で頑張るんでしょ。一緒に戦わなきゃ――」
「それじゃ、遅いんだ! 奏の分まで私は敵を倒さなくてはならない――」
「翼! まだ話は……」
翼は大声を出して、そのまま去っていった。
「ダメね。あたしは……。奏の代わりにはなれるはずないし。人形の風鳴フィリアじゃ、あの子の心を癒せない……」
翼……、あなた、あれからずっと自分を追い詰めているのね……。
あたしは彼女の心の闇を振り払うような光が現れることを願わずにはいられなかった。
フィリアの新技のネーミングセンスは許してください。
二人で鍛練を積んだという設定なので技の発想は似た感じにしています。