【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それでは、よろしくお願いします!
『フィリアくん、良くやってくれた。君が居なかったら今ごろ日本は――』
「やめてちょうだい。あたしは仕事をしただけよ。それよりもこの国を守ってくれたのは――」
あたしは対立していたサンジェルマンたちが、反応兵器からこの国を守ってくれたことこそ称賛されるべきだと弦十郎に、言いたかった。
『ああ、君の言うとおり理想のために生き方を貫いた錬金術師たちもだな……。後で改めて礼を言いたいと伝えておいてくれ』
彼もそれは理解しているみたいで全て言わずともそれは通じた。
「じゃあ、そういうわけで。後で目一杯、お礼を言われると思うわ」
「そんなものの為にやったわけじゃないわ……」
あたしの言葉にサンジェルマンは首を振る。そりゃあ、あなたはそうだろうけど……。
「だとしても、よ。あたしたちは言いたいの、あなたたちに感謝の気持ちをね」
「まったく、最後まで相容れられないな。お前たちとは。――ふぅ、仕方ない。お前の顔を立ててあげるとしよう」
彼女はやれやれという口調で返事をした。なんだろう……、今の彼女は――。
「いい顔をしてるワケダ」
「サンジェルマンが笑ってる……」
プレラーティとカリオストロはサンジェルマンを見て感想をもらした。
「――笑ってなどいない! 断じてない!」
サンジェルマンは顔を真っ赤にして、手をぶんぶん振って否定する。
この人にもこんな一面があったのね。
「じゃあ、これから――」
あたしがそう口を開いた瞬間に通信が再び入る。
『フィリアくん、事態が急変した。アダム=ヴァイスハウプトがその力を開放して装者たちを――』
弦十郎曰く神の力の強奪を企んだアダムだったが、結局響の《神殺し》の力によって阻まれる。
しかし、それがアダ厶の逆鱗に触れて彼はすべての力を開放して響たちに襲いかかっているのだ。
現在、彼女たちは劣勢であり、あたしたちに応援を頼んだという状況なのである。
「――クロノスモードは時間切れ……。でも、戦えないわけじゃない……。モグモグ」
「それで、エネルギーの回復ってずるくない?」
カリオストロはあたしがチョコレートをかじっているのを見て苦笑いする。
我ながらお手軽だとは思っている。この身体の最もよく出来てる機能はどう考えてもこれだ。
「私たちのアホな局長に一矢報いることが出来るワケダ」
プレラーティは殺る気満々の凶悪な笑みを浮かべる。根に持ってるわね……。
「私たちの誇りを踏みにじったアダム=ヴァイスハウプトだけは許せない。立花響たちだけには任せるつもりはないっ」
サンジェルマンもアダムには怒りの感情があるみたいで、あたしたちは四人揃って響たちの元に向かうこととなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
到着したとき、響が反応汚染に侵されて倒れていた。
「フッフッフッ……、動けないようだな、神殺し。ここまでだよ、いい気になるのも」
「くぅっ、ああっ!」
響は苦悶の表情を浮かべている。急ぐわよ――。
「終わりだ! これでっ!」
アダムの口から響に向かってビームが放たれる。響はやらせないわっ!
――大爆発が起こり、周囲は爆煙に包まれる。
「ごめんなさい。ちょっと遅くなったわね……」
響の前でバリアを張ったあたしが、彼女に話しかける。間一髪だったわ……。
「――あはっ、フィリアちゃん。来てくれたんだ」
響は横たわりながらも笑顔をこちらに向けた。どうやら、響以外の装者たちもイグナイトの力を限界まで使って満身創痍みたいね……。
「統制局長、あなたには落とし前をつけてもらおう」
「年貢の納め時というワケダ」
「今度はあーしたちが相手をするわ!」
サンジェルマンたちもファウストローブを身に纏い。それぞれの武器を構えて臨戦態勢を取る。
「フハハハッ、忘れてるようだ。どうやら君たちは! その理由を! 僕がなぜ局長なのかという!」
アダムはそう言い放つと、全方位に向けて無差別に拡散するビームを出してきた。
無茶苦茶するわね……。この男……。
「ふん、借りをようやく返せるワケダ!」
プレラーティがけん玉でアダムを殴りつける。
「利子つけて
アダムがよろけた所をカリオストロが顔面をアッパーで殴り飛ばして、更に腹に連打を加えた。
「支配に反逆する革命の咆哮をここに!!」
そして、サンジェルマンが浮き上がったアダムに銃弾を叩き込んだ。
なんて、連携……。ユニゾンにやられた彼女たちが戦い方を学んだとでも言うのかしら? さすがは歴戦の錬金術師……。
「無駄なことだよ。何をやってもね」
しかし、アダムは信じられないスピードでサンジェルマンたちの背後を取り、強靭な拳を振り下ろした。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
「――プレラーティ、カリオストロ! ――なっ!」
彼女たちは地面にクレーターを作るほどの衝撃で叩きつけられ、倒れてしまう。
「あとは、君だけか。フィリア……」
「怠け者のあなたがこれだけ荒ぶるなんて、思わなったわ」
あたしは響を庇うように立って、構えをとる。
「案外、触発されたのかもしれないね。働き者の君によって。フィリア、ならないか? 僕のモノに」
アダムは手をあたしに向かって差し出して、そんなことを言う。
「はぁ、唐突に愛の告白? 何考えてんの?」
あたしは彼の言葉に訝しい顔をした。本気でこの男が何を考えてるのかわからない。
「そうさ、使える人形だからね。神の力を操れる君だけは。戦力になる。奴と一戦交えるのに。共に支配しようじゃあないか。完全な存在になって」
アダムはあたしを仲間に勧誘しているようだった。ホントに大馬鹿者よ。この男も……。
「あたしが惚れたのは、不完全でも、自分の信じた道を貫いて人を助けるために手を差し伸べ続けるような、そんなお人好しよ。あなたみたいなのに靡くほど、安い女じゃない!」
あたしは彼の目を真っ直ぐに見据えてそう言い放った。
「――ちっ、残念だよ。もう二度と飲めないなんて。君が淹れた魅惑のコーヒーが……!」
アダムが高速で動き、あたしに殴りかかる。あたしは彼の指を掴んで、柔術を応用して投げ飛ばした。
そして、回転しながら彼の顔を思いっきり踏みつける。しかし、その瞬間にアダムの腕が伸びてきた。
「ようやく掴まえたよ。君を! さらばだ!」
アダムに完全に掴まれたあたしは、彼に力を込められて、身体中に亀裂が入った。
くっ、このままではっ……!
あたしが敗けを意識したその時である――。
「てぇぇぇぇいっ!」
なんと、響が鎌を繰り出してアダムの腕を斬り裂いたのだ。あれは、切歌の
「フィリアちゃんをやらせはしないっ! 皆さんの力を借ります!」
なんと、響が装者たちの力を結集して動けるようになっていたのだ。
「いいってもんじゃないぞ、ハチャメチャすれば!」
アダムも驚愕して響を見ていた。
ここからは響の独壇場だった。蒼ノ一閃、禁月輪と装者たちの技を次々と披露しながらアダムを圧倒していた。
しかし、一瞬のスキを突かれて彼女は捕まってしまう。
「してる場合じゃないんだ、こんなことを。こんなところで! 降臨は間もなくだ、カストディアンの。それまでに手にしなければならない。アヌンナキに対抗し、超えるだけの力を! なのにお前たちはぁぁぁぁぁっ!」
――神焔ノ一閃――
あたしは最大火力の炎を刃に纏わせて、アダムの両腕を叩き斬る。
そして、落ちてきた響をあたしは抱きとめた。
「フィリアちゃん、えっと、どうして私を抱きしめてるの?」
「別に他意はないわ。一か八か! あたしの持てる錬成の力をあなたに授けるだけよ。ラピス・フィロソフィカス……。サンジェルマンたちのモノと比べて小さいけど、創ることが出来た、あたしとエルフナインの研磨の結晶……」
あたしは手を開いて小さなハート型の結晶を響に見せた。
「綺麗……、フィリアちゃんとエルフナインちゃんの想いが伝わるみたい……」
響は穏やかな口調でそう溢した。
――黄金錬成――
あたしは響のギア全体を賢者の石によるエネルギーでコーティングした。シンフォギアに未知の力を付与するのは賭けだけど……。
響のガングニールは黄金の輝きを放つ。まるでクロノスモードを使った時のあたしのファウストローブのように……。
「黄金錬成だと!? 何を企んでいる! フィリア!」
アダムは動揺しながら響を襲うが、彼女の動きは先ほどまでとはレベルが違った。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
彼女はアダムの攻撃を見事に躱して、右拳で強力なパンチを放つ。
そして、これが起点となり、響の凄まじい連打が始まった。
「オラオラオラオラオラオラオラ! オラオラオラオラオラオラオオラオラ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
響のラッシュによって、アダムは段々宙へと舞い上がり、ドームの天井が近づいてきた。
「はぁぁぁぁぁっ!」
そして、響の怒涛の攻撃でついにアダムは天井をぶち抜かれて空高く吹き飛んだ。
――TESTAMENT――
最後は響が両腕を合わせて、フルパワーをアダムの腹に直接ぶつけて、彼に大穴を作ったところで勝負は決まった。
「砕かれたのさ、希望は今日に。絶望しろ、明日に……。未来に! フフフフッ、ハハハハッ、ハーッハッハッハッハ!」
最期にアダムは呪いのような言葉を吐いて爆発してしまった。まったく、あの男は何を知っているというの……。
“カストディアン、アヌンナキ……、まさか……”
“ん? どうしたの? 何か?”
“いや、なんでもないわ。それよりも響ちゃんが”
フィーネの声で響が落下してくることにあたしは気づいた。
「まったく、今日一番の功労者が転落死なんて、シャレにならないわよ」
あたしは響を抱きとめて、そう言った。
「えへへ、私、フィリアちゃんの料理が食べたい……」
「任せて、とっておきを作ったげるわ」
あたしは勝利の余韻に浸りながら、響のリクエストを承諾した。その前にメディカルチェックを受けさせなきゃ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから、3日があっという間に過ぎ去った。
サンジェルマンたちはパヴァリア光明結社の解散を宣言した。しかし、組織という枷が無くなったということは抑制が効かなくなる可能性も高い。
末端組織の情報など、彼女らが把握しているものは全て手に入れることが出来たが油断は出来ない状況だった。
カストディアン、アヌンナキ……。アダムが遺した言葉――。
これは神のような存在を意味することはわかっている。フィーネは何か知っているはずなのにだんまりを決め込んでいるのも気になった。
今回のアダムの事件は終わりではなくて、何かの始まりなのかもしれない。
まぁ、それはおいおい考えるとして――今日は色々あって延期になった響の誕生日会である。
「それでは改めて……」
未来が代表して音頭を取る。
「「ハッピーバースディ!(デース!)」」
あたしたちはクラッカーを鳴らして、響のバースデーを祝った。
「あははっ!」
「17歳おめでとう、響」
「ありがとう。とんだ誕生日だったよ。でも皆のおかげでこうしてお祝い出来たことが本当に嬉しい!」
響は満面の笑みで未来のお祝いの言葉に返事をした。ホントによかったわ。あのときはどうなることかと思ったわよ。
「まあまあ、堅苦しいのは無しですよ。主役はこちらにデース」
「おおーっ! すっごーい! さっすが、フィリアちゃん。レストランの料理みたい!」
切歌がテーブルに案内すると彼女のリクエストした料理がずらりと並んでいた。
食べ歩きして美味しかった料理のレシピを再現したものだから、味は自信があるわ。そう、錬金術的に。
「調も手伝ってくれたのよ。この辺なんてほとんど……」
調は教えた分だけ上手になるから教え甲斐がある。マリアや翼と大違いだ。
「これ、調ちゃんが!?」
「う、うん。リア姉に教わって。あと、松代で出会ったおばあちゃんから色々と夏野菜を頂いて……」
調は例の農家のおばあちゃんから頂いた野菜を活かした料理を作っていた。あそこの野菜はとても良いモノで、味が良かった。
「フィリアと月読が作り、立花が平らげるのなら……。後片付けは私が受け持つとしよう」
翼が大言壮語を吐く。いやいや、それは――。
「いやー、先輩。出来もしないことを胸張って言うと後で泣きを見ますって……」
「ていうか、張る胸もささやかだし」
「わ、私を見くびってもらっては……、というか、お前に胸のことを言われる筋合いはないっ!」
翼はあたしとクリスを睨み立ちあがった。
「ケンカしないの。ほら」
「はむ……もぐもぐ。――っ!? なにこれ!? まさかトマトなの!? こんなに甘いの初めて食べたわ!」
マリアによって翼の口にトマトが放り込まれる。彼女はあまりの美味しさにキャラクターが豹変する。
「驚きに我を失う美味しさです」
「文字通り、ね」
調とあたしは翼のリアクションを満足そうに眺めていた。
そして、みんなで食事が始まる。概ね、料理は好評みたいね……。
「ねぇ、フィリア。あたしも料理したいなー。きっといつか素敵な彼が喜んでくれると思うの」
「そうね、じゃあ今度教えてあげるわ。ティキ」
「約束だからね。早く会いたいな、運命の人」
ティキの残骸を回収したあたしは、異端技術の解析がしたいという弦十郎からの依頼でこれを修復。初期化したので、アダムに関する記憶も何もなくなり、あたしとエルフナインが彼女の造物主となってしまった。
害意はないから良いんだけど、やたらと懐かれてしまった。まぁ、お互いに人形同士だからかもしれないが。
「お疲れ様です。フィリア先輩」
ベランダで外を眺めてるあたしに未来が声をかける。てっきり、響のところに居ると思ってたけど。
「ええ、お疲れ様。未来も色々と大変だったわね」
あたしも彼女を労った。彼女が居なかったら響の救出は無理だっただろう。フロンティア事変の時と同じで……。
「先輩、一つだけ質問してもいいですか?」
未来が思い詰めたような態度であたしにそんなことを言う。えっ? あたし、何かしたっけ?
「別に構わないわよ。どうしたの、急に」
あたしは未来の言葉に返事をした。
「先輩って、私と同じでやっぱり響のことを友達以上に想ってますよね? あのとき、先輩が言っていた“お人好し”って響のことじゃないですか?」
未来はあのとき、私がアダムに言ったセリフが気になってるみたいだ。司令室のモニターであのときのやり取りを見ていたか……。
「はぁ……、あなたくらいよ。それに気づくのは……。――似てるのよ。響はあたしの婚約者だった人にね。だから、かもしれないわ。記憶が戻る前からあたしはあの子に惹かれていた」
あたしは未来に正直に気持ちを話した。
自分の信念を貫いて、人助けのために、人と人が分かり合えると信じて手を伸ばし続ける彼女が、あたしにはイザークとダブって見えていた……。
「だけど、負け戦だし、あなたが相手じゃ勝ち目がないでしょ? 大丈夫よ、盗ろうなんて考えてもないし」
あたしは心配そうな顔をしている彼女にそう言った。あたしも命知らずなことを言ったものだ。絶縁されかねないわ。
「私、フィリア先輩のことライバルだと思ってます。でも、それ以上に優しい先輩のこと、大事な友達だって思ってますよ」
「未来……」
未来の言葉は嘘偽りがなく、穏やかなものだった。
「だから、私に気を使わないでください。そりゃあ、響を渡すつもりはないですけど」
未来はニコリと微笑んでそう言った。何度か怖い目にあって、控えてるんだけど……。
「ふふっ、何それ? 正妻の余裕ってやつ? あなたたちは、付き合ってるんだから、あたしになんてそもそも勝ち目がないじゃない」
「うふふっ、かもしれません。でも、先輩が響を大事に想ってくれるのも嬉しいから。それに……、私たちは、まだまだですよ。響ったら、付き合うとか全然自覚してないんですから」
あたしたちは笑い合って、しばらく雑談した。
未来は良い子だ。誰よりも気遣いが出来て、そして、誰よりも響を愛してる。
あたしが彼女に勝てる要素など一つもなく、多分戦っても負けちゃう。それだけ自信がない。
というより――あたしは未来と戦うなんてことが堪らなく嫌なんだ。まっ、そんなことあり得るはずがないけどね。
「未来ぅ、フィリアちゃん。何を内緒話してるのー?」
響はあたしと未来の会話が気になったみたいでこちらにやって来た。
「響には教えられないこと、かな。ね? 先輩」
「そうね、あなたには内緒の話よ」
あたしと未来は互いに頷きながらそんなことを言った。実際、言えないし……、そんなこと。
「ええっ! 私、仲間はずれにされてる!? 誕生日会なのにっ!?」
オーバーリアクションをする響を見て、あたしたちは可笑しくなって、笑みが溢れる。
「みなさーん、トランプをするデスよー!」
そんな中、切歌がみんなをゲームに誘っていた。
「はーい! トランプだって、未来、フィリアちゃん! 行こっ!」
響はあたしと未来の手を取って歩き始める。あたしはこの繋がれた手の温もりと、もう片方に繋がれた手を、ずっと大事にしようと思っていた。
未来を繋ぐのはきっと、その差し伸べられた優しい想いだから――。
―― AXZ編完結――
AXZ編はいかがでしたでしょうか?
正直、4期は書き始めの頃から鬼門だと思ってました。3期にはフィリアのこと大体書いちゃうつもりだったし、まだ最終回前の5期には繋げないといけないし、みたいな感じで……。
冗長になったり、雑に見えたりしたかもしれません。
XV編は、それを挽回出来るように頑張ります。