【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
今回は原作の2話の後半くらいまです。
それでは、よろしくお願いします。
「2分よ、2分以内に決着を付けるわ。あたしが決定的なチャンスを作る。あなたたちは歌を合わせて強烈な一撃をあいつの喉元にくれてやりなさい」
あたしはクロノスモードの起動時間内にあの大きな棺に決定打を与えるスキを作ると断言した。
「なるほど、立花とマリアによって出来た破損箇所を狙うのだな。しかし、ヤツを1人で相手になど――」
――
あたしの両手から繰り出される巨大な風の弾丸は周囲のトゲを吹き飛ばしつつ、棺をグラつかせて動きを止める。
「ご覧のとおりよ。火力じゃあ負けないわ」
「――お前、段々と何でもありになってないか?」
翼のセリフを背中に受けて、あたしは棺に向かっていく。
――
時を止めたあたしは棺に肉薄して、次々と打撃を与えて、基地から距離を離すように棺を吹き飛ばす。
「まだまだっ!」
さらに追撃を加えようと間合いを詰めようとするが、棺は先ほどのビームをあたしに向かって放ってきた。
――
アルカノイズのレシピを元に作り出された、すべてを分解するエネルギーの波動をビームに当てる。
爆発と共に巨大な結晶の柱があたしと棺の間に出来上がった。
第二波が来る前にっ――。
あたしは棺の懐にまで潜り込み、エネルギーを身体中に充満させた。
――
エネルギーを身体機能の上昇に極ぶりすることで、従来の数十倍にまで機能を上昇させることが出来る近距離戦専用の技をあたしは使った。
アッパー一撃で棺を宙に浮かせる。そこからあたしは宙に舞って、棺の身体に猛烈な連撃のラッシュを与える。
打撃のラッシュにより、棺はドンドン宙に浮かび上がって行った。
「――フィニッシュ!」
――
あたしは内部にまで浸透するエネルギーの波を棺の腹に両手のひらを押し当てて放った。
棺は天高く舞い上がり、弱点の破損箇所を晒した――。
「そろそろ時間切れね。頼んだわよ、みんな……」
あたしはギアを外して力を集めている装者たちを見た。
「今だ!」
軌道を計算していたクリスが声をかける。
―― G3FAヘキサリヴォルバー――
プロテクターと固着した外殻部分を再度エネルギーへと変換。拳に集束させた後、任意のタイミングにて発射するまでが一連のシークエンスとなっている。これらを6人同時に、螺旋の一点集束させることで実現する一撃――。
シンフォギアを脱いでぶつけるという決戦機能を棺に向かって放った。
あたしでは出せない、超火力の一撃が棺の破損箇所に見事に命中し、棺は大爆発を起こしてようやく沈黙した。
その後、棺の中から包帯でグルグル巻になった遺体が出てきた。あたしたちは本部のモニターでそれを確認していた。
「あれがカストディアン。神と呼ばれたアヌンナキの遺体……」
「つまりは聖骸、というわけですね……」
棺の中の遺骸……、これは何を示しているのだろうか……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「へっくし。かー、この寒さプチ氷河期どころじゃないぞ……」
「風邪には注意しなさいよ。ちゃんと、手洗いとうがいを念入りにしなさい」
「へいへい、ママじゃねぇんだから、まったく」
あたしとクリスは一緒に通学をしている。季節はすでに冬になり、彼女は18歳になった。
「クーリスちゃーん! フィリアちゃーん!」
聞き慣れた声にあたしたちが振り向くと、響と未来が共にこちらにあるいていた。
「あーあ、ノー天気な二人組が来やがった」
「おはよう、二人とも」
あたしとクリスは同時に声を出す。
「先輩、おはようございます。今日も寒いですね」
「ああ、寒いな」
未来の言葉にクリスがそう返すと、なぜか響はニヤニヤしていた。
「寒いよねー。――でもあったかいよねー。お似合いの手袋……。ふふっ……」
「――っ!? 毎朝毎朝押し付けがましいんだよ、バカ!」
「あぁーっ!」
響はクリスが誕生日にプレゼントした手袋をつけていることを付けているのをイジる。というか、毎朝やってたの? あの日から……。
「調子に乗りすぎ。はしゃぎ過ぎ」
未来はいろんな意味を込めて響に注意をした。
「だってさ、一緒に選んだあの手袋、クリスちゃんに喜んでもらえてるから、つい。手袋して休まず登校してくれるし」
「言われてみれば推薦で進学も決まってるのにね」
そう、クリスは志望大学に推薦で入学が決まった。彼女の成績なら当然だが……。
「それはだな、あたしは皆より学校に行ってないから、その分をだな……。――だけど、そろそろ呑気に学校に通ってるわけにはいかないのかもしれないな……」
「そうね。まだ、暗躍する影は確実にいるから……」
クリスも予感はしているらしい。そう、悪い予感が……。
そして、その悪い予感は的中した。聖骸がパヴァリア光明結社の残党に狙われたのだ。
切歌と調の活躍によりそれは防がれたが、本格的に連中が動いたというわけだ。
映像で確認出来たパヴァリアの残党は見覚えのある人間だった。
エルザ――かつてパヴァリアの被験体で、ゲイル博士を慕っていた人間の一人……。
サンジェルマンからもたらされた情報は正しかったというわけだ。
そして、エルザが動いているのなら、ヴァネッサたちもきっと動いているはず。あたしたちは彼女らの次の動きに注意を払っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから3日が過ぎて、翼の凱旋ライブの日がやって来た。
あたしはマネージャー、マリアはエージェントとして翼に同行している。
「フィリア、マリア、我々S.O.N.G.も極海にて回収した聖骸の警護に当たるべきではないか?」
「気持ちはわかるわ。でも聖骸の調査、扱いは米国主導で行うと各国機関の取り決めだから、仕方ないじゃない」
翼の言葉にマリアはそう返事をする。彼女は真面目だからライブに集中できてないみたいだ。
「日本政府やS.O.N.G.に、これ以上聖遺物と関わらせたくない国も少なくないわ。強引に動くわけにもいかないことはあなたも理解してるでしょ?」
あたしも情勢の話を含めて翼を諭した。
「せめて私たちが警護にあたれれば、被害を抑えられ……。――あ、痛っ!?」
「今やることとやれることに集中するの。ステージに立って歌うのはあなたの大切な役目のはずでしょ」
これだけ言っても、まだ不安そうな顔をしている翼は、マリアに小突かれる。マリアの言うとおり、今はステージに集中すべきだ。
「むぅ……。不承不承ながら了承しよう。だが、それには一つ条件がある。フィリア!」
「はいはい。ちゃんと準備してるわよ。マリア=カデンツヴァナイヴとのコラボライブの準備をね。ほら、ここに衣装も」
あたしは翼の指示でマリアの衣装を持ってきた。
実は翼から相談を受けていて、サプライズを計画していたのだ。
「はぁ? そんなの無理よ、出来ないわ」
案の定、マリアは顔を真っ赤にして拒否の姿勢を見せた。まったく、唐突にヘタレになるんだから。いつもは勇ましいのに……。
「いつか私と歌い明かしたいと言ってくれたな」
「でも、私には……」
マリアは自信なさそうに目を伏せる……。あー、じれったいわね。
「私は歌が好きだ。マリアはどうだ?」
「つっ、翼……」
マリアは翼の熱意に押されて出演を了承した。あたしはマリアの歌も聞けるので嬉しかった。
さて、何も起きなきゃいいんだけど……。
会場は非常に盛り上がっており、観客席はほとんど満席だった。
響たちは渋滞に嵌って遅れていると連絡が先ほど入った。
―― Everyonez Diva Tsubasa and Maria ――
マリアの名前が出た瞬間、観客はざわめき熱狂した。やはり、歌姫、マリア=カデンツヴァナイヴの名前は絶大ね……。
「絶対に折れ――♪ ここに――♪」
ライブがついに始まった。二人の歌声に観客は盛り上がり、そして惹きつけられていた。
滑り台を降りながら、翼とマリアが現れると、観客は更に盛り上がった。
「絶え間なく――♪ それでも熱く――♪」
二人のパフォーマンスは見事だった。まったく、ほとんど打ち合わせしてないのによく合わせるわね……。
そんな中であたしは観客席の中に見覚えのある銀髪の女を発見した。人間時代のあたしと瓜二つの顔をした、あの女を……。
間違いない、あれは――フィアナだ! どうしてこんなところに……。
あたしは彼女の元に急いで近づいた――。
「久しぶりね。フィアナ……」
「あらぁ、フィリアちゃんじゃなぁい。ご無沙汰ぁ。ゴホッ、ゴホッ……」
フィアナは相変わらずのノー天気な口調で話していたのかと思うと、苦しそうな顔をして咳き込んでいた。
「フィアナ、あなた大丈夫なの? 体を悪くしたんじゃあ……」
「うふっ、変わらないわね。フィリアちゃんの優しいところ……。でも、ね。目的は果たさなきゃ駄目なの。ドクターを神にするために、ね!」
フィアナは首元にLiNKERを突き刺して――聖詠を唱えた。
「phili joe harikyo zizzl……」
フィアナは銀色のギアを身に纏う。浄玻璃鏡のシンフォギアを――。
「コード……、ファウストローブ……」
あたしは銀色のファウストローブを身に纏い、フィアナと戦闘を開始した。
あたしの拳とフィアナの拳がぶつかり合う。
「――その、パワー……! 以前とまるで違うッ!」
「そりゃあ、ドクターから新型のLiNKERを作って貰ったもん。愛の力は何よりも強いのよっ!」
イグナイトにも匹敵する火力……! ギアも改造してると見て良さそうね……。
会場はざわめいて、騒ぎになった。そりゃあそうだ。人形とシンフォギアが戦いを始めたのだから……。
しかし、あたしは少しだけ安心した。フィアナは会場の人間に危害がないように得意のビームを放ったりしていない。
関係ない人間には被害が及ばないように考えている。
そもそも、こんなところにアルカノイズなんか出されたら、それこそ大惨事だ……。
翼もマリアもギアを纏ってこちらに来ている。これなら簡単にフィアナを取り押さえて――。
“フィリアちゃん、上を見なさい!”
そんな中、フィーネが久しぶりに声を出した。
空には大量のアルカノイズの錬成陣が浮かび上がっていた。
「何よ、あれっ! フィアナ! あなたはっ――!」
あたしはフィアナを非難した。まさか、本当にコンサート会場にアルカノイズをけしかけるなんて……。
「――まさか、聞いてないわぁ……。ドクターがこんな指示出すはず……、ゴホッ、ゴホッ」
いや、出すでしょ。あの人でなしの大馬鹿者なら。しかし、フィアナは聞いてなかったのかもしれないわね……。ならば――。
「ボロボロのてめぇは見捨てられたのさ。ドクターに、な。当たり前だろ、ドクターは私らのもんだ」
「ミラアルク……がはっ――」
フィアナの腹が赤色の刃によって穴が開けられる……。そして、あたしにその切っ先が向く。
「フィアナ……!」
「てめぇの弱点は知ってるぜ! お前ら姉妹を葬れるなんて、サイッコーだぜぃ! ドクター特製の浄玻璃鏡の制御光線を喰らえッ!」
そのまま切っ先から赤色の光線が放たれて、あたしにそれが直撃した――。
「這いつくばって見てな! てめぇらの無力さを感じながらなっ! フィアナ、フィリアと同じ顔のクセにドクターの特別って顔をしてたのが気に食わなかったぜ!」
ミラアルクは倒れたフィアナの顔を踏みつける。なんか、とんでもない私怨を感じるわ。
「さぁ、始まるぜ! コンサートの第二部だぁぁぁ! あっはっはっは」
高らかに笑うミラアルク。翼とマリアも、空に大量のアルカノイズが出現して驚愕の表情を隠せない……。
――そして、天からアルカノイズたちが落ちてきた……。
ミラアルク……、まだ、あたしは絶望してないわよ!
「コード、クロノスモードッ!」
あたしの身体が黄金に輝いた。これで、アルカノイズたちを一掃してみせる。
「――なっ、てめぇ動けるのかよ!」
ミラアルクが驚愕してあたしを見たとき……。
コンサート会場を守るように巨大な錬成陣構成された。そして……、落ちてくるアルカノイズを次々と分解して消し去っていった。
あの錬成陣はまさか……。彼女たちが……?
「はぁぁぁ!? どうなってやがるっ!」
ミラアルクは上空の巨大な錬成陣を目を見開いて口もポカンと開けて眺める。
「やはりお前たちが動いていたというワケダ……!」
「あーしらが、下手な陽動に気が付かないわけ無いじゃない!」
「ミラアルク! 貴様らの蛮行を見過ごすわけにはいかないわ!」
上空で巨大な錬成陣を作り出したのは3人の錬金術師たち――。
ライブ会場への奇襲はギリギリのタイミングで回避された。しかし、依然として会場には14万人もの人たちがいる。
あのような、惨劇だけは二度と起こさせない。あたしは、あの日つかえるようになった錬金術に誓ってそう決意した。
次回、補足しますが、サンジェルマンたちがギリギリだったのは、ノーブルレッドからの偽情報で陽動を仕掛けられたからです。彼女たちは独自に情報を掴んでコンサート会場までやってきたので、S.O.N.G.の面々は何も知らずにいました。
フィリアに制御光線が効かなくなった理由も次回に説明します。