【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
原作よりも早く黒膜が判明します。
あたしとキャロルは食事をしながら話を始めた。彼女から日本に来たのはチフォージュ・シャトーへの侵入者を探るためだった。
「覚えているか? お前がその身体に魂を移した時に身を寄せていた、この国の研究施設を……」
キャロルはあたしにゲイル博士とともに潜伏していた施設の話を持ち出した。
もちろん覚えてる。聖遺物と錬金術の研究をしてる施設で日本の国防と関わっていた裏の存在だ。
「あの施設に一つ気になる研究資料が存在していた。その資料はお前がその身に魂を移したあの日の前日に他の機関にデータを移動させて、ダミーの研究と入れ替えられていた。実に巧妙なやり方でな、オレも逆から辿って無かったら気付かなかった」
キャロル曰く、あの日の前日に消えた、謎のデータがあの施設にあったみたいだ。
確かに恣意的なモノを感じるわね。翌日にあの施設は壊滅してほとんど何も残らなかったみたいだし……。
「確か、あの施設はフィーネが自らの計画の邪魔になるような研究をしてるという情報を掴んで潰そうとしたはずよ。《ノイズ》をけしかけて、念入りに。ソレは本人から聞いたから間違いないわ」
あたしはフィーネから以前に聞いた情報を伝えた。まぁ、あたしの存在はホントに知らなかったらしいけど……。
「フェイクだ。それは、すべて……。裏で糸を引いてる奴がわざと情報を流したのだ。その研究を知る者を皆殺しにするためにな。そして、もう一つの理由は記憶を失ったお前を手元に置くためだ」
キャロルは淡々とした口調でとんでもない事を語る。それじゃあ、あたしが記憶を失ったのはゲイルの暴走じゃなかったってこと? 手元に置くためって、それじゃまるで特異災害対策機動部が……。
「お前はそこに入るように仕向けられていたのだ。まぁ、奴は風鳴弦十郎の娘になるまでは予想してなかっただろうがな……」
キャロルの言ってる《奴》について思いつく人物をあたしは一人だけ知っている。
それは、国防の鬼――。
「まさか、風鳴訃堂だとでも言うの? すべてを影から掌握していたのは――」
あたしはキャロルに確かめるように質問した。
彼の思惑ならあっさりと弦十郎の養子になれたことも納得できる。
「そのとおりだ。風鳴訃堂の目的は神の力の掌握。奴はこの国の防衛の為にすべてを手に入れようとしている。そして奴の欲した研究の正体は《神殺し》よりもある意味恐ろしい……。その力は神を隷属せしめる、人に許されざる力――哲学兵装《
キャロルから語られる訃堂の壮大な野望。神を付き従えるって、なんて傲慢な思想なの?
「古来より伝わる聖遺物――《アロンの杖》。第二次世界大戦以前には大した力はなかったらしい。しかし、凄惨な戦争により苦しむ人たちの神に助けを求める願いが歪み、その重なり合った言葉には力が生まれた。《アロンの杖》は脆弱な人間が神に頼ろうとする想いを束ねて、神を自在に従属させる力を宿したのだ」
キャロルの語る聖遺物――《アロンの杖》……。これが本当に神を自在に操るものならば、あの男に持たせるのは危険すぎる。
「奴は既にアロンの杖の起動に成功している。そして、神の力も何かしらの方法で得ようとしてるはずだ。オレの城にちょっかいをかけたのもその為だろうな」
彼女の言葉から推測できる事柄は一つ……。
ヴァネッサたち、パヴァリア光明結社の残党のスポンサーっていうのは――。
「風鳴機関――。すべての陰謀の元凶はそこにあるのね……」
あたしがそう呟くと、キャロルはゆっくりと頷いた。
「灯台もと暗しということわざがこの国にはあるようだな。まさにその通りの現象がお前らの元で起こっていたと言うわけだ。オレはもうしばらく、この国を探る。奴の行おうとしてることは、パパの命題の答えに反するものだからな」
ここまで話をしたところで、キャロルはあたしと別れた。
S.O.N.G.に来ないかと誘ったが、一人のほうが動きやすいと言われて断られてしまった。
でも――。
「お前が困っているときには、必ず力になってやる。お前は、パパが愛した人だから……」
最後に彼女はそう言い残して去って行った。
頼りにしてるわよ。キャロル……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日……、フィアナは目を覚ました。そして、重要参考人として両手を拘束された彼女があたしたちの前に連れてこられた。
「はぁい、久しぶりねぇ。マリアちゃん、調ちゃん、切歌ちゃん」
フィアナはいつもの感じで、マリアたちに声をかけた。
目に力は無かったが……。
「フィアナ……」
マリアが彼女の前に立つ。マリアはあたし以上にフィアナの事を怒ってるかもしれない。あたしよりも長年一緒に居たのに、全部投げ出して、裏切ったんだから。
「マリアちゃん、私……。――えっ!?」
「――良かった。あなたが生きててくれて、本当に良かったわ」
マリアはフィアナを抱きしめて涙を流していた。
誰よりも仲間想いでみんなのリーダーだった彼女の器は大きかった。あたしはマリアの思いやりに感謝した。
「マリアちゃん……、ありがとう……。――痛だいっ、
そして、マリアはフィアナの両側のほっぺを思いきり抓った。フィアナは口をびろーんと伸ばされて変な顔になる。
「でも……、切歌も調も怒ってるのよ! この子たちの見本になるように自覚を持てって何度言ったらわかるのよっ! そもそも――」
以下、10分ほどマリアの説教が続く。あたしもフィアナもマリアに昔から怒られてばかりだった。
そのせいで、今でも彼女のお説教はついつい姿勢を正して聞いてしまう……。
「何でリア姉も緊張した顔をしてるんデスか?」
「2人まとめてよく怒られてたからだよ切ちゃん」
切歌と調はあたしが固まってマリアの話を聞いていることにツッコミを入れた。
「あたしの素行の話は良いでしょ。最近だとチフォージュ・シャトー落っことした以外に何もしてないもん」
「フィリアくん。ちゃんと反省してるんだよな? オレだって、かなり怒られたんだぞ。時々、君のそういうところが不安になる」
弦十郎にジッと睨まれてあたしは口を閉じた。やはり、フィアナが絡むとあたしにもとばっちりがくる。
「まぁ、マリアくんもその辺にして、だな。話してもらおうか。ウェル博士の企みとやらを」
弦十郎はフィアナに本題の話を切り出した。
そう、彼女にはノーブルレッドの目的を話してもらわなくてはならない。
「ドクターの目的は神を超える存在になることよぉ……。ネフィリムに神の力を付与させた聖遺物を喰らわせてその力を得ようとしているわぁ」
フィアナはウェル博士の目的を話した。暴食の名を持つ生きた聖遺物、ネフィリムを存分に活かせるように考えて動いてるみたいね……。
「ウェル博士はあたしの放ったエネルギーの塊も吸収してたみたいだけど……」
あたしはあの時、ミラアルクを彼が庇ったときの話を持ち出した。
「ミラージュクイーンはドクターに一度食べられてるでしょー。お姉ちゃんの錬金術はミラージュクイーンを媒体にしてるから、錬金エネルギーを再分解してるんだと思うわぁ。つまり、錬金術の発動の真逆の運用をしてるってことなのぉ」
つまり、あたしの錬金術はネフィリムに食べられちゃうってこと? 何それ、面倒なんだけど……。
「日本からのスポンサーが居たらしいが、それについて思い当たるところはあるか?」
弦十郎はもう一つの大事なポイントをフィアナに質問した。
「もちろんよぉ。あなたたちも、よぉくご存知のぉ。風鳴家の当主、風鳴訃堂……、彼があたしたちを支援していたわぁ」
やはり訃堂はノーブルレッドと繋がっていた。昨日のキャロルの話がこれで裏付けられる。
「そっそんな、まさか……」
次期当主の翼は驚愕の表情を浮かべていた。この話が本当なら、ライブ会場襲撃も彼の意志によるものとなる。
「やはりそうか……」
あたしから昨日のキャロルの話を聞いている弦十郎は苦虫を噛み潰したような表情でそう言った。
「最後の質問だ。先日のライブ会場襲撃の目的はなんだ? どうして、あのようなことをした?」
弦十郎はもっとも気になるライブ会場襲撃の目的を話すようにフィアナに促した。
「それが分からないのぉ。私はライブ中に適当に暴れて翼ちゃんやマリアちゃんの気を引けとしか指示されてなかったからぁ。アルカノイズを使うことさえ知らなかったわぁ」
「脈拍数、心拍数、共に正常。嘘は付いてないようですね」
フィアナの分からないという答えを緒川が分析する。
どうも、翼に何かすることが目的みたいだったけど……。彼女も何ともなさそうだし……。
うーん、不思議ね……。
「わかった。体調不良にも関わらず、ご苦労だったな。フィアナくん」
弦十郎はフィアナを労うような言葉をかける。
彼女は包み隠さず話してくれたし、ようやくあの大馬鹿者の呪縛から解放されたみたいね。
「お安い御用よぉ。もっとも、ドクターは私から情報が漏れることは当然計算ずくでしょうけどぉ」
フィアナはそう言い残して、緒川に連れられてメディカルルームに戻って行った。
治療すれば、ある程度は良くなるみたいだけど……、もうギアを纏うのは無理そうね……。
「しかし、フィアナくんが言うように我々に情報が漏れてることも計算されているとなると……。早い内に大きな動きがあると見て良いだろう――」
弦十郎がそんなことを言っていたときである。
けたたましいアラーム音と共に米国から入電があった。
「米国、ロスアルモス研究所がパヴァリア光明結社の残党、ノーブルレッドとおぼしき敵性体に襲撃されたとの報せです!」
「なんだと!?」
藤尭が入電内容を報告した。やはり、大きな動きがあったか。
あたしたちはこれから更に大きなことが起こることを確信した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「昨日の入電から丸一日。目立った動きはなさそうだな。兄貴はどう見ている?」
翌日のブリーフィング中、八紘からS.O.N.G.に通信が入った。
『ロスアルモス研究所は米国の先端技術の発信地点。同時に異端技術の研究拠点でもある。そちらからの情報も含めて考えると、米国が黒幕の可能性はほぼゼロに等しいだろう』
「米国の異端技術って……」
「ああ……、断言は出来ないが、ロスアルモス研究所はかつてF.I.S.が所在したと目されているところだ」
八紘の言葉に反応した調に対して、弦十郎がロスアルモス研究所とF.I.S.との繋がりを話した。
『かつての新エネルギー、原子力の他……。エシュロンといった先端技術もロスアルモスでの研究で実現したと聞いている』
「そんなところを襲ったってことは、やっぱり何か大事なものを狙ってデスか!?」
八紘の話に今度は切歌が質問をする。
『伝えられている情報ではさしたる力も無いと思われるいくつかの聖遺物……、そして……』
「これって……。やっぱ、そう来るのか」
クリスが画面を凝視してそう呟いた。
画面に表示されたのは、聖骸の腕に付けられていた腕輪……。
『極間にて回収された先史文明期の遺産。腕輪に刻まれた文様を楔形文字に照らし合わせるとシェム・ハと解読出来る箇所があるそうだ』
「シェム・ハ――シェム・ハの腕輪」
翼は八紘の言葉を復唱する。シェム・ハというのはあの遺骸の名前かしら?
“確かにアヌンナキの中にそんな名前の方も居たわ。とても強い力を持っていてねぇ。特に言葉を――あれ? ――うん、あの御方と並ぶくらい凄い力を持っていたわ”
フィーネはシェム・ハはアヌンナキの名前だと言った。そんな神様みたいな力を持つ者が何人も居たみたいな口ぶりね……。
あと、何か言いかけたような……。
『事件解決に向け、引き続き米国政府には協力を要請していく。これが私の戦いだ』
八紘は米国との関係改善に尽力している。過労寸前まで働いているから心配になるくらいだ。
「恩に着る。八紘兄貴……。あと、鎌倉の件だが……」
『うむ、事実無根とのことだ。さしたる証拠もナシに夷狄の発言を鵜呑みにするなと付け加えてな』
「そうか……。証拠もナシにか……」
八紘は訃堂がしらを切っていると漏らした。それを受けて弦十郎は何かを決意したような顔をしていた。
どっちにしろ、ウェル博士と訃堂の目的は将来的に対立するはず。ともすれば、あたしたちと三つ巴の戦いになるかもしれない。
神を超える力を手に入れようとする者、神を従えようとする力を得ようとする者……、あたしたちは、またもや神とやらに振り回されてしまうのだろうか――?
ウェル博士と訃堂は共に大きな目的を持ってます。そして、お互いに利用し合ってますが……。
次回もよろしくお願いします!