【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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今回は完全にオリジナルエピソード。
時系列的には原作の4話くらいです。


レイライン強襲

 

 

 剣を構えた翼が殺気を放ちながら、あたしに突き技を放つ。

 

「――はっ!」

 

 スウェーで翼の剣を避けると髪の毛が数本飛んでいく。

 

「技が素直すぎるっ! はっ!」

 

 視線と僅かな切っ先の向きでフェイントをかけてつつ、あたしは掌底を翼の胸に押し当てる。

 

 そして、彼女がバランスを崩した瞬間にあたしは彼女の首元に刃を向けた。

 

「――ぐっ! また、私の負けか……」

 

 翼は心底残念そうな顔をする。確かに今日は彼女の5連敗だ。

 いつもの精細さが欠けている。

 

「どうしたの? いつもの沈着冷静な動きが出来てないわよ。焦っているの?」

 

「このままだと……、また前のようなことが起こるやもしれん! 防人として、私は強くあらねばならないのにっ!」

 

 どうやら前回のミラアルクとの戦いに敗れたことが尾を引っ張ってるみたいだ。

 

「一人で勝てないなら仲間と勝てばいいじゃない。あなたは一人じゃないんだから……」

 

 あたしは翼にそう言った。ギアの出力も足りてない今はそうやって攻撃力を上げる他ない。

 チームワークで歌を合わせれば、負ける相手だと、あたしは思ってなかった。

 

「――っ!? いつの間にか誰よりも強くなっているお前には、私の気持ちはわからんよ。フィリア!」

 

 翼は突き放すような言い方をした。この余裕のなさは変だ。こんな事を言う子じゃない。

 

「翼、あなたどうしたの? やっぱり変よ……」

 

 あたしは彼女の様子がおかしいと正直につげた。負けたくらいでここまで憔悴するのには、違和感がある。

 

「すっすまない、フィリア。少々取り乱した……」

 

 翼は首を横に振って、鍛錬室から走って出ていった。

 あたしも走って追いかけたが……。

 

「あっ――!」

「えっ!? 響っ!?」

 

 曲がり角であたしと響がぶつかってしまった。

 急いで曲がったから不注意だったわ。

 

「ごめん、響。ちょっと、翼を追っていて……」

 

「えっ、翼さんを? 何かあったの? フィリアちゃん」

 

 あたしが急いでいた理由を話すと、響は当然翼のことを尋ねてくる。

 この子にも相談してみようかしら……。

 

 あたしは翼のことを話した。

 

「翼さんが、そんなことを……。確かに変だね。よーし、じゃあ今度みんなで前みたいにカラオケ行こうよ! 名付けて翼さんを元気付ける会を開こう!」

 

 響は自分なりに考えてモノを行ったのだろう。自信満々な顔してるし。

 うーん、カラオケねぇ……。

 

「翼が乗り気になってくれるかしら?」

 

「大丈夫だよっ! フィリアちゃん。みんなで誘えばきっと付いてきてくれるよ!」

 

 ニコリと笑って響はあたしの手を握ってくれた。この子が大丈夫って言ったんだ。信じてみよう。

 

「ありがとう。響……」

 

「うん! 楽しみにしててね!」

 

 そんなことを響と話していると、警報が鳴り響いた。

 あたしたちは、司令室へ向かった――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「緊急事態だ! アウフヴァッヘン波形を観測したかと思えば、レイラインから巨大なエネルギーの抽出を観測……。どちらもまったく別の場所で、だ。君たちは2つのチームに分かれて動いてもらおう」

 

 装者たちと、錬金術師たちが集まり、弦十郎の指示に従い二手に分かれる。

 

 結果、連携を取りやすくする為に、シンフォギアチームと錬金術師チームに分かれて動くことになった。

 

 あたしたち、錬金術師チームは以前にサンジェルマンが神の力を得るための儀式を行った神社へと向かった。

 

 

 

「あれは――まさしく神の門……!? まさか、あれをいとも簡単に開けてしまうとはっ!」

 

 サンジェルマンは驚愕した表情で再び光り輝くこととなった地上のオリオン座を凝視していた。

 

「あたしの『コード、ラグナロク』と同じメカニズム……。ウェル博士はゲイル博士と同様の理論を確立してたみたいね」

 

 自分の機能については理解できている。しかし、困ったことになった。こんな事なら《神殺し》の力を持つ響を連れて来るべきだったのかもしれない。

 

「原罪を背負う人間は神の力は拒絶されるハズなワケダ」

 

「あれを見て! あれって自動人形(オートスコアラー)? フィリアちゃんそっくりねぇ」

 

 プレラーティの疑問に対する答えのように、光の柱の中を宙に浮いている人形。

 見た目は黒髪であたしとそっくりだ。まったく、趣味が悪い……。

 

 まさしく、ティキやあたしが神の力を得たときと同じ現象が起こっていた。

 

 

「とにかく、止めるわよ! あれを覚醒させるわけにはいかない!」

 

 あたしたちは神の力を吸収しているオートスコアラーを狙って攻撃しようとした。

 

「フィリア、感謝しますよ! あなたが一度、神の力を得るための過程を見せてくれたおかげでスムーズにそれをなぞることが出来ました!」

 

 醜悪な笑みを浮かべながら、ウェル博士が大声を上げる。

 なるほど、あたしがラグナロクを発動した記録まで取られていたのか……、訃堂が流したのね……。

 

「立花響ナシでこれに勝てますかね〜? これぞ、英雄のための力! 神の力です! 行きなさい、グロリア! あなたの力を見せつけるのです!」

 

 黒髪のオートスコアラーのグロリアは無言で頷き、口を開いてビームをあたしに向かって吐き出した。

 

「まったく、神の力もお手軽になったわね」

 

“だけど、アレはマズイわね。無敵の力に対抗できるのは響ちゃんしか居ない”

 

 フィーネがバリアを何重にも重ねて出したおかげで、ビームを防ぐことが出来たが、火力の強さはラグナロクを発動させたあたしと同等だった。

 

「ならば、ウェル博士を狙えばいいワケダ」

 

「命令者を倒せば、一応は無力化出来るしねぇ」

 

 ヨナルデパズトーリに対してあたしが取った対策をプレラーティとカリオストロは取ろうと考えた。

 

「じゃあ、あたしとサンジェルマンがあのグロリアとかいうオートスコアラーの相手をするから、あなたたちはウェル博士をお願い」

 

 あたしたちは役割を分けた。ウェル博士にはあたしの錬金術は相性が悪いから、足止め役を自分から志願した。

 

「コード、クロノスモード……」

 

 クロノスモードを発動させたあたしとサンジェルマンは、グロリアと対峙する。

 

「連携を重ねて、ヤツに攻撃のスキを与えないように戦うぞ!」

 

 サンジェルマンは銃撃を連発して次から次へとグロリアに当てて行く。

 

 あたしはその間にグロリアの懐に潜り込んで仕込でいる刃を繰り出す。

 

 ――氷狼ノ一閃(ヒョウロウノイッセン)――

 

 絶対零度に限りなく近い凍てついた剣技によってあたしはグロリアを凍らせようとした。

 

「凍らせたところで、やはり無駄みたいね……」

 

 あっという間に氷像と化した身体は並行世界の別の個体と入れ替わり、再びビームを吐き出した。

 

 ――因果ノ捻時零(インガノネジレ)――

 

 あたしは時を止めて、至近距離からのビームを躱して、後ろから地面に向かってグロリアを蹴りつける。

 

「――ッ!? やはりダメージという概念がないのは厄介ね……」

 

 グロリアは吹き飛ばされた瞬間に並行世界の別個体と入れ替わり空中でピタリと止まった。

 そして、手のひらから今度はエネルギーの塊をあたしたちに向かって連射してきた。

 

 あたしもサンジェルマンもバリアを張って、これを防ごうとするが、火力の高さに圧倒されて被弾してしまう。

 

 あたしの右足と左手は吹き飛び、サンジェルマンのファウストローブも亀裂が入った上に本人のダメージも大きそうだ。

 

 ――ループ・ザ・ワールド――

 

 即座に身体を再生させたあたしは、サンジェルマンのダメージの回復とファウストローブの修繕を同時に行う。

 

「時を操る力とは便利なものなのだな。しかし、このままだとジリ貧だ……」

 

 サンジェルマンとあたしは相手との戦力差を体感して戦慄していた。

 やはり響ナシでは厳しいようだ。しかし、響たちは響たちでヴァネッサたちと戦闘して苦戦しているみたいで、応援は期待できない。

 

 こうなったら、カリオストロとプレラーティが……。

 

 

 彼女らが上手くウェル博士を仕留めることを願っていたが、ウェル博士はネフィリムの右腕をかつてバビロニア宝物庫に閉じ込めた化物のような姿に変えて、切り離して2人にけしかけていた。

 

 神の力にも勝るにも劣らない火力に2人は圧倒されて、あたしたちと同様に不利な状況に追い込まれていた。

 

「英雄たる僕が弱いはずがないじゃあないですか! 生半可か攻撃ではネフィリムは倒せませんよ!」

 

 確かにあのサイズはかつて、響たちが70億の絶唱という規格外のフォニックゲインを使いやっと倒せたくらいだ。

 2人は確かに強いけど、相手が悪い……。

 

 これは――勝てないかもしれないわ……。でも、諦めるわけには――。

 

 

 グロリアの相手で手一杯のあたしたちはカリオストロとプレラーティを助けることは出来ない。

 

 ネフィリムは大きな火球を作り出して2人に放とうとしていた。

 

 

四大元素(アリストテレス)ッ!」

 

 その掛け声と共に四つの錬成陣からエネルギーが放たれた。

ネフィリムの火球を炎の錬金術で相殺し、残りの三属性の錬金術でネフィリムを撃ち倒した。

 

「オレの歌は、ただ一人で70億の絶唱を凌駕するフォニックゲインだっ! フィリアには手を出させん!」

 

 ダウルダブラのファウストローブを身に纏ったキャロルが大人の体格になって現れて、糸をウェル博士に向かって伸ばし、それを捉えた。

 

「グロリア! ぐきゃっ……! あがががっ……。モゴモゴ……」

 

 ウェル博士は糸で体を締め上げられて口から泡を吹きながら苦しそうにもがいている。

 

「フン! 急ごしらえのオートスコアラーじゃ、声が出せなきゃ助けにも来ないか! それどころか命令が途絶えると停止するとは、粗悪品も良いところだ」

 

 そう、グロリアは名前が呼ばれると振り返り、そのままウェル博士の指示を待つために停止していたのだ。

 

「では、こちらの人形は貴様を倒した後に処分しよう。立花響の《神殺し》でな」

 

 キャロルはそう言うと糸をグロリアにも伸ばした。

 

 しかし、その時である。

 

 白い光がグロリアに向かって放たれて、それに当てられたグロリアはそのままドコかに飛んで行ってしまった。

 

「ちっ、風鳴訃堂がこの近くに来ていたのか! あれはまさしくアロンの杖の輝き……」

 

 キャロルは悔しそうな声を出した。まさか、訃堂が神の力を持ったグロリアを奪い取るなんて……。

 

「――くっ! 僕のグロリアがぁぁぁ! 栄光の架け橋がぁぁぁぁ! レディ! 何をするんだ!」

 

 ウェル博士はネフィリムの右腕を再生させて、ダウルダブラの糸を噛み千切らせて脱出していた。

 

「オレに何か文句でも? 三流科学者!」

 

「ひぃっ!」

 

 苛ついているキャロルにひと睨みされたウェル博士はテレポートジェムを手早く投げて逃げてしまった。

 

 相変わらず厄介なクセに小物感が凄い……。

 

 しかし、キャロルが来てくれてホントに助かった……。この子はホントにすごい錬金術師だわ……。

 

 でも――。あの子のエネルギーの源は……。

 

「あとで時間を巻き戻して想い出の燃焼で消費した記憶を回復させるわ」

 

 あたしはキャロルに向かってそう言った。

 助けてもらったのだから、これくらいはしたい。

 

「それには及ばん。あのくらいの攻撃……、こうすれば事足りる……」

 

 キャロルはおもむろにチョコレートを取り出して食べだした。

 まさか、キャロルはあたしと同じように……。

 

 

「そうだ、ゲイルのヤツが残した資料を見つけてな。お前と同様に錬金エネルギーを糖分の超分解で賄えるように体をイジったのだ」

 

 キャロルはサラリととんでもないことを言う。彼女の力でそんなこと出来るなんて、ちょっと反則だわ。

 

「もっとも大技を連発するとなれば、想い出の燃焼も使わざるは得なくなるがな。そんなことより、お前に見せたいものがあったんだ……」

 

 キャロルはそう言うと錬成陣の中から氷の塊を取り出した。

 

 その氷の中には銀髪の女が眠るような形で目を瞑り横になっていた。

 

 この人に見覚えはあった。見覚えがあるどころではなかった。  

 

「その体、もしやフィリア=ノーティスの……?」

 

 人間のころのあたしを知っているサンジェルマンたちは興味深そうに氷の塊を見ていた。

 

「そうだ。フィリア、お前の人間の時の体が保管されていた。つまり、魂さえ移せば人間に戻れる」

 

 唐突に告げられた人間の体へと戻れると言う言葉。私は驚のあまり声を失った。




ボスラッシュの前半戦ってカンジです。
キャロルはやはり強かった……。そのせいで、フィリアやサンジェルマンたちが弱く見えたかもしれませんので、申し訳なかったです。
次会もよろしくお願いします!
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