【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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今回もオリジナル多めの回です。時系列は原作5話の中盤くらいまでです。
それではよろしくお願いします!


再動する鼓動

 

 

「――でも、この体に戻ったらあたしは戦えない……」

 

 キャロルの言葉から一分ほど黙って出た言葉はそれだった。

 ファウストローブもミラージュクイーンも、この人形の身体だからこそ扱える代物だ。

 その上、身体能力も落ちるとなると、あたしの戦闘力はゼロに等しくなる。

 この状況でそんな勝手は許されない。

 

「ふっ、だろうな。お前はそう言うと思っていた。ならば、その時が来るまでこれはオレが――」

 

「キャロルちゃん、待ってもらえる? そのフィリアちゃんの体をよく見せてちょうだい」

 

 フィーネがどうしても確認したいことがあると言っていたので、あたしは彼女に主導権を渡した。

 

「貴様がフィリアの母のフィーネか。確かこの体は貴様の遺伝子で創られたのだったな。だからこそ丁寧に冷凍保存されていたのだろうが……」

 

 キャロルは一瞬であたしの変化を見抜き、フィーネにあたしの元の体を見せた。

 フィーネは氷の上から体に向けて手をかざした。

 

「やっぱり……、この体の中に私の魂の一部が入っちゃってるみたい。おかしいと思ったのよ。フィリアちゃんの中に入って随分と力が落ちてるって思ったから。きっとリインカーネイションが発動してこっちの体に反応して入ったあと、フィリアちゃんの魂を探した結果、肉体に私の魂の一部を置いてきちゃったのね」

 

 フィーネが疑問が解けたという顔をした。あたしも妙だと思ってた。フィーネの魂が人形のあたしに入ってくるなんて。

 そもそも、あたしの元の体が無事だったからこういった形になったということか。

 

「よしっ、決めた!」

 

 そう言うや否や、フィーネの手のひらが発光してあたしの元の体がそれに呼応するように光った。

 

“フィリアちゃん、ちょっと借りるわね……”

 

“それって、どういう事? まさかっ!?”

 

 魂が千切れるような感覚――それを感じたときには既にフィーネはあたしの身体(ここ)に居なくなっていた。

 

 そして、目の前の氷は弾け飛び、あたしの髪の色は金髪に染まった。

 

 そう、目の前にフィーネが居た。

 

「なるほど、状態は良いみたいねぇ。私のクローンだから魂もよく馴染んでるし。これなら、まずまずのパフォーマンスは出来るはず。ありがとう、キャロルちゃん」

 

 あまりの出来事に絶句しているあたしたち。

  

 何ということだ。キャロルがあたしの体を持って来てしまったが故にフィーネが完全に復活してしまった。

 

「なっ、なっ、おい! 貴様はフィリアの味方になったのではないのか! 何を娘の体を掠め取るような真似をしている!?」

 

 キャロルが至極真っ当なことを言っている。顔を赤くして怒っているところは昔の彼女を思い出させる。

 

「というか、安易にフィーネに触らせたキャロルが悪くない?」

 

「上手くフィーネに嵌められたワケダ」

 

 カリオストロとプレラーティはキャロルが迂闊だと責め出した。

 彼女らはフィーネに一回負けてるし、警戒心が強いのだろう。

 

「うっ、うるさい! お前ら助けてやったのに随分な態度だな!」

 

 二人から責められたキャロルは不満そうな声を出した。

 

「大丈夫よ、本当に借りただけだから。ちゃんとフィリアちゃんに返すわよ。でも、ちょっとこの体って、ボリューム不足よねぇ」

 

 フィーネはそう言うと、あたしの元の体の色んなところのボリュームをアップして、完全にフィーネの体格に変えてしまった。

 

「ちょっと、人の体に勝手なことしないでよ!」

 

 あたしはフィーネに抗議した。もはやあたしであってあたしじゃないからだ……。

 

「大丈夫だって、ちゃんとフィリアちゃんに返すときは、これは戻すから」 

「それはしなくていいわ」

 

「おいっ!」

 

 胸を触りながら答えるフィーネに対して、あたしがあまりにも早く反応した結果、キャロルは呆れた顔でツッコミを入れる。

 

「どうでもいいが、とっとと服を着るワケダ。目のやり場に困るワケダ」

 

 プレラーティは全裸ではしゃぐフィーネに苦情を言う。確かにそうね……。

 

「え〜っ! せっかく、久しぶりの生身を満喫したいのに〜。着なきゃダメ?」

 

「ダメに決まってる! なんで我々はこんな奴に負けたんだ!?」

 

 サンジェルマンは錬成陣から自分の私服を取り出して、フィーネに渡す。確かにサイズは彼女が一番合ってる。

 彼女の私服もそれはそれで、クセが強いデザインだけど全裸よりはマシね……。

 

『フィリアくん、そちらもかなり大変だったみたいだな』

 

 弦十郎から通信が入ってきた。多分、フィーネが服を着たからだろう。

 

「で、響たちはどうだった? 苦戦してたみたいだけど……」

 

 あたしは装者たちの様子を聞いてみた。あのヴァネッサたちもかなり強化されてるみたいだったし……。大丈夫だったのかしら?

 

『確かに全滅寸前まで追い詰められた……。しかし、響くんのギアに封印されていた未認可の決戦機能が窮地にいち早く発動して逆転した』

 

 そうか、実験前だから封印しておいたあれを自力で発動させたなんて、響も大したものだわ。しかし、弦十郎の言葉は暗かった。何かあったのね。

 

「何かあったのね。司令……」

 

 あたしは彼のただならぬ気配を感じ取り、そう尋ねた。

 

『ああ、とにかく戻ってきてくれ。その、了子くんもな……』

 

 弦十郎の指示により、あたしたちは司令部に戻った。キャロルはどこかに行ってしまったが……。

 

 S.O.N.G.の本部は日本政府により制圧されていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「まさか、本当に……」

「本部が制圧されるなんて……」

 

 クリスとマリアは口々にこの状況に呆然としていた。

 

「制圧とは不躾な。言葉を知らぬのか」

 

 査察官は憮然とした表情でそう返した。制圧じゃない。どう見ても……。

 

 

「護国災害派遣法第6条。日本政府は日本国内におけるあらゆる特異災害に対して、優先的に介入することが出来る。だったな」

 

「そうだ。我々が日本政府を代表してS.O.N.G.に査察を申し込んでいる」

 

 査察官は弦十郎の言葉に辞令書を見せてそう言った。なるほど、政府を動かしたか。あの男は……。

 

「威力による制圧と同じに扱ってもらっては困る。世論がざわっとするから本当に困る」

 

 挑発的な口調で査察官はそう続けた。

 

「どう見ても同じなんだけど」

 

「あの手合いを刺激しないの」

 

 ボヤく藤尭は友里に窘められていたが、あたしも同感だ。

 

「国連直轄の特殊部隊が野放図に威力行使出来るのは、あらかじめその詳細を開示し日本政府に認可されてる部分が大きい。違うかな?」

 

 それはその通りだ。あたしのクロノスモードやラグナロクも事前に許可を通して発動させてる。

 まさか、彼らの口実は――。

 

「違わないが、故に我々は前年に正式な手続きのほどを……。まさか!?」

 

「先程見させてもらった武装。開示資料にて見かけた覚えがないのだが、さて?」

 

 弦十郎がそれに気付いたのと、同時に査察官は勝ち誇った顔をした。

 

「なるほど、アマルガムを口実にしたのね? 確かに未認可だったわ。ごめんなさい。あたしの仕事が遅かったから……」

 

 あたしたち錬金術師はシンフォギアの強化に勤しんでいたのだが、その中で考案されたのが、新しい決戦機能――アマルガムである。

 

 ラピス・フィロソフィカスのファウストローブの特性をシンフォギアと融合させることにより、攻撃力や防御力を急上昇させることが出来るようになる。その分、頭でっかちな極ぶり性能になってしまうが……。

 

 もちろん、認可を取る予定だったが、ここ最近のゴタゴタや日本政府の担当部署が休みを多く取ったりと嫌がらせみたいなこともあったので、遅れてしまっていたのだ。

 

 弦十郎は結局査察を受け入れた。装者とあたしたち錬金術師、ついでにフィーネの自由とギアコンバーターなどの標準装備の携帯の許可を条件に……。

 

 アマルガムの使用は当面禁止になってしまった。ヴァネッサたちやウェル博士との戦いがかなりキツくなりそうね……。

 

 その上、訃堂は神の力を手に入れてしまってる。その力を持ってして、いつ暴走するか分からない。

 油断だけはしないようにしなきゃ……。

 

 というわけで、あたしはそのまま帰宅することとなった。

 

 

 

「悪いわねぇ、弦十郎くん。しばらく独房にでも入れられるのかと、思ってたわ」

 

 フィーネは笑顔を見せながら弦十郎にそう言った。

 結局、フィーネはあたしと弦十郎と共にしばらく暮らすことになった。

 一人暮らしをさせるわけにもいかないし、軟禁しても無駄だし……。

 

「君は公式には死んだ人間だ。残念ながら法律では裁けない……。もし、少しでも罪悪感があるのなら、力を貸してくれ」

 

 弦十郎は肉体を持ったフィーネに改めて協力を頼んだ。

 

「もう、弦十郎くんたら、固いわねぇ。フィリアちゃんの体を借りたんだもん。この子の為に使うに決まってるでしょ」

 

 フィーネは当たり前みたいな感じで言っているが、今までやったことを思い出してほしい。

 いつ暴走するか分からないから、我々は戦々恐々としているのだ。

 

「あたしは普通に戦力ダウンしてるわよ。あなたの魂がないからクロノスモード使えないし」

 

「大丈夫よ。出ていくときにフィリアちゃんの魂の器をクロノスモードの負荷に耐えられる分だけ広げて来たから。まったく戦力はダウンしてないはずよ」

 

 あたしが苦情を言うと、フィーネはまた当たり前のような口調でそんなことを言う。

 やっぱり、この人は色々と常識じゃ計れない力を持っている。

 

 とにかく、この人が味方として戦うのなら戦力の増強としては申し分ない。

 あたしの体を使っているというのは、不快だが我慢しよう。

 

「ねぇねぇ、弦十郎くん。やっぱり若い子の体の方がいいかしら?」

 

 フィーネはグラビアアイドルみたいなポーズを取ってアホなことを言っている。

 何度も言うがそれはあたしの体だ。この人、自重って言葉を知ってるのかしら?

 

「了子くん、はしゃぐのもほどほどにな。オレは離れにいるから、何かあったら電話してくれ」

 

「ええーっ! 一緒に寝てくれないのぉ?」

 

 フィーネのそんな言葉を完全に無視して、弦十郎はリビングを出ていった。

 そして、あたしは思いっきり不安だという視線をフィーネに送っていた。

 

「大丈夫よ、フィリアちゃん。自重くらい出来るに決まってるでしょ」

 

 フィーネは真剣な表情であたしに向かってそう言った。

 それなら、良いけど……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「櫻井了子、22歳! 歌いま〜す!」

 

「はしゃいでんじゃないのよ!」

 

「まぁ、まぁ、フィリアちゃん。了子さんも楽しんでることだし……」

 

 翌日、オフとなったあたしたちは未来、翼、エルフナインを誘ってカラオケに行こうとしたのだが、フィーネもそれに半ば強引に付いてきた。

 

「エルフナイン、ごめんなさい。変な人が付いてきて」

 

「えっ、ボクは全然気にしてませんよ。錬金術師として、櫻井理論の発案者である櫻井先生と直接お話できるなんて夢のようです」

 

 エルフナインは目を輝かせてそんなことを言っていた。

 あたしはあえて彼女の悪影響にならないようにフィーネを遠ざけていたが、どうもエルフナインはフィーネとずっとゆっくりと話したかったらしい。

 

「先輩、一応は母親なんですよね」

 

「そこだけ記憶喪失にならないかしら……」

 

「半分以上、本気で思っているんですね……」

 

 あたしが本気で浮かない顔をしていたら未来は少しだけ同情してくれた。

 

 

「たまたま予定が空いていたから、立花の誘いに乗ってみたものの……。私も余裕がないのだろうな。今は歌を楽しむよりも防人の業前を磨くべきだと心がはやる。焦るんだ」

 

 翼はうつむきながら両手を震わせた。やはり、まだ引きずっているのだろう。

 

「翼ちゃん、大丈夫よ。すぐに強くなれるし、成長も出来る。今、みんなのギアの強化を急いでるし、何よりこの天才科学者が腕を振るってあげるんだから安心なさい」

 

 歌い終わったフィーネは翼を元気づけるようなことを言った。なんだ、いいとこあるんじゃない。

 

「櫻井女史……」

 

 翼の目に少しだけ光が戻ってきた。

 

「強いだけがすべてじゃない。胸の歌を信じなさい。響ちゃんもね!」

 

 フィーネはウィンクしてそう言った。

 

 つかの間の休暇……、あたしたちは少しだけ癒やされていたように思う。

 

 しかし、この日からこれまでに無いほどの大きな戦いが始まるとは、まだあたしたちは知らなかった――。




フィリアの体を利用してフィーネがほとんど完全に復活しました。
これで、S.O.N.G.陣営の戦力がかなり補強されました。
次回もよろしくお願いします!
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