【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
装者不在でのバトルをご覧ください!
「急ごしらえなので、戻りはこの転送装置を起動させている状態でないと、テレポートジェムを使っても月の遺跡から戻ることは出来ません」
種子島宇宙センターでエルフナインは装者たちに最後の説明をする。
「ねぇ、エルフナイン。もしも、だけど……。その転送装置が壊れたりしたらどうなるのかしら?」
マリアはエルフナインの説明にツッコミを入れた。そりゃ、気になるわよね……。
「皆さんが月に取り残されてしまいます」
エルフナインは言い難そうな顔をして事実を伝えた。
「うわ〜。もしもそうなったらウサギの代わりに餅つきをしなくてはデスな〜」
「さすがは常識人の切ちゃん。建設的な意見だね」
「うう、冗談デスよ〜」
切歌が和ませようとお気楽な発言をしたが、効果はないみたいだ。
「大丈夫だよ。フィリアちゃんたちが守ってくれるんだもん。何かあっても何とかしてくれるよ!」
響は迷いのない目をしてあたしたちを信じてくれた。あたし以外は元々敵同士だったんだけどな。
「まさに昨日の敵は今日の友ということか。敵として戦ったときは心胆を寒からしめられたものだが、味方となるとこうも頼もしい」
翼が言うとおり、フィーネもキャロルもサンジェルマンも敵のときは驚異だったが、味方になった今は心強い。
「フィーネ曰く月の遺跡には異端技術による防衛装置があるから、それに対抗出来るのって、あたしたち居残り組を除いたらシンフォギアしかない。リスクが高い任務だけど頼んだわよ」
あたしはシンフォギア装者の彼女らが行く意味について話した。
「ちっ、仕方ねぇ。あたしらが帰って来るまでここを死守してくれよ」
クリスは頭を掻きながらあたしたちに背中を預けてくれた。
「では、転送装置を起動するわ。準備はいい? 念の為にシンフォギアを纏っておくといい」
サンジェルマンが転送装置を起動する。
「帰りの分のテレポートジェムを紛失しないように気を付けてなさぁい。あーしらが迎えに行くのも大変なんだから」
「無くして帰れないなんて笑えないワケダ」
カリオストロとプレラーティは小学生の遠足に対する注意みたいなことを言っていた。
さすがにそんなバカなマネしないでしょう。
「さっさと行って帰って来い。オレたちの労力をせいぜい無駄にしてくれるなよ」
キャロルは相変わらずの物言いだったが、実際、この装置を作るのにかなり尽力してくれた。
やはり、彼女は天才なのだと実感した。
本来、ロケットの発射台となる場所に円形の半径5メートルほどの装置を取り付けており、それが金色の光を放っている。
装者たちは装置の上に乗って準備が完了した。
「じゃあ、テレポートジェムを使うね」
響が錬成陣が描かれてある瓶を装置の上に投げつける。
これで彼女たちが転送されるはず――。
「ごめんねー。フィリアちゃん。どうしても月の遺跡に行きたくて、我慢できなくなっちゃったから……」
まさに彼女らが転送される瞬間に、フィーネが装置の上に乗り込んでしまう。
「なっ、フィーネ! 命令違反よ! 戻りなさい!」
あたしが声を上げるも、フィーネは手を振りながら消えてしまった。
あいつ、何考えてるの!
『了子くん……、後で覚えてろよ……。まぁ、行ってしまったものは仕方ない。君たちは装者たちの帰還までその装置を守ってくれ』
弦十郎は半ば呆れながらフィーネの件を甘受して、あたしたちに装置防衛の任務を命じた。
なんか、あいつがとんでもない事を最後に仕出かしてくれそうであたしは不安でしかないんだけど……。
エルフナインには一足早く本部に戻ってもらった。戦闘になると危険だし……。
「月の遺跡に眠る情報がシェム・ハにとって都合の悪い情報なら、おそらく彼女はここを狙ってくる」
「神の力に加えて小日向未来の肉体を持つというところが厄介だな。だが、いい加減、神殺しだけに頼るのも錬金術師としては些か癪に障る」
「我々はあらゆる現象を解析して、解き明かしてきた。それが埒外の現象だとしても……、それに抗って見せようじゃないか」
あたしたちは激戦の開幕を予感していた。そして、たとえ神と敵対したとしても必ず打ち破って見せるという気概を持っていた。
「意外なゲストが来たワケダ」
「ヴァネッサちゃんたち……、何しに来てくれたのかしら?」
プレラーティとカリオストロが見張っている方向からノーブルレッド……、ヴァネッサ、エルザ、ミラアルクの三人とウェル博士がやって来た。
何のつもりかしら? そもそも、目的が分からないんだけど……。
「フィリア=ノーティス! お前を壊しに来たわ! ドクターの仇は必ずや私たちが討ってみせる!」
ヴァネッサは殺気を剥き出しにして、あたしを睨みつける。
「あなたたち、今のこの状況わかってるのかしら? シェム・ハが世界中の人間に悪さをしようとしてるのよ。人類同士が争っている場合じゃ――」
「愚問だぜ! シェム・ハだろうがなんだろうが、ドクターに敵うわけないんだぜ」
「ドクターがこの世界を支配した後にわたくしめらを人間に戻してくれると確約してくれたであります! そのために邪魔な神殺しを月から帰還させるわけにはいかないのであります!」
あたしの言葉に被せるようにミラアルクとエルザが目的を語る。
そうか……、ウェル博士はそんな甘言で彼女らを付き従えていたのか……。
「立花響が居ない今! 僕に敵う者は誰も居ないのです! 僕はついに天を握ることが出来るようになりました! レディ! いつかの借りは返してもらいますよ!」
ウェル博士はネフィリムの腕をキャロルに向かって伸ばしながら、彼女に恨み節を言い放った。
「オレを嘗めるな!」
キャロルは
ウェル博士の腕は粉々になって砕け散ったかと思えば、すぐに並行世界の別個体と入れ替わり元通りになった。
「んっんー! 無敵というのは存外気分の良いものですねー! さて、今度はこちらの力を試させてもらいましょうか! 最速で最短でまっすぐに――一直線にィィィィィッ!」
まさに響を彷彿とさせる突撃を行うウェル博士。
そのパワーはネフィリムの力に神の力がプラスされ、本家の彼女以上の力に感じられた。
「――っ!? がはっ!」
キャロルはファウストローブを身に纏っているにも関わらず腹に一撃を受けて、激しく地面に体を打ちつけてしまう。
「ふっふっふ、ざまあみろ! スカッとしたなぁ。一度負かされた相手を蹂躙することがこんなに気持ちが良いなんて!」
ウェル博士は満足そうに笑いながらキャロルを見据えていた。
「スキだらけなワケダ」
そんなウェル博士にプレラーティはけん玉で後頭部を思い切り殴りつける。
「――はうっ! って、無敵の僕にチンケな攻撃が効くわけないだろっ! がはっ――」
「効かないかもしれないけれど、あーしらが本気で連携すれば、あんたに何にもさせないことは可能なのよぉ。痛みは感じるんだから、それなりに地獄は見るはず……」
カリオストロがウェル博士の鳩尾に拳をめり込ませる。
そして、そこから顔面を全力で殴った。
彼女らに任せておけばウェル博士は何とかなるかもしれないわ……。
「よそ見してる余裕を見せるとは気に食わない奴だぜ!」
ミラアルクは無数の蝙蝠をあたしに放ちながらそう言った。
「コードクロノスモード……!」
あたしはクロノスモードを開放して目を瞑る。
――
時を止めてミラアルクの背後に回り込み、彼女に連打を浴びせる。
彼女は地面に叩きつけられた。
「ぐはっ……!」
「ミラアルクちゃん! ちっ、時限式とはいえ、時を操る力は驚異的ね……! こうなったら!」
ヴァネッサは自らの体をロボットのように変形させて巨大化した。ウェル博士にかなり弄られてるみたいね……。
「私たちに居場所と命を与えてくれたドクターの邪魔はさせない!」
彼女は巨大なロケットアームをあたしに飛ばしてきた。パワー勝負なら負けないわよ。
――
体内のエネルギーを身体能力の引き上げに集中させて、ヴァネッサの攻撃を片手で受け止める。
「この化物ッ! なんで、お前みたいな奴が、あいつらと手を繋いで笑っていられるの!」
ヴァネッサはあたしの顔を悲しそうな顔で見つめながら吐き捨てるように言葉を放った。
「ヴァネッサ、あたしだってあなたと同じで人間じゃない身体に絶望したことはあるわ。でも……、不完全で弱かったあたしに手を差し伸べてくれた人がいた……。だからこそ、あたしは前に進めた。進まなきゃいけないと思えた……。あの子はきっとあなたにも手を差し伸べたんじゃないかしら?」
あたしは彼女に向かってそんな言葉をかけた。
もちろん、自ら望んでこの身体になったあたしと彼女らは違う。だけど、人ならざる身になった辛さは記憶を失ったときに痛いほど感じた。
だからこそ、あたしが彼女らに恨まれようと、何とか卑屈な考え方だけは改めて欲しかった。
「わたくしめらに、手を差し伸べてくれたのはドクターだけであります! フィリア! そんな言葉で言い包められるほど、わたくしめらは弱くないのであります!」
エルザはヴァネッサを取り押さえてるあたしを睨みつけて銀色のケモノのような鎧を身に纏った。
「オールアタッチメント! Vコンバインであります!」
そして、猛スピードで装置に向かって駆け出して行った。
くっ、やらせないわよ!
――
あたしは天から巨大な雷撃をエルザに向かって落とした。
彼女は天災と同等の一撃を受けて地面に伏した。
「よくもエルザちゃんを!」
ヴァネッサは至近距離であたしに向かってミサイルを何発も撃ってきた。
巨大な爆風によりあたしとヴァネッサは吹き飛ばされてしまった。
「ちっ、何て無茶をするの!」
あたしはヴァネッサの無茶苦茶な攻撃に辟易した。
まったく、自爆技を使うなんてやりにくい……。
「くっ、私の最大火力を受けてもその程度なのね……。しかし、神となったドクターが……」
「あら、ドクターがどうかしたの? 彼ならもうすぐ……。ただの人よ……」
あたしは神の力を得たウェル博士の方を指さした。
「ようやく拘束した。思ったよりも馬鹿力な上に聖遺物を食らうネフィリムの動きを封じるのが厄介だったが……」
キャロルが糸でウェル博士をガチガチに拘束して、その上でサンジェルマンたちが三人がかりでネフィリムの腕の動きを錬金術で押さえつけていた。
「ぼっ、僕をどうするつもりだい? 何をやっても無駄なんだぞ!」
ウェル博士は上擦った声でキャロルたちに向かってそう言い放つ。
「恐るべきは埒外の物理法則によるダメージを無効化。だが拘束に対してはどうだ? これはかつてフィリアたちがディバインウェポンを相手取ったときに使った戦術だ」
「くっ……。悪辣な……!」
キャロルのセリフに彼は苦悶の表情を浮かべる。
「アルカヘスタ!」
さらにウェル博士をキャロルは結界の中に閉じ込めた。
「チフォージュ・シャトーに備えられた世界分解機能を限定的に再現し……、応用する。神の力に対抗するための錬金術か……」
「キャロルちゃん、一人じゃ足りないエネルギーもあーしらで補えば!」
「人以外の構造を不純物……、つまり神と定めて分解出来るというワケダ」
サンジェルマンたちはキャロルのやろうとすることに力を貸すみたいだ。
「ヤツの場合はネフィリムとやらも分解される対象になるがな――。オレの錬金術を嘗めるなよ!」
キャロルがそう言い放つと、結界を爆発させた。
そして、爆煙が晴れるとただ一人の白髪の人間が呆然とした表情で膝をついていた。
「「ドクター!」」
ヴァネッサたちはウェル博士の元に駆けつける。どうやら本当に神の力の分解に成功したみたいね……。
その証拠にウェル博士の体は所々に火傷の跡が見える。
「――そんな、せっかく手に入れた神の力が……。僕こそこの世の支配者に相応し――。ぐふっ――」
ウェル博士がセリフを言い終える前に彼は赤い刃に身を貫かれる。
「傲慢である。我を差し置いて支配者だと?」
無表情でウェル博士に致命傷を負わせたのは、未来の体を乗っ取り、好き勝手に操っているアヌンナキの一人――シェム・ハ……。
世界を懸けた戦いの前哨戦は終わり……、いよいよ、最後の戦いが幕を開けた!
原作では失敗した神の力の分解を成功させてみました。
キャロルに加えてサンジェルマンたちがエネルギーを貸したので一人にかかる負担は軽減されてます。
錬金術師が神の力を凌駕するシーンが書きたかったのです。
しかし、先に書いておきますが、ウェル博士はまだ退場しません。むしろここからが彼の活躍の本番ということだけ予告しておきます!
せっかく、設定盛り込んだので、シェム・ハ戦にも残ってもらいます。
次回からシェム・ハ戦です。最終回までよろしくお願いします!