【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課   作:ルピーの指輪

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シェム・ハ戦の開幕です。
それではよろしくお願いします!


神VS錬金術師たち

 

「げふっ……、ぼっ僕はしっ、死ぬのか……」

 

 ウェル博士はおびただしい量の血が体から吹き出して、顔色がみるみる悪くなっていた。

 

「ドクター! しっかりするんだぜ! そっ、そうだ、血だ! こいつで――」

 

「輸血するにも設備がないであります!」

 

「嫌だっ! 私たちの前からまた居なくならないでください!」

 

 ヴァネッサたちは動揺してウェル博士に声をかけることしか出来ていなかった。

 

「はぁ、仕方ないわね……」

 

 ――ループ・ザ・ワールド――

 

 あたしはウェル博士の体の時間を巻き戻した。埒外の存在である神の力に関してはこの能力は干渉できないが、分解されたネフィリムとガングニールの腕は再生してしまった。

 まったく、融通の効かない能力ね……。

 

「はっ……、体が……、治った」

 

 ウェル博士は信じられないという顔で自分の傷口があった場所を眺めていた。

 

「フィリア……、なぜ、ドクターを……?」

 

 そして、ヴァネッサは彼よりももっと驚きながらあたしを見ていた。

 

「知らないわよ。そんなこと。こいつは妹に酷いことをしたし、絶対に許せない大馬鹿者よ! でも、きっとあの子が居たら、助けてほしいって言ったと思うから……。それだけよ。言っとくけど、罪は償ってもらうわ。絶対にね……」

 

 あたしはウェル博士のことを恨んでいる。フィアナを狂わせてボロボロにしたことは本当に許せない。

 だけど、目の前で死ぬ人間をついに見逃すことが出来なかった……。多分、あの子たちの影響なんだろう。

 

 そして、あたしは彼女らに戦意がないことを感じ取り、シェム・ハに意識を向けた。

 

 そのときである。弦十郎から通信が入る。

 

『フィリアくん! 月の遺跡から通信が入った。シェム・ハの目的、そしてバラルの呪詛の役割がわかったぞ――』

 

 シェム・ハの目的は人類を生体端末群として、ユグドラシルを使って星と命を意のままに操れる武器、怪物へと改造することらしい。

 

 かつて人類を見守ってきたアヌンナキたちの中で彼女はそれを目的に反乱を起こした。

 

 他のアヌンナキたちは対抗したが、自身を言語と置き換えることであらゆるシステムに潜伏するシェム・ハを覆滅することは出来なかった。

なので、彼らはやむなくシェムハを封印して、地球の放棄を決めた。

 

 シェムハは全人類の遺伝情報内に記憶され存在し続けていて、事実上の不死身となっている。

 

 ゆえに彼女を無力化するために、バラルの呪詛によって統一言語で繋がれた人類を分断したらしい。

 

 つまりバラルの呪詛は、不和の根源であると共に、人類を今日まで守護してきたのだ。

 

「なるほど、だったらあいつの目的は月の遺跡を破壊してバラルの呪詛を解除すること」

 

 あたしは今までの疑問に合点がいった。

 ていうか、フィーネってかなりやらかしてるわね……。勘違いして月を破壊して、愛した人の好意を無に帰するところだったんだから……。

 

「ふん。ヤツの目的などどうでもいい。ここでオレたちがヤツを倒してしまえば終わりだろう」

 

 キャロルは弦十郎からの通信を鼻で笑っていた。そう簡単にいく相手かしら? ウェル博士に使った手が決まれば何とかならなくもないけど……。

 

「聞き捨てならんな。虚弱な人間がよく吠える。そうさな、少々躾が必要か?」

 

 シェム・ハは光の玉を次々と繰り出してあたしたちに向けて撃ち出した。

 

「装置は必ず守らなきゃ。キャロル! やるわよ!」

 

「わかっている!」

 

 ――五大元素(アリストテレス)――

 

 あたしとキャロルが地水火風に加えて無属性の錬金エネルギーを螺旋状に展開させて繰り出す大技でシェム・ハの放った光の玉を蹴散らす。

 

「驚愕だ。神の力に肉薄するこの威力……。だがしかし……。無意味だ……」

 

 アリストテレスを避けもせずに、それを受けて並行世界の別の個体と入れ替わり無敵性を見せつける。

 

「いい加減、その手品にも辟易してきたわ!」

 

「この弾丸を使うワケダ。サンジェルマン。私が作った特別性なワケダ」

 

「さっすが、プレラーティ。あーしと違って真面目ねぇ」

 

 プレラーティがサンジェルマンに金色に輝く弾丸を渡す。

 

「フィリア! キャロル! 足止めを頼む!」

 

 サンジェルマンは銃を構えてプレラーティとカリオストロの力を借りてエネルギーを充填している。

 

 何かをするつもりね……。

 

「オレに指図をするな、と言いたいところだが聞いておいてやる」

 

「ええ、何か手があるのね」

 

 あたしとキャロルは目で合図して、シェム・ハの両脇に立つ。

 

「不敬である。人形風情が……、これ以上の狼藉は――。――なにっ!」

 

 時間を止めてシェム・ハの背後に回ってあたしは彼女に掌底を押し付けて吹き飛ばす。

 今のあたしのクロノスモードは再起動したチフォージュ・シャトーのエネルギーを使えるようにキャロルに調節してもらって可動時間が大幅にアップしている。

 シェム・ハと戦える時間はまだまだある。

 

「お前はあまりにもオレたちを嘗めすぎだ。高くつくぞ、その傲慢さは!」

 

 キャロルが手を握ると糸を丸めたボール状のものがシェム・ハに向かって次々と飛んできて、彼女を釘付けにした。

 

「よくやった! 二人とも! この弾丸は先程の戦闘によって得られた神の力の組成式を記録しており、それを分解する効果がある!」

 

 ――神滅ノ魔弾――

 

 神の力のみを分解する超圧縮された錬金エネルギーが込められた弾丸をシェム・ハに向かって撃ち出した。

 

「――なっ!? バカなっ!」

 

 シェム・ハは弾丸をまともに受けて、光の十字架に磔にされる。

 そして、体の中心から黄金の光を発して爆発した。

 

 未来の体は……、無事よね……?

 

 そして、爆煙が晴れる……。

 

「まさか……、我々の錬金術を……」

 

「神獣鏡の凶払いの力で……」

 

「無効化にしたというワケダ……」

 

 サンジェルマンたちは愕然とした表情で膝をついてしまった。

 さっきからエネルギーを使いすぎて、力尽きそうなのね……。

 

 

「ふっ、神に肉薄した……。それだけは認めてやろう。そろそろ頃合いだな……」

 

 シェム・ハがそう呟くと、なんと次々とユグドラシルがせり上がってきた。

 

 こっこの近くだけじゃない……!? まさか、世界中で……!? だって、バラルの呪詛は破壊されてないのよ……。

 

「おそらく世界中の演算端末のネットワークを利用してるのだ……。確かに神に相応しい力を持っているようだ……」

 

 キャロルが珍しく焦りを顕にしながら、現状を分析した。

 

 

「さて、茶番は終わりだ……。そろそろ本番を始めようぞ……」

 

 シェム・ハがそう声を発した瞬間……。弦十郎から再び通信が入ってきた。

 

『フィリアくん! 了子くんにシェム・ハの一部が仕込まれていたらしい……。おそらく腕が切断されたときにだろう……。彼女は操作されて、シェム・ハの断章……、つまりウィルスを月の遺跡の装置に埋め込まれた……』

 

 弦十郎から凶報が入る。フィーネの動きが変だと思ってたけど……、まさかジェム・ハに操られてしまってたなんて。

 

「まさか、あたしは時間を戻して治療したのよ……。でも、響のときも確かに神の力は取り除けなかった……。やられたわね……」

 

 あたしは心の中で舌打ちをした。

 シェム・ハの思いのままに事態が進行していることに……。

 

『さらに悪い報せだ。了子くんに宿るシェム・ハの力を除去するために響くんが彼女の頼みで神殺しの力で攻撃した結果……、彼女の体は瀕死の重傷を負ってしまった……。つまり君の体は……』

 

 弦十郎は悲痛な声を出して、あたしに報告をする……。

 

「だったら、早く帰ってきたらいいじゃない。彼女たちはどうして帰って来ないの?」

 

「ふふっ……、愚問だな。人形……。我がウィルスを蔓延させたのだ。座標移動の妨害など容易い」

 

 あたしの疑問をシェム・ハは嘲るように笑いながら答える。

 シェム・ハは月の遺跡の内部からテレポートジェムの使用の妨害をしているようだ……。

 

 くっ、もう駄目なの……? あたしの心は絶望に染まっていた。

 

「ようやくその顔が見えたの。さて、目障りな貴様らを一人ひとり屠ってやろう」

 

 シェム・ハがこちらに向かって光の玉を飛ばそうとしたとき、黒い腕が伸びて彼女を殴り飛ばした。

 

「君が絶望してどうするんですか! フィリア! テレポートジェムが内部から使えないということは外部からは使えるということです。助けに行けばいいじゃないですか! 帰り道はこの子たちが作れますよ!」

 

 ウェル博士がシェム・ハに向かって突撃をしていた。

 

「ドクターの命令だから仕方なしになんだぜ!」

 

「わたくしめら3人が形成する全長38万キロを超える哲学の迷宮は!」

 

「空間を捻じ曲げて地球への帰り道を作ってみせるわ」

 

 三人はなんと哲学の迷宮を応用して月から地球への帰路を作ると宣言した。

 

「散々敵対してきた私たちを信じるかどうかはあなた次第よ……」

 

 ヴァネッサは妙にスッキリしたような表情であたしを見つめていた。

 

「信じるもなにも……、それしか方法がないんだったらあたしはそれに賭けるわ……」

 

 月に行くとチフォージュ・シャトーからのエネルギー供給が受けられなくなる。フィーネの傷を治すのがやっとかもしれないわね……。

 

「キャロル、みんな! 少しだけ留守にするわ! みんなと一緒に必ず戻るから……! 待ってて!」

 

 あたしはキャロルたちに後を託して、テレポートジェムで月へと向かった――。

 

 




きれいなウェル博士が出てきました。今さらですけど……。
そして、フィリアは月に向かいます。
次回もよろしくお願いします!
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