【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
原作13話の中盤までです。
それではよろしくお願いします!
テレポートジェムは正常に作動して月の遺跡まであたしを運んだ。
目の前には泣き崩れている響、そして血まみれで倒れているフィーネがいた……。
「フィリアちゃん……、ごめん……、私……、了子さんを……、フィリアちゃんの体を……」
響はあたしに気付くと泣きながら謝罪をしてきた。まさか、フィーネが……。
「フィリア……、櫻井女史はもう……」
翼が言い難そうな顔をして首を振っていた。
「バカな! あの死んだって死なないような奴よ! なんで二度も――!」
信じられない。神殺しの響の拳を受けた程度で彼女がやられるとは思えない……。
「シェム・ハに体を乗っ取られた了子が私たちに襲いかかってきたの。私たちは全員でアマルガムまで使ってようやく彼女を拘束して、この子の神殺しに望みを託したんだけど――」
「響さんが攻撃を躊躇ってしまって、拘束が破られてしまったんデスよ……」
マリアと切歌が言うにはシェム・ハに体を支配されたフィーネが彼女らと戦闘をしたようだ。
「そしたら、フィーネのやつ……。自分の魂を燃焼させて……、シェム・ハの支配に抵抗したんだ。だが、そのせいで……、神殺しを受けたとき、魂ごと潰されちまったらしい……」
「だから、すぐに心臓が止まってしまって……」
フィーネが自らの魂を燃焼させてシェム・ハの支配に抗ったから、彼女は――。
それなら……。
「あたしの中にあるフィーネの魂の一部を戻せばあるいは……」
あたしはフィーネの体に触れて、魂の奥底に眠る彼女の魂に語りかけた。
“フィリアちゃんなら、きっと私に気付いてくれるって信じてた。さすが、私の娘ね……”
“まったく……、調子がいいんだから。早く帰るわよ……”
彼女の体の心臓が微かに動いたとき……。あたしは時を戻した――。
同時にクロノスモードは解けてしまった。
「ありがと、フィリアちゃん。それに、響ちゃん。ごめんね、嫌な思いをさせて……」
フィーネは目を覚ましてニコリと笑った。勝手に逝かせないわ。だってあなたは私にとって最低の――。
「了子さん! 本当に良かった……! ぐすっ……」
響はフィーネに抱きついて彼女の無事を喜んだ。
「私だって自分のやったことに対しての落とし前がつけられないまま死ぬわけにはいかない! あの御方に報いるためにも――!」
フィーネはシェム・ハへの復讐に燃えていた。
「思ったよりも元気そうね。あたしだったらショックで立ち直れないけど……」
あたしがフィーネだったら死にたくなる。だって、何千年もの間、勘違いして暴走してたのよ……。エンキというアヌンナキの真意をずっと真逆に受け取って……。
「もちろん……、ショックよ……。でも、ここで挫けてたら……、それこそあの方に合わせる顔がないもの。それに……、私がやったことは許されないことばかりだけど……、1つだけ良かったことがあるわ……」
フィーネはあたしの目を見てそんなことを言う。
「それはあなたを創ったことよ。フィリア……。まったく、私の娘がどうしてこんな風に子に育ったのかしら? あなたを生み出したことだけは後悔はない。あなたが、私に生きる力を与えてくれてるの」
何か変なものを食べたのかというくらい、彼女から似合わないセリフを聞いてあたしは困惑していた。
「こんなとんでもない反面教師が近くに居たら、嫌でもまともになろうとするわよ。じゃあとっとと地球に戻ってシェム・ハとかいう馬鹿な神様から未来を返してもらいに行くわよ」
「そうね。未来ちゃんはこの世界の最後の切り札になりうる子。私の理論が正しければ……」
あたしの言葉をフィーネは肯定する。未来が最後の切り札というのはよくわからないけど……。
「しかし、この場所はシェム・ハのウィルスによってテレポートジェムの使用が出来なっている。この状況で地球にどうやって戻ればいいんだ……?」
翼が腕を組んで考え込む仕草をした。そうだ、大切なことを言い忘れていた。
「そろそろここまで伸びてくるはずよ……、埒外の迷宮……、哲学の迷宮が……!」
そうあたしが呟いた瞬間に床を貫いて青く光る哲学の迷宮の入口が顔を覗かせた。
「これって、あのノーブルレッドとかいう連中が使ってた――」
「哲学の迷宮ね……。私たちが閉じ込められた……。なんで、ここに……!?」
クリスとマリアが口々に哲学の迷宮がここまで伸びてきた事に疑問を呈していた。
「なるほど、この迷宮が地球までの最短ルートになっているってわけね……」
「最短ルート? どういうことですか? 了子さん……」
フィーネはすぐに哲学の迷宮の狙いに気がついた。
「つまり、この哲学の迷宮はあらゆる外的な干渉を排除して38万キロメートルの彼方にある地球までの道標を担っているということよ」
彼女は掻い摘んで装者たちに説明をした。
「なんデスとぉっ!」
「切ちゃん、わかってないのに敢えて大げさなリアクションをしないほうがいい」
切歌はあまり理解してないようだが、概ねの内容は伝わったみたいだ。
「つまり、地球までのトンネルが突貫工事で繋がったってわけね。あの連中が作ったものというのが一抹の不安だけど……」
「でも、フィリアちゃんがヴァネッサさんたちを信じてここまで来てくれた……。だったら私も信じる。きっと分かり合えたと思うから……」
響はマリアの不安を一蹴して哲学の迷宮に飛び込もうとした。
「そうだな。疑心暗鬼にかられて死すよりも……、人間らしく生きてみせよう」
翼も同調して、ついにあたしたちは全員揃って哲学の迷宮へと飛び込んだ。
最短で最速でまっすぐに、一直線に帰るべき場所に帰るために――。
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「ほう、驚嘆に値する……、まさか月からの帰還に成功するとは……」
シェム・ハはそう言っていたが、実際にあたしも驚いた……。
途中でヴァネッサたちの体力が切れてしまって哲学の迷宮が途切れてしまった。
大気圏に突入するにあたって、フィーネを含めた7人のシンフォギア装者は絶唱によるフォニックゲインの上昇によりエクスドライブモードを発動。
無事にシェム・ハの元に戻ってきたのである。
「フィリア、よく連れて帰ってきた。7人のシンフォギア装者がいるのなら……、何とかなるかもしれん……」
シェム・ハをウェル博士と共に食い止めていたキャロルがボロボロになりながらも、あたしに話しかけてきた。
ウェル博士もヴァネッサたちの哲学の迷宮をギリギリまで守るために体を張っていたらしい。
今は彼女らとともに体力が尽きて、座り込んでいる。
「7人のシンフォギア? それに何か意味があるの? まぁ、あたしもそろそろ限界だから見守ることくらいしか出来ないけれど……」
実はあたしもエネルギーを大量に消費して限界が近づいていた。
あたしが持っていたエネルギー源の菓子は大気圏で燃え尽きてしまい、キャロルもすでに使い果たしたみたいだった。
「7つの惑星と7つの音階。世界と調和する音の波動こそが統一言語。 7人の歌が揃って踏み込める神の摂理……。つまり7人の装者が共闘すれば、あの忌々しい埒外物理による無敵の防御も……」
「打ち破れるという道理なわけね……。じゃあ、フィーネがシンフォギアを持ち出したのは……」
キャロルの出した仮説を裏付けるようなフィーネの動きに私は納得をする。
「おそらく、ヤツに対抗するためだろうな。月の遺跡に同行したのも含めて。まぁ、操られたのは間抜けな話だが、ヤツの悪辣さを考えると仕方ないとも言える……」
「なるほど、だからあの人は自分の実験用のプロトタイプを作成したあとに、7つのシンフォギアを作ったのか……。しかし、未来が体を乗っ取られた今は神獣鏡のシンフォギアが使えない。だから、切り札としての自分用のシンフォギアで代用した……」
フィーネがシンフォギアを作った理由もそこにあるのだとあたしたちは確信していた。
なぜなら、あたしたちが会話をしている間にもすでにシェム・ハと装者たちは戦闘を開始しており、XDモードで戦う彼女らはシェム・ハの無敵性を打ち破っていたからだ。
これなら……。
「いや、それでもまだ、シェム・ハに天秤が傾いている――。オレとあの三流科学者がヤツに勝てなかったのは……、ヤツが無敵だったからじゃない……。三流科学者は神殺しも持っていた。しかしらヤツの無尽蔵のエネルギーに単純に力負けして及ばなかった……。やはりお前の力が必要になりそうだ」
キャロルはそう言ってあたしの背中に触れた。
「オレはパパからの命題をずっと考えていた。世界を調和する波動が統一言語なら……、それを失った今……、何を持って繋がろうとすればいいか……。それは――
彼女からエネルギーが流れてくる。残り少ない力をあたしに分けてくれたのか……。
この子の方があたしよりも強いのに……。
「いや、長く連中と関わってきたお前のほうが力になれるだろう。あのシェム・ハはお前だけは計画の邪魔になると言った。嫌がらせは、お前の得意分野だろ?」
「人聞きの悪い……、でも行ってくる。未来の体でこれ以上好き勝手させられないわ……。コード……、クロノスモード……」
あたしは戦場へと再び向かった。
「無粋に足掻く。だがせめて散り際は――白銀にきらめくがいい!」
すべてを白銀に変える光線をシェム・ハは倒れた装者たちに向かって発射していた。
「相変わらず、上から目線ね。先輩って敬ってくれる可愛い子だったのに……」
あたしは黄金錬成でその光線に対抗した。
なるほど、これはさっそくキツイ一撃だ……。
「フィリアちゃんが黄金錬成を!?」
「人形風情が何度も邪魔をする! 実に癪に触る!」
響は驚き、シェム・ハは顔を歪めてあたしを見た。
「それはこっちのセリフよ。まだあたしは未来と決着をつけてない! あんたみたいな雑魚はお呼びじゃないんだから!」
「決着? なぜ貴様の顔を見ると苛つきが抑えられぬのだ?」
あたしの声を聞いたシェム・ハはさらにムッとした表情であたしを見ていた。
「フィリアちゃん!」
「響! 知らない奴が未来のこと好き勝手してるのよ。どう思ってんの!?」
あたしは響にそんな質問をする。彼女の気持ちを確かめるために……。
「未来を、好き勝手って……、嫌だよ。そんなの……。だって未来は……」
「その気持ちよ。その嫌な気持ちはどこから湧き上がってるの!?」
「私は……、未来が好きだって気持ちから……! 愛してるから……! うん。だから、勝手なことをされたくない! これは私のワガママむき出しの答えだ!」
彼女はあたしの問いに答えてくれる。何をあたしは自分から振られに行ってるんだろう。
「それでいいわ! だったらあなたはあなたらしく! あればいい。自分をさらけ出してぶつかりなさい!」
「だけど、繋ぐこの手は呪われて、未来を殺す力が……」
「悪い頭を使うんじゃないわよ! いいわ、そこで見てなさい。あたしはもう、未来に遠慮しないわよ!」
あたしはそう叫んで、シェム・ハの光線を押し切った。
「忌々しい。だがもう何をしても遅い!」
シェム・ハは頭を振ってあたしたちを睨む。やはりこのときが来てしまったか……。
「何をするつもりなの?」
マリアは彼女の言葉にそう返すが、時はすでに遅かった。
「さあ、還るのだ。5000年前のあるべき形へ!」
シェム・ハがユグドラシルを操り、全人類を端末化させて繋げたのだ。彼女の野望のために……。
“ふぅ、危なかった。あなたの身体の中に避難してなかったらやられる所だったわ”
“まったく、要領がいいんだから。でも、あなたが来てくれて助かったわ。これならアレが使えるでしょう”
“私が一緒でも使える時間は短いわよ。でも、あのトンデモを相手にするならそれしかないか……”
「神殺し! そして、人形……! やはり、接続を免れていたか……!」
「未来! あなたと喧嘩してやるわ! コード……、ラグナロク!」
あたしは最後の戦いのために再び神の力を纏うことにした。
これは世界のための戦いじゃない。
あたしの小さなわがまま……、彼女との意地の張り合いの延長戦!
響が立ち直るまで、フィリアVSシェム・ハの最終戦。
次回が多分原作シリーズの最終話になると思います!
ここまで読んでくれてありがとうございます!