【本編完結】銀髪幼児体型でクーデレな自動人形《オートスコアラー》が所属する特異災害対策機動部二課 作:ルピーの指輪
それでは、よろしくお願いします!
コード、ラグナロク――レイラインを強制的に可動させて神の門を開きその力をこの人形の身に収めることができる理不尽極まりない機能である。
しかし、あまりのエネルギーの大きさにあたしとフィーネの魂を融合させた状態でも長い時間、神の力を使用すると魂がその力に押し潰されて命に関わってしまう。
故にあたしにとっては非常にリスキーな決戦機能である。
「人形風情が我と同じ領域に足を踏み入れただと? もはや不敬どころでは済まされんな」
シェム・ハはあたしが神の力をもって立ちはだかったことに不快に思っているようだ。
「がっつり威厳を保とうとしてるけど、あんたのやってることはただの自己満足のテロ行為よ。あたしの知ってる未来はそんなあんたなんかに支配されない。必ず抗うタイミングを伺ってる」
あたしはシェム・ハを指さしてそう言った。人類を自分のエゴを丸出しにして好き勝手にしようとしてるヤツに負ける気はない。
「ふっ、人類の未来を想うからこそ我は痛みから解放し、そして完全な一個体に改造しようとしてやっているのだ。それが我の不完全なる個体の脆く弱いことを知ってるがゆえの愛だ」
シェム・ハは自分こそ人類の為になることを成していると主張する。完全な個体になることこそ人類の為であると。
「それはどうかしら? 人間は不完全だからこそ、その中に繋がりがあり、愛を受けて、そして人は成長できる。あたしの中には繋がりの中で培った想い出が、愛が力となっている!」
あたしは弦十郎と一緒に映画談義をしながら彼に教えてもらった構えをとる。
「父、風鳴弦十郎は教えてくれた! 大人だからこそ夢を見ると! 自分が出来ることの範囲が広がるから、そのために頑張れると! 成長出来るから、人は次の世代に託すことが出来るのだと!」
あたしはシェム・ハの光の玉の乱打を掻い潜って、正拳を彼女の腹に当てる。
「がはっ――。なぜっ――!」
あたしの技でダメージを受けたことにシェム・ハは驚きの言葉を出す。
「並行世界のどこかの個体にと入れ替わるなら、すべての個体に一撃を与えたまでよ。神の力が並行世界と繋がるのなら、そんなことは容易いのよ」
「驚嘆である。そんな型破りな発想は誰が――?」
シェム・ハはあたしの途方もないやり方に目を見開いた。神の力を得ただけであたしがそんな発想が出来るはずがない。
「母、フィーネは教えてくれた。この世の中には常識じゃ計れないものがあると! そして、愛よりも人を狂わせて、そして惹きつけるものはないということを!」
そう、フィーネはとんでもないことばかりしでかしているが、あたしに沢山の知識を与えてくれた。
そして、あたしは1000を超える蜂の巣状のバリアを繰り出してシェム・ハの攻撃を完全に防御する。
「――なっ!?」
シェム・ハはフィーネの能力のスキの無さに驚く。
「あたしが愛した人の娘、キャロル=マールス=ディーンハイムはあたしに探究心と好奇心を持ち、世界を知ろうと自ら考えて動くことの尊さを教えてくれた!」
――
彼女があたしに教えてくれた錬金術の集大成。
四つの元素から成る錬金エネルギーがシェム・ハに直撃する。
「風鳴翼からは弱きを守ろうとする心意気を! 雪音クリスからは世界から争いごとの火種を無くしたいという信念を! マリア=カデンツヴァナ=イヴからは弱さを認めることの強さを! 月読調からは相手を思いやり、慈しむことができる素直さを! 暁切歌からは他人の苦悩や傷みを共に背負う気楽な心を! あたしは教えてもらった。そして少しずつ変わっていった!」
シェム・ハの繰り出した刃をあたしは仕込み刃にエネルギーを纏わせて受け止める。
「戯言を……。そのような小さな変化は進化とは言わぬ。弱者の馴れ合いである! なのに、何故、我の心を食い千切ろうとする――!」
彼女はさらに力を加えてあたしを吹き飛ばす。
「天羽奏からは見知らぬ誰かを勇気づけ、救うことの尊さが! セレナ=カデンツヴァナ=イヴからは大切な人の未来を守ろうとする優しさが! 記憶を失った悲しみから引き上げてくれた! 記憶が呼び戻ったときに彼女が残した人の未来を大切にしようと思えた!」
錬金エネルギーを無数の槍と短剣の形に変化させてあたしはシェム・ハが放ってきたおびただしい数の光の玉にぶつけていった。
「小日向未来からは、戦いの為の力ではなく、愛する人への想いが大きな力となることを教えてもらったわ。感謝してるのよ。未来……!」
「無駄である。既にこの女の体は我を受け入れている」
あたしはシェム・ハに肉薄して彼女の目を見て語りかけると、彼女はそれを嘲笑う。
でも、あたしは信じている。この子は簡単に支配されたりしない。
「そして、イザークと立花響からは――」
あたしがそこまで話したとき、シェム・ハの目の色が変わった。
「最後まで手を差し伸べ続けるひたむきなところ……、ですか? 先輩……。――ぐっ、今さら抵抗を……」
一瞬だけシェム・ハの中から未来が顔を覗かせる。やっぱり、まだあなたは飲まれていない……。
「さっさと出てきなさい。じゃないとあたしは響のこと奪ってやるんだから!」
「――っ!? 理解不能である。この湧き上がる殺気――!? 人形! 我に何をした!? ――先輩には絶対に……、響は渡さないっ! 渡さないんだからぁぁぁぁぁぁっ!」
あたしの言葉にシェム・ハは叫び出して、拳を繰り出してくる。あたしもその拳に合わせて自らの拳を突き出す。
二人の拳がぶつかり合ったとき、地球の裏側まで聞こえそうな程の破裂音が鳴り響き、衝撃波が辺りの建物を吹き飛ばした。
「――ここまでみたいね。一度、あなたとぶつかり合えて良かったわ……。あとは頼んだわよ……。ひ、びき……」
あたしの身体はいつしか限界を迎えていて、身体中から神の力が抜け出ていく。
そして、抜け殻のようになったあたしはそのまま地面に向かって落下していった。
――地面にぶつかろうとしたとき、あたしの身体は受止められる。
「フィリアちゃん。ありがとう。思い出したよ。未来は呪いなんかに負けたりしない。私は未来を殺さない。人は成長できる。それなら私は呪いを祝福に――変えてみせる」
そうだ、この
必ず期待に応えてくれる……。安心感を与えてくれる……。
「みんなで一緒に帰りましょう……。信じてる。未来を連れて帰ってくるって……」
「うん。待ってて!」
響ははっきりと頷いて空に舞い上がった。
遠退く意識の中、端末化された人類が目覚めていく気配を感じた。
そして響の声が聞こえた――。
「私の想い、未来への気持ち! 2000年の呪いよりもちっぽけだと誰が決めた!?」
そう、彼女の未来への気持ちは何よりも強い。
「バラルの呪詛が消えた今、隔たりなく繋がれるのは神様だけじゃない! 神殺しなんかじゃない! 繋ぐこの手は私のアームドギアだ!」
――METANOIA――
見なくてもわかる……。きっと響は未来のことを――。
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「目覚めたか。フィリア……。エルフナインがブドウ糖を持っていてよかった。――まったく、お前というやつは無茶をする。危うく神の力に潰されるところだったぞ」
目を覚ましたとき、キャロルの顔が目の前にあった。
「キャロル……、良かったわ。無事だったのね……」
「ふん。オレだけじゃない。お前の仲間は全員無事だ。残念なことに三流博士もな……。そして……」
キャロルはぶっきらぼうにあたしの言葉に反応する。みんなということは――。
「せっ、先輩……」
「未来……、あなたが無事で良かったわ……」
未来は隣の布団に座ってあたしを見ていた。あたしは彼女の無事な姿を見て心底ホッとした。
「あの! フィリア先輩! ありがとうございます! 先輩の声が聞こえたから……、響が伸ばした手を握ることが出来ました!」
彼女はあたしの瞳をまっすぐに見つめて、はっきりとお礼を言ってきた。
「そう……、あたしはあなたに喧嘩を売りたかっただけよ」
「じゃあ、私は喧嘩を買っちゃったんですね。ふふっ、やっぱり先輩は面白い人です。あんな恥ずかしいことを叫ぶんですから」
あたしの言葉に彼女は少しだけからかうような口調で言葉を返す。アレは今思い返すと恥ずかしいかもしれない。
「うっ、うっ、うるさいわね! 誰にも言ったらダメよ!」
「約束出来ません。いいじゃないですか。素直なフィリア先輩も可愛らしいですよ」
あたしの苦情を彼女は目を瞑ってそう返した。やはり彼女はあたしの天敵なのかもしれないわ……。
「お前たち、バカなことを叫ぶな! 見てるこっちが恥ずかしい!」
「――あっ! フィリアさん……、目を覚ましたんですね。良かったです。あの風鳴司令が呼んでいます。キャロルも一緒に来てください」
キャロルに叱られていると、エルフナインがやって来て、あたしたちは弦十郎の元に向かった。
「フィリアくん。意識が戻ってよかった。まったく君という子はいつも心配させてくれる」
「悪かったわね。で、何かあったの?」
弦十郎はあたしの顔を見てホッとしたような表情を見せた。
「ユグドラシルはまだ生きていた。現在、6人の装者たちを中枢部に送っているが、果たして破壊できるかどうか……」
弦十郎によるとユグドラシルの惑星の改造が止まっていないらしく、演算汚染が進んでおり、あと7分ほどで人類を守っている論理防壁が突破されるかもしれないらしい。
「そう、キャロル、エルフナイン、あれは実用レベルに至ってるわよね? ここにあれは持ってきてるの?」
あたしはフィーネがここ最近、キャロルたちと修理していたあるアイテムについて説明を彼女らに求めた。
「もちろんだ。しかし、小日向未来は動けるのか?」
「未来さんの体は医学的には健康そのものですが、ギアの運用は精神状態が――」
「やります! やらせてください! 私だって先輩たちのように響の隣に並びたい!」
キャロルとエルフナインが返事をして、未来の体調を気遣っていたとき、未来は何を指して話しているのかを察して、大きな声で響の隣に立ちたいと主張した。
「分かったわ。任せたわよ。未来……。フィーネはあなたが最後の切り札だと言っていた。あたしもそうだと信じてる」
あたしはそう言って未来の目の前に左拳を突き出す。
「先輩の想いも受け取って運んできますね。――っ!? 痛たたたっ……。ふぅ……、行ってきます」
未来はあたしの左拳に思いきり右拳をぶつけた。そして、ひとしきり痛がると、スッキリした顔つきで戦場へと足を運んだ。
神獣鏡のギアを纏って……。
「果たして、みんなは上手くやってくれるだろうか?」
弦十郎たちは渋い顔をしてモニターを見守っていた。
「いい、みんな。中枢の装置をフォニックゲインで制御して、すべての幹を同時に破壊するの!」
「7つの完成形のシンフォギアが揃った今ならそれができる。7つの調和により、隔たりを乗り越えろ!」
あたしとキャロルは彼女たちにそう告げて、彼女たちの歌によって中枢の装置が可動するその様子を見守った――。
「――ちょっと行ってくるわ……。あのままだとおそらく……」
あたしは響たちがユグドラシルを破壊することを確信して、外に出ていった。
「あら、フィリアちゃん。どうしたの、あなたまで出てきて」
外に出たあたしはフィーネに話しかけられる。いつの間にあたしの身体から出てあたしの体に入ったのよ……。
「お前もお人好しだな。さすがに見通したか、ユグドラシルが破壊されるということは――」
「中枢装置も破壊されるというワケダ」
「あの子たちが脱出出来るようにひと肌脱いじゃおうってね」
サンジェルマン、そしてプレラーティやカリオストロもファウストローブを身に纏い準備をしていた。
「――オレを置いて一人で出ていくとはいい度胸じゃないか。最後の仕事だ。必ず奴らを無事に地上に帰還させるぞ」
キャロルがあたしを追って出てきた。あたしたちはユグドラシルの中枢に向かって飛び立った。
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「やはり大規模な爆発が起こったようだな」
「こういうときこそ、錬金術の見せ所よ」
キャロルの
「まだまだ、足りないワケダ」
「あーしらの力も使うよぉ!」
プレラーティとカリオストロもそれに力を貸す。
しかし、迫り上がる爆炎はまだ勢いが衰えない。
「やっぱり放って置けない子たちね……」
フィーネはそうつぶやくと、とてつもないスピードで迫りくる爆炎の前に立ちふさがりバリアを展開した。
「放って置けないのはあなたの方よ! このまま終わらせないわ!」
あたしもフィーネの隣に立ってバリアによって爆炎を押し止めようとした。
「フィリアちゃん! 了子さん!」
響の声が背中越しに聞こえる。大丈夫――。あたしたちの力ならもうすぐ――。
爆炎は押し戻されて無事に外に出られる――そう思ったとき……。
巨大なシェム・ハが現れてあたしたちを飲み込んだ――。
まるで心の中の空間のように暗いところにあたしはいた。そこに未来と響も……。
「答えよ。何故一つに溶け合うことを拒むのか」
「私たちは簡単に分かり合えないからこそ、誰かを大切に想い、好きになることが出来る。その気持を誰にも塗りつぶされたくない」
未来はシェム・ハの問いにそう答える。知らないからこそ、推し量ることができて、人を好きになれる。それが尊いのだと……。
「それが原因で未来にまた傷つき苦しむことになってもか?」
「だとしても、私たちは傷つきながらも自分の足で歩いていける。神様も知らないヒカリで歴史を創っていけるから」
響は人間の可能性を信じていた。未来を築く力があたしたちにはある、と。
「人形よ、お前はどうなのだ? 今まで傷みばかりを背負って来たのではないか?」
「そうよ。だからこそ、こうしてあなたにも、未来にも喧嘩を売ることが出来た。消せない傷みもまた、あたしには大切な想い出。傷付いても前に一歩踏み出す勇気を得ることが成長というのなら、不完全なままでいい。いつか、その一歩が積み重なれば、あなたの思う固定された完全とやらを追い越すかもしれない」
あたしは大切な人も、体も記憶も失った。深い悲しみに沈みかけた。
だけど、多くの人に支えられて、前に進むことが出来た。弱い自分を少しずつ変えることで……。
シェム・ハのいうような完全な存在というものがあるのかもしれないけど……、そこには成長という概念がなくなる。そこで止まってしまう。
ならばあたしは不完全でも、前に進むことができる自分でありたい。
「ふっ、大言壮語を吐くではないか、人の身を失ってもなお……。ならば責務を果たせよ。お前たちがこれからの未来を司るのだ」
シェム・ハはあたしたちにそう告げて消えてしまった――。
彼女はあたしに何を伝えたかったのか……。それはおそらく――。
人類の未来を託すということ――。
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「はぁ、戦いが終わったんだから、人間の体に戻れると思ったんだけど……」
「ふむ。了子くん曰く、思った以上に君の体を酷使してしまったために、今のままだと君の魂が拒絶反応を起こす可能性があるとのことだ。まぁ、それでも近いうちに戻れるのなら、朗報ではないか」
あたしの愚痴に弦十郎がそう答える。シェム・ハとの死闘が終わってもあたしの人形ライフはもう少し続くみたいだ。
「そっ、そうですよ。あとフィリアさん、就職内定おめでとうございます!」
「就職活動もしてないのにおめでとうもないわよ。完全にコネじゃない」
エルフナインが話題を変えようとしてくれるが、あたしは素っ気なく答えてしまう。
「はっはっは、たまにはオレだって、根回しくらいはするさ。これで正式に同僚だな。フィリアくん」
「オレやエルフナインまで抱え込んでS.O.N.G.というのは、よほど人材不足なのだな」
そう、あたしと同期の扱いでキャロルがさらに研究者としてS.O.N.G.に配属されることも決定した。
「あたしは嬉しいわよ。エルフナインとは一緒に今までもやって来たけど、あなたとも一緒に居られるなんて……。それに一緒に生活出来るのもね」
「ふんっ! オレは家など要らんと言ったのだ。しかし、エルフナインがどうしてもフィリアと住みたいと言ったから」
そして、あたしは弦十郎の家から出ていき、キャロルとエルフナインと同居することになった。
「まぁ、キャロルくんも落ち着きたまえ。オレだって少しは寂しいんだぞ。娘が独り立ちするのは、な。せめて卒業式の後でも良かったんじゃないか?」
もっとも、弦十郎はあたしを引き止めたかったようだが……。
「父さんはともかく、あたしはアレと一緒にこれ以上生活したくないの。あたしの体を使って変なことしたらタダじゃおかないんだから」
「変なことって、何かしらぁ? フィリアちゃんったら、エッチなんだから〜」
原因はこいつである。フィーネはあれから弦十郎にアタックし続けて、交際を開始したようなのだ。この人は本気である。
だからこそウザいのだ。もう、嫌になるくらい。
「父さん、この人でホントに良いの? 何やったか知ってるでしょ? 核爆弾より危ない奴なのよ?」
あたしは愚かという言葉から生まれたようなこの母を受け止めようとする弦十郎に抗議した。
この人は、碌でもない人間だということを何度も主張したのだ。
「知っているさ。まぁ、危険と隣り合わせの人生なんて今に始まったことじゃない。いい刺激になる」
「もう、バカなんだから!」
結局、あたしの父もバカだった。このままフィーネと共に生きる道を選んだのだから。
「まだ、もう少し続きそうね……。このヤケに騒がしい日常が……」
あたしは喧騒に飲み込まれるこの人生が嫌いではなくなっていた――。
――銀髪幼児体型でクーデレな
ついに完結しました!
毎日欠かさず投稿して、一日くらいサボろうと何度思ったことか……。
いろいろと物足りないところは番外編でも投稿していって補おうと思います。
ここまで本当に読んでくれてありがとうございます!
もう、感謝しかありません。こんなに長いのに……。
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それでは、また番外編でお会いしましょう!