「ちょっと聖杯戦争に行ってきます」   作:ぴんころ

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皆の謀略への期待が重い……


第四話

「それじゃルーラーの有効活用を始めようか」

 

「ああ。君が一体何をするつもりなのか、しっかりと見せてもらうよ」

 

 ライネスに対してもルーラーをどう扱うのかの説明まではしていない。

 故に彼女は興味津々で、眠りについた状態で拘束されているルーラーに対して視線を向けている。

 葉月の工房……とは言っても簡易的に持ち運びができるようテントにしてある仮の工房なのだが、とりあえずそこに運び込まれたルーラーに対して、工房の主人は手袋型の礼装をはめ込んだ左手を向ける。

 その手の甲に隠されているのは、かつての亜種聖杯戦争に参加したことの証である令呪。

 すでに亜種聖杯戦争が終わったためにサーヴァントに対しての絶対命令権としての力は失われているが、それはそれとして膨大な魔力リソースとしての意義はまだ残っている。

 今必要なのは、そのことだけだ。

 

「固有結界、駆動」

 

 令呪を一画消費し、己の固有結界を駆動させる。

 この工房(テント)は骨組みなどの全てに、葉月の細胞からクローンを作ってそれを磨り潰して埋め込み魔術的な加工を施している。

 そのため、この工房の中は魔術的には『葉月の体内』と表現しても許される空間であり、さらにそこに令呪に含まれる全魔力をこの工房内部で固有結界を展開することにのみ注ぎ込んだために、おそらく一日程度であればこの固有結界『改造惑星(仮)』の展開は不可能ではない、と彼は踏んでいる。

 

「……一応言っておくけど、ここにいると危険だよ?」

 

 この固有結界は彼の心象風景。

 彼の起源である『改造』に即した異界法則をこの工房内部には顕現している状態。

 つまり、彼以外の中にいる存在を望む形に改造していくという法則。

 今回の改造対象であるルーラーに対して行うのは無論、この固有結界を使用するがゆえに改造。

 聖杯大戦の時に”もしも”があっては困るから、何があっても確実に黒の陣営を終わらせるために、『一刻も早く二画の令呪を用いて”マスターを殺害してからの自害”を命じる』ことに機能を特化させた礼装へと変貌させるための改造。

 

「ここにいる以上、君だけを能力から外すなんてことはできないから」

 

 固有結界のそれは”法則”だ。

 ある程度の指向性を持たせることは可能ではあっても、対象の剪定まではそこに含まれていない。

 なので、今固有結界を展開しているこのテントから出ない限りはライネスもこの固有結界の影響を受けてしまう。

 

「はいはい。わかっているとも。こういうのは私は好かないんだが、まあ仕方あるまい。万が一に備えておくのは当然と言えるからね」

 

 ジャンヌ・ダルクと、彼女が憑依している人物の肉体を加工して礼装にする。

 憑依を許している以上、彼女もこうして敗北して殺されることは当然のことだと理解していただろうから、葉月の中には一切の躊躇などない。

 出力を最大にしてジャンヌ・ダルクを改造しにかかり、それの開始を見届けてライネスはテントの外に出る。

 

「ふむ……さしずめ『聖者の依り代』と言ったところかな?」

 

 ルーラーのサーヴァントとしては令呪を使用する機能だけが残っていて、その『依り代となった』などという魔術師からすれば材料として上質と言わざるを得ない素体であるレティシアを魔術礼装に加工する。

 礼装の名前としてはそんなところか、とライネスは判断して背後で目覚めたルーラーかそれともレティシアかが肉体を作り変えられる感覚に耐えきれず叫んでいる光景、それを防音の魔術でシャットアウトしながら、万が一に備えて、防衛を行うのだった。

 

 

 

 

 

「それでどうするんだい、マスター?」

 

 ジャンヌ・ダルクの加工が終わってからすぐに拠点を置くのには都合がいいシギショアラまで向かう二人。

 葉月の無免許運転に当初はハラハラしていたライネスではあったが、葉月自身すでに運転には慣れていたこともあってしばらくすれば落ち着いてそんなことを問いかけていた。

 

「できることなら、大聖杯を確保して、かつユグドミレニアには大打撃を与えるにとどめておきたい。魔術協会からの処罰を与える必要があるからね。そこに魔術協会側からの難癖をつける余地は残したくない。だから、彼らに大聖杯を使う余地を与えないために令呪での自害も、そして処罰のために生かして置く必要があるからマスターを殺害させるのも、どちらも行うことはできない」

 

 ライネスが語るのは彼らの現状。

 大聖杯を確保する前からサーヴァントを自害させてしまえばユグドミレニアに大聖杯を使う余地を与えてしまう。

 ならばとユグドミレニアのマスターたちを殺害させてから自害させれば、ユグドミレニアに対する処罰を行うことが難しい。

 魔術協会から出向という形をとる以上、そのどちらも両立しないといけないのが面倒なところだと二人とも認識していたが、それはそれとして死ぬことは確実に回避するためにルーラーの令呪を確保したのだ。

 特に、ライネスに関してはエルメロイの姫君ということで色々と昔からお偉いさんたちとの会合などもあったのだ。

 そのことに対しての実感は、マスターである葉月よりも大きいと言える。

 

「正直、何も考えてない」

 

「おい」

 

赤のセイバー(モードレッド)と黒の陣営のホムンクルスとゴーレムの激突。赤のバーサーカー(スパルタクス)赤のアーチャー(アタランテ)による黒の陣営の襲撃。そして、赤と黒の全戦力を持っての決戦」

 

 それは、彼の知る限りの聖杯大戦の情報。

 そこから天草四郎時貞という英霊の正体がバレるのだが、この世界に関してはそれを見破るルーラーがすでに死んでいる。

 よってバレることはなく進んで行く。

 そのはずだ。

 

「とりあえず、その決戦が終わったタイミング。つまり天草四郎時貞が大聖杯を持ち逃げした翌日あたりに令呪を切って黒の陣営のマスターと天草四郎を殺してしまうのが一番楽な気がするんだけど……」

 

「それでも、赤のセイバーは残るか」

 

「……別にあの人なら生き残ってもいいとは思うんだけど。赤のセイバーがこっちに向かってくる可能性を考えるとな」

 

「とりあえず、赤のセイバーのマスターと合流するのが一番だろうね」

 

 獅子劫界離。

 フリーランスの死霊術師(ネクロマンサー)だ。

 そこまで性格に問題のある人物ではないので、多分共闘を持ちかけたら乗ってくれるだろう、と考えている。

 

「まあ、君がそれでいいならいいさ」

 

 ルーマニアに入る前の会話はそれで終了。

 ルーマニアに入ってからでは、赤のアサシンことセミラミスが使用する使い魔たちによって聞かれてしまう可能性があったために、この会話だけは今やっておく必要があったのだ。

 そして、そんな業務的な会話が終われば、今度はプライベートな会話を行う時間がやってくる。

 サーヴァントとマスターの間の信頼関係を築くための会話は無駄ではないだろう、とライネスに言われてしまったために、彼はその会話を断ることができない。

 

「で、私は聞いたことはなかったと思うんだが。君が聖杯にかける願いとはなんなんだい?」

 

「話したことなかったっけ?」

 

 すでにライネスを召喚してから一ヶ月ほど。

 そんな会話をしたことは一度もなかった。

 だから、気になるのはある意味当然だとも言えたのだが。

 

「正直、もう願いは叶ってるというか……」

 

「ほう……?」

 

 それはなんだい、と促すような声。

 

「俺の願いってお嬢様を驚愕させることだったから、君が召喚された時に驚愕していたお嬢様を見てその時点で叶ってるんだよなぁ……」

 

「そんなことなのかい!?」

 

「そんなことって……結構俺にとっては重要なことだよ」

 

 ライネスお嬢様にいい感じにこき使われている彼としては、彼女の想定を超えた事態を発生させるというのはなかなかに痛快な出来事だったのだ。

 聖杯戦争に参加した理由は『まさか君が勝利するとは思わなかったぞ』と言われることだったのだが、『まさか私を召喚するとは』と言われたので問題ないらしい。

 その後に『聖杯戦争に参加するために私のそばから離れるのが嫌なのかい?』とからかわれることになったらしいが、それはそれ。

 とりあえず当初の目的は達成していた。

 

「あとは、まあ、君がサーヴァントになっているっていうこともあるしね。本当の意味での主従逆転ではないけれど、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテに命令できる立場っていうのに優越感がないわけではない、かな」

 

「ほほう……つまり、私はこれからえっちな命令をされてしまうのかな? サーヴァントとマスターという立場を盾にして、君はこの幼い身体を貪ろうと……」

 

「いや、それはないわ」

 

 間髪入れずの否定。

 ついでに鼻で笑われたことでライネスはキレた。

 葉月が車を運転しているという事実も忘れて、全力でトリムマウに指示を出した。




聖杯戦争RTA……イリヤちゃんとえっちなことをするチャートを作ってもよかですか……?

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