Re:BEATLESS 作:nameless
「レイシアが、作った・・・?」
アラトは微かに戦慄しながら復唱する。
レイシアは微笑を崩さないまま続ける。
「はい。今のわたしは、以前アラトさんに名乗ったスタイラス社の
それが不満であったから────それが不満になるような状況だから、レイシアは彼女たちを作ったのだという。
レベル5のAASCと人類最高スペックの機体を持ってなお、対応できない状況なのだと。彼女はそう言った。
「わたしは────超高度AI《レイシア》は、わたしとアラトさんのいちユニットで初めて成立します。敵対勢力がわたしを狙う場合、その標的は────」
超高度AI《レイシア》は、《ヒギンズ》に代わりAASCの更新を────つまり、“たくさん”では済まない数のhIEの行動を支配している。
紛争地帯で使われるような戦闘用hIEも、重要施設で警備を任される制圧用無人機も、家庭用のお手伝いhIEから鯛焼き屋の店員まで。
《レイシア》を奪えば、hIEが────世界のおよそ10%が手に入るのだ。テロリストにとって格好の的。しかも、一介の男子高校生が重要なポジションに居るのだ。狙いやすいことこの上ない。
「・・・また、足手纏いは僕の役割か」
アラトがごちる。レイシアはそれには答えない。
「・・・それで、紅霞たちに護衛をしてもらうのか」
「そーゆーこと。よろしくね、
「よろしく、
「精々私を上手く使うことね、
紅霞が明朗な、スノウドロップが無邪気な、メトーデは不敵な笑みをそれぞれ浮かべる。
そして、その『
「きみは・・・!!」
レイシアに似た、淡紫に銀を混ぜた髪。スレンダーな肢体はスーツに包まれているが、メトーデとは違いこちらはタイトスカートを纏っている。
かつて《ヒギンズ》地下施設で《ヒギンズ》の意思を伝えてくれた彼女。・・・かつてテロの標的とされ、原形を留めないほどバラバラに吹き飛ばされた、彼女。
「イライザ・・・?」
「・・・覚えていて下さったのですね、アラトさん」
怜悧な美貌は、笑顔を浮かべるといくらか取っつきやすくなる。アラトはそんな感想を抱いた。
「彼女たちは、レイシア級だったころと比べて性能が上昇しています。PMC程度に後れを取ることはないでしょう」
「あ、あはは・・・と、とにかく、中で詳しい話を聞くよ。もう夜は冷える時期だし」
そう言って、アラトは4人を誘う。
全員が玄関に入ったタイミングで、ユカが自室の扉からこちらを覗いた。
「お兄ちゃん、何時だと・・・え、えぇ?」
初対面のイライザは、ユカと目を合わせてにこやかに笑いかける。
だが、残る三人のうち、比較的感情というモノに理解のある紅霞は困ったような笑顔で、残る二人はもはや無関心だった。
ユカは、紅霞のことは、テレビで見たことがあるはずだ。あの戦闘は紅霞自身が中継していたし、メトーデとスノウドロップは筑波の環境実験都市にいた時に見た筈だ。
ある意味有名人な紅霞はともかく、二人は因縁の相手とも言える。
「お、お兄ちゃんが女の人連れ込んでる!! しかもこんなに沢山!! しかもみんな綺麗!! レイシアさんというものがありながらー!!」
・・・平常運転であった。
もしかして覚えてないのか? と、アラトは安心を通り越して心配にすらなった。
「彼女たちもhIEですから、問題はありませんよ。それより、起こしてしまって申し訳ありません」
「へーきへーき。それより、その人たちもうちに来るの?」
「あ、あぁ」
何故か、物凄く期待に満ちた目をするユカ。
アラトが困惑しながらも肯定すると、その期待は喜びとして噴出した。
万歳だ。
「やったー! これでたくさん・・・寄ってたかってお世話してもらえる!!」
アラトは嘆息し、イライザとレイシアは微笑を崩さない。紅霞が苦笑し、スノウドロップは我関せずとリビングへ向かった。メトーデは・・・既にリビングのソファで寛いでるのが見えた。
「いや、自由すぎ・・・」
アラトは苦笑するとレイシアに視線を向けた。
同じタイミングでアラトの方を見たレイシアと目が合い、未だに慣れないアラトの反応にレイシアが微笑する。
「もう遅いですし、やっぱり説明は明日にしましょうか」
「あ、そ、そうだね」