夜闇の海
2095年十月
現在の港湾諸施設は24時間のコンビニ並に稼働させるために
自動化され始めていた。
その為通関は人間が日中、夜間は船舶の入港・荷揚げ・積み込み・出港迄が
機械によって行われるため僅かな人件費で賄えれる様になったがその反面密入国者が増大してしまったがために港湾全域の再開発に伴い保税地域と市街地の遮断の
一環として船員全員は朝になるまで船舶からの外出禁止が義務付けられ
真夜中ともなれば人通りが消え、正に闇の世界とも言わんばかりの場所に・・・
息を殺した大勢の人影が見えた。
『五号物揚場に接岸されている小型貨物船より不法入国者が上陸、総員直ちに
五号物揚場に急行してください。』
短距離通信と思われる通信機から流れる声を聴いて2人の・・・私服警官がそれを聞いていた。
一人は真面目な感じで服装もちゃんとした男性
もう一人は着崩しており何やらダルそうな感じの男性がそこにいた。
するとダルそうな表情をした男性がこう呟いた。
「やれやれ、やはりあそこか。」
そう呟くと生真面目そうな男性がこう言った。
「ぼやいている場合じゃありませんよ、警部!」
「然しね『稲垣』君。」
「つべこべ言わずに走る!」
「俺は君の上司」
「歳は自分の方が上ですし上司の不真面目なところを指摘するのは
部下の役目です!!」
「不真面目ってそれ本人の前で」
「じゃあ直してください大至急!!」
「・・・やれやれ。」
酷いこと言う部下だなあとそう思いながらも不真面目そうな男性
『千葉 寿和』警部と真面目そうな男性『稲垣』警部補は軽口言いながら
七百mもあるであろう三号岸壁から五号物揚場まで常人ならば2分は掛るであろう
距離を彼らは・・・魔法を使って30秒で現場に到着したのだ。
魔法師である彼らは現場が見えると『千葉 寿和』警部が
『稲垣』警部補に向けてこう呟いた。
「やっぱり人数不足だよなあ。」
「仕方ないでしょう。魔法犯に対処できるのは
我々魔法師の刑事だけなんですから。」
「他所から人員割けなかったの?」
「無理でしょう、何せ適材適所と言われてますから戦闘に重視した我らと
そうではない魔法師とはやり方が違いますよ。」
「だけどさー、それでも役立つじゃないの?ほらこの間の潜入捜査から
帰って来た確か名前は」
「『司 甲』ですか?彼の本文は潜入捜査。戦闘には向いていません。」
「けどさあ、彼って確か十校出身でしょう?十分に戦力になると
思うんだけどねえ。」
「そう言えばこの間そちらの」
「そろそろ見えるよ。」
『千葉 寿和』警部がそう言って船を見つけた瞬間に・・・
下からサプレッサーのついたサブマシンガンで攻撃してくる密入国者を見つけて『千葉 寿和』警部はそれを木刀で軽々と躱しながら攻撃した。
無論遠距離魔法を使った人間もいたが難なく十人もいた密入国者全員を
たった2人で倒してしまったのだ。
すると『稲垣』警部補が『千葉 寿和』警部に向けてこう提案した。
「警部!船を抑えましょう!!」
「え?俺が??」
「つべこべ言わずに早くしてください!!」
『千葉 寿和』警部に向けて『稲垣』警部補がそう言うが『千葉 寿和』警部は『稲垣』警部補に向けてこう言った。
「分かった分かったよ、じゃあ稲垣君。やっちゃって頂戴。」
「はあ!?何言ってんですか!!自分がやったら止めるどころか
撃沈してしまいますよ!!」
「大丈夫大丈夫。責任は課長に全面的に取らせるから。」
「そこは『責任は全て俺が取る』とか言わないんですか!?」
「だって俺そう言うの嫌だし偶には課長にも仕事させようヨ。」
「そういう事言っているから最近課長髪が少なったり胃薬を買って
飲んでるんですよ。」
『稲垣』警部補は呆れながらもケースレス弾をリボルバー拳銃型CADに装填して魔法式を作動させると作動させた移動・加重系複合魔法によって貫通力が
爆発的に上がったケースレス弾を放ち、全弾スクリューのギアボックスに命中して行動を無力化させると『千葉 寿和』警部はぱちんと木刀についてあった留め金を外してそこから・・・日本刀を抜いたのだ。
そう、これは仕込み杖だったのだ。
そして『千葉 寿和』警部は其の儘船に着底するとともに剣を振り下ろして
こう言った。
「千葉家秘術『斬鉄』。」
そう言うと船室の扉が・・・バターの様に斬り裂かれたのだ。
この技は刀を鉄の塊ではなく刀と言う一概念の存在として定義して
魔法式によって設定した斬撃線に沿って動かす移動魔法なのだ。
そして『千葉 寿和』警部は其の儘船内に侵入した。
「結局骨折り損のくたびれ儲けだったよ。」
「矢張り犯人は既に。」
『稲垣』警部補の言葉を聞いて『千葉 寿和』警部は沈んでいく船を見つめて
そう言った。
突入した時には既にもぬけの殻であり開け放たれたハッチからは大量の海水が
溢れ返っていた。
すると『稲垣』警部補はとある場所を見てこう言った。
「となると犯人たちが向かって行ったのは・・・。」
「ああ・・・多分あそこだよ。」
『千葉 寿和』警部はそう言って同じ場所を見た。
西に視線を向けたその先にあるのは・・・横浜。
次回は達也達サイド。