幼い彼女たちは素直だった、純粋な子供というのもあるのかもしれないがそれ以上に両親の教えが大きいのだろう。良い子に育っていた。両親には感謝をしなければ。カナエちゃんは変わらず優しい子であったし、しのぶちゃんに至っては真面目さに負けん気が強い気の強さがあっていつも見る彼女とは違う様子が見ることが出来た。へぇ、意外。と思いながらも確かに彼女と戦った時にはそういう感じが出ていたし、生来の性格は今の彼女なのかもしれない。お姉さんの真似をしたかったのかな、そう考えるとますますしのぶちゃんが可愛く思えて仕方なかった。
――俺を慕う彼女たちに囲まれて、幸福な日々だった
俺から彼女たちは離れないし、俺を見てくれている。負の感情じゃない視線を感じるのは心地がいいことを知った。教祖としてまだまだ他人行儀だけど、俺たちはこれからなのだから、焦ることはない。俺の知る彼女達になったら、必ず鬼にするからね。永遠を生きような、と笑いかければ彼女たちは意味も分からず俺の言った言葉を繰り返している。可愛いね、そう言って俺は首を傾げている彼女たちの頭を撫でた。
教祖として頭の弱い信者達を導きながら彼女たちの世話をする。幼い彼女たちを育てるというモノは初めてで胸を躍らせた。両親に任せていた部分もあったけれどやはり俺自身でも育ててみたい気持ちが出てしまい、少しばかり勉強を教えている。ここでまさか遊女たちと遊んだ経験がいきるとは思わなかった。化粧の仕方や着付け、生け花、琴といった
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月日はあっという間に過ぎていく。猪の母親、琴葉が入信した頃だった。原形が分からなくなった顔の腫れを治療していると、カナエちゃんと愛しのしのぶちゃんがやって来た。赤ん坊が珍しいらしい。カナエちゃんはしのぶちゃんの赤ん坊の頃を思い出しながら優しく抱き上げて、しのぶちゃんも初めて見る赤ん坊にドギマギしながらその手を触っていた。琴葉も満足げにその光景を見ていたしこの光景がいつまでも続けばいいなと思っていた。
――そんな頃だった。琴葉に、俺の食事が見られてしまった
感が鋭いからいつも彼女を遠ざけたり、寝静まった頃を狙って信者を食べていたけれど、やはり
――いいのです、教祖様。これが娘たちの運命だったのです
きっと極楽にいますよ、彼女たちの両親の言葉を聞いた瞬間、引き裂いて殺してしまった。室内が甘い鉄の匂いで充満する。バラバラになった死体を見下ろした。首だけになった顔はにっこりと微笑んでおり死んだことにすら気付いていない。苛立ってその首を蹴り飛ばせば壁に当たり、潰れたトマトのように四散して張り付いた。息が荒くなる。
――運命、運命。……こんなものが、運命?ふざけるな、ふざけるなッ!!
俺からあの光景を、幸福を奪っておいて運命なんていう現実性のないもので片付けようとすることが許せなかった。ここまで不愉快な感情は、初めてだった。太陽さえなければ崖なんてものを飛び降りて、助けていた。琴葉さえ、保護しなければ、説明なんてしなければ、問答無用に琴葉を殺していれば。もしもなんていう子供じみたことを想像する。それでも結果は変わらない。崖に落ちてしまった。ああ、でも。もしかしたら。
――もしかしたら、あの猪と同じように助かっているのかもしれない
そう考えると急に頭がスッと冷えた。……そうだ、あの猪は生きていた。だったら彼女たちだって生きている可能性は高いのかもしれない。なら捜さなきゃ。青い彼岸花よりも優先しなければならないことが出来てしまった。……いい機会だ、太陽も克服してみようか。
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信者に命じていた青い彼岸花の捜索の大半を彼女たちの捜索に回した。
――信者を喰らって、更に高みへ目指しながら、彼女たちを待ちわびた
べべん、琵琶の鳴る音がした。
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気付けば、鳴女ちゃんに連れ出されたようだった。見渡せば蓮が浮かぶ水辺の空間が広がっている。此処は、無限城だ。いつの間にか、いつもの日が来たようだ。扉が開く、音がする。誰だろう、もしかして……。ドクリドクリと心臓が重く鳴り響く。真っ先に視界に映ったのは、蝶の髪飾りだった。ドクドク心臓が早鐘を打ち始める。現れたのは二人だった。……見間違える筈がない。カナエちゃんと、しのぶちゃんだ。世界が、色づくような感覚がした。
「生きて、生きていたんだねッ……!良かった、良かった!!」
涙が、溢れた。15年が経っていた、鬼の年月ではあっても、彼女たちの居ない年月は、信じて待ち続ける年月は長かった。まるで100年暗闇に閉じ込められて、長いトンネルを潜り抜けた思いだった。
「君たちを、捜していたよ。待っていた、ずぅっと、待っていたよ。さあ、約束を果たそうか」
手を差し伸べれば、いつかのように肘から先が無くなった。剥き出しの刀を向けたのはカナエちゃんだった。
「何を勘違いしているか、分かりませんが、鬼と約束した記憶はありません」
隣に居るしのぶちゃんも、細い刀身を出して構える。15年という年月は、記憶を薄れさせてしまったのだろうか。姉妹は俺を睨んでいた。覚えていないの、
此処で区切りです。後半だけちょいちょい書き直して、続きを出します出来たら今日中に出したいところだけど、大変だったら、明日?かもしれないです。お騒がせしました!