今回は段ボールニシキさんからのリクエストです。
【鬼になったカナエさんを見てしまった回のしのぶさん視点】からお送りします。
……たった一人の、肉親だった。お揃いの色違いの蝶の髪留めを二つ付けた姉。にこにこと穏やかに微笑んで優しい、私の大切な、家族。同時に私よりも強い、目指すべき、鬼殺隊の
――そんな姉が、消えてしまった
沢山話して、また後でねと言われた翌日、姉が消えた。日の出から逃げ去る夜の闇が彼女を捕らえてしまったようだった。鬼が連れ去ったのだろうと、皆が噂する。やれ、鬼に甘いのだからこうなるのだ、やれ、喰われたのだ、皆こぞって姉を好き勝手に言う。ふざけるな、……姉は柱だ。決してそこらの鬼に負けるなど、ありえなかった。ならば上弦が姉を連れ去ったのは間違いなかった。必死に手掛かりを探した。
――とうとう、姉に追いついた
努力したことが認められた、誇らしくありながら複雑な思いだった。全ては姉を攫った鬼が少しでも苦しめばと願って作られたモノだったから、私情で柱になったような複雑な思いで柱の就任を受け入れた。柱になれば私を狙う鬼が増えるのだ、任務も増えて姉を捜す機会が増えたが、未だに手掛かりは見つけられない。そうしている内に未だに鬼舞辻無惨は鬼を増やしている。まるで終わりのない、いたちごっこのようだ。その中では姉を攫って、喰ったかもしれない鬼が今ものうのうと生きていることを考えれば、憎悪と怒りが自身の中に溜まって膨らんでいった。
――だけど、それでも私は姉を、見つけたかった
死んでいてもいい、形見だけでもいい。姉が居たという事実を残したかった。
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――ある日のことだった。
頭上から飛んでくる
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高地の山の山頂近く、人里離れたその場所に、万世極楽教の本部がそこにあった。何段、何十、何百もの石段を登る途中、しのぶは道を外れて山の木陰へと身を潜め、息を殺した。落ちあうことになっていた隊士を待ちかねる。ガサガサと向こうからやってきたのは水柱だった。鋭く熱を感じさせない静かな水面のような瞳の男はしのぶを一目見て、すぐに目を伏せてその場に佇んでいる。上弦を相手に柱が二人いる事態を重く見るべきでしょうか、思考しながらもしのぶは穏やかに微笑んだ。姉が好きだと言ってくれた笑みを絶やさぬために。
「ねぇ、冨岡さん。あなたですか?」
「……ああ、」
相変わらず愛想のない男だ、しのぶは内心そう思いながらも詳細を聞くためにしのぶは冨岡の話に耳を傾けた。その際、万世極楽教の情報も聞かされた。信者は250人程度であり、教団としては小規模なモノでありながら、団体で行動する中鬼が発覚されなかったのは鬼がずる賢いことに他ならない。そんな鬼が姉を攫ったと思えばどす黒い憎悪が腹の底に溜まっていった。
「……それで、私は潜入して鬼を狩ればいいのですね」
ああ、と冨岡は頷いた。教団内は人間が多い。刺激は少ない方がいいのだ。
「……だが、無理はするな。応援を呼びたい時はいつでも言え」
冨岡は外で待機して、伝言係としての役割を果たすようだった。伝言伝達や潜入ならば宇随天元の方が長けているのではないのかと問えば、遊郭で連絡が途絶えてしまった嫁を捜す為に忙しく、他の柱たちも癖があって使えず消去法で冨岡としのぶにお鉢が回ったようだった。しのぶは、現状に感謝しながら屋敷のある方を睨みつけた。おい、冨岡の呼び止める声が聞こえる。何でしょう、首を傾げれば冨岡はもの言いたげに口を何度もパクパクさせている。何か言いたいようだ、しばらくしてから冨岡はようやく言葉を紡いだ。
「……あまり、思いつめるな」
しのぶは目を白黒にさせて言われたことを理解すればフフッと噴き出して笑った。一応、仲間に気を使うことは出来るのかと思えば目の前の無愛想な男が面白くて仕方なかった。何が、おかしい。冨岡のムスッとした顔がますます笑いを誘ってしばらくしのぶはお腹を抱えて笑い出した。
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しのぶは隊服から町娘の着物に着替えて、自身の日輪刀を木の根元に隠した。蝶の髪飾りも刀と共に埋め込んだが、髪飾りを埋める途中、姉を思い出して、埋めることを躊躇した。しばらく髪飾りを見ていれば冨岡の声でハッと意識を取り戻し、埋め込む作業を再開させた。今まで上げていたしのぶの髪は垂れ下がり、肩まで下りた癖のある髪が艶を出して女性の色気が増していた。
「……では、この辺で二手に分かれましょう、私は予定通り入信を、冨岡さんは待機でお願いします」
「……承知した」
二人は互いに違う方向に向かって、消え去った。
独自解釈を混ぜました。カナエさんもいるのでかなり童磨さんも警備が甘くなっているという解釈です。
時間軸的に言えば炭治郎が遊郭行ってるくらいの頃です。
本編はまだ書き込み中ですのでお待ちを!