童磨さんin童磨さん(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

21 / 33
来月更新すると言ったな、あれは……嘘だ。(少し隙を見て更新です!)

※独自解釈まみれです


13週目

「珠世様に馴れ馴れしくするな!!」

 

 童磨(どうま)が挨拶をすれば道案内の男が噛み付いた。兪史郎(ゆしろう)、咎めるような響きで珠世が言葉を発すれば、慌てたように口を噤む青年に童磨(どうま)はクスリと笑った。何がおかしい、兪史郎が睨めば童磨はにっこり微笑んだ。

 

「ごめんね、君を笑ったんじゃないよ?信者もこうやって俺を心酔してこうやって噛み付いていたなぁって思い出しちゃってね、俺が止めればそうやってさっきの君みたいに委縮していたなぁ」

 

 躾のなってない犬みたいで可愛かったよ、懐かしむように目を細める童磨に兪史郎の睨みはますます鋭くなった。

 

「珠世様、やはり俺は反対です」

 

 こんな鬼をこの屋敷に入れるなんて、睨む視線におやおやと目を大きくさせて童磨はケラケラ笑う。得体のしれない雰囲気に兪史郎の視線はますます鋭くなった。おお、怖い怖い。童磨は茶化すように身を震わせて珠世と目線を合わせた。静かに佇んでいる女性、その眼と虹色の眼が合えばその視線の強さに童磨は背筋を伸ばした。……少なくとも、俺よりも長く生きているように思える。周回していなければということを除外すればだけれど。少なくとも鬼になって間もない身体では敬う方がいいかな、脳内で打算した後童磨は笑った。

 

「貴女の御付きはお呼びでないと言っているようだし、どうしようかな?」

 

 帰ってもいいんだと、言外に告げる童磨にいいえ、と珠世が頭を振った。珠世が童磨の前に歩み寄る。兪史郎が目を見開いたのはそれからすぐのことだった。

 

「兪史郎の無礼を許してください」

 

 なんと、珠世が頭を下げたのだ。兪史郎の息を呑む音がする。

 

「ははッ、良いんだぜ」

 

 俺は優しいからな、童磨は慈悲のある優しい表情で珠世の謝罪を受け入れた。……貴様ッ、童磨のふざけた言動に兪史郎が噛み付いた。

 

「そんなに睨まないでおくれ。……ああ、それと、そんなに眉間に(しわ)をよせてしまうと(たる)んでしまうよ」

 

 そうなっては俺にはどうにも出来ないからな、心底心配した様子で童磨が眉下を下げる。鬼が弛むものか、ブチリと兪史郎の血管が切れる音がする。

 

「ふざけるな!!」

 

 童磨の服の衿を掴み、兪史郎は荒い息を隠さず、鋭い視線をぶつける。兪史郎、やめなさい。珠世の制止ももはや聞き受け入れることなどできなかった。敬愛すべき女性が頭を下げた事実だけで、兪史郎が敵意を持つ理由はそれで十分だった。何より、この鬼の言動が気に入らない。虹色の眼は喜色以外の色はなくますますそれが苛つかせた。いいのかい、首を傾げる童磨は懲りもせず口を開く。

 

「上司の言うことを聞かなくて、本当にいいのかい?」

 

 少なくとも君だけだよ、俺を除け者にしようとしているのは。童磨の言葉に、兪史郎がハッとする。そうだ、相手は珠世様が呼び出した鬼だ。個人感情で噛み付いて、珠世様に頭を下げさせたのは自分のせいだった。悔しげに唇を噛み締めて、襟から手を離せば分かればいいんだよという鬼の言葉にカッと顔が熱くなった。兪史郎がごめんなさい、珠世様の二度目の謝罪を聞けばその熱さも冷える思いだった。別に構わないぜ、童磨はニヤけた顔を見せる。

 

「それで、中には入って良いんだろ?」

 

 今日は寒いからな、早く入ろうぜ。襟首を正しながら、童磨はそんな言葉を残した。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 中に入れば案内された場所は和室。家の主である珠世が座れば残りの二人もそれに従い座った。珠世は背筋を伸ばして正座をしている。その真横では兪史郎は珠世の顔を見て座っていた。珠世の目の前では童磨は胡坐をかいて肩肘ついて言葉を待つ。僅かばかりの沈黙がこの場の空気に流れる。……それで、沈黙の末、言葉を切り出したのは童磨だった。

 

「俺が血を分ける代わりに、貴女は俺に何をしてくれるのかな?」

 

「貴様、珠世様に交換条件を出すとは、どういうつもりだ!」

 

「どうもこうも、そのままの意味だよ?俺と珠世ちゃんは手紙でやり取りしたけれど今日が初対面だからね、何か条件がないと協力できないさ、俺だって痛い思いをするわけだし」

 

 何事も対等でなくては、にっこりと笑う童磨に兪史郎は手を握り締める。何が痛い思いだ、鬼の癖に。唇を噛み締める兪史郎を横目に童磨は珠世の回答を待つ。

 

「……何を、して欲しいのですか?」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりに童磨は握り拳を珠世の前に出した。俺の望みはただ一つ、握り拳から人差し指を突き出して、自身の方に持っていく。

 

「貴女と同じ体質。つまり、あの方の呪いを外すことが条件だ」

 

 童磨は笑みを深くして答えた。

 

「ああ、勿論断ってもいいんだよ。俺も貴女たちのことを話すつもりはないよ」

 

 あの方に俺も睨まれたくはないからね、童磨はさらに言葉を続けた。

 

「俺と同じ眠る体質なんて何十、否、何百年先に現れるんだろうね。それまであの方が何かしない訳もないだろうし、……決めるなら今の内だよ」

 

 さあ、どうする?満面の笑みを浮かべて童磨は言葉を待った。選択肢などまるでないではないか、兪史郎が童磨を睨んでも睨まれた当人は涼しい顔で笑っていた。分かりました、珠世の言葉に兪史郎が珠世様と声を張り上げた。……だが、童磨は既に了承の言葉を聞いてしまっている。

 

「ああ、嬉しいぜ」

 

 話し合って良かったよ、そうのたまう童磨にその前に、と珠世の遮る言葉を聞いた。

 

「何だい?」

 

「貴方に聞きたいことがあります」

 

 真っ直ぐした目で見据えるそれは何かを判断しようとしていた。断ればこの話も無くなると理解した童磨は何だいと首を傾げた。

 

「……貴方は、何故鬼舞辻に叛意を抱いたのですか?」

 

何だ、そんなことかい?童磨はにっこり微笑んだ。

 

「……簡単なことだよ、俺のやりたいことが出来たってだけの話。あの方と少し意向が変わった、理由なんてそんなモノさ」

 

 思い浮かぶのは無惨様(あの方)の姿。褒められてそれから吸収されたあの時、童磨の中で決定的に何かが変わった。あの時に感じた感情を覚えている、あの子と同じように揺さぶられた胸の内。かつてないほど褒められた、それなのにちっとも心地よくはなかった。感じ取った感情は無惨様(あの方)を殺してやりたい、そんな思い。あの子から引き離すつもりならば無惨様(あの方)に反発して一泡吹かせてやるのも一興に思えた。珠世は童磨の中に何かを感じ取ったように目を細め、なるほどと頷いた。

 

――それにさ、あの方に監視されていることに飽きちゃった

 

童磨は笑いながら言葉を締めくくる。脳内ではいつか出会う彼女が優しく微笑んだ。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 童磨から血を採取した後、珠世は童磨の身体を弄った。鬼舞辻の呪いの細胞は血を介して鬼の細胞と混じっているからだという理由に童磨はなるほどと納得しながら彼女の処置に従った。医者の言うことならば医者に任せた方がいいだろう、最終的に童磨はそう結論付けて彼女に身体を委ねた。

 

――……だが、それは簡単なことではなかった

 

 元上弦の回復力は彼女の処置の速さをもってしても追い付かない。ふざけるなよという処置の手伝いをする兪史郎の言葉に童磨は申し訳なさそうに眉下を下げた。それならばと童磨が自身の身体中を傷つけ始めたのはそれからすぐのことだった。時に腕を引き裂き、足を引き千切る。再生が出来ない限界までこれをしようと思い立ったらしい。ついでと言わんばかりに持参した藤の毒も呷れば、再生が遅くなった。部屋は赤黒く染まり童磨の手足の残骸や臓物が山のように積もった。部屋の掃除は誰がすると思っているんだという兪史郎の怒りの絶叫が部屋中に響いた。おお、そうであったと童磨は相変わらずの調子でごめんねと笑うばかりだった。

 

――長い一夜を越えれば童磨の呪いはなくなったようだった

 

 しばらく眠ると言って童磨はあっさりと眠り、珠世と兪史郎は童磨が本当に眠ったと驚いた様子だった。地下室で一日過ごせばスッキリした様子で童磨は起き上がる。おはよう、珠世ちゃん。普段通りの彼に状態はどうだと珠世の傍にいる兪史郎が問いかければんーと童磨が首を傾げる。あっと思い出した様子で手を叩いた。

 

「少し眠り足りないって感じかな?」

 

「貴様ふざけているのか?」

 

 兪史郎も童磨との会話が慣れたようで睨むこともやめたようだった。童磨はにっこり微笑んだ。

 

「ふざけてないけど、不愉快だったらごめんね?お詫びに目玉をほじくってあげようか?」

 

「貴様の目玉など必要ない!誰がいるかッ!」

 

「ははッ、無惨様も同じこと言ってたよ!」

 

 懐かしいね、童磨の言葉に兪史郎が目を見開いた。お前、口をパクパクと動かす兪史郎の反応を楽しんだ後、童磨は悪戯を成功させた子供のように笑った。

 

「試しに無惨様の名前を出してみたけど特にないみたいだね。……おや、もしかして兪史郎くんは珠世ちゃんの施術を信用してなかったのかな?」

 

「そんなこと、ある訳ないだろう!!」

 

 そっか、なら良かった。童磨の楽しげな声と兪史郎の怒りの声が地下室に響き渡った。

 

 




勝手な解釈としては鬼舞辻の呪いですね、身体弄ったってどんな感じなのでしょうか、少し悩んで書いたりもしました。二次創作なので原作で明らかになれば書き直す所存です。あと鬼って再生限界あるのかなって感じの解釈です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。