童磨さんin童磨さん(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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A.Takigawa様 リクエスト【童磨さんが女の子だったら】

少しR指定に入りそうな描写が入るので、問題になりそうなら書き直すか消します。A.Takigawa様には申し訳ないですが……、ご了承ください。


リクエスト7

――生まれながら少女は特異な容姿を持っていた

 

 虹色の眼と白橡色(しろつるばみいろ)の髪、この子は特別な子だと両親は喜んだものだった。神秘的な色合いを持った少女は神の子なのだと、どちらの両親も少女を()(はや)し、この子のためにと宗教団体を作ったのはそれから間もなくのことだった。

 

――どうしてこんなことになったんだろう?

 

 この時初めて少女は戸惑った。両親に話を合わせていただけだったのに、虹色の眼は揺れる。……この子は神の声が聞こえているに違いない、両親はいつだって頭を撫でてそんなことを口にした。一度だって聞いたこともない神の言葉。それでも悲しませたくはないし可哀想だから話を合わせていけばこんなことになってしまった。

 

――瞬く間に信者は集まった

 

 祀り上げられた少女は台座に座ることとなる。助けて欲しい、救って欲しい。少女よりも遥かに大きな大人が跪いてすすり泣く。祈られ、願われ、乞われる日々、余りに可哀想で放ってあげられない少女は悩める彼らの話を聞いてあげることしか出来なかった。

 

――助言をしてあげてもそれは全て神の言葉になった

 

 ありがとう、ありがとうと言われながら信者が増えればお布施が増えていって。屋敷は徐々に大きくなっていった。

 

――両親はそれから変わってしまった

 

 善意だったそれは、徐々に変質を遂げていく。お布施金から献上品まで強要する有様は欲に塗れていた。まるで別の人間を見ているようだったが、少女はそれでも両親が可哀想で見捨てることもできなかった。救えと言われた信者の話を聞き続けた。何も持たず貧しい者を追い返して罵倒と暴言を吐き出す両親、それでも救われたいと乞う娘が支払えた代償は己自身だった。父親が寝屋を共にしてからは堕落の一途を辿る。

 

――処女を喰らった父親は色狂いに成り果てた

 

 一度だけと決めたそれの回数が増えていく、その度に嫉妬に狂った母親はけたたましく泣き叫んで屋敷は騒がしくなった。

 

――そんな時、少女は父親に連れられた

 

 儀式をしなければいけないよ、そう言って父親は眠る少女を起こした。星々の照らす深い夜に、何処かへと手を引かれていく。幼い手が大きな男の手に包まれて、行こうかと笑う父親の目は少女の虹色を見てはいないようだった。……気のせいだと、思いたかった。普段歩く廊下が遠いものに感じる。行き着いた先の襖を開けば真っ赤な布団が敷かれた部屋が視界に広がった。行灯(あんどん)に照らされた橙色(だいだいいろ)の色と合わさって普段とはまるで違う、別の雰囲気を醸し出す。

 

――嫌な、予感がした

 

 父上、これは何?言い切る前にその口は父親に奪われた。寒気を感じて逃れる少女の手を掴み、強い力で部屋に連れ込んだ。

 

――その晩、幼い少女は花を散らした

 

 月の物がまだ来てすらもいないのに赤の混じった尿が止まらない。……これは儀式なのだと父親は言っていた。だったら合わせてあげなくちゃ、少女は必死に父親に合わせた。その度に母親に睨まれることを心苦しく思いながら、少女は父親に応えてあげた。儀式と称した行為が繰り返されていけば、嫉妬に狂い果てた母親が儀式の間に入って来た。

 

――死になさい

 

 何度もそんな言葉を繰り返して、父親ごと少女を突き刺した。ドスドスと刺さる包丁は父親の熱を奪い、少女に突き刺さる。重くなった父親が圧し掛かり、痛みと相まって思うように動けない。満足した様子で母親は持ってきた毒を呷って死んでいく。血を吐き出す母親と虹色の眼がかち合った。吐き出す血を押さえた手が少女の頬を撫でる。ヌルリと濡れた生温かさに包まれて母親に囁かれた。

 

――お前さえ、居なければ……ッ!!

 

 今際(いまわ)(きわ)に言われた言葉はそれだけで、それが母の最期の遺言だった。家族仲良く横たわるのは初めてだった。ケホケホと咳込む血が鉄臭くて温かい。

 

――ああ、生温かいなぁ、

 

 部屋汚れちゃった、換気しなきゃ、そればかりを考えながら意識を失った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 目覚めれば布団の上だった。思うように動けないがそれでも少女は自身の鼓動を確かに感じ取っていた。心配した様子で此方を窺う信者たちが喜んでいた。

 

――ああ、教祖様!!ご無事だったのですね!!

 

 歓喜の声を聞きながら少女は自身が生き延びたことを理解した。両親は手遅れだったようで丁重に葬られた後だった。……ああ、死んじゃったんだね、可哀想に。少女はポツリと呟きながら顎に雫を伝わせたがすぐに涙を引っ込ませた。

 

――傷が癒えれば少女は教団を引き継ぐこととなった

 

 それでも傷が癒えても後遺症は治ることはない、骨盤も何もかもがボロボロだと医者に言い渡されてまともに歩くことはかなわなくなった。まるで置物のように台座に座らされて、信者の悩みを聞くことが多くなった。移動をするにしても車椅子で信者に押して貰うことが日常となった。

 

――その後、無惨様(あの方)が少女の頭を貫いた

 

 つまらん、と鼻を鳴らす男が少女の頭部を貫いた。……ああ、死ぬのかな。少女は他人事のようにされるがまま受け入れる。その姿を見た男は面白いものを見つけた様子で笑った。いいだろう、喜べと男は少女に何かを注入し始めた。

 

――さて、耐えられるか?

 

 男の血が少女に分け与えられれば、少女は地面にのたうち回る。動けぬ下半身以外は逃げるようだった。恥も外聞もなく、暴れ回る様は無様でしかない。少しずつ順応して見せればみるみるうちに少女は縮んでいった。一回りも二回りも小さくなった姿はいつか父親に連れ出された時の姿だった。どうでもいい、眉を顰めながら男は少女に名が付けられる。

 

――人間を喰らって、私の役に立て。童磨(どうま)

 

 べべん、どこからともなく琵琶の音が聞こえればあっという間に男は消えた。はッ、はッと少女、否、童磨は荒い息を整えた。ビクビクと身体を震わせてよだれを垂らす無様な姿を晒す童磨だけが残った。

 

――酷く、喉が渇いた

 

 ……お腹が空いた。喉に手を当てて、虚空を見上げた。

 

――教祖様、夕食のお時間です。……?……教祖、様?

 

 間の悪い信者が入ってくれば童磨は様子を窺う信者を押し倒す。はじめは信者の唇を噛み千切り、圧し掛かって本能のまま童磨は信者の肉を貪り喰らった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

――無惨様(あの方)の言われるまま、鬼になった童磨は人間を喰らい続けた

 

 鬼の身体になれば悩める信者たちと永遠を生きられるのだと思えば無惨様(あの方)には感謝以外の言葉が思いつかなかった。何故か幼い身体に戻ってしまったが鬼殺隊に不意を突けるのだから何も悪いことはない。いいこと尽くめだと童磨は自身に言い聞かせる。……なぜそうなったのかという思考を遮断した。

 

――上弦の月に数えられれば童磨はますます人間を喰らった

 

 可哀想だと憐れむ鬼殺隊の少女も構うこともなかった。何もかもどうでもよくて何も感じることはなかった。……それなのに、その少女の妹を名乗る胡蝶しのぶだけは違った。

 

――童磨を殺すつもりで毒を以って貫いた

 

 見た目だけで騙されるモノか、姉の仇だと怨嗟の言葉を投げかける言葉に童磨は初めて他人に興味を示した。初めて、義務ではなく感情が動く。この人と一つになりたいと思って胡蝶しのぶを吸収した。吸収してしまった後は対応できない程の藤の毒が全身に回り後から来た鬼殺隊に首を刎ねられた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 あの世で待っていたと語る少女と出会う。しのぶちゃん、嬉しそうに微笑む童磨の心境などしのぶには分からない。首だけで動く童磨は顔を赤らめて虹色の眼を潤ませた。まるで恋する乙女のような面持ちで告白でもするように少女はしのぶを誘った。

 

――ねぇ、しのぶちゃん。ねぇ、私と一緒に地獄に行かない?

 

 とっととくたばれと、とてもいい笑顔でしのぶは童磨の誘いを断った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 気付けば童磨は初めて鬼になった夜に戻っていた。何故かは知らないがもう一度があるのならばとしのぶとまた一つになろうと努力した。結局童磨は死んでしまうこともあったがまたあの日の夜に戻るのだ。繰り返されていく夜を幸いと思いながら童磨は何度も試行錯誤を繰り返すがある日自身の虚しさに気付いてしまった。

 

――死を望まれることが此処まで苦しいことだと思わなかった

 

 一つになれば永遠を生きられると思っていたのに、一緒に居ることだと思っていたのに。あの世で会っても彼女の言葉はいつだって死を望んでいることが辛かった。胸が裂けるようだった。縋るように何度もしのぶに誘っても返される言葉はいつでも同じ回答だった。

 

――目覚めればまた鬼になったあの日に戻った

 

 またしのぶに会えばいいのに。彼女の姉である胡蝶カナエに出会うその夜に、何故かカナエを連れ去ってしまった。見れば見るほどしのぶにそっくりで童磨は喜んだ。

 

――そうだ、しのぶちゃんの代わりにしよう

 

 思いついてカナエの髪を切り落として刀を奪って足枷を取り付けた。目覚めれば驚いた表情を見せるカナエに微笑みかける。おはようと声を掛けて童磨は車椅子を動かしながら今日から君の家だと説明すればあっという間にカナエは表情を硬くさせた。しのぶちゃんがいつか見せた表情のようで、胸が痛んだ。

 

――そんな表情は見たくないのに

 

 眉下を下がらせながら童磨はカナエの頬を撫でて顔を上げさせる。笑って欲しいんだ、どうしたら笑ってくれるの?首を傾げる童磨の顔は迷い子のようで、カナエが困惑させるには充分だった。

 

――それからカナエも少しずつだが童磨に歩み寄り始めた

 

 どうしてこの施設が出来たのか、どうして車椅子なのか、最初はそんなことばかり聞かれたが童磨は正直にそのまま答えた。両親のことも交えて初めて会話が弾んだ気がした。

 

――車椅子でも鬼だから一応は立てるし歩けるんだよ?それでも手放せないんだ、何でだろうね

 

 冗談めかして笑う幼い少女がそこに居た。堪らなくなったカナエが立ち上がって童磨を抱き締めた。辛いことを話させてごめんなさい、ボタボタと落ちるカナエの涙が童磨の髪を濡らした。

 

――ねぇ、どうしたの?

 

 首を傾げながら童磨はカナエを見上げる。辛いことも分からないのか、カナエは眉を顰めながらも何でもないと笑ってみせた。あ、やっと笑ってくれたね、童磨はカナエの暖かい体温を感じながら嬉しそうに笑った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 何度もカナエと繰り返して童磨は何度も自壊して死んでいる、その度に彼女は童磨を睨むもゆっくり話せば何故か歩み寄ってくれるがそれでも頭痛と胸の痛みが止むことはない。……誤魔化しても、分かってはいるんだ。これは逃避でしかなかったし自身の慰めでしかないことも最初から分かっていた。

 

――それでもやめられないのはなんでだろう?

 

 自嘲じみた笑みを浮かべて童磨は虚しくなっていく。幼い身体を俯かせて考えることはいつだってしのぶやカナエのことだった。

 

――どうしてしのぶちゃんを望むのだろうか?

 

 ……理由は分かっている。自分をあそこまで思ってくれるからだ、殺意や激情が堪らなく愛おしかったのに、それだけでは我慢できなくなってカナエちゃんを攫って代替にしたのだ。それなのにカナエちゃんも離れて行くのは嫌だった。傍に居てくれることが堪らなく嬉しくて愛おしかった。

 

――しのぶちゃんもカナエちゃんも傍に居て欲しかった

 

 それは何故なのか、ガンガンと痛む頭を押さえて考える。思い出したのは両親だった。何故両親が浮かんでしまったか分からないが、それでもそれを考えれば胸が痛くて抑えても抑えきれない痛みに揺れてしまう。

 

――どうすればいいんだろう?

 

 待って行かないで。連れ去って間もないカナエちゃんを呼び止めてしまう、弱弱しく掴む童磨の手をカナエは苦しそうに此方を見ていた。

 

――……ああ、困らせちゃった

 

 ごめんね、と笑って誤魔化せばカナエは困ったように手を伸ばす。虚空を浮かんでは迷った様子でその手をすぐに胸に置いた。困らせたくなんてなかったのに。何度も繰り返し自問自答を繰り返す。徐々に食欲も失せていって食事も喉が通らなくなった。話をしても、満たされない。そんな様子をカナエに見られていることも嫌だった。

 

――もう耐え切れなくなった

 

 カナエちゃん、頸を切って欲しい。縋るように童磨はカナエに刀を突き返す。願ったのにカナエはすぐに頷いてはくれなかった。

 

――きっと分かり合えるよ、考え直そうよ

 

 彼女はいつだって優しかった。何日も話し合ったが童磨の決意は揺らがない。結局カナエが折れた。

 

――……何かやり残したことはない?

 

 カナエは最期にと童磨にやりたいことを投げかける。過去のことを聞いてしまったカナエは童磨に問いかける。せめてこの可哀想な少女に思い出を、そればかりがカナエの願いだった。しばらく間を置いて童磨は答えた。

 

――だったら、一緒に寝て欲しい。

 

 母上と一度も、一緒に寝たことが無いから。そう答える童磨にカナエはもちろんよと笑いかけた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 その日の夜、布団が敷かれれば、童磨は落ち着かない様子でカナエの手を掴む。どうしたの?首を傾げれば何でもないとすぐに手を放す鬼は何処から見てもただの女の子だった。その後ポツリと父上のことを思い出してと呟く少女が何処までも哀れだった。

 

――大丈夫よ

 

 優しく笑いかけて童磨を抱き上げながら布団に一緒に寝転んだ。寝転べば身を固くさせる少女の肩を優しく何度も叩いた。大丈夫、大丈夫、子守歌のように何度も優しく叩けば童磨の力は抜けていく。話をしましょう、カナエが優しく笑えば、童磨は話をした。

 

――とにかく他愛もないことだった

 

 悩んだ信者を救った話、屋敷の庭は綺麗だから見て欲しい、今日は晴れだったよ、そんなことばかり話せば童磨の表情は徐々に穏やかになっていくのが嬉しかった。

 

――……ねぇ、怒らないで聞いてくれる?

 

 首を傾げる童磨にカナエは怒らないわよと返す。……本当?おこらない?ほんとうに、ほんとうにおこらない?何故か怯えた様子で言おうとしない童磨の肩を叩いた。大丈夫、怒らないよ、大丈夫だから。カナエは微笑みかけた。意を決した様子で童磨は話し出す。

 

――ポツリポツリと零す言葉にカナエは耳を疑った

 

 何度も繰り返していることから始まったその言葉は、何処までも信じがたかった。妹のしのぶちゃんを何度も殺してしまったこと、カナエちゃんもその間に殺してしまっていること。全部全部童磨の内に溜まったことを打ち明ければカナエは困惑するばかりだった。妹のことは話したが名前までは言っていない。それでも知っている童磨に困惑したのだ。

 

――……きっと悪い夢を見ていたのよ

 

 カナエが必死に考えて出した言葉がそれだけだった。

 

――ははッ、やっぱりね

 

 童磨は笑う。諦めたような、そんな顔だった。……私は、言葉を間違えてしまったのだろうか?カナエは悩んだ。

 

――気が狂った鬼の戯言だって思っているよね?怒っているよね?当然だよね?

 

 畳みかけるような童磨の言葉に、反論が出来ない。童磨は布団から飛び出した。動けるの、カナエは起き上がるも童磨の足の速さに追い付かない。部屋の片隅に置いてあった日輪刀を抜いて童磨は首に刀身を置いた。

 

――待って、やめて!!

 

 カナエの制止の言葉も虚しく、童磨は自身の頸を切り落とす。目の前の光景が、信じられない。切ると決めていたのに、切り落とされる少女の頸を見れば途端に自身のしてきたことが恐ろしいモノに思えた。何で、どうして、カナエの呟く言葉は何処までも自己嫌悪に陥らせた。

 

――いいんだよ

 

 消えかかる童磨の言葉が響く。元からそうしようって決めてたしね。穏やかに笑う童磨の顔から目を離せない。虹色の眼が消えていく。

 

――ありがとう、さようなら

 

 服以外、童磨は消えていきカナエはその服を掴んで、泣いた。

 




別タイトル【童磨ちゃんin童磨ちゃん】

この後カナエさんは鬼殺隊をやめるでしょうねぇ……

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