身体は変化したが時が
「はぁ……」
まるで俺たちは一年に一度しか会えない彦星と織姫のようだね。それが百年以上越しなんて、……天帝も酷いお人だ。いつか向こう岸に渡って君と会うために、俺は再び努力を始めた。悩める信者たちと一つになって、沢山の女の子たちを看取っていく。教祖として説法を説き、仕事を全うしつつ格上の下弦の月に入れ替わり血戦を申し込む。前回も申し込んだ鬼だから手の内なんて分かり切っていて、倒すのは容易であった。殺すのは可哀想ではあるけれど、彼女のことを想えば仕方のないことだった。そもそも鬼なのだしいつか殺されるのは覚悟の上だろうに、それなのに目の前の鬼は氷漬けになりながら命乞いをし始める。血戦当初はまるで馬鹿にした様子だったのに、今となってはこのザマとは。……みっともないことこの上ない。下弦だからと胡坐をかいて慢心しきっているからこうなるのだ。これでは
――やはり、上手くはいかないものだ
どうしたってカナエちゃんを殺してしまう。最初は仲良くしてくれるのにどうしてなのだろうか、これで死に巡りまわって何度目だ。その度に彼女に振られては流石に傷ついてしまうものだ。
「早くしのぶちゃんに会いたいなぁ」
待ち焦がれる
――そして、
どういう因果か、遊郭に行かなくとも、出自はどうであれ似た境遇で
――優しいカナエちゃんと優しい俺は本当に気が合った
相性は良いようで不思議と話が弾むのだ。しのぶちゃん程ではないが心が動いて心地がいい。姉妹だからこそ成せる技なのだろうか、だからこそカナエちゃんは殺したくなかった。ああ、でも……、だけど、けれども。
――いつか、しのぶちゃんともこうして笑いあってみたいなぁ
ビキリ、心にヒビが入る音がした気がする。……結局カナエちゃんは、今回も殺してしまった。しのぶちゃんの殺意が俺を突き刺して離さない。居心地がいいのに、気持ちがいいのに、どうしてだろうか、満たされなくなった。一つになって君を感じるのに、それなのに何故だろう、……泣きたくなってしまうんだ。ビキリ、ビキリ。何かがひび割れていく音がする。いつもの毒が身体を蝕んで、頭がグチャグチャになってくる。いつも、彼女は笑っていても冷たくて、俺にいつもなんて言ってたっけ……?何度目か分からない胴体との別れを告げた。
――――――――――――――――――
暗い闇の中。いつものようにしのぶちゃんが俺を出迎える。あ、やっと死にました。可愛い顔で言われてしまう、まるで死ぬのを望まれているようだ。……嫌、だ。嫌だ嫌だ嫌だいやだ嫌だ嫌だいやだいやだイヤだ嫌だ嫌だ。必死に彼女に願った。懇願にも近い切望を。何度も願った言葉を口にする。
――ねぇ、しのぶちゃん。ねぇ、ねぇ!!お願いだからッ……!!俺と一緒に地獄へ行っておくれよッ!!
――とっととくたばれ、糞野郎
彼女はいつものように、
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彼女はいつも俺を睨む。殺意と痛みを、毒をもって、俺を
――無性に、彼女の顔が見たい
君の殺意が欲しい、殺されたい、刺されたい、殴られたい。欲望がむくむくと沸き上がってもっともっとと欲しがってしまう。君とカナエちゃんみたいに仲良く話してみたい、一緒になりたい。……俺に、笑いかけて欲しい。どうしよう、……随分、我が儘になってしまったみたいだ。だけど、それでも。彼女に否定はされたくないなぁ……。
――女々しいというのは分かっていても、それだけは願ってしまうんだ
カナエちゃんと出会う、運命の日。いつものように話すつもりだったのに、俺は何故か今日だけは彼女と向き合いたくはなかった。背後に回る。勿論殺すつもりはなく、気絶する程度の力で首に一撃喰らわせる。気を失ったカナエちゃんを受け止めて見ればやはり愛しい人の面影を見てしまう。まるで、そう……しのぶちゃんみたいだ。
「ああ、可愛いなぁ……」
気付けばカナエちゃんを屋敷に連れ帰ってしまった。信者に言いつけて部屋を用意させて、豪華な刺繍をあつらえた着物を着せてしまう。長い髪は、切ってしまった。切ってしまえばまるで愛しの君のようで落ち着く。ほぅと熱い熱のこもったため息を零してしまう。……カナエちゃんの瞼が僅かに動いた。
――ああ、目が覚める
彼女が目を覚ますと状況を飲み込めていない状態で辺りを見渡している。俺の姿を見つければますます混乱した様子で目を白黒させていた。面白くなって笑ってしまう。おはよう、俺は挨拶を済ませて日輪刀を見せつける。俺たちの首を刈り取る忌まわしい武器、持ってみれば意外と軽くて驚いた。目を見開いて取り返そうとする。おっと、俺は刀を更に上に持ち上げて、遠ざけた。じゃらり、カナエちゃんの足元の鎖が音を立てている。これ以上は進まないようだ、微笑んで俺はいつもの自己紹介を始めた。
「やあやあ、初めまして。俺の名前は
今日からここが君の家だよ、俺が笑いかければカナエちゃんが睨んでくる。しのぶちゃんみたいで、うれしくなってさらに笑った。
カナエちゃんをしのぶちゃんに置き換えて慈しむようです。
アンケートにネタ突っ込んでますがそろそろ引き出しがないです。