童磨さんin童磨さん(一発ネタ)   作:こしあんあんこ

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周回しすぎて片思いこじらせちゃった。


3週目

 身体は変化したが時が(さかのぼ)ったことには変わりはない。愛しい人に会えるのは後百年と数十年先だと思えば、童磨(どうま)がうなだれてしまうのは仕方ないことだった。思わずため息が零れてしまう。

 

「はぁ……」

 

 まるで俺たちは一年に一度しか会えない彦星と織姫のようだね。それが百年以上越しなんて、……天帝も酷いお人だ。いつか向こう岸に渡って君と会うために、俺は再び努力を始めた。悩める信者たちと一つになって、沢山の女の子たちを看取っていく。教祖として説法を説き、仕事を全うしつつ格上の下弦の月に入れ替わり血戦を申し込む。前回も申し込んだ鬼だから手の内なんて分かり切っていて、倒すのは容易であった。殺すのは可哀想ではあるけれど、彼女のことを想えば仕方のないことだった。そもそも鬼なのだしいつか殺されるのは覚悟の上だろうに、それなのに目の前の鬼は氷漬けになりながら命乞いをし始める。血戦当初はまるで馬鹿にした様子だったのに、今となってはこのザマとは。……みっともないことこの上ない。下弦だからと胡坐をかいて慢心しきっているからこうなるのだ。これでは無惨様(あの方)が下弦を解体してしまうのは当たり前ではないのか。そう考えながら氷漬けにしてバラバラにすれば、あっという間に虹色の眼に文字が刻まれた。……まだ、下弦の陸だ。これから忙しくなるなぁ、童磨(どうま)はケラケラ笑って夜明けの陰へと消え去った。

 

――やはり、上手くはいかないものだ

 

 どうしたってカナエちゃんを殺してしまう。最初は仲良くしてくれるのにどうしてなのだろうか、これで死に巡りまわって何度目だ。その度に彼女に振られては流石に傷ついてしまうものだ。童磨(どうま)は思う。その度に彼女が殺意をもって殺しにきてくれて嬉しくはある、二人だけの逢わせを大切にはしたいのだけれど、やはり一緒になるにも肉親の許しも必要だろう。童磨(どうま)は何度目か分からない下弦の入れ替わり血戦を申し込む。もはや殺すのは造作もない。あくびが出る程に退屈で首を切り裂けば聞き飽きた命乞いを懲りずに言ってくる。一字一句覚えているその言葉を先に口にすれば何故か恐れ(おのの)いた様子で此方を見てくる。怯えきった表情があまりに見苦しくて、氷漬けにして砕け散った鬼を見た後、興味をなくした。

 

「早くしのぶちゃんに会いたいなぁ」

 

 待ち焦がれる童磨(どうま)は夜空を見上げ一人呟いた。下弦は問題なく昇っていける。しかし、上弦となると別次元の強さになってくる。それは童磨(どうま)が何よりも骨身に染みて知っている事実だった。死んで(さかのぼ)って引き継がれ、多少なりとも強くはなっているが慢心してはならない。童磨(どうま)は下弦を昇る時の倍以上の男たちを喰らっていった。上弦へ上り詰めれば、最近出来上がった遊郭へと惜しげなく足を運んだ。というのも何故彼女たちが怒って話を聞いてくれないのかという理由を知りたかったからだ。女心と秋の空なんて言葉があるように気難しい女の子たちの思いを学ぶため、遊女たちを通して知っていきたいかなという意図で童磨(どうま)は遊郭を練り歩いた。しのぶちゃんをいつか(めか)してあつらえたいなと思って、遊女たちから化粧も教えてもらいながら、童磨(どうま)は遊郭の遊女たちとの交流をそれなりに楽しんだ。

 

――そして、妓夫太郎(ぎゅうたろう)堕姫(だき)との何度目か分からない出会いを繰り返した

 

 どういう因果か、遊郭に行かなくとも、出自はどうであれ似た境遇で童磨(どうま)と何故か出会うのだ。きっと俺と妓夫太郎(ぎゅうたろう)達は血に分けた兄弟のようなものなのだろう、だからこそ何回目かの繰り返しになったら彼らを出迎えることも俺の習慣となった。そうしている内に、また運命の日がやってくる。

 

――優しいカナエちゃんと優しい俺は本当に気が合った

 

 相性は良いようで不思議と話が弾むのだ。しのぶちゃん程ではないが心が動いて心地がいい。姉妹だからこそ成せる技なのだろうか、だからこそカナエちゃんは殺したくなかった。ああ、でも……、だけど、けれども。

 

――いつか、しのぶちゃんともこうして笑いあってみたいなぁ

 

 ビキリ、心にヒビが入る音がした気がする。……結局カナエちゃんは、今回も殺してしまった。しのぶちゃんの殺意が俺を突き刺して離さない。居心地がいいのに、気持ちがいいのに、どうしてだろうか、満たされなくなった。一つになって君を感じるのに、それなのに何故だろう、……泣きたくなってしまうんだ。ビキリ、ビキリ。何かがひび割れていく音がする。いつもの毒が身体を蝕んで、頭がグチャグチャになってくる。いつも、彼女は笑っていても冷たくて、俺にいつもなんて言ってたっけ……?何度目か分からない胴体との別れを告げた。

 

――――――――――――――――――

 

 暗い闇の中。いつものようにしのぶちゃんが俺を出迎える。あ、やっと死にました。可愛い顔で言われてしまう、まるで死ぬのを望まれているようだ。……嫌、だ。嫌だ嫌だ嫌だいやだ嫌だ嫌だいやだいやだイヤだ嫌だ嫌だ。必死に彼女に願った。懇願にも近い切望を。何度も願った言葉を口にする。

 

――ねぇ、しのぶちゃん。ねぇ、ねぇ!!お願いだからッ……!!俺と一緒に地獄へ行っておくれよッ!!

 

――とっととくたばれ、糞野郎

 

 彼女はいつものように、童磨(どうま)の誘いを断った。ガラガラと何かが音を立てて壊れてしまった。

 

――――――――――――――――――

 

 彼女はいつも俺を睨む。殺意と痛みを、毒をもって、俺を殺そう(愛そう)としてくれる。それは俺を見てくれていることなのに、満足出来なくなったのはいつからだろうか。何度も繰り返して、言われた言葉と殺意を、寂しく思う。猗窩座(あかざ)殿もしのぶちゃんも追い打ちのように責め立ててくるものだから、疲れてしまったのだろうか。遊女と交流して俺はおかしくなったとでもいうのか。

 

――無性に、彼女の顔が見たい

 

 君の殺意が欲しい、殺されたい、刺されたい、殴られたい。欲望がむくむくと沸き上がってもっともっとと欲しがってしまう。君とカナエちゃんみたいに仲良く話してみたい、一緒になりたい。……俺に、笑いかけて欲しい。どうしよう、……随分、我が儘になってしまったみたいだ。だけど、それでも。彼女に否定はされたくないなぁ……。

 

――女々しいというのは分かっていても、それだけは願ってしまうんだ

 

 カナエちゃんと出会う、運命の日。いつものように話すつもりだったのに、俺は何故か今日だけは彼女と向き合いたくはなかった。背後に回る。勿論殺すつもりはなく、気絶する程度の力で首に一撃喰らわせる。気を失ったカナエちゃんを受け止めて見ればやはり愛しい人の面影を見てしまう。まるで、そう……しのぶちゃんみたいだ。

 

「ああ、可愛いなぁ……」

 

 気付けばカナエちゃんを屋敷に連れ帰ってしまった。信者に言いつけて部屋を用意させて、豪華な刺繍をあつらえた着物を着せてしまう。長い髪は、切ってしまった。切ってしまえばまるで愛しの君のようで落ち着く。ほぅと熱い熱のこもったため息を零してしまう。……カナエちゃんの瞼が僅かに動いた。

 

――ああ、目が覚める

 

 彼女が目を覚ますと状況を飲み込めていない状態で辺りを見渡している。俺の姿を見つければますます混乱した様子で目を白黒させていた。面白くなって笑ってしまう。おはよう、俺は挨拶を済ませて日輪刀を見せつける。俺たちの首を刈り取る忌まわしい武器、持ってみれば意外と軽くて驚いた。目を見開いて取り返そうとする。おっと、俺は刀を更に上に持ち上げて、遠ざけた。じゃらり、カナエちゃんの足元の鎖が音を立てている。これ以上は進まないようだ、微笑んで俺はいつもの自己紹介を始めた。

 

「やあやあ、初めまして。俺の名前は童磨(どうま)

 

 今日からここが君の家だよ、俺が笑いかければカナエちゃんが睨んでくる。しのぶちゃんみたいで、うれしくなってさらに笑った。

 




カナエちゃんをしのぶちゃんに置き換えて慈しむようです。

アンケートにネタ突っ込んでますがそろそろ引き出しがないです。
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