死にたがりと少女   作:陽炎 紅炎

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時間が空いてしまい、申し訳ない。
仕事の合間を縫って書いているのでどうしても投稿にブレが出てしまいます。
m(_ _)m


寝覚め

あの後ひとしきり泣いてクロの家に帰った。

クロは部屋に着くと荷物の半分を棚や引き出しに閉まった。

俺はどうしようか悩みとりあえず邪魔にならない部屋の隅に置いておいた。

 

「あぁ、ここより狭いですけどそこの部屋使ってください。使ってない部屋なので多少埃っぽいと思いますが」

「わかった」

 

ベッドから反対側のドアを開けると確かにクロの部屋よりは狭いが人ひとりが生活するには十分のスペースがあった。

 

「この部屋にあるものなら好きに使ってください。あ、でもベッドがないですね…」

「構わねぇよ床で寝る」

 

そうと決まればさっさと掃除をしよう。

埃を掃いて雑巾で水拭きをする。

大体一時間で部屋の掃除が終わり、俺の寝床が出来上がった。

換気用に開けていた窓を閉め、クロの方を見ると本を読みながらお茶を飲んでいた。

多分さっき買ったものだろう。

 

「…寝るか」

 

昼食はここに帰ってくる途中で食べたし、部屋の掃除も終わったしなにより外を出歩いて疲れた。

床に敷いた布団に寝転がるとすぐに眠気が襲ってきた。

その眠気に抗うことなく俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

「よぉ、起きな」

「あぁ…?なんの用…だ…?」

 

目を覚ますと異様な空間にいた。

そこら中真っ暗なのに自分の姿は見える。

そして床、というより地面はまるでガラスの上のような感覚だった。

またクロに呼ばれたのかと思ったが目の前にいるのは俺と似たような格好とした男だった。

 

「誰だお前、ここはどこだよ」

「まぁまぁ、落ち着けよ死に損ない」

「あ?」

「お?怒ったか?ハハ」

 

男は揶揄う様に笑い俺の頭を撫でる。

その態度が気に入らず手を弾くと余計に笑う。

 

「んだよてめぇは…」

「んー、そうだな…。とりあえず神って名乗っとくか。別に徳が高い訳でもご利益がある訳でもねぇがな」

「ふざけてんのか」

「ふざけてねぇよ、ほら」

「ぐっ!?」

 

男が俺を小突くと俺の体が吹き飛んだ。

何度も地面を転がり何かにぶつかって漸く止まった。

 

「くっそ…いきなり何しやがる…」

「いやー、お前が俺をあまりにも疑うもんだから力でも見せれば早いかなーって」

「この、クソ野郎」

 

髪を掴まれ蹲っている状態から無理やり仰向けにされる

 

「さて、なんで俺がお前にこんな仕打ちをしているか…わかるか?」

「わかるか!」

「はぁ…やれやれ、自覚が無いのかね。お前が、命を捨てようとしたからだよ」

 

その言葉と同時に全身が潰れるような重力が俺を襲った。

地面に磔にされそれでも男の顔を見返す。

 

「はは、いいねその表情。今は気まぐれかそれとも目的があるのかは知らないが、お前はとりあえず生きようとしているみたいだな。だが、それで過去がチャラになるとは限らないんだよ小僧」

 

男が近づく度に体にかかる重力が増す。

少しずつ意識が薄れてきた。

 

「俺の名はイール…本当はこのままお前を殺してやろうかと思ったがそれじゃあ罰にはならねぇと判断した。故に、お前には不死を与える」

「な…ん…だと」

「死にたがりのお前には丁度いい罰だ。じゃあな、精々模索しろよ小僧」

 

その言葉を最後に俺の意識は沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

沈んでいた意識が戻った。

飛び起きて辺りを見ると寝ていた部屋に戻っていた。

それに安堵すると体から力が抜けて倒れ込む。

 

「どうかしましたか?」

 

俺の様子が変なことに気づいたクロが様子を見に来た。

不自然に汗だくな俺を見て顔を曇らせる。

 

「なにか嫌な夢でも見ましたか…」

「夢…」

 

さっきまでのことを思い出す。

自称神…イールとか言ったか、に吹っ飛ばされて物理的に潰されかけて…

 

「なぁ、銃で俺を撃ってくれないか」

「急にどうしたんですか?いつものですか?」

「頼む、確認したいことがあるんだ」

「…はぁ、仕方ないですね。外に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

街から少し離れた森に来た。

少し見なれた景色だと思ったら俺がクマに食われかけた所だった。

その時と同じように木々がない所に立ちクロに向かい合う。

クロは銃ではなくナイフを持っていた。

 

「弾を無駄にしたくないのでナイフでやりますよ」

「あぁ、わかった」

 

俺は目を閉じ両手を広げて覚悟を決める。

万が一あの神が言っていることが嘘だったとしても、これで死ぬなら、あいつに殺されるなら後悔はない。

 

「行きますよ」

「来い」

 

刹那、脇腹に衝撃と想像を絶する激痛が走った。

咄嗟に脇腹に手を当て、血を吐きながら地面をのたうち回る。

だが、そんな痛みも数秒後には無くなっていた。

 

「ぐ、はぁ…」

「そんな…」

 

手を退けてみると服は血で染まっているが傷は完全にふさがっていた。

クロも驚いている様だ。

無理もない、完全に致命傷になりえた傷が何事もなかったかのように塞がったら誰だって驚く。

 

「…なんともないんですか?」

「あぁ、傷が開くこともなさそうだ」

 

どうやらあの神が言っていたことは現実に起きてしまったらしい。

 

「クソッたれが…!」

「寝ている間に一体何があったんですか?」

「…イールとかいう変な神に会って、罰だなんだと言われ不死を貰った」

「イール…」

「知ってるか?」

「いえ、残念ながら知りません。生憎、神話にはあまり詳しくないんですよ私」

「…なんでも知ってそうなのに、意外だな」

「なんでもは知りません、知ってることだけです」

「そうか」

 

──精々、模索しろよ小僧。

こういうことかよ…。

俺はまだ、生き続けなければいけないらしい。

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