町へ出ると、アレクに気づいた町の住民が挨拶をしていく。快活な性格からか、人望はあるんだろう。
住宅街を出ると、今度は店が並んでいる。多分全部個人経営かな?この世界の店の形態にチェーン店とかはないのかもしれない。
「どこか入りたい店はあるか?」
「特に無いな。腹は減ってるが、町の散策から帰ったら宿屋の飯があるし」
そう言われたらアレクもどうしようもないのは分かってるが、事実特に行きたい店はない。
どこか面白そうな店はないものかと見渡してみると、一軒だけ目にとまる。周りの店に比べて一回りほど小さい店構えだが、不思議と目を引かれる。
「あそことかどうだ?」
アレクに提案する。どうやらアレクも入るのは初めてらしい。領主よ。それでいいのか。
店に入る。落ち着いた雰囲気で居心地はいい。棚に並んでいるのは、アクセサリーか。ネックレスやブレスレット、指輪など、様々なアクセサリーが並んでいる。
確かにアレクには無縁かもな。俺も言えたことじゃないんだが。元の世界で彼女がいなかったわけじゃないが、告白されてなんとなく付き合って、相手が俺に愛想尽きてフラれる。そんな感じだった。付き合っても特別感がなかった。もっと甘えさせてほしかった。そんなセリフが脳裏に蘇る。
考えるのはやめにしよう。楽しい思い出もあったが、やはりこういう時に思い出してしまうのは苦い思い出だ。
「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」
いけない、また気が付かなかった。
話しかけてきたのは店員と思しき男性。細身でどこかひ弱そうな、そんな印象を受ける。
「いや、少し目にとまって入ってみただけだ。ここのアクセサリーは貴方が?」
並んでいるアクセサリーをよく見ると、細かい装飾に凝っているし、色合いの鮮やかさに限らず全てがそれぞれの輝きを放つようで、目を引かれる。ここまで良いものを作れる職人というものには興味が湧く。
「いえ、作るのは妻の仕事です。私はそれを売るだけです」
「そうか。いやな、こんなに良いアクセサリーを作る職人がどんなものかと気になってしまって。例えば、そうだな、このネックレスとか、宝石の色が際立って見えるが、それが際立つのはその周りの装飾のおかげだ」
「分かりますか!素晴らしいですよね!私も彼女の作品に一目惚れして・・・、あぁ、すみません。つい熱くなってしまいました」
いきなり目を輝かせながら語るものだから驚いたが、本当に好きなのは伝わってきた。買うつもりは無かったが少し買いたくなってくる。
「良ければこれ、買いたいんだが、いくらだ?」
「こちらは9000Gになります」
所持金のほとんどが飛ぶ。いや、だが逆に考えれば買えるのか。
「分かった、買うよ」
「かしこまりました!ありがとうございます!」
働こう。影から9000G出しながら決意した。
このネックレスを誰に渡すかはもう決めている。宿屋のベルだ。1ヶ月お世話になるし、正直このネックレスにしたのもベルに似合うと思ったからだ。
会計を終え、包装されたネックレスを影にしまう。
「アレク、すまないが、もう宿屋に帰る」
いつの間にか店の外に消えていたアレクに声をかけそう言う。
「もう帰るのか?」
「ここで買い物をしたら所持金がほとんど消し飛んでな。もう店を回っても仕方ないし、そろそろ宿屋で飯が食いたい。また今度そっちに行くよ」
「分かった、気をつけて帰れよ」
日も落ちてきた頃、俺はアレクと分かれ宿屋への帰路に着いた。