異世界で職業:死神始めました(仮)   作:短歌@夜兎神

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Episode.13 厄介者

 風呂から出て服を着る。風呂の前と後で同じ服を着るのは少し違和感があるが、不思議とこの服に不快感はない。

 クロを影に戻した後脱衣所を離れ、キッチンへと出る。ちらほらと他の宿泊客が朝食のために食堂へ来ているのが見えた。ダグラスとベルはそれに伴って忙しそうにしている。邪魔をしないよう軽く手を振り、他の客と同じように食堂に入る。

 

 そういえば、他の宿泊客について聞いていなかった。酒場と宿屋、そして冒険者ギルド、この三つに冒険者は集まるイメージがある。まぁ、昔からのお約束みたいなものだな。

 周りにいる人物を順繰りに観察していく。学生ほどではないが、まだ若く装備も心許ない三人組、何やら真剣に話し合っている中堅らしい四人組、落ち着いた雰囲気で向かい合って座っている老夫婦、今食堂に来ているのはこの三組。

 

 せっかくだし冒険者ギルドの場所を聞いてつてを作っておくか……。冒険者を始めるにしてもパーティは組んでおきたい。俺の能力を鑑みると、補助兼サブ火力と言ったところだろう。この鎌はメイン火力にするには心許なく感じる。

 とにもかくにも、話しかけることにする。中堅所がちょうどいいだろう。先程から仕切っている金髪のパーティリーダーらしき男に声をかける。

 

「あの、少しいいですか?」

 

「あ?今忙しいんだ。ガキは大人しく座ってろ!」

 

 はい、カチンと来ました。

 幼い見た目で子供扱いされるのはこの際予想していたから別に構わない。だが、こっちが丁寧に話しかけているにも関わらずこの言いようはナンセンスにも程があるだろう。

 

「お前の言うその『ガキ』相手にそんな態度を取る方がよっぽどガキだろう。そんな奴の考える作戦などたかが知れてるな。作戦会議なんぞしていないで学校にでも通ったらどうだ?少しはその不遜な考えもマシになるだろう」

「んだとクソガキ!」

 

 金髪が跳ねるよう立ち上がる。倒れた椅子が大きな音を立て、周りの人達からの視線を集める。

 

「どうした、攻撃してみるか?相手はガキだぞ。みっともなくその腰の得物を抜くか?それをして不利益を被るのはお前だけだ」

 

 そう、今こちらに視線を送っている人達からすると、子供相手にいい大人がガチギレしているという構図だ。その状況で剣を抜こうものなら悪評が広まること必至だ。流石にこれで攻撃を仕掛けるほどの馬鹿はそう居ないだろう。

 

「上等だ……。やってやる!」

 

 は?

 金髪が腰にさげている剣の柄に手をかける。

 こいつマジか!?周りに人もいる宿屋の食堂で喧嘩を売られて即買いするほどの馬鹿だったか!

 剣が抜かれていく。本気だ。

 鎌を取り出すまでにどれくらいかかる?相手はどう斬りかかってくる?あとどれくらい猶予がある?

 考える内に剣はだんだんと金髪の腰から離れていく。そして遂に離れきったその剣を金髪は大きく振りかぶった。

 

「クロ!」

 

 俺の声に応じて影から大量の烏が溢れ出す。サイズは雀程度だが、一瞬で俺の姿を隠す。

 ザワつく周り、動きの止まる金髪。

 俺は瞬時に鎌を取り出しながら金髪の背後へと回る。目の前で飛び出した烏に気を取られている金髪に、俺を認識する余地はない。

 鎌の刃を金髪の首にかけ、くだらない喧嘩に終止符の合図を送る。

 

「チェックメイト、遅すぎる」

 

 少しの静寂の後、キッチンからダグラスが慌てて出てくる。この状況を見て何か察したのか、すぐに落ち着いた様子で口を開く。

 

「お客様、宿内での戦闘行為はお止めください」

 

 丁寧だが、その言葉には威圧感が乗っている。背けば一瞬にして制圧されそうな威圧感が。

 俺は鎌と烏を影に戻し、ダグラスの元へ歩いていき、頭を下げる。

 

「迷惑をかけてすまない。まさかこんなことになるとは。俺の読み違いだ。何か被害が出たようなら俺が弁償する」

 

 ダグラスは俺を見て頷き、金髪の方を睨みつける。

 

「……クソが!もういい、行くぞ!」

 

 金髪は悪びれる素振りもなく宿屋を出ていく。他のパーティメンバーはペコペコと周りへ頭を下げてから金髪を追っていった。

 

「災難だったな」

 

 何か事情を知っているのか、ダグラスは頭を抱えながらそう言う。

 

「あれは王都付近の領主の息子でな。悪評の絶えない男だが、立場上宿泊を断ることが出来なかった。アレクにも迷惑がかかるしな」

 

 それは悪いことをした。結局追い出すような形になってしまったのだし、ダグラスやアレクの風評に関わるかもしれない。

 

「正直スッキリしたよ。強いんだな、レオ」

 

 少し困ったような、しかし気が晴れたような笑顔を俺に向ける。筋肉モリモリのおっさんの笑顔も悪くは無いな。

 少し荒れた食堂を元に戻し、座っていた席に戻る。

 朝食が運ばれてきた。サンドイッチのようなもので、パンに具材が挟まれている簡素なものだったが、やはり味は良かった。いい食材を使ってるのだろう。

 

 食べ進めていると、老夫婦の男性の方が俺の元へ近づいてきた。

 

「君は冒険者なのかい?」

「いや、まだですね。今日この後ギルドに顔を出すつもりですが」

 

 そう言うと、男性は懐から手紙のようなものを出し、テーブルへ置く。

 

「ギルド職員にこの手紙を渡しなさい。少しは役に立つだろう」

 

 男性は席へと戻っていく。よく分からないが、役に立つなら貰っておこう。手紙をポケットにしまい、朝食を続けた。

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