異世界で職業:死神始めました(仮)   作:短歌@夜兎神

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Episode.17 vsロックバード?

 ロックバードらしきモンスターが俺目掛けて高速で突っ込んでくる。当たったらひとたまりもないだろう。

 ブーツによる高速移動でその圏内から逃れる。通り抜けた後を追うように来る強い風に吹き飛ばされそうになるが、なんとか踏ん張った。

 巨大な鳥はその巨躯に似合わない細かな旋回をし、既にこちらへ突撃体制を取っている。

 

「おいおい、マジかよ!」

 

 二擊目の体当たり。高速移動も今の体制からでは間に合わない。

 

 __当たる。

 

 その直感の後、間もなく俺は吹き飛ばされる。身体が浮き、背後の岩まで叩きつけられた。

 通常ならここでゲームオーバー。完全敗北だ。だが、現実に起こっているのは自分の予想を超えていた。

 

「痛みはほぼ無い……、まだまだいけるな」

 

 この装備のおかげか分からないが、どうやらある程度の防御力は保証されているらしい。これなら戦える。

 

 巨大な怪鳥は体当たりが当たって油断したのか、その羽をしまい余裕の顔で地面に降り立っている。

 意味があるかは分からないが、痛みがない事を悟られないようにゆっくりと、自分の体制を立て直す。最速のダッシュができる体制までだ。

 幸い怪鳥はまだ羽休めを続けてくれている。ここで一撃を確実に入れてやろう。

 

 高速移動で以て、怪鳥の足元へと移動。同時に鎌の薙ぎ払いを2回、そして刺突を1回。

 刺さった鎌を引き抜くと怪鳥は苦しむように大きく鳴き、再び飛び立つ。そして再び体当たりを仕掛けてきた。

 

「懲りないな。それはもう見飽きた!」

 

 同じパターンの攻撃ほど対策しやすいものは無い。こいつの場合パターンと呼べるものでもない単調な体当たりを繰り返すだけ。ならば、攻勢に出られる。

 

 突進してくる鳥のくちばしに水平に鎌の刃を突き立てる。刃は鳥の口内に入り込み、口腔内の側壁を傷つける。

 だが、流石にこの巨体の体当たりの勢いは殺せない。鎌を持ち必死に踏ん張るが、ズザザザと後ろへスライドしていく。このまま行くと再び岩に衝突する。しかし、口に突き刺した刃を鳥は挟み込み、離さない。こちらもメインウェポンを取られては敵わない、離すわけにはいかない。

 

 ふわっ。

 身体が浮く。

 

 鎌を咥えたまま鳥が飛び立った。そのまま鳥は高度を上げていく。

 

「嘘だろ……、流石に無傷じゃ済まないぞ、これ」

 

 グングンと高度は上がっていく。これはあれだ。パラシュートの無いスカイダイビング、または紐なしバンジー。

 

 パッと

 

 これまで逆らっていた重力が一気に俺を地面へと引き込む。

 今の俺は相当マヌケな顔をしているのだろう。心做しか鳥は嘲るように俺を眺めている。

 

 あぁ、あと数秒で地面と衝突事故だ。せめて俺が空でも飛べたら。

 ……あ。

 

「クロ!戻れ!そんで最大個体で再召喚!」

 

 俺の声に呼応して3つの影が地面に映る俺の影に吸い込まれ、1つの大きな影となった。

 クロは俺が地面に叩きつけられる数瞬前に俺を回収する。

 

「助かった……。ありがとう、クロ」

「カァー」

 

 当然だ、と言わんばかりに大きく鳴き、クロは巨大鳥を見据える。

 

「そうだな、まずはアイツを倒そう。今日はご馳走を食わせてやるからな!」

「カァー!」

 

 クロが最速で怪鳥の羽に近づき、俺が切りつける。怪鳥はそれに反撃しようとするが、その時には既にクロは反対側の羽に迫っている。

 何度も、何度もそれを繰り返し、翼を傷つけていく。

 徐々にその高度と、鳴き声の音量が低くなっていった。

 

「さぁ、ラストだ」

 

 再び、鎌に思い切り魔力を込めるイメージをする。

 また強い倦怠感。

 だがこれは成功の合図だ。クロに乗りながら俺は渾身の力で、怪鳥の翼を貫き、切り落とす。怪鳥が落下していく。

 

「やったか……。いや、これが低ランクとかこの世界のレート疑うぞおい」

 

 地面に降り立ち、改めて倒れ伏した鳥を眺める。倒れた状態でもその高さは俺とは比べ物にならない。

 切り落とした翼に近づき、触れてみる。ロックバードという名前とは裏腹にとても柔らかく、肌触りはとても良い。何かの素材になったりするだろうか。

 使えそうなものは取っておく主義だ。影にしまっておくとしよう。

 影が飲み込むように、翼をしまっていく。

 

 刹那

 

 グガァァァァァァァ!!!!

 これまでで一番の、けたたましい鳴き声。鼓膜が、そして体全体が大きく震える。

 

 振り向くと、怪鳥が目を覚ましていた。しかも、その身に炎を纏って。

 怪鳥はそのくちばしを開き、こちらに向ける。そこに炎が集まっていく。どんどんその炎は勢いを強めていく。

 

 逃げるべきだ。それを本能が告げていた。

 逃げられない。それを身体が訴えていた。

 

 相反する心と体を覚まさせるために自らの頬を叩き、すぐさまクロに乗る。

 その場から離脱した直後

 

 巨大な炎が、柱のような炎が

 

 山頂を抉り尚勢いを落とさない。

 これは、勝てない。今の自分に出来ることはもう何も無い。

 

「クロ、逃げるぞ!」

 

 クロはこくりと頷き、スピードを上げる。背後の殺気立った化け物は追ってこない。翼を切り落としておいて正解だった。もしあれがまだ飛べたならば俺の命は尽きていただろう。

 

 驚きと焦り、そして恐怖が頭を巡るうちに、街へ着いた。まだ心臓が鳴り止まない。

 とにかく、ギルドへ報告に行こう。採集とモンスターウルフの分の報酬を貰うのと、あんな化け物を低ランクとして紹介してきた事に文句の1つでも言わなければ気が済まない。それが当然だと言われたら俺はもう冒険者は諦めよう、そうだダグラスに雇ってもらおうそうしよう。

 そんなことを考えながら、俺は冒険者ギルドへと歩を進めた。


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