秘書のハートに連れられて着いたのは、周りに建ち並ぶ一軒家とは一線を画すほどの豪邸だった。目の前には巨大な格子のような鉄の門がそびえ立っている。
「まさかここがアレクの家か?」
流石にデカ過ぎないか?これじゃあまるで貴族の家だ。
「はい。ただいま門を開けさせますね」
ハートはそう言って、門の横についているドアノッカーのようなものを鳴らす。すると小窓のようになっている部分が開き、そこから聞こえてくる声とハートが何やら話しだす。
少しして、門はゆっくりと、キィー、と音を立てながら開いていく。二人がかりで手動で開けているようだ。
「さ、参りましょうか」
またハートについて行く。屋敷の扉までは少し距離があって、道中の植え込みは綺麗に整備されていた。
The金持ちの屋敷って感じの場所だ。こういった雰囲気はあまり好きじゃないので割と帰りたい。でもせっかくここまで来たのでアレクを連れ出さない選択肢はない。
屋敷の扉が開かれる。
入ってすぐはホール、そして大階段。こんな内装の家はアニメでしか見たことがない。
「アレク様、レオ様がいらっしゃいましたよ」
このまま部屋にでも連れられると思ったが、入った途端大きな声でハートがそう言うので驚く。
秘書ってもっとこう静かに佇んでるイメージだ。
少し待つと大階段から足音が聞こえたきた。アレクが出てきたのだろう。
「随分突然の訪問だな。何かあったのか?」
確定した。出てきたアレクの服装は華美な装飾が施されたもので、俺の頭にある貴族の服と一致する。
「アレク様に町を案内していただきたいそうです」
「なるほど、構わんぞ。ハート、南の森の件はマーカスに任せておいてくれ」
「お伝えしておきます」
南の森というのは俺が最初に気がついた場所兼さっきコボルト狩りをした場所だろう。確かアレクに会った時、アレクは馬に乗って森の方へ向かっていっていた。
「もしかして仕事の邪魔だったか?それなら他を当たるが」
「いや、問題ないさ。お前さんにはこの町を色々見てほしいしな」
引っかかるところはあるが本人がいいと言うならお言葉に甘えさせてもらおう。
だが行く前に一つ聞いておかなきゃいけない。
「アレク、ひとつ聞いていいか?」
「おぉ、いいぞ」
「この家といいその格好といい、お前はどこぞのお偉いさんだったりするのか?」
貴族かと直接的に聞くより相手に自分がどの立場か言わせた方がいいだろうと、少しぼかしつつ尋ねる。
「あぁ。一応、この町を領地として任されている。騎士崩れの情けない一代貴族だけどな」
つまり領主ということか。しかも、騎士崩れだのと言っているが一代貴族ということは国王からそれ程の信頼を得ているということになる。これは予想より遥かに大物だ。
「領主直々に案内してもらえる訳か。楽しみだな」
「言わなかったのは許してくれ。普通の人間は貴族と聞けば態度が変わる。俺はかしこまられるのはあまり好きじゃなくてな。お前さんくらいがちょうどいい」
なるほど。日本じゃ貴族なんてのは無かったしあまり実感が無かったが、普通は畏れ多いものなのか。
天皇様や内閣総理大臣と話すと考えたら確かにそうなるな。
だが、今更アレクに敬語を使う気は起きないし、アレクもそれを望んでいないだろう。
「それじゃあ、これからも変わらずこう接していこう。町案内頼むぞ、アレク」
「おう、行くとするか」
ハートのいってらっしゃいませの言葉に軽く会釈してから、俺とアレクは屋敷を出た。