斯くして比企谷八幡は仮想現実にて本物を見つける。   作:ぽっち。

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第4話

「いいか?スイッチってのは相手にソードスキルを当てた時のディレイタイム・・・・硬直時間を利用して攻撃を切り替えることを言うんだ。」

 

攻略会議が終わり、俺とアスナはキリトの説明を聞きながらフィールドを歩いていた。

流石にこのままパーティプレイができない俺たちと組んでいたら苦労するとキリトは思ったのだろうか、懇切丁寧に一から教えてくれる。

 

ちなみに、話を聞く限り彼も俺と同様にベータテスターなのだろう。

直接確認はしてこないがお互いに察しているような感じだ。

 

「ちなみに参考程度に聞かせて欲しいんだが、2人の戦闘スタイルはどんな感じなんだ?」

 

「あー、俺はアレだ、アレな感じだ。」

 

俺の戦い方はとても歪なものであまり人に見せれるようなものではないため、目を逸らしながらそう答えた。

 

「私は・・・・猪突猛進?」

 

アスナも同様で人に褒められるような戦い方はしていない。

細剣ソードスキル《リニアー》を隙あらばぶち込むスタイルだ。

しかし、驚くなかれ。

アスナの《リニアー》は他を寄せ付けない圧倒的なプレイヤースキルで出来ている。

最初見たときは美しい流れ星、刹那の閃光の様に見えたほどだ。

 

「・・・・アスナの方は何となくわかったよ。ハチ、お前のは実戦で見せてくれ。」

 

「へいへい・・・・。」

 

気怠い返事をすると、タイミングを見計らったかのようにモンスターがPOPする。

俺は片手剣の《アニールブレード》を鞘から引き抜く。

この武器は始まりの街からすぐの場所にある村でたまたま受けたクエストで手に入れた武器だ。

キリトも同じ武器を持っているため、恐らく現段階で最強の片手剣とも言えるだろう。

 

「・・・・いくぞ。」

 

POPしたのは《Kobold Henchman》。犬?の様な頭部を持ち、両手斧を振り回すこの辺でよく出てくるありきたりな雑魚モンスター。

 

相手が動き出す前に俺は先手を決める。

軽く剣を振るって軽くダメージを与える。

それに反応して、《Kobold Henchman》は両手斧にライトエフェクトを帯びさせる。

放たれたのは単発系のソードスキル。

動きを予測し、必要最低限の動きで回避をする。

攻撃は全て回避したため、ダメージは入っていないことを左上の視界に映る自分のHPバーを見て確認する。

 

《Kobold Henchman》はソードスキル使用後のディレイタイムにより動けずにいる。

その隙を見逃さず俺は剣を振るう。

まずは左から切り込み、剣の勢いを失わずに右からも切り込む。

回転しながら後ろに回り込みすかさずもう一撃を加える。

次は4連撃、剣を斬り下ろして斬り上げる。

そこで《Kobold Henchman》の硬直が切れた様で反撃をしてくるが攻撃を数フレームのところで回避しながら再び斬り下ろす。

ダメージエフェクトが出るが怯むことなく《Kobold Henchman》はソードスキルを放ってくる。

俺は避けずにパリィをし、そのままの勢いで《Kobold Henchman》の首に刃を入れて斬り裂く。

 

そこで相手のHPが尽きたのか、《Kobold Henchman》は小さな光のエフェクトになって砕け散る。

 

俺の視界に数コルと《粗い石》という訳の分からないゴミアイテムが手に入ったとウィンドウに表示される。

いや、何に使うんだよこのアイテム。

 

「ふう・・・・こんな感じだ。」

 

俺の戦闘を見てキリトは呆けた表情でこちらを見ていた。

・・・・ラグってんのか?辞めてくれよ、こんなフィールドのど真ん中で。

数秒の沈黙の後、キリトは我に帰る。

 

「・・・・ハチ、さっきのは片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・アーク》と《バーチカル・スクエア》だよな?」

 

「ん?・・・・あぁ。そうだが?」

 

「《ホリゾンタル・アーク》は片手剣熟練度50、《バーチカル・スクエア》は熟練度150はないと出来ない。今の段階だと俺もできないレベルのソードスキルだ。しかも、ディレイタイム無しで・・・・どういうことだ?」

 

「どうも何も、俺は一度もソードスキルは使ってない。」

 

納得していない・・・・というか理解できていない表情でキリトはこちらを見つめる。

まぁ、普通はそうだよな。

 

「ソードスキルって硬直時間があるだろ?・・・・1秒の隙が命取りになるSAOでそんな隙を見せるわけにはいかない。攻撃力は落ちちまうけど、俺は身体で覚えたソードスキルの真似事をしてるんだよ。攻撃力が無い分、手数で賄ってるけどな。」

 

他にもこんなゲームを始めた開発者である茅場晶彦が作ったシステムに沿って動くのは癪だと思ったから、というのも理由の一つだ。

 

それともう一つ、ソードスキルを使うためのモーションってのがよく分からないのだ。

β版の時には10回に1回できる程度だったため、ここでは実践で使うには心許無い。つまり、俺からすればソードスキルは邪魔にしかならない。

どちらにしろソードスキルを使わなければ隙もできにくい上に思い通りに動ける。

というできない言い訳を頭の中でツラツラと並べていく。

 

「だから、ライトエフェクトが出てなかったのか・・・・ほっんとに捻くれてるな。」

 

「ゲームの楽しみ方は人それぞれだろ。よくあるだろ?ゾンビ系のホラーゲームでナイフしか使わないとか。」

 

「命を懸けたゲームで縛りプレイは俺はできないよ・・・・。」

 

そんなこと言われてもなぁ。

雪ノ下のせいでM属性があるんじゃないか、と自分を問い正そうとは思っていたところだが、流石にそんなにドMだとは思いたくは無い・・・・。

 

「とにかく、俺はこういう戦い方だ。」

 

「キリトくん。何を言っても無駄よ?この人、ホントにソードスキル使わないから。・・・・使わないから、私はアルゴさんにソードスキル使い方教えてもらったもん。」

 

アスナに戦い方を教えてくれ、と頼まれた時も俺は「分からないものは教えれない」と言って断ったのだ。

その後にアルゴに色々と教えてもらった様だ。

授業料としてなぜかアルゴから後日請求が来たのでクーリングオフさせて貰ったのもいい思い出だ。

 

「なるほどな・・・・だけど、そんな捻くれた戦い方をしてるだけはあって回避とパリングはめちゃくちゃ上手かった。・・・・とりあえず、パーティの基本をちょこっとフィールドでやって明日に備えてさっさと街に帰ろう。」

 

褒められているのか貶されているのか・・・・そんなことを考えながら俺はキリトとの特訓に精を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトさんのパーティ講座が終わり、アインクラッド第1層、《トールバーナ》に帰ってきた俺はそろそろ限界を迎えていた。

そう、あれが欲しいのだ。

 

「マッ缶が飲みてぇ・・・・。」

 

千葉県民のソウルドリンク、MAXコーヒー。略してマッ缶。

暴力的な甘さを含んだコーヒー擬きだ。

そう、コーヒーではなく、コーヒー飲料なためコーヒーでは無い。

そもそも、コーヒーに練乳をこれでもかというくらい入れたあの飲み物は他にない。

1缶あたりに含まれている糖分の量は驚くことなかれ、角砂糖8個分。ペットボトル版の500mlには角砂糖16個分が入っているハイパーな飲み物だ。

 

「ハチくん、マッ缶って?」

 

隣でもすもすと安い黒パンを食べているアスナは俺に聞いてきた。

ちなみにパンには前の村で手に入るクリームが馬鹿みたいに塗りたくられている。

 

「バカ、お前マッ缶知らねぇのかよ。千葉県民のソウルドリンク、俺が愛飲してる生涯のパートナーだよ。」

 

「・・・・私、千葉県民じゃ無いから知らないよ。」

 

確かマッ缶は千葉県のみならず、埼玉や茨城県、神奈川県でも販売されていた様な気がするのだが・・・・。

 

「・・・・料理スキルで再現してみるか。」

 

「料理スキル?そんなのあるの??」

 

「あぁ。とは言ってもリアルのとは違ってだいぶ簡略化されたもんだけどな。」

 

とはいえ、攻略に関係ないスキルをここで取得するのは躊躇してしまう。

ソードスキルは使わないとはいえ、熟練度を上げなければ攻撃力も上がらない訳だし、武器によっては装備できない事もある。

 

「とにかく、マッ缶は我慢だな・・・・。早く攻略せねば。」

 

ものすごく動機が不純している様に聞こえるがどんなことでもモチベーションは大切。

八幡、えらい。

 

「ハチくんって千葉住みなんだね。・・・・ちょっと遠いや。」

 

あ、そう言えばついリアル情報を話してしまった。

とはいえ、アスナに聞かれた所で別に問題は無いのだが。

 

「あっ・・・・私は世田谷区に住んでるよ。これでフェアだね。」

 

そう言ってニコッと笑うアスナ。

まるで最初の自己紹介を連想させるやり取りだ。

くそ、可愛い。

内心ドキドキし、それを抑えつつ目を逸らす。

 

「負けても無いのに負けた気分だ。クソ。」

 

そして、パンを食べ終わったアスナはゆっくりと口を開く。

 

「・・・・リアルの事を聞くのはマナー違反、それは分かってるんだけどね。こうしてたまには話とか無いと忘れちゃいそうで怖いの。」

 

先ほどの表情と打って変わってアスナは暗い表情を浮かべる。

ここに囚われ、早1ヶ月。

まだ慣れてはいないとはいえ、短くは無い時間をここで過ごしている。

 

「・・・・話せばいいんじゃねぇの?忘れちまったら最前線で頑張ってる意味がなくなるわけだし。」

 

「じゃあさ、また今度教えてよ、ハチくんのリアルの話。・・・・もちろん、私も教えるから。」

 

「・・・・面白くねぇぞ?俺の話なんて。」

 

「たしかに・・・・」

 

否定してくれよ。八幡泣いちゃうよ?

 

そして、数秒の沈黙が流れていく。

周りの雑踏や喧騒が俺の耳に響き、ここで生きているんだと現実を押し付けられているような感覚が俺を襲う。

 

そんな沈黙を最初に破ったのはアスナだった。

 

「ねぇ・・・・ハチくん。」

 

突如、アスナは神妙な顔つき俺の名前を呼んで空を見上げる。

 

「・・・・私は怖いの。この世界で1日無駄に過ごしたら現実世界での私たちの1日は無駄になっちゃう。どんどん周りから置いてけぼりにされちゃう。そう考えると怖くて堪らない。」

 

彼女が突然こんな話をし始めたことに何故、と脳裏をよぎるが・・・・簡単な感情ではないのだろう。

俺には考えても、考えきれない。

さらに言うなら、アスナの言うことは正しいかもしれない。

だが――――

 

「――――俺たちが生きてるのはこの世界だ。現実世界でただ時間を失うんじゃなくて、この世界で一刻一刻と時間を刻んでる。確かにこの世界は《偽物》かもしれない。でも、俺たちは《本物》だ。・・・・この世界で感じたこと、考えたこと、やったことは《本物》なんだ、と俺は思う、たぶん。」

 

アスナは何度か「《本物》・・・・か。」と呟き下を俯く。もう一度空を見上げて、優しくはにかむように微笑む。

 

「・・・・まだ私にはその考えにたどり着けないや。それに、最後の一言で台無しだよ。」

 

その笑顔に内心ドキリと心臓を鼓動させる。

くそ、可愛いなこいつ。

 

そんな思考は途中で放り捨て俺は考える。

彼女が抱いている気持ちは俺には理解できないものだろう。

しかし、この世界で無意味に生きることは無駄に過ごしていると言ってもいいだろう。

 

そう思いながら、俺はアスナがするように空を見上げる。

 

今頃、現実世界ではどうなってるだろうか。

小町は受験勉強、出来ているだろうか。

ごめんな、大事な時期にこんな心配させることしちまって・・・・。

 

雪ノ下や由比ヶ浜は大丈夫だろうか?

一緒に卒業できないことに関しては申し訳ないと思っている。

なんだかんだ言って、居心地の良かったあの部室に戻ることができないのは一生の悔やみだ。

・・・・2人とも、俺のことなんて忘れてくれていいんだ。

お前らは捻くれぼっちの俺のことなんて忘れてちゃんとした人生を送ってくれ。

 

戸塚、愛してる。

 

材木座、ここで死んだらお前を一生恨んでやる。

 

平塚先生、ちゃんと卒業できないダメな生徒ですみません。結婚できる事をアインクラッドで祈っときます。

 

そんな、届きもしない想いを俺は馳せた。

こんな思考の過程に意味なんて無いのだろうが、明日、俺は死ぬかもしれない。

これくらい考えに耽ったって誰も責めたりはしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

ついにこのアインクラッドで初めてのボス攻略が行われようとしていた。

集合時間は朝10時、ぼっちが活動するにはやや早い時間だがしっかりと睡眠は取ったので動きに支障は出なさそうだ。

いや、ぼっち関係ないか。

 

現在、俺とアスナ、キリトの3人組パーティは他のボス攻略プレイヤーと混じり、迷宮区へと向かっている。

ここに来るまで一切のモンスターとエンカウントしてないことから事前に決めていた先行組が仕事をしているという事だろう。

ちなみに先行組はボス攻略できるほどのステータスや装備は無いが、迷宮区は突破できるほどの実力があるプレイヤーたちが志願して集まった。

 

もちろん、安全なレベルマージンは取ってもらっているのでボス部屋付近まで遠足気分で行けるだろう。

 

「それじゃあ、俺たちの担当を復習と役割を説明するぞ。」

 

歩きながらキリトはそう話を切り出して俺とアスナに確認を取る。

俺とアスナは素直に頷き、パーティリーダーの話に耳を傾ける。

ちなみにパーティリーダーはパーティを組んだ経験があるキリトが強制的にすることになった。

 

「ボスの名前は《Illfang the Kobold Lord》。コイツは最初に3体の取り巻き、《Ruin Kobold Sentinel》を出現させる。ここまではいいか?」

 

「あぁ。」

 

「俺たちあぶれ組はこの取り巻きを相手にするのが基本だ。ボスとの直接的な戦闘はほぼ無いだろう。」

 

逆にその方が生存率が高いため俺からすれば雑魚をプチプチ潰しながらの方が良い。

楽な仕事だぜ。

 

そんな事を考えていると、キリトは俺の思考を遮るように話を続けた。

 

「《Ruin Kobold Sentinel》の武器は基本時には棍棒に近いようなハンマーだ。攻撃力、防御力共に高いとは言えないし、打撃、斬撃、刺突に対しての耐性は通常通りのダメージだ。俺たちのレベルなら1人でも余裕だな。」

 

「このゲームならそれくらいが良いかもね。」

 

「あぁ。でも、油断は禁物だ。アイツらは中距離からの高く飛び上がって攻撃してくる。突然距離を詰めてくるから慣れないうちは一人で狩らない方が安全だ。」

 

それにしても、流石キリトだな。そんな細かい内容までよく覚えてらっしゃる。

多分、生粋のゲームオタクだったのだろう。

それに対して俺はβ版のボス攻略には参加していなかったから、ボスどころか取り巻きすら初めての戦いだ。

 

「ポジショニングだが、今回は前衛はハチ、中衛としてアスナ、後衛は俺で行こうと思う。」

 

「・・・・は?なんで俺が前衛なんだよ。」

 

嫌だよ、働きたく無いよ。

誰だ?楽な仕事だぜとか言った奴?あ、俺か。

 

「実力的な判断だよ。《Ruin Kobold Sentinel》は中距離からの振り下ろしが1番強い攻撃だが、弱点でもあるんだ。特にパリィしやすい。」

 

「なるほど、だからハチくんが前衛なんだね。」

 

「そうだ。この中でパリングが1番うまいのはハチだ。ハチがパリィした瞬間にアスナとスイッチ。アスナの《リニアー》なら中衛の位置が1番効果的だ。俺は2人のフォロー役と周囲警戒だな。」

 

俺が前衛なのは不本意ながら納得はしたが、するとは言っていないぞ。

そんな事を心の中で訴えてみる。

それにお前は働いてないじゃないか。クソ、こんな事なら俺がパーティリーダーをすればよかった。

・・・・いや、リーダーという事は責任を負うと言うこと。

専業主婦希望の俺には耐え難い責務になってしまう。

 

ちなみにこれは決定事項のようで何を言っても無駄なようだ。

 

「流石に俺にはハチみたいにほぼ100%パリィすることは出来ない。特に接近してからの下からの振り上げはβ版だと判定がシビアでパリィが難しい。・・・・でも、ハチのプレイヤースキルならできるはずだ。」

 

「褒めてくれてんだよな・・・・はいはい、リーダー(笑)様の言うことくらいは聞いてやるよ。社畜根性だ。」

 

「・・・・なんか嫌味が含まれた言い方だな。――――大丈夫だと思うけど、どれもβ版の情報だからそれは頭の中に留めておいてくれ。」

 

「「了解」」

 

軽い雑談を含めた作戦会議は終了し、俺たちボス攻略をするプレイヤーたちは迷宮区へと足を踏み入れた。

 

フィールドでは軽い会話もあったが迷宮区に入った途端、プレイヤー達の口数は次第に少なくなり居心地の悪い空気が漂ってくる。

 

なんせ初めてのボス攻略。

ここで失敗すれば今後の攻略に支障を来す可能性がある大事な一歩だ。

緊張するのだって仕方がない。

いつもは饒舌(嘘)な俺も緊張で心の臓がバクバクと大きな音を出している。

道中、先行組が獲り逃したモンスターと相対した時には口からただでさえ小さな心臓が飛び出てくるかと思った。

 

あぁ、怖いし、緊張するし、早く帰って暖かいオフトゥンに包まれたい。

小町、お兄ちゃん帰りたいよ。

 

ボス攻略なんて柄でもない事をやるのはこれで最後にしようかと悩んでいると遂に、ボス部屋の前までたどり着いてしまった。

 

先頭にいた今回のレイドリーダー、デアゴスティーニ(案の定名前は忘れたので適当。)は先行組に感謝の意を示し、見送る。

彼らが見えなくなったところで振り返って俺たちに視線を戻す。

 

「この場で俺から皆に言えることは1つだけだ・・・・勝とうぜ!!」

 

デスティニー(仮名)はそう言って力強く拳を突き上げる。

それに応じるかの如く、他のプレイヤーから気合の入った声が上がる。

その鬨の声が鳴り止まぬうちにディスプレイ(仮名)はボス部屋に手をかけた。

 

巨大な両開きの扉はプレイヤーが触れると自動的に開くようにプログラムされているのか、ギギギッと少し不気味な音を立てながらゆっくりと開く。

 

「突撃ぃ!!!!」

 

そのかけ声とともにプレイヤー達は意を決した表情と恐怖感から抜け出すような力強い声を上げてボス部屋に入っていく。

 

ボス部屋はとても広くなっており、長方形のような形をしている。

目測で幅が約20メートル、奥行きが100メートルと言ったところか。

この広さなら40人強のプレイヤーが伸び伸びと戦える。

 

ボス攻略を行う全てのプレイヤーが入り、入ってきた扉がゆっくりと閉まる。

それと同時に辺りの松明に火が灯り、薄暗かった部屋が徐々にはっきりと視界に映し出される。

奥には大型犬のような顔つきをし、3、4メートルはあろう体格。丸々と太ったような体型は脂肪で構成されておらず、遠目からでもはっきりとわかる筋肉の塊だ。その鋼のような肉体から生み出される膂力を持って巨大な戦斧を持ち上げる。

恐らくこのモンスターが《Illfang the Kobold Lord》だろう。

それにしてもこの大きさの犬となれば雪ノ下は絶叫してしまうのではないか?

絶叫する雪ノ下を少し見てみたいという邪な考えを頭を横に軽く振り、吹き飛ばす。

 

「来るぞ!!」

 

ディスコ(仮名)がそう叫ぶと同時に《Illfang the Kobold Lord》は飛び上がり、俺たちプレイヤーの前に立ち塞がる。

大きく息を吸って空気を激しく揺らす咆哮を放つ。

 

「ガァァァァァッ!!!」

 

同時に《Illfang the Kobold Lord》の近くで取り巻きである《Ruin Kobold Sentinel》が3体1度にPOPする。

ボスには3本のHPバー、取り巻きには1本のHPバーが表示される。

 

「よし、俺たちは予定通り取り巻きの対処だ。モタモタしてるとドンドン増えていくからさっさと終わらせよう。」

 

「「了解!!」」

 

俺たちが鞘から剣を抜刀し、構える。

定石通り、《Ruin Kobold Sentinel》が中距離からの跳びはね攻撃を仕掛けたその瞬間が俺たちのボス攻略の始まりの合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう八幡のキャラが崩壊してるような・・・・。

まぁそこも二次小説の醍醐味ですよね?ね?(脅迫気味)


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