大魔王 羽咲綾乃 作:深淵の英知
ふと自分が今、何をしているのかわからなくなる時がある。
どうしてわたしは、バドミントンをしているのだろう。
どうせ勝てない相手もいないのに、どうしてこんなにも真面目に練習してるんだろう。
どうせ勝てるってわかってるのに、どうしてこんな毎回毎回、公式戦に出場してるんだろう。
つまらない。
だから、そんなバドミントンを少しでも楽しめるように、いつしかいろいろ自分に条件を付けて試合をするようになった。
たとえばスマッシュ系統の技禁止。レシーブやドロップ系統の技だけで試合する。
相手が先に15点、20点稼ぐまでは得点することを禁止して、得点のハンデを背負った状態で試合したこともあった。
わたしは、わたしなりにバドミントンを楽しもうとしていた。ただそれだけだった。
ある公式戦を終えたその帰り道のことだった。応援に来ていた幼馴染のエレナが、私に向かって言ってきた。
『綾乃……さっきの試合、なに?』
どこか表情を硬くしたエレナの、その問いかけの意味が理解できなかった。
何って、ただ試合に勝っただけじゃん。普通に試合してもつまらないから、ちょっと相手に得点のハンデをあげたってだけでさ。
『そんなことして、相手の選手に失礼だって思わないの?』
失礼? 失礼って何が?
そんなの相手が弱すぎるのが悪いじゃん。つまらないバドミントンを少しでも楽しもうと、自分なりに工夫してるだけじゃん。
謝ってほしいのはむしろこっちのほうだよ。
『……変わったね、綾乃』
なに、エレナはわたしが悪いっていうの?
『みんながみんな、綾乃みたいに才能があるわけじゃないんだよ』
わたしはそんな才能欲しいなんて願ったことなんて一度もない。こんなに退屈な思いするんだったら、いっそ才能なんていらない。
才能なんて、欲しくなかった。
エレナになにがわかる。
凡人のエレナに……ただ応援してるだけのエレナになにがわかる。
『エレナに……エレナにわたしの気持ちなんてわからないよ!!』
感情の赴くままにそう叫んでしまって。
次の瞬間、右頬に走る鋭い痛み。我に返り視線をあげるとそこには右手を振り切った状態で、瞳にいっぱいの涙を貯めたエレナの姿があった。
『バカっ!!』
『あ……』
そう言って、エレナは走り去ってしまった。
以来、エレナとは口を利いてない。
海外へ行ってしまったお母さんに代わり、試合に応援しに来てくれていたのに、それ以来、試合会場でエレナの姿を見ることはなくなった。
もともと他のバドミントン部員との接点も薄かったわたしは、今度こそ独りになった。
「は、は……」
なんで。
なんでこうなるの。
試合に勝ったのはわたしなのに。無様に負けたのは相手のほうなのに。
なのになんで、わたしが悪い感じになってるの?
どうしてわたしは、独りなの?
自分の心の片隅で、何かが軋む音が聞こえてくる。
このまま放置していたら、どうなるかはなんとなくわかる。
だけど大丈夫。わたしはまだ、大丈夫。
お母さんが言ったんだ。わたしと対等に戦りあえる強い相手を用意してくれるって。
その約束がある限り、わたしはまだ、頑張れる――。
圧倒的な力で相手を叩き潰すスタイル→圧倒的な力で相手の心をへし折りにいくスタイル(本人の自覚なし)
あと二、三話でコニーとの対戦になると思います。