––––人生は山あり谷ありって言うけどさ、これはちょっと急勾配過ぎないか?
全世界一斉適性検査で天文学的数字の確率を引き当ててしまった俺は、あれよあれよと政府の人に保護されて軽い軟禁生活、数ヶ月前まで片思いで悩んでたのになぁ。
一応家族との連絡は盗聴されてるとは言え出来るし、発覚してからのマスコミのしつこい取材も無くなったから一応は不便を感じない。
そして俺を今悩ませてるのがこのIS学園入学書、強制入学らしいので勉強をしないといけないんだけど…………参考書分厚くないか? 電話帳くらいあるぞ?
引くくらいの文章量に辟易したけど、偶に乗せてもらえる打鉄を操縦する以外は、やれる事が基礎トレーニングと勉強しか無いからこの二つしかやる事が無く、入学試験日までの時間を非常に淡々と過ごす事になった。
そして問題の入学試験日、ISを使った戦闘がメインなので30時間ほど乗った打鉄を身に纏う。
全身に武者鎧の様な装甲が展開され、両肩に
武装は色々バリエーションが揃ってるけど、あんまりゴテゴテと武器を取っ替え引っ替えするのは中途半端になるから、
ただ焔備の方は射撃が苦手なのもあって殆ど飾りになってる、ISのセンサーリンクで照準自体は合うんだけど、俺が相手の動きに思わず反応しちゃう所為でISがそれを修正しようとし、結局照準が定まらず静止射撃じゃないと碌に当たらないからほぼ使えない。
だからここでやる事はあんまり無いんだけど、カスタム自体はある程度OKらしいから両肩のシールドの裏にそれぞれ葵を鞘ごとセット。
身体の動きを確かめながらカタパルトに移動し、準備が出来た事を試験官の先生に伝える。
「佐久間樹、準備出来ました」
「分かりました。ではこれから試験を始めますが、負けたからと言って試験に落ちると言うような事は無いので落ち着いてください」
ふわふわと浮きながらアリーナ入りした俺を出迎えてくれたのは元・日本代表候補生の山田真耶先生、昔試合の映像を見た事があるから結構緊張してる。
管制室からモニターされてるらしいし思った以上に人の目はあるけれど、こんな事で尻込みしてる様だと篠ノ之さんに『軟弱者!!』と怒られるだろうから、俺は頬を叩いて気合いを入れ、右手に握った葵の切っ先を先生に向けた。
「お願いします!!」
その言葉を合図の様に焔備で牽制射撃をしながら接近しようと思ったんだけど、物理シールドを呼び出されて弾を弾かれた挙句、そのまま体当たり気味にシールドバッシュを受けて弾き飛ばされた。
PIC特有の浮遊感のせいで踏ん張りが遅れ、弾き飛ばされた地点から大きく流されてしまっている。
そして俺が体勢を立て直すと同時に山田先生は両手に銃を呼び出し、上から撃ち下ろす様に弾幕を張り始めた。
けたたましい発砲音と共に降り注ぐ弾丸のシャワー、俺は真っ直ぐ直進する様にしながらそれを回避したものの、狙い澄まされた様に背中にライフル弾が直撃して行く。
動きが読まれてる、というよりも初心者らしい行動だから狙い撃たれてると言った方が正解だろうか? 面白い様に直撃を繰り返す所為で心臓の鼓動が激しくなり、焦りと呼吸の乱れでじっとりと冷や汗が全身を覆う。
頭の中に敗北の二文字が浮かびそうになったが、こんな弱気じゃ篠ノ之さんは振り向いてくれないと喝を入れ、全力で加速しつつ背面に両肩の盾を回し、アリーナの外壁をなぞる様に速度を稼いで行く。
ハイパーセンサーの片隅に表示される現在速度、それを可能な限り限界まで引き出した事で上空からの狙い撃ちからは振り切る事ができ、山田先生からの弾幕が落ち着いた。
その瞬間、俺は現在の速度を殺さない様に脚部でアリーナの外壁を蹴り、砲弾の様に空中へと機体を打ち上げながら一気に彼我の距離を詰めて行く。
しかしこんな吶喊は避けられたら終わり、実際に山田先生も左に避けようとしてるのがハイパーセンサーから伝わってくる。
それを防ぐ為、俺は右手の葵をブーメランの様に其処へ投げつけ、予想出来る回避先に向かってばら撒く様にアサルトライフルを連射して先生の動きを一瞬だけその場に拘束した。
そして、動きの止まった彼女の胸に飛び込む様にして体当たりし、万歳をさせる様に両脇に腕を通しながら抱き付いて武装を無力化すると、そのまま抱き抱えながら全速力でアリーナの地面目掛けて急降下。
俺のシールドエネルギーは的確な狙い撃ちで四割、壁を利用した大ジャンプの反動でそこから更に二割減少していて、更に片足が大破している。
残りSE四割と片足が大破して機体の重心が歪んでる時点で空中戦は無謀、叩き落として斬り合いに望んだ方が確実に勝率が高い。
山田先生も抵抗しようとしているが、足も絡めて組み付いてるので碌な抵抗は出来ていない為、そのまま地面へと叩きつける事に成功。
ただ相手の反応はまだ残ってるし、衝撃は兎も角SEの減り自体は大した事が無いだろうから、油断はまだ出来ない。
注意深く集中していると叩きつけた際に舞った土煙の中から銃弾が二発額を狙って放たれたので、身を低くしながらそれを回避し彼女の視界を遮る様に焔備を投擲、無事な方の足で踏み込みながら、両肩の葵を引き抜いて二刀流で斬り掛かる。
この奇襲は一応成功したものの、交差する様に振り抜いた斬撃は焔備も斬り裂き、その結果残った弾薬が誘爆した為打鉄のSEが更に減った。
そしてこのまま押し切る気だったんだけど、山田先生の回し蹴りがガラ空きの脇腹を直撃し、その衝撃で両手の葵を取り落としてしまった所為で蜂の巣にされてゲームセット。
結局山田先生に勝つどころか、SEも三割くらいしか削れなかった。正直勝って花道を飾るつもりだったから普通に悔しい。
そんな思いを噛み締めつつ御礼と挨拶を済ませた俺は、今後も精進する事を決意してアリーナを出るのだった。
この主人公は格闘極振りみたいな適性をしてますので、射撃兵装が超苦手です。
白式みたいな機体渡したら不満とか一切言わずに嬉々として乗り回すタイプ(白目