篠ノ之箒に一目惚れ   作:ACS

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福音戦で出しそびれたホーネットの武装名一覧。

近接ブレード:ドラゴンスレイヤー。

腕部レーザーブレード:フラッシュエッジ。

鞘型ビット:シックスセンス。

腰部ビームカノン:ディパーチャー。




第32話

 

臨海学校が終わり、IS学園は夏休みに入る。

 

世界中からやってきた学園生のほぼ半数は帰省し、俺も久々に家族と再会して近状報告やら何やらを済ませて学園へと戻って来たんだけど––––戻って早々に俺は一夏君と共に模擬戦を行なっていた。

 

オーバーホールして返って来たホーネットにはリミッターを設けられる予定だったんだけど、システム的にも物理的にもそれを拒否しているらしく、担当の方からは十分注意して扱う様にと言われた為、今回の模擬戦である程度の限界を測ろうとした訳なんだけど……その相手に二次移行したての白式と一夏君を選んだのは失敗だったかもしれない。

 

 

––––お互いに瞬時加速を発動し、交差する刹那に振り抜いた斬撃同士がぶつかり合って火花を散らす。

 

即座に反転し、ディパーチャーを拡散式で発射するも同じ様に反転した白式が構わずに踏み込んでくる。

 

機体の性質上被弾は極力抑えたいはずの彼にしては迂闊な足運びだけど、そのリスクを負ってでも斬り込んで来れる理由が彼にはあった。

 

 

二次移行を果たした白式は追加武装として左腕に雪羅が搭載され、機能の一つによってエネルギー兵器を無効化する霞衣と言う機能が使える様になったらしい。

 

この兵装もエネルギーを必要とするものの、外部からの攻撃はシャットアウトする事ができる為––––彼はこんな風に果敢な攻めを行える訳だ。

 

ビームの弾幕を突き抜けると同時に霞衣を解除し、接近と同時に雪片を片手で振り上げる一夏君。

 

幸いな事に零落白夜は発動していないが発動タイミングは任意で変えられる為油断は禁物。俺は振り下ろしを脇へと逸らす為にドラゴンスレイヤーを上段へ構えたが、その瞬間にガラ空きの脇腹へと雪羅の拳を捻じ込まれる。

 

反射的に身を引いて回避したが、紙一重で避ける癖が出た所為で雪片を振り抜く瞬間に発動した零落白夜によって肩口から腰へ掛けてを撫で斬りにされた。

 

大袈裟な回避アクションを起こしていれば零落白夜の発動で伸びた刀身を回避する事が出来ただろうが、避けられ無かったのだから今更後悔しても遅い。

 

大幅に削れたSEを確認しつつ、思考を切り替えながら腰のシックスセンスを分離させて、背面から彼の背中を裂いたものの、武装の性質上相手の足を止めるには至らない。

 

俺はこのまま切り返してくると予想して収束砲へと切り替えたディパーチャーを放とうとしたが、真上へと移動した為に外されてしまい、間合いを離す事が出来なかった俺はそのまま太陽を背にした一夏君に斬り込まれる。

 

これを受けるのはさっきの二の舞になるので、瞬時加速を行なってその場から離脱。ハイパーセンサーで後方を確認しながら返しの手を考えようとしたが、スラスターの向きを変えながら後を追う様に瞬時加速を返してきたので応戦するしかない。

 

彼の弱点は機体の燃費の悪さ。一撃一撃がSEを喰うと言う性質だから、空振りや無駄撃ちさえさせればその分彼は辛くなる筈なんだけど、さっきから喰らい付かれて防戦一方だ。

 

雪片の使い方も模擬戦をしてる内に洗練され、フェイントを織り交ぜてくるから正直今までで一番厄介な相手になっている。

 

俺はシックスセンスを三連結し、二つの回転刃にしつつ左右から向かわせながら逆に間合いを詰めた。

 

このまま押されっぱなしだと埒が開かない。向かって来ると言うのなら是非も無し、相手の誘いに乗ってやる!!

 

一気呵成斬り込んだ俺は正面から雪片と斬り結びながらも、そうやって足の止まった一夏目掛けて回転刃を当てに行ったが、以前やった空間を把握する訓練の成果なのか、まず俺の胴体に蹴りを入れて距離を離すと、そのまま回転するビットを一つ一つ斬り落として再び踏み込んで来た。

 

あまりの早業に面食らってしまった俺は咄嗟にディパーチャーを発射したものの、零落白夜でビームごと機体を斬り抜けられて敗北した。

 

 

「–––––よっしゃあッ!! 通算十連敗寸前でギリッギリ勝てたぁ!!」

 

「ハァ……ハァ……さ、流石にインターバル十分で四連戦はキツイって」

 

「俺だってキツイって……あー疲れたー」

 

 

朝一から始めて今は昼の十二時、かれこれ四時間近く戦い続けになってるからお互いクタクタになっていたのか、機体を待機状態に戻してピットの中へと戻る。

 

ここまで疲れるのなら他の人に頼めば良かったかなと一瞬考えたけど、ホーネットの速さだと並みの機体じゃ当たる前に斬るを実践できてしまうから普段とあまり変わらないと思い直し、結局一夏君に頼むしか無かったのかと肩を落とす。

 

速さで言えば箒さんの紅椿も速いんだけど、彼女は彼女で用事があるし、まだ機体を受領したばかりだから高速戦をさせるのはキツイだろう。

 

……男二人が息切らせてピットの中に座り込んでるレベルだしね。

 

 

「と、というかさ、一夏君って、つ、強くなったよね。近接戦で負けるとは思わなかったよ」

 

「そりゃあ、さ、参考になるから、な。樹と、た、戦ってると。てか、昼飯どーする?」

 

「俺は一時から四組の友達と出かけるから外で食べるよ」

 

実は学園に帰って来た日に更識さんから偶々懸賞で映画のペアチケットが当たったから一緒に見ないかと誘われてて、それなら昼食も一緒にと言う話になってたんだよね。

 

……ただ、その話を聞いてる時に誰かが聞き耳を立ててたのが凄く気になるけどね。具体的にはハードな早朝訓練をしてくる先輩チックな人の気配が。

 

 

そんな訳で彼の誘いを断ったんだけど、彼は別に嫌な顔する事無く『先約なら仕方無いよな』と言って納得してくれた為、そこで話を切り上げた俺はシャワー浴びて汗を流した後、私服に着替えて更識さんとの待ち合わせ場所に向かうのだった。

 

 

 





短めですが今回はこの辺りで。

なお簪さんは前日から映画に誘う為の練習をしまくってから超勇気を出して佐久間君を誘いました。

そしてそれを影で聞く謎のおねーさん、佐久間君の恋心を知ってるが故に……どう出るんですかねぇ?


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