篠ノ之箒に一目惚れ   作:ACS

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主人公は一夏と同室ですが、入学初日は一旦保護されていた研究所に帰ってるのでまだ誰が一緒なのか分かりません。


第3話

 

 

時は過ぎて今は放課後。俺は剣道部への入部届けを持って部室へと向かったんだけど、そこで道着を着た篠ノ之さんと織斑君を見つけた。

 

どうやら一手交えた後らしく、正座をした織斑君が篠ノ之さんに叱られているところだったらしい、入室した瞬間に助けを求める視線がこっちに向けられてる。

 

「えっと、篠ノ之さん?」

 

「佐久間か? 丁度良い四年振りにお前の実力も見てやる、早く防具を付けて来い。一夏の様に鈍っていたら承知せんぞ?」

 

「あ、あはは、織斑君なにやったのさ?」

 

「いや、普通に試合しただけなんだけど……」

 

 

『たはは……』と困った様に笑いながら頬を掻く織斑君の様子から多分負けたんだろう、そして幼馴染のその様子にスパルタ心が燃えたってところなのかな?

 

入部届けを持ってきただけなのに妙な事になったなぁ……とは思ったものの、俺自身篠ノ之さんと試合が出来るのは嬉しい。

 

そう思って急いで防具を借りて試合をしたんだけど、悲しい事に俺も織斑君の様に負けてしまって、同じ様に正座する事になってしまった。

 

 

…………言い訳をさせて貰うのなら、凄く美人になった初恋の人が真っ直ぐ此方を見つめてくる事に浮足立ったから負けただけで剣筋自体は見えてたんだ、うん。

ただそんな言い訳を許してくれる人じゃ無いから真面目にお説教を受けてたんだけど、部室の時計を見て訓練機の貸し出し時間が迫ってる事に気が付いた。

 

「ごめん篠ノ之さん!! そろそろISの訓練したいから抜けていいかな? 時間的にも行かなきゃ行けないんだ」

 

「む? そうか、それなら仕方ないな」

 

「えっ? 使用許可降りたのか? 俺も申請したけど通らなかったぞ?」

 

「朝一で許可貰いに行ったからなぁ。ギリギリ一機借りれたんだ。っとと、そろそろマジでヤバイから行くね」

 

 

俺は目的の入部届けを渡してから急いでアリーナへと向かい、ピットで訓練機に乗り込む為に上着を脱いだところで、装甲の反射に何かが写った気がした。

 

気になって振り返ってみると、俺の真後ろの掃除用具箱がほんの僅かに開いていて、中身らしき物が真横に置かれてる。

 

気になって開けて見ると、水色の髪をしたスタイル抜群の女性がISスーツを着たままハンディカメラを構えて笑顔を浮かべていた。

 

そしてどこからか取り出した扇子を広げながらウインクと共に『見つかっちゃった』と言ってカメラをしまい、そのままさも当然の様に掃除用具箱の中から出てきたので、俺は何も言えずに思わず道を開けてしまう。

 

 

「はじめまして後輩くん」

 

「あ、はい。はじめまして?」

 

「じゃあ早速始めましょっか!!」

 

「えっ? 何を?」

 

「おねーさんと、も・ぎ・せ・ん♡」

 

人懐っこい笑みを浮かべながら扇子で俺の額を軽く突いた先輩らしきその人は、何時の間にか用意していた打鉄に乗り込んでアリーナの中へと飛んでいってしまった。

 

……取り残された俺は正に何が何だか分からないと言った感じで放心していたけれど、一応訓練に付き合ってくれるっぽいので大人しく彼女の後に続く。

 

俺はまだ音声認識無しの『展開(オープン)』と『収納(クローズ)』が実戦で使えるレベルじゃないから打鉄の装備は入試の時と同じ形、装備は初期装備(プリセット)のみだけど、撃つか斬る以外に意識を割かなくていいから案外楽なんだよなぁ。

 

若干ふらつく飛行をしながら上空で俺を待つ先輩のところに向かったんだけど、彼女も俺と同じ様に初期装備(プリセット)を装備して待ち構えていた。

 

 

「準備は出来たかしら? おねーさんは強いから遠慮しなくて大丈夫よ」

 

「はい!! 胸を借りるつもりで全力で行きます!!」

 

「良い返事ね、けど山田先生にやったみたいにラッキースケベを狙っちゃだめよ?」

 

「あ、アレは、必死だったからああなっただけで、別に狙った訳じゃ!!」

 

「はい、よーいスタート!!」

 

 

相手のからかいにまんまと乗せられた俺はその言葉と共に間合いを詰めて来た彼女に反応出来ず、胸にブレードの一撃をもろに食らってしまう。

 

不意打ちとは思わない、これは気を抜いた俺のミスだ。

 

SEの減少と胸への衝撃と共に意識を切り替え、右手の葵を振り抜いて反撃を行ったけど、彼女はその一閃をすかさずブレードの柄部分で受け止めた事から、飄々とした印象とは裏腹に実力が相当高い事が分かる。

 

しかしそんな泣き言は女々しいだけなので左手の焔備を使って一旦回避行動を取らせ、避けた瞬間を狙って斬り込むつもりで引き金を引こうとしたら、半身を逸らすだけで回避された。

 

ならばと、両肩の非固定浮遊部位(アンロックユニット)を操作し、挟み込む様に勢いよく盾をぶつけに行ってもそれを同じように盾で受け止められる。

 

仕方ないのでこの距離じゃ当たらない上に取り回しに難のある焔備を投げ捨て、右肩に貼り付けた葵を抜刀しながら斬り掛かり、身体と斬撃の軌跡で視界を塞ぎつつ僅かに遅らせた逆袈裟への切り上げを行う。

 

反応出来ないだろうと確信しながらの一撃だったが、タイミングを僅かにズラした事が裏目に出たのか初撃を鍔元で受け止められた挙句、二の太刀の軌跡に重なる様に受け流され、一刀で二刀を止められてしまった。

 

苦し紛れの蹴り上げも最小限の動きで身体を逸らす事で回避され、その動きに合わせた交差させた袈裟斬りも斬撃の重なる部分を受け止められる。

 

 

「ほらほら、頑張れ男の子!! おねーさんは君の距離にいるゾ!!」

 

「くっ、当たらない!? なんて強さだ!!」

 

「ふふっ、じゃあそろそろ反撃に行くわよ?」

 

 

その言葉と共にブレードを横薙ぎに構える先輩、俺は咄嗟に距離を開けて斬撃の瞬間を受け止めようと背後に下がったが、それを狙い澄ましたかのように肘打ちが俺の腹に突き刺さる。

 

SEへのダメージは無いが、打撃の際の衝撃で身体が一瞬硬直した事と、潜り込まれる様に密着された為まともな反撃が出来そうに無い。

 

悪あがきの膝蹴りを打ち込もうにも寸前で斬り払いと共に後ろに下がられて空振り、反撃に移ろうとした瞬間に非固定浮遊部位(アンロックユニット)による顔面へのシールドバッシュで出鼻を挫かれて再び斬り裂かれる。

 

 

結局、俺はこの謎の先輩に片腕とブレード一本で完封負けし、一太刀も掠らせる事が出来なかった。

 

ピットに戻って項垂れる俺に『まぁまぁ頑張った方よ、それじゃあまた明日以降に会いましょう?』と言って彼女は去って行ったけど…………結局誰だったんだ、あの人?

 






主人公が一人で訓練しようとしているところに現れた謎のおねーさん、単純に彼の身の安全の為に鍛えに来ただけですが、これ以降もちょこちょこ現れてスパルタする予定です。

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