クロフィ・スカーレットが戦っていた。
その5日前まで時は遡る。
兄のクロフィ・スカーレットが館から出ていったのを私はフランと見届けてから館の中に戻った。
「ねぇ、おとうさま? おにいさまはどこにいったんですか?」
「お前の兄様はね、お前達を守る為に行ってしまったよ。何処に行ったかはわからないさ」
何気ないフランと父の話を横で聞く。
守る為に? まさか戦闘か? こんな時期に? まだ代替わりの時期でもないというのに。
まさか、父と母の暗殺? 俺達の誘拐?
はぁ、私が何かを考えたところで何かがわかるわけでも無し。
この話は聞かなかったことにしとこう。
所詮産まれたばかりの吸血鬼だ何が出来るわけじゃない。
「さてと、フランあっちにいこ?」
「わかった!! おとうさま、またね!」
「あぁ」
今日は何をしようか?
何時もみたいに不思議なこの力の練習でもするか?
兄さんとレミリア、父母も何か力を持ってるらしいが見たことはない。
恐らく危険な物なのだろう。
私と同様フランも少し前に力の兆候が見られた。
フランが手を握ると近くの物が壊れたのだ。
あれを壊れたと表現するには少し過小評価かもしれない。
あれは〝破壊〟だ。小さいものなら塵も残さずに木端微塵に破壊してみせた。
なので俺は出来るだけフランにその力を使うなとは警告している。
身内に使われてはそれこそ文字通り1発で死んでしまうのだから。
一度フランに生物を破壊してもらおうとしたが、どうやら〝今はまだ〟コツは掴めないとのこと。
どうやって力を使っているのか聞いてみたがよく分からない。
見た目相応の可愛らしい表現ではあったが。
何? きゅっとしてどっかーんって?
わからない。いや、わからないわけではないのだけど、非常に伝わりにくい。
手を握るという1つの操作が必要なのであれば何かを握り潰しているのだろうが。
それで物が爆発すると。
それでそのフランとの双子の兄の私だが陰と陽、表裏一体なのかは知らないが〝破壊〟の真逆の恐らく
〝創造〟の力を私は持っている。
この持っている力が創造なのかはまだわからないけど。
創造というには少し、大分? 制度が低い。
未だに石ころしか創ることが出来ない。
創造するにはその創造する物を知らないといけない。
つまり莫大な知識が必要なのだ。知識も必要なのだけど精神統一、何時であれ冷静に心を沈めていなければ使えない。
一度心が乱れてしまえば使える使えなくなってしまう。
それで一度創造したものが暴発して庭にクレーターを生み出したことがある。
あれは反省だ。
「クラン、へんなかおしてる」
「私は変な顔なんてしてない。今日は何して遊ぶ? しりとり? トランプ? 鬼ごっこ?」
ふふん! レミリアや兄さんに教えてもらった数々の遊びを習った私には最早出来ない遊びなど殆ど無いのだ!!
「あれがやりたい。じゃんけん!」
なるほどジャンケンか。
ジャンケンとはグー、チョキ、パーの3つから選び二人以上で出しあい勝ち負けを決めるというものだ。
グーはチョキに強くチョキはパーに強い。そしてパーはグーに強いと三竦みになっているのだ。
このゲームを考えた人間は天才だと私は思ってる。
だが元々は人間のゲーム、吸血鬼には少し物足りない。そのため…………。
「「最初はグー、ジャンケン!! ポ」」
ポンを言い終わるその前に二人で何の手を出すか吸血鬼の動体視力をありったけ使い相手の手を見極め何を出すかを決める。
これは、パーか!! ならここは裏をかいてグーだ!
何!? まさか、グーを出して来るのか!?
これはまさか、誘っている? 俺がパーを出そうものならすぐさまチョキに変えると? 甘い、甘いぞフラン。敢えて乗ってやるよ! それにな!
俺はパーを出しフランがチョキを出そうとした瞬間、グーに戻す。
「「ン!!」」
ここまでで僅か0.5秒。このジャンケン、今回は俺の勝ち!
「あぁぁ、まけちゃったー」
「ふふふ、まだまだよな!!」
よっぽど悔しかったのかその場で座り込んでしまうフラン。
さてさて、このジャンケンだが頭の回転の早さと動体視力等々、それらを全力で使って遊んでいるのだが一回するだけでもスゴい労力だ。
そのためこのジャンケンは1日に1回程度しか出来ない。
このジャンケン、1日の日課となりつつあるが何かを賭けないと面白くない。
なので何時もその日のお昼のオヤツを賭けているのだ。
「さて、フラン今日のオヤツはプリンだったか?」
「あっ! ひ、ひどい!! フランもたべたい!!」
「でもフラン負けちゃったからな~? どうしよっか~?」
「いいもん! クランの、クランの、え~と、え~と」
何を言いたいのか、というかどんな単語を言えば良いのかが分からない様子のフラン。
「馬鹿、か?」
「それ!」
こんな言葉ばかり教えていてはいけない気がするが私には関係ない。まぁそこら辺は兄さんか母がどうにかするだろう。
それはそれとしてだ。
「それじゃ食堂に行ってくるからな? もし、わけてほしいなら着いてくるんだな」
これは少し意地悪か?
まぁ、元々フランのオヤツを食べる気はさらさら無いのだが。
「べつにいい!! ここにいる!!」
ふむぅ、怒らせてしまったか。
「じゃあ行ってくるからな?」
「ふんっ!」
ちょっとやり過ぎたか? う~ん、やり過ぎたな。
これは今回は粘るなぁ。
拗ねるのなら私は知らない。そこで居れば良いよ。
拗ねているフランを放って館へ歩いていく。
そしてフランと離れ館の扉の前まで着いた所で何やら自身の体に違和感を感じた。
「何か体が重い? 頭にモヤがかかってるみたいだし」
もしかして何かの病気か?
でも吸血鬼って病気になるのか?
それとも、少し前にやったジャンケンの疲労?
いやいやそれでもここまでの疲労は今まで感じた事無かったし。
ただの遊びでここまで酷くなるなんてあるわけ無い。
私は頭を振り館の廊下を歩く。歩いてしまう。
やっぱり何かおかしい。一歩一歩と進んでいくにつれて体調が悪化している。
脂汗も出てきだした。
歩く、足が震えてだした、歩く、汗が止まらない
歩く、吐き気がしだした、歩く、恐怖を感じる
走る、目がチカチカしだした、過呼吸になった
腕が満足に動かない、足が動かない、転倒する、
膝を擦りむいた、血が出る、体の震えが止まらない、這いずる、進む、前へ進む、止まらない。
怖い、怖い、怖い、目の前が真っ暗になる。
夜じゃない、目が、見えない?
嫌な予感がする。
何かが私の心を支配する。
真っ黒で底が見えない闇のような泥。
私にまとわりつく。
沈む、消える。私が消える、消えてしまう。
嫌だ、嫌だ、嫌だ!!
泥が私の体に入り込む。私の、私の心を染め上げる真っ黒に黒く黒く、狂気の色に、私が私で無くなってしまう。
黒く灰色になる。灰色に。灰、色?
何かが消える、記憶が消えた、一つ一つ消えていく、また一つ消えた、何も思い出せない。
思い出せ、思い出せ、記憶が流れ込んでくる。
あぁ思い出せた!! 私の、私のき、おく?
ち、違う! これは私の記憶なんかじゃない!!
誰、誰の記憶なんだ!? 違う〝俺〟の記憶だ。
違う! 〝私〟の記憶じゃない!!
私の記憶が嘘の記憶で塗り替えられていく。
あぁ、俺は/私は…………俺だ/誰だ?
私が俺に切り替わる。
綺麗な銀髪も赤黒く染め上がり、羽も歪な形に変わる。
はは、ハハハ!!
アァ、力が溢れる。
これは悪かねェな。最高だ!!
「クラン!?」
アァ? 誰だ? …………子供? 人間か? 人間、じゃ無いな。
これが吸血鬼か?
「そこをどけよ、吸血鬼」
「クラン、じゃない。貴方、誰なの。クランを返して」
「そりゃ出来ねェ相談だな。俺もこいつも離れたくても離れられねェからな。俺とコイツは一心同体ってことだよ。まぁ勘弁してくれや」
「それで許すとでも思ってるの?」
なるほどなるほど俺と殺りたいってことかァ?
「ハハハ!! 。殺り合うってんなら俺は容赦しねェぞ!! ブチ殺してやる!!」
「もちろんよ」
無茶というか無謀というか。
だが
「嫌いじゃねェなァ! 。そういうのはよォ!!」
「そう、お前からクランを返さして貰うわ!!」
「そうこなくっちゃなァ!!」
素早く近くの像から剣を奪い取り応戦する。
「はぁっ!!」
吸血鬼の周りから光の玉が出てきやがった?
なんだ? 魔術、魔法、て訳でもねェな。魔力を固めて撃ってるだけ?
コレが弾幕ってやつか?
中々密度が多いな、流石は吸血鬼って所か。
だが俺には関係ねェ。
光の玉が俺に触れようとした瞬間に全てが弾けていく。
「嘘、何で」
「こんな物、剣一本あればどうとでもなる」
弾幕を俺の体に触れる前に全て剣で弾き飛ばしている。
「くっ! ならもっと密度を上げるだけよ!!」
先程より密度が濃くなった、か。
だが関係ねェ!!
「馬鹿なの!? この弾幕の中を突っきってくるなんて?!」
「ハハハ!! そんなの知るかよ!!」
ア? 止まった? 何故だ?
俺の一閃が吸血鬼の首に迫ろうとした時、俺の腕
止まったのだ。
アァ、そうかそうか。まだお前が残ってたか。仕方ねェ今回は諦めるとするか。
別に俺はお前を殺したい訳じゃねェしな。
「とりあえず」
「ガハッ」
吸血鬼の前で瞬時に動きそのがら空きの腹に1発入れ気絶させる。
「吸血鬼ってぇのは面倒クセェな、こうして気絶でもさせとかねェとすぐに復活する。
さて、俺はここから逃げらしてもらう。いくら吸血鬼でもアレは俺でも死ぬ」
「どこへ行こうというのだね」
「アァ? 誰だ? テメー」
次々と、面倒クセェ。
さっきの吸血鬼よりも中々強そうな奴だな。
面倒クセェな、後ろの奴もヤバい、ってのに。
というかさっきよりも力が強くなってねぇか!?
オイオイ、オイオイ!! ヤベェって!!
何だこれ!? 威圧が半端じゃねェぞ!?
「オイ! 流石にこれは止めた方が良いんじゃねェのか!?」
「ッ! 思っていたよりも力の暴走が激しい!! お前も来い!!」
「ハァ!? 俺は関係無いだガフッ!」
服の襟首を掴まれそのまま引き摺られていく。
オイ、この体はお前の息子のモン何じゃねェのかよ。
しかも娘を放置かよ。ア? 母親か? 保護していったな。
てかよ、何時まで引張ってんだよ。
そのまま外に出るとそこは無惨な光景が広がっていやがった。
「オォ、思ったよりもヤバい状況じゃねェかよ」
「ここまでだとは」
そこには一つの大きなクレーターを地面に開けその上の空に停止している吸血鬼がいる。
「ねぇ?? 貴方達は壊しても良いのかな?? クランに言われてるんだけど良いよね!! もう殺るわ!! 我慢出来ないもの!!」
「ッ!?」
何だ、このゾッとする威圧感は。これが、本当の殺気と狂気か。
俺の物とは比較にならねェ。
ン? オイ、オッサン何故構える。
闘うのか、コレと。
マジかよ。流石に俺でもそこまでやれねェよ。
「フラン、しっかりしなさい」
「私に指図? うるさいな、お前黙れよ」
「暴走仕切った後では二人を近づけても駄目か」
「オイ、暴走ってどういうことだ?」
「フランとクランが一定以上離れたからこうなっている」
コイツとアレが一定以上離れたから?
どういうことだ?
「つまりアレを止めるにはどうすれば良いンだ?」
「ショック療法だ、ダメージを与えて止める」
「ナッ!? オイ! 正気か!?」
アレにダメージを与えて気絶させるってェことだろ!?
正気の沙汰じゃねェ。
「正気、だと? 狂気に染まり私の息子に寄生しているお前には言われたくは無い言葉だな」
「チッ、寄生とは酷い良いがかかりだな」
そもそも俺はここに存在してる。
「ウフフフフフ!! アハ、アハハハ!!」
「チッ! 離れろ!!」
アイツが手を突きだしたってェことはかなりヤベェな。此方はまだ自分の能力もロクに扱えてねェってのによォ。
「良い、見ていろ」
「ハァ!? 何を言って?!」
金髪の吸血鬼を流れる水が囲い、長身の吸血鬼の周りに光弾が現れる。
まさか、コレが魔法なのか?
光弾は金髪の吸血鬼に次々と当たっていくがあまりダメージは見受けられねェ。
「この魔法も長くは持たん!! 何かフランを拘束する手立ては無いのか!!」
「拘束する手立て、つってもまだ能力何て使いこなせねェっての!! まだ大雑把なモンしか出来ねェぞ!!」
「拘束出来れば今はそれで良い。やれ!!」
「クソが!! アァ、やってやンよ!!」
足を地面に思いっきり踏みつけ地面から石状の縄を出しそのまま金髪の吸血鬼を拘束する。
それでも吸血鬼の身体能力で破壊される。
何度も何度も縄を継ぎ足していく。
「オイ!! こっちもそこまで持たねェぞ!! どうすんだ!!」
こっちもソロソロ疲労が溜まって来やがった。
「植物を生成することが出来るか!」
「植物だと? 出来ねェよ。そもそも今、そんなモン創造してどうすンだよ」
「いや、良い。なら最初の作戦でいくまでだ。お前がフランを拘束している間に私の能力で仕留める」
「それはアノ吸血鬼を殺すってェことか?」
「殺す訳がないだろう、気絶させるだけだと言っている。お前が思っているより吸血鬼は存外タフだ。だが少し時間がいる」
「チッ! 何だ? それじゃあ俺はその間に足止めでもしておけってェことか?」
「あぁ、少しの間だけだがな。やれるか」
なるほどなるほど、俺のことをお前が過小評価していたのは分かったよ。
この位の敵、どうってことねェってことを見せてやる。
「やってやらァ!!」
「まかせたぞ」
「アハハハ!!」
何時聞いても胸糞ワリィ声だなァ。
金髪はまだ魔法、弾幕を使ってこねェ。
その分近付きやすいンだが、少し能力が厄介だ。
馬鹿みてェに金髪に近付けば能力の効果範囲内に入り一発でバンッだ。
つまりは長距離戦ってェことだ。
持っていた剣を金髪に向けて投擲する。
「シッ!!」
「アハハハ!! そんな物が効くと思ってるの?!」
投擲した剣を金髪が掴みとる。
「効くんじゃねェのか? それ、銀製だぜ?」
「それがどうした、ッ!! 何コレ!! 形が変わって!」
剣の形が変わり金髪の体を縛り上げる。
「まだ創造は出来やしねェが形を変えて縄にするぐらい出来る。さてェ? その縄は棘付きだ、動けば動く程絞まっていくぜ?」
「クッ! こんな物!!」
「チッ! 解かれるのも時間の問題か、オイ! まだか!!」
「準備完了だ!! そこをどけ!!」
何やら白い光を体に纏い金髪の方へと飛び立つ。
「ウフフ、甘かったわね!! 体を縛り上げられたからって能力が使えないわけじゃ無いのよ?!」
「しまった!!」
金髪が目を長身の吸血鬼の方へと向け手を握り締めた。
それと同時に長身の吸血鬼の下半身が破裂するような音をたて吹っ飛ぶ。
「グッ!! フラン!! 待っていろ!! 今、助けてやる!!」
「来るな来るな!! 来るなぁ!!」
自暴自棄になったのか縄が絞まるのも気にせず暴れだす金髪。
「来るな!!!」
一層声を荒げる金髪を抱き締める長身の吸血鬼。
「フランすまなかった。もう、良いんだよ。暴れなくて良い。少しの間、眠っていてくれないか?」
「私は、私は!! まだまだ!! 殺して、殺しやる!! 壊す壊す!! 壊すぅ!!」
一気に気が狂ったのか支離滅裂な言葉を言っていやがる。
それを宥めるかの様に吸血鬼が纏っていた光が強くなり金髪をも包み込みそのまま一つの球体となった。
「嫌だ!! いやぁ!! この光は嫌なの──!!」
「フラン、やめなさい。これ以上は駄目だ」
「嫌よ嫌よ!! 嫌々!!」
駄々をこね続けている。
アァ? あァ、俺もそろそろか。
「────────────────────」
「──────────────────────」
そのあとは光がより一層強くなり中の声は聞こえなくなった。
その後数分たった頃光が消え、身体中の皮膚がボロボロになって落ちてきた金髪と、恐らく長身の吸血鬼だった物であろう肉片と炭が落ちてきた。
金髪の方は流石と言わんばかりか、治癒が始まっていた。
肉片の方は既に燃えており治癒が始まる様子は無い。
ひとまずボロボロの金髪を日陰に引きずり込み俺もそのまま意識を落とした。
エルナ「皆様お読みいただきありがとうございます。作者1号のエルナです」
火桜「いつもありがとうございます。作者2号の私こと火桜です」
エルナ「最初にまず謝罪を。月曜日に投稿するのを忘れてしまい大変申し訳ございませんでした!」
火桜「申し訳ございませんでした!」
エルナ「なんで学習しないんですかねコイツは……。予約投稿しろっての」
火桜「…………何と返せば良いんだろうか。と、とりあえず進めていきましょう!!」
エルナ「はい!というわけで今回は火桜さんが書かれた回です。フランとクランが暴走したところを上手く書いて下さいました。というかこのオリ設定考えたの火桜さんです」
火桜「私が考えました!!いやぁ、何か中二病ですね。」
エルナ「いや〜、面白いと思いますよ私は。こういうのは中二病でなんぼだと思いますし」
火桜「そうですかね?なら良いんですけど、私も書いてる間に何か楽しくなっちゃって変な感じになったけど」
エルナ「楽しくかけたのなら何よりです!では今回はこの辺りで次回もお楽しみに!」