「さっそく説明世界の創造について説明していきたいんだけど、その前に伝えなければいけないことがある」
「伝えたいこと?」
ワークリーの真剣な声色に俺も緊張が走る。
ワークリーは右に左に飛び回りながら、俺の所から離れていく。
すると突然、俺の足元からワークリーの間に円状の白い光が現れた。
「まずはこれを見て」
ワークリーが円状の光の中心で、見てと言わんばかりに跳ねる。
俺は円状の光の中を見ると、徐々に俺の知る街の映像が映し出された。
「これは!?」
そこには、先程まで居たはずのビルが映っており、よく見てみると俺が逆さまになって落ちている最中で止まっていた。
「いや待て、なんでこの状態で止まってんの!?」
「たくみはまだマシな方だよ。だって、ある者は首吊り中の映像だったり、またある者は大量に置かれた薬の空き箱が散乱してる映像だったりで、自分自身で見ていて気持ちいい物じゃないから……」
ワークリーの言葉に俺も軽く想像してしまったが、確かに明らかに死体に見える映像に比べたら、俺のは落ちてる最中だ。
画像加工で背景をビルじゃなくて大空にして、背中に大きなカバンでも背負わせたら、あら不思議スカイダイビングの出来上がり。
「ってそうじゃねぇだろ!」
「……何言ってるの?」
ワークリーが不思議そうな表情を浮かべて、こちらを見つめていた。
その表情は、何故か俺に安心感を与えつつ、あかりの顔を思い出させる。
「こっち見るな」
俺は突っぱねるように、腕を組んで顔を逸らした。
なんだか、あかりに見られてるような感じがして少し恥ずかしい。
「それより、早く説明の続き……っていうか、この映像はなんだ」
「ごめんごめん、この映像はね。見たまんまなんだ」
「見たまんまって、つまり俺はあそこで中に浮いたままってことか。何故だ?」
「まずここにいる君は思念体、要は意識だけがこの場所に居るんだよ」
「思念体か……じゃあ、あそこで止まってるのは? 意識だけなら俺の身体は下に落ちていてもおかしくないと思うんだが?」
「あぁ、それは時の女神クロノスによって止められているからなんだ」
「クロノス?」
その名前を聞いた俺は、何故かふと「なのーねー」が口癖の金髪に青色の学生服のような衣装を着た、とあるカードゲームのキャラクターが頭を過ぎった。
「んふっ」
「え、急に何笑ってるの?」
ワークリーの可愛い高音ボイスから一変、こっちが素なんじゃないかと思うぐらい低い声で、こちらに冷たい眼差しを向ける。
「悪い、生きていた頃のことを思い出して……あ、死んではいないか」
「ビックリだよ、急にニヤニヤしだすから」
俺は両手を合わせ「ごめん」と謝る。
「さて、本題に入るけど。まず君が選ばれた理由は言えないけど、ボクが君を必要としてるから選ばれた」
「必要だからって結構曖昧だな、なんか言えない理由でもあるのか?」
「……そう、だね……。ボクらは制約で縛られてるから、言えないことが沢山あるんだよ」
「そうか、まぁそれなら無理に聞き出すことはしないよ」
俺の返しにワークリーは安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ、次。君がすべきことなんだけど」
「? それって世界を創ることじゃないのか?」
ワークリーが目を左右振る。
「それは目標であって目的ではないんだよ。たくみがするのは、この試練をクリアすること」
「試練? その試練に打ち勝つと何かあるのか?」
「そうだよ、試練を達成出来たら、君が望むことをなんでも1つ叶えてあげるよ」
「なんでもっていうと困るけど……」
「じゃあ、こう言えば良いかな? 君が自死を選ぶきっかけとなったあの出来事をなかった、もしくは未然に防ぐことが出来るとしたら?」
ワークリーの声や目から真剣なのが、肌を刺激するように伝わってくる。
「そんなこと出来るのか?」
「出来ないなら最初から言わないよ」
「そ、そうか……」
ワークリーから伝わってくる真剣な物言いに、俺は心の中でガッツポーズをした。
もし……もし、それが本当なのだとしたら、今度こそ、あかりを助けられるんじゃないか?!
脳内にあかりの最期の言葉が溢れ出てくる。
『ごめん、ね……お兄ちゃ……』
スー、ハー。
「それで、試練っていうのは?」
あかりを助けられると思えば思うほど、口元が緩む。
「試練は、世界を創ってみないことにはどんな内容かは分からない」
「分からない?」
「うん、だって試練の目的のことを"世界の理"っていうんだけど、人によってその世界の理が違うから」
「なるほど」
世界の理か、それを達成すればあかりが生きてる日?時間?に戻してもらって、後はあの野郎が来るのを警戒しておけば、未然に防ぐことが出来るって事か。
やらない理由がないな。
顎に指を当て考えていると、いつの間にかワークリーが目の前に来ていた。
「戻ってからの事を今考えても仕方ないよ、いつ世界の理に辿り着くか分からないから」
「そりゃあそうだけど、なんか考えちゃって」
考えないはずがない。
あかりが死んだのは俺を庇ったからだけど、事の発端はアイツだ。
アイツさえどうにか出来れば、俺たちはまた幸せな日々が送れるはずなんだ!
「さて、伝えたいことは伝えたから、そろそろ創造の話に移ろうかな」
「あぁ、よろしく頼む」
足元に映し出されていた映像が消え、円状の白い光が消滅していく。
「まず、たくみが創りたい世界はどんなのかな?」
「俺が創りたい世界か……」
俺が創りたい世界、学生時代をやり直す?それともやってたバスケの選手になる?
いや、そんな現実風じゃダメだ、せっかく自分で創れるなら、もっと創作物っぽくしたい。
「SFモノ……いや、異世界ファンタジーだな」
「ふむふむ、なるほど。つまり君の世界で流行り始めた異世界転生系をやりたいと」
俺は頷く。
「だけど、ただの異世界転生じゃ面白くないから、ゲーム風にしようかなって思ってる」
「いいねそれ! ボクも初めて見るよ2つの要素を掛け合わせた世界」
「それじゃあ、両手を前に出して。なにか持つみたいに肘を曲げて」
俺はワークリーに言われるがままに肘を曲げて何かを持つように構える。
「そのまま目を瞑って」
言われた通り目を瞑る。
その時、腕全体が徐々に熱を帯び始めた。
「なんか腕が熱い」
「今君の腕にボクの力を流し込んでるんだ。あ、もう目を開けてもいいよ」
ゆっくり目を開けると、刺々しい白い光が腕を覆っており、近くを飛ぶワークリーも、薄い黄色から真っ白な光に変わっていた。
「さぁ、ここから世界創造の始まりだ!」
「ここからどうすればいいんだ?」
「君が望む世界を頭の中に描いてみて」
「俺が望む世界」
青い空と白い雲、緑が生い茂る深くて広い森、綺麗な海に川、湖、色んな種族が生活する大きな星―――!
次から次へと頭の中でどんな世界にしたいか浮かべ続ける。
すると、出した両腕の真ん中に器のような白い光が現れた。
その光は、俺が創造する世界のイメージを読み取り、徐々に球体になるように伸びていく。
やがて、伸びた光は頂上で1つに重なり、徐々に消失する。
消失しきった後、俺の腕の中に残ったのは、地球のように青い海と緑の大地、砂と思われる茶色と雪国のような白色の大地だった。
「出来た、のか?」
「うん、これで99%完成だね! あめでとうそしてお疲れ様」
「あぁ、ありがとう……ん? 99%?」
「残りの1%は君だよ。君がこの世界に降り立たないと完成とは言えない」
「そういう事か、でもなんだか疲れたな」
「仕方ないよ、世界を創ったんだから」
「それもそうだな」
世界を創造した俺は、その場で座り込んだが、次第に眠くなってしまった。
目を閉じ掛けたその時、ワークリーが耳元で囁く
「言い忘れてたけど、世界創造主として使える能力があるから教えておくね。まず1つ目は―――」