世界創造者   作:エタロリ

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第五話 ハプニングとサプライズ

 リングルムを出た俺とウィンダは、今回受けたレッドサイクロプスが出没している南西の森を目指していた。

 

 森は街から見えるほど近くにあるため、大して時間は掛からないが森に行くまでの草原地帯は獣類系や巨虫系など数多くのモンスターが生息している。

 

 「そういえばレインさんが―――」

 『森の道中にある草原地帯は現在”ハイウルフ”の目撃が数多く報告されています。通る際は気を付けてください』

 「―――って言ってたな」

 

 

 ハイウルフは、獣類系Dランクの青紫色の長毛に、脚、腹部が薄い灰色に覆われた、オオカミ型の小型モンスターだ。

 小型モンスターと言っても、サイズは並のオオカミと同じサイズなので、小型の中では大きい方のモンスターである。

 

 

 「言ってたね」

 そう言うとウィンダは歩みを止め、目を閉じる。

 

 「……とりあえず半径50メートル以内に、ハイウルフは居ないみたい」

 「そうか、ありがとう」

 

 

 ウィンダが所持しているスキル”索敵”はフィールドに出ると自動で発動するスキルだ。

 スキルレベルが高いほど索敵の範囲が広くなる。

 

 常に頭の中に敵の位置情報が入ってくるため、必要に応じてスイッチの切り替えをしなければいけない。

 また、意識を集中させれば、モンスターの詳細まで把握することが可能らしい。

 

 

 「だ、誰か! 助けてくれー!」

 遠くから男性の叫び声が聞こえた。

 

 その場に静止し、耳を澄ませる。

 

 「キャー!!」

 同じ方角から、女性の悲鳴が聞こえた。

 

 「ウィンダ! 行くぞ!」

 「ええ!」

 

 急いで、悲鳴が聞こえた方に向かうと、1台の馬車を6体のハイウルフが取り囲んでいた。

 前方では馬が血を流して倒れており、後方の荷台のそばには、馬車を守ろうと男性が剣を構えていた。

 

 助けに入ろうと駆け寄る……と、膝ほどの高さの表面が真っ平らな岩を見つけて、ウィンダが立ち止まった。

 

 「クリス君、私ここから狙撃するね」

 「あぁ、わかった……あ、そうだ。ウィンダ」

 

 「どうしたの?」

 「ウィンダって物覚え良い?」

 

 「え?」

 ウィンダは、驚いた表情を浮かべた。

 

 俺は野球ボールほどの、黒い玉を具現化させてウィンダに見せる。

 「この煙玉を使ってハイウルフ達の視界を遮ってやろうと思ってな」

 

 「……そういう事ね、わかったやってみる」

 納得した様子のウィンダは魔力狙撃銃を具現化させる。

 

 ウィンダの狙撃銃は”PGM・へカートII”と言って、全体が真っ黒で、マズルブレーキと呼ばれる銃口の部分が、円柱では無く四角柱になっているのが特徴だ。

 

 

 あれ?師匠も確かあんな感じの狙撃銃使ってたような気がする。

 いや、今そんな事を考えてる暇は無い。

 

 

 俺は左手にウイングブレイドを具現化させ、右手に持った煙玉に傷を入れる。

 そして、傷を入れた煙玉を馬車のそばに目掛けて投げた。

 

 「おじさん! そこから動かないで!」

 

 投げた煙玉が馬車の近くに落ちた瞬間、衝撃で白い煙が一瞬で周囲を覆った。

 

 「ウィンダ! 取りこぼしは俺が倒すから、馬車を傷付けない様に狙撃してくれ!」

 「わかった!」

 

 ウィンダが息を止めトリガーを引くと、銃口から赤色の光が真っ直ぐ煙の中に吸い込まれるように入っていく。

 

 光が消えて数秒後、角度を変えて2本目、3本目と繰り返し、計4本の光が煙の中へ入った。

 

 「これ以上は馬車と被ってるから撃てないわ」

 「了解っ」

 

 俺は具現化させた大剣を両手で持ち、煙へ駆け出す。

 

 煙の直前で飛び上がり、大剣の刃を横にして頭上に向かって振り上げる。

 そして、着地と同時に力一杯振り下ろす。

 

 すると、大剣の大きな側面で起こした風に煽られ、煙が飛ばされていく。

 一瞬見えたハイウルフの姿を頼りに、再び視界を遮った煙の中へ飛び込む。

 

 

 突然現れた俺に、ハイウルフが驚いて威嚇する。

 

 「悪いな」

 今度は、大剣の刃を相手に向けて肩に持ち上げて、振り下ろす。

 

 「……よし、あと一体」

 視線を上げると、タイミングよく煙玉の効果が切れ、視界が晴れていく。

 

 残り一体がいた方に視線をやると、かなりの形相でこちらを睨みつけながら唸っている。

 

 その後、ハイウルフは唸るのをやめ、俺達に背を向け走り去っていった。

 

 「逃げたならここまでだな」

 そう呟き、大剣を消失させる。

 

 

 

 「おかげで助かりました」

 男性が被っていた帽子を脱ぎ、頭を下げる。

 

 「いえいえ、ご無事でなによりです」

 

 すると、荷台の後方から、10歳ぐらいの可愛らしい女の子が降りてきた。

 「お父さん、もうハイウルフ達居なくなったの?」

 

 「あぁ、この人達のおかげで―――」

 

 その瞬間、ウィンダの声が聞こえた。

 「クリス君、戻ってきた! 馬車の後ろ!」

 

 ウィンダの声に反応して咄嗟に女の子の腕を引っ張り、入れ替わるように馬車の後方に身を乗り出す。

 

 すると、逃げ出したと思われた先程のハイウルフが、こちらを目掛けて走ってきていた。

 急いで大剣を具現化し、側面で受けようと両手で大剣を構えるが、直前でハイウルフが跳躍し、俺の頭上を越えていく。

 

 着地したハイウルフは勢いそのままUターンし、女の子に向かって駆け出す。

 

 俺は大剣を1度消失させ女の子の前に出ると、もう1度大剣を具現化させて、側面で防御の体勢を取る。

 

 だが、ハイウルフはそれを読んでいたかのように再び跳躍し、上空から女の子を襲おうとした……が、飛び上がった瞬間、ハイウルフの尻尾から額に掛けて赤色の光が真っ直ぐ通った。

 ウィンダがその場から動かず、狙撃のチャンスを伺っていたようだ。

 

 ハイウルフは空中で砂化し、地面にバサッと落ちた。

 

 

 

 「本当にありがとうございました」

 男性が深々と頭を下げる。

 

 「いえ、たまたま声が聞こえたので……それにまだあっちをどうにかしてあげないと」

 そう言い、俺は倒れたままの馬に視線を向ける。

 

 近付くと、傷は深いがまだ息はあるようだ。

 

 

 「ここまで傷が深いとダメかもしれません……」

 後ろから男性が落ち込んだ様子で話す。

 

 「クリス君の治療スキルでどうにかならないの?」

 「いや、俺が持ってる治療スキルは自己回復用で、他の人を回復させるスキルじゃないし、そもそも魔力を持たない普通の動物はスキルで治せないんだ」

 

 ……あ、そういえばこの世界に来た頃、全知全能の図書が教えてくれたあの方法なら。

 

 俺は青色の液体が入った三角フラスコのような瓶を具現化した。

 

 「クリス君、それって回復薬じゃ……」

 「そう、正確には”上・回復薬”だけどな」

 

 「そんなものどうするの? 確か動物に飲ませちゃいけないはずだけど」

 「ウィンダの言う通り”飲ませる”のはダメだけど―――」

 そう言いながら、俺は瓶の栓を抜き傷口に液体を掛ける。

 

 傷が染みるのか、馬が暴れ出す。

 「おぉ、どうどう」

 男性が馬をなだめる。

 

 数秒後、大人しくなった馬がゆっくり立ち上がる。

 先程まであった傷は完全に塞がったようだ。

 

 「よし治ったな」

 「え、なんで! いや、回復薬だから治るのは当然だとしても、そんな使い方があるなんて」

 ウィンダが驚く。

 

 「あまり広まってないやり方だけど、悪用する事も出来るみたいだから、大ぴっらにしない方がいいかも」

 「そうなんだ」

 

 

 

 「何から何まで本当にありがとうございました」

 「いえいえ、馬も無事治せてよかったです」

 

 「こちら少しばかりのお礼です」

 そう言うと、女の子が何かを持ってきた。

 

 「何この色のリンゴ、初めて見た!」

 ウィンダが興奮ではしゃぎ出す。

 

 「緑色のリンゴですか」

 「はい、うちは家族でリンゴを栽培しているのですが、ある日1本の木に青い雷が落ちまして、あの木はもうダメかもしれないなと思い、翌朝見に行くとその色になっていたんです。家族で食べてみたら普段の赤いリンゴより甘くて美味しかったんです」

 

 

 この世界の人達からすれば、初めて見る色かもしれないが、俺からしたら見た事ある代物だった。

 これはどう見ても”青リンゴ”だからだ。

 

 

 「なんて名前のリンゴなんですか?」

 ウィンダが興味津々で尋ねた。

 

 「お恥ずかしながら、”みどりんご”と見たままの名前を付けてみました」

 

 みどりんごか……まぁ緑色を青と呼ぶのは日本人特有だからな。

 

 「というか、こんな貴重なもの貰っていいんですか?」

 「はい、お2人には助けられましたから、遠慮なく貰ってください」

 

 「ありがとうございます。早速食べてみよ!」

 ウィンダがシャクッとかぶりつく。

 

 「んー、すっごく甘くて美味しいー! あ、待ってこのリンゴ、魔力回復出来る」

 「「え?」」

 

 その場にいた全員が驚く。

 

 「うん、さっきの戦いで魔力を使ったけど、今これを食べたら魔力が少し回復したの!」

 「まさか、そんな効果があるなんて……」

 男性が呟く。

 

 「おじさん、これは売れますよ」

 「はい、まさかさらに発見があるとは思いませんでした」

 

 ……。

 ………。

 

 「それでは、私達はこれで」

 「はい、お気を付けて」

 

 動き始めた馬車に手を振ると、荷台から声がする。

 「待ってお父さん!」

 

 女の子が荷台から降りてくる。

 「私、ソフィーって言います。よかったら、お2人のお名前を聞いてもいいですか?」

 「あぁ、俺はクリスだ」

 「私はウィンダよ」

 

 「クリスさん、ウィンダさん、私達を助けてくれてありがとうございました」

 ソフィーが頭を下げる。

 

 「これも持っていってください」

 そう言うと、ソフィーは手に持っていた真っ赤なリンゴを差し出した。

 

 「ありがと」

 「ありがとう、ソフィーちゃん」

 

 

 

 その後、荷台から手を振るソフィーに、手を振り返して見送った。

 

 「無事解決してよかったね」

 「あぁ、また目の前で誰かが死ぬのを……」

 

 「え?」

 「いやごめん。なんでもないから気にしないで」

 

 俺は慌てて誤魔化した。

 

 

 

 「さて、そろそろ森に入らないとね」

 「あぁ、少し休憩してから向かおうか」

 

 しばらく休んだ俺達は、再び森へ歩み始めた。

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