世界創造者   作:エタロリ

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第八話 開戦とリミッター

 俺達は互いの実力を測るためにレッドサイクロプスの討伐にやってきた。

 

 

 

 「さぁ、クエスト開始と行こうか!」

 ボスエリアに入ると、レッドサイクロプスが身体を動かそうとするが、投擲で受けた状態異常により動けない。

 

 俺は入って真っ直ぐレッドサイクロプスの元に駆け出し、ウィンダは入って右方向に駆け出し、蔓の高台に向かった。

 

 

 レッドサイクロプスの弱点属性は無いが、風属性に対して耐性が非常に高い。

 そのため、この戦闘は風属性ダメージを与える”ウイングブレイド”ではなく、現時点で一番火力が出る無属性の”アイアンプレート”を使用している。

 

 アイアンプレートは、長方形の板の側面を刃にしたような大剣で、ウイングブレイドより重く、通常であれば俺の腕力値では装備することができない。

 だが、称号スキル”大剣マスター”の効果で、装備した大剣の重量を20%カットする事ができるため、装備することが可能だ。

 

 

 

 俺は地面から出ている蔓を踏み台にレッドサイクロプス目掛けて飛び上がり、同時に右肩に担ぐ。

 

 ―――「ブレイドインパクト」―――

 

 ”ブレイドインパクト”は大剣の元の重さを参照して、重たい一撃を振り下ろす、一般使用率100%のスキル攻撃だ。

 

 今回は飛び上がっているため、さらに落下の勢いがダメージに加わる。

 防御態勢が取れないレッドサイクロプスにとっては、かなり痛いダメージになるだろう。

 

 

 

 落下と同時に両手で大剣を真っ直ぐレッドサイクロプスの腹部に振り下ろす。

 

 ドォンッと大きな音と砂埃が舞い上がる。

 

 俺は確かな感触を感じつつ、台座に着地した。

 目の前の大きな横腹には、縦に一筋の傷が入る。

 

 その傷目掛け、再び肩まで振り上げて力一杯振り下ろす。

 

 筋肉質なレッドサイクロプスは思った以上に硬く、簡単には刃が通らない。

 

 

 

 視界の左上に表示されたレッドサイクロプスの体力ゲージを注視すると、全体で8分の1ほど削れていた。

 注視している間も、一定量のダメージが入っている。

 

 ウィンダの狙撃によるダメージだろう。

 

 彼女が姿は、ちょうどレッドサイクロプスの脇という壁に阻まれて見えない。

 だが、視界の右上に表示されている、ウィンダの体力ゲージの下にある青色の魔力ゲージは、ミリ単位だが減っている。

 

 レッドサイクロプスの方に視線を戻すと、徐々に身体の動きが大きくなっていた。

 

 ちょうど左上のゲージに表示されていた麻痺アイコンも、点滅して時間切れ間近を知らせている。

 

 

 そろそろ一旦離れないとな。

 

 

 そう思った瞬間、レッドサイクロプスの大きな手が、俺の身体を鷲掴みにする。

 

 

 これは、まずいっ

 

 

 俺の左腕からミシミシと音がしたかと思うと、レッドサイクロプスは俺を掴んだまま腕を広げるように動かし、そのまま投げ飛ばした。

 

 ドンッ―――

 

 「グハッ」

 背中から壁に激突した俺は衝撃で吐血し、頭から落下する。

 

 「ックリス君!!」

 ウィンダの呼ぶ声が聞こえる。

 

 

 この感覚、あの日飛び降りた時以来だな……。

 

 

 ドサッと蔓の床に落ち、意識が朦朧とする。

 

 ウィンダが駆け寄ってくる。

 「クリス君、クリス君っ」

 

 ウィンダの声は今にも泣き出しそうな雰囲気だった。

 

 「ウィン……ダ、これを……俺にかけて……くれ」

 

 何とか動かせる右手に”上・回復薬”を具現化させる。

 

 「え……あ、わかったっ」

 ウィンダは回復薬を受け取り蓋を開けると、中に入っていた液体を俺に掛けた。

 

 すると、全身に激痛が走った。

 

 

 「うっ、ぐっ……」

 「ク、クリス君!」

 

 

 馬に使った時もこんな激痛だったのか!? なんだか悪い事しちまったな。

 

 しばらくして身体中から痛みが消え、スっと立ち上がる。

 

 「うわっ、クリス君大丈夫なの?」

 「あぁ、何とかな。体力は満タンまで回復してないけど、骨折や傷は綺麗に治ってるよ」

 

 「よ、よかった……」

 

 安心している最中、視界の端で微かに光が反射したのが見えた。

 

 「ウィンダ危ない!」

 「えっ?」

 

 ウィンダに抱きつくように飛びかかり、地面に倒れ込んだ。

 

 俺達が居た場所には、一本の太刀が刺さっている。

 

 

 あれは俺が投げた太刀、という事は。

 

 

 太刀が飛んできた方向に視線を向けると、レッドサイクロプスが段差を降りてくるのが見えた。

 

 麻痺が完全に解けて、お腹に刺さっていた太刀を投げたようだ。

 

 

 俺は立ち上がり、ウィンダに手を伸ばす。

 「ありがとう」

 

 ウィンダを立ち上がらせた後、レッドサイクロプスと目線を合わせる

 

 「ふん、イチャイチャするなってか」

 「ク、クリス君?! イ、イチャイチャなんてそんな」

 

 「ウィンダ、ちょっと作戦会議だ。隠密を使ってくれ!」

 

 ―――「隠密」―――

 ―――「連携」―――

 

 スキルを発動させて、レッドサイクロプスの視界から消える。

 

 突然消えた俺達に驚き、レッドサイクロプスは辺りをキョロキョロと見回す。

 

 

 

 居場所がバレないようにこの場から立ち去り、壁のそばでしゃがみ込む。

 「次の作戦だけど、敵の注意を交互に引き付けて戦おう」

 「わかったわ、私はクリス君の反対側に行けばいいのね」

 

 「理解が早くて助かる。俺は時計回りで行くから」

 「私は反時計回りね」

 

 「あぁ、頼む」

 ウィンダの手を離すと、そのまま壁沿いを走る。

 

 レッドサイクロプスの方に視線を向けると目が合った。

 

 「やっぱ手を離した瞬間に、隠密の効果が消えてるな」

 

 俺は持っていた大剣を魔力化し、道中の壁に刺さっていた太刀を回収する。

 

 「やっぱパワー型の敵には、大剣(パワー)じゃなくて太刀(テクニック)だな」

 

 俺の持っている太刀は、鍔(つば)が付いている日本刀タイプで、他にも西洋剣タイプも存在する。

 

 太刀の平均重量は大体600から700程で、大剣と比べるとかなり軽い。

 そのため大剣と違い、片手で持って走ることが可能だ。

 

 敵の位置を確認しながら移動していると、敵の足元に直径2メートル程の大きな鉄球が置いてある事に気が付いた。

 

 「なんであんな物が……」

 俺は鉄球に近付き確認すると、チェーンが付いていて、それは足元に繋がっていた。

 

 

 コイツ、もしかして足枷が着いているのか!

 

 

 と、頭上に拳が振り下ろされる。

 

 何とか回避した俺は、一度離れ攻撃のチャンスを伺う。

 

 すると、敵を挟んだ向かい側から、赤色の光がレッドサイクロプスの後頭部に直撃した。

 

 反対側に回り込んでいた、ウィンダの狙撃だ。

 

 レッドサイクロプスは、ウィンダの方に身体ごと振り返り、ズシンッズシンッと近付いていく。

 先ほどの攻撃により、隠密の効果が切れてしまったようだ。

 

 俺はこの攻撃チャンスを見逃さず、走り出す。

 敵の足元に潜り込み、太刀で足を切りつける。

 

 「はあ!」

 

 連続攻撃の場合は1度に『腕力値÷武器の重量』だけ行う事が出来る。

 俺の腕力値は4500、この太刀の重量は600なので、最大で7連撃まで可能だ。

 ただし、腕力値と重量の差が大き過ぎると与えるダメージが下がってしまうため、差があれば良いという単純な話ではない。

 

 足に7連撃を与えた後に脱出すると、再びレッドサイクロプスから狙われる。

 そうすると今度は、ウィンダの狙撃でダメージを与えて向こうに振り向かせる、これを繰り返して敵の体力を減らしていく。

 

 そして同時に体力ゲージの下にある黄色のゲージが貯まっていき、半分を超えた辺りまで来ていた。

 

 このゲージはリミッターゲージと言って、全てのモンスターに表示されていて、貯めると冒険者側に有利な状況を作り出せる。

 

 近接攻撃より遠距離攻撃の方がゲージが早く貯まるため、半分以上貯まっているのは、ほとんどウィンダの功績だろう。

 

 

 交互に敵視を取り合う単純な行動のせいか、レッドサイクロプスもさすがに気付いてきているようだ。

 俺の動きを見ながら、反対側に必ずいるウィンダの動きを見るようになり、なかなか手が出しづらくなってきた。

 

 

 そして、俺が再び誘うような動きを見せた時、レッドサイクロプスは右足で鉄球をぶん回した。

 

 俺とウィンダは、すかさずその場でジャンプして回避する。

 

 「あんな使い方できるのかよ。しかも思った以上にリーチ長いぞ、5メートルぐらいあるか?」

 

 範囲攻撃か、厄介な攻撃だな。

 下手に近付くこともできないし、ウィンダも狙撃する隙が無いだろうな。

 

 俺は再び振り回された鉄球を回避し、ふとウィンダの方に視線を向ける。

 ウィンダはいつの間にか鉄球が通過する範囲から出て、俺の方を見ていた。

 

 俺を見るその目はどこか輝いて見える。

 

 すると、ウィンダは一瞬目を見開き、突然ステータス画面を開いて何か操作し始めた。

 

 「ごめんクリス君、少しの間任せるね!」

 「はぁ!?」

 

 俺は戸惑いながらも、一度太刀を消失させ回避に専念する。

 

 そして、レッドサイクロプスの視界内を細かく動き回り注意を引き付けた。

 

 丸腰の俺にレッドサイクロプスは、容赦なく鉄球を振り回してくる。

 

 「クリス君おまたせ。クリス君の避けてる姿見てたら思いついちゃって、スキルポイントも残ってたから急いで作ったよ」

 「わかった、今そっちに行く!」

 

 俺はスキルが気になり、鉄球の範囲外にいるウィンダの元に走り出す。

 

 ウィンダが手をこちらに伸ばして待っていたので、俺はその手を取り隠密と連携でレッドサイクロプスの視界から消える。

 

 「ナイス、ウィンダ」

 「ううん、私こそ任せちゃってごめんね」

 

 「それは全然大丈夫だ。それより新しく作ったスキルは?」

 「これなんだけどね」

 

 ウィンダからスキルの詳細画面を見せられる。

 「……なるほど、面白そうだ。よし、そのスキル主体であの邪魔な鉄球を破壊するぞ」

 「わかったわ」

 

 俺とウィンダは背中合わせで並び立ち、それぞれ武器を構えた。

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