「ゴブリン?恐いから会いたくないけど会ったら処理するよ」 作:ブランク蟻
今回の話は重戦士と女騎士を出すために作りました。難産な上に予想より長くなって驚きましたΣ(゚д゚;)
次回から薬使いが本格的に動きだす予定です。
第15話
「ええっと、それでは対人訓練を開始します」
場所は薬使いの家の近くにある草原。参加メンバーは発案者の薬使いを含め、重戦士、女騎士、槍使い、男剣士、ゴブリンスレイヤーの6名である。
医療班として神官見習いと野伏が常駐しており、観客として魔女と牛飼い娘も来ている。
「よっしゃあ!」←槍使い
「腕がなるな」←重戦士
「ふ、はしゃぎすぎるなよ」←女騎士
「あいつ、いいとこ見せるぞ!」←男戦士
「…………」←スレイ
戦士達は己が武器をぶつけ合う(刃物は歯を潰した物を用意しました)
「皆さん。無理はしないでくださいね!」←神官見習い
「大丈夫かなぁ、心配だよ」←野伏
「大丈夫…よ。子供…じゃ…ないの…よ」←魔女
「そういえば、彼の戦う所を見るのは初めてかも」←牛飼い娘
そんな中、薬使いは。
「結構、本格的になったなぁ」
驚愕していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
事の始まり一ヶ月前まで遡る。薬使いはスレイの健康診断をするために牧場を訪れている。
「……よし、身体に異常はないな」
「感謝する」
この健康診断は無理ばかりするスレイの身体をチェックするため、2週間毎に行われている。
「しっかし、傷跡が増えたなお前の身体。いくら牛飼い娘が薬を塗ってくれるからってあんまり無茶するなよ」
「問題ない」
「……そうかい」
現在、スレイの簡単な治療は牛飼い娘がやっている。スレイが依頼を終えて帰宅すると牛飼い娘による傷の確認が行われ、見つけた傷に薬を塗るのが彼女の役目となっているのだ。
「そういうお前はどうした?やけに疲れている様に見えるが?」
「まあ、実際にかなり疲れてるな」
他人への興味が薄いスレイですら分かるほど、薬使いに顔には濃い疲労の色が見てとれた。
「前回の健康診断の時に、故郷の村に行くって話はしたよな?」
「ああ」
「両親に神官見習いを紹介したまでは良かったんだが、その後に俺の武術の師が現れた」
「後のことが予想できた」
武術の師(50歳男性)曰く、多くの実戦経験を積んだことで総合的には強くなっているが、技が雑になり、一撃の威力の低下して動きも硬くなっているらしい。
「問答無用で訓練場に連れてかれて、徹底的に鍛え直されたよ」
故郷での滞在期間である4日間、薬使いは地獄を見ることになったのだ(その時、薬使いの両親は新しくできた義理の娘をこれでもかと可愛がっていた)
「薬品をメインに使うお前でも、そこまで鍛える必要があるのか…」
「<薬品はどこまで行っても消耗品であることは変わらない。いつ何時(なんどき)使えない状態に陥るかわからない。ならば、そんな時に最低限、逃げられるくらいの力はつけておけ、そうすれば生存率は大きく上昇する>ってのが、師が俺に何度も言った言葉だ」
薬使いの武術の師は、別に薬使いの薬品を否定しているわけではない。命のやり取りするなら常に最悪のケースを考えて用意するのが当然であると言っているのだ。
「まあ、師の教えてくれた動きや技はゴブリン討伐でも有用だから文句はな「その話、詳しく聞かせてくれ」
この時、薬使いは言葉を間違えた<ゴブリン討伐でも有用>この言葉を聞いてこの男が反応しない筈がないのだ。
「どんな動きだ?具体的どんな時に役に立つ?身につけるまでどのくらいの期間がかかった?」
「ちょと落ち着こうなスレイ」
スレイはマシガントークで薬使いを問いただす。ただでさえ疲れている薬使いは、この後のスレイの質問タイムにより更に疲弊するのだった。
「最近、会話や質問で疲弊させられることが増えたな」
言葉はしっかり選んで発言しようと誓った薬使いだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから2週間が経過し、薬使いとスレイはギルドで話をしていた。内容はスレイに教えた武術の動きが実戦で使えているかについてである。
「ボブを倒すのが前より楽になった」
「まあ、通常のゴブリンよりボブゴブリン向きの動きだからな」
あの後、ゴブリン戦に向いている動きを全て説明させられた薬使いは、そのままスレイにいくつかの動きを教えてることとなった。
<ゴブリン戦に置いて体術はあまり役に立たない>という人間は一定数いる。それは通常種のゴブリンが小さいからである。
武術、特に対人戦を目的とした体術は自分と同等か大きい相手を想定しているので、人間の子供程度の大きさしかないゴブリンと戦うことに向いていない。
攻撃の対象が小さければ攻撃は当てづらいし、掴み技も身長差があって掴みづらい。それ故にゴブリン戦で体術の評価はあまり高くない。しかし、これが上位種であるボブゴブリンとなると話が違ってくる。
ボブゴブリンになると縦幅、横幅共に成人男を上回ってしまう。しかし、武術とは自分より身体の大きな相手を倒すために編み出された技術。身体の構造が人間に似ているホブゴブリン相手なら十分な威力を発揮することができるのだ(因みに薬使いの武術の師は筋肉の動きからボブの動きを読み、相手の力を利用して投げ飛ばしていた)
「後は対人経験を積ん練度を上げることが重要だな」
「そうなのか」
「師曰く、手っ取り早く技の練度を上げたければ、人間相手に使って見るのが一番らしい」
人間はゴブリンなどより遥かに頭を使って戦っている。本能で戦っている者であっても、訓練で身につけた戦闘スタイルで戦っているので、完全に頭を使わずに戦っているわけでない。
それに対してゴブリンは技の訓練など殆どしていない。学習能力だけは高いので、人間の真似をするだけで簡単な技なら身につけることができるが、奴らは技術はそこで止まる。
奪うことしか頭にない奴らは身につけることはできてもそれを発展させることはないのだ
それに対して人間は、技を身につけてもそこで止まることはなく、更なる努力を重ねて技の練度上げや新技の開発を目指すのだ。
「定期的に対人戦をすれば、ゴブリンの停滞した技など容易く対応できるようになるらしい」
「………」
「まあ、今は俺と模擬戦を定期的にやるのがいいんじゃないか」
「そうだ「なら、俺達も参加させてもらおう」お前は……重戦士」
「私もいるぞ」
薬使いとスレイの会話に重戦士と女騎士が割り込んでくる。
重戦士 常人離れした体格を持つ黒髪の大男で背中には大剣を装備している。兄貴肌で面倒見が良く、年下に慕われる人物。
女騎士 甲冑に大楯、両手剣といった重装備を纏い、攻守共にバランスの取れた金髪の美女。下手な男より、男気に溢れた細かいことを気にしない人物。
「一党の面子との訓練もマンネリ化していてな。たまには別の奴とやりたいんだ」
どうやら新しく刺激を求めているらく、目がギラついている。
「私としてはどちらでもいいのだが、この男が聞かなくてな」
「なら、参加しないのか?」
「するさ、興味はあるからな」
人数が増えて困ることはないのでスレイと薬使いは参加を了承する。ここに重戦士と女騎士の参加が決定した。
「こうなると、もう少し面子が欲しいな。探してみるか」
参加する以上はこの2人に旨みが有った方がいい(薬使いとスレイでは力不足の訓練にならない可能性がある)
そう考えた薬使いは参加メンバーを探して、知り合いに声をかけて回り、槍使いと男剣士を確保したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして現在。くじ引きで決めた1組目が向かい合っている。(話し合った結果、それぞれの最初の一戦だけは1試合ずつ行われることになった)
1組目 薬使いvs重戦士
2組目 スレイvs女騎士
3組目 男剣士vs槍使い
この表を見た観客達は思った。
「「「(薬使いさん(兄さん)大丈夫かな)」」」
薬使い本人も「ヤバイ」と思っていた。模擬刀とはいえ、武器は大剣で振るうのは怪力の重戦士。当たれば骨くらい簡単へし折れる相手である。
そんな心配をよそに模擬戦は審判の女騎士の合図により開始される。誰もがすぐ終わると思ったが戦闘は意外にも薬使いが有利で続いていた。その理由は。
「ちいっ!予想以上に厄介だな。その薬品!」
「それが俺の戦闘スタイルだからっな!」
重戦士が模擬戦の開始前に、薬使いに薬品の使用を求めたからだ。重戦士としてはせっかく戦うのだから全力の薬使いと戦いたかったからだ。
その結果、薬使いは煙玉の牽制や、武術の歩法によるヒット&アウェイ戦法で重戦士を翻弄する形となった。
「うおっ!?」
薬使いは腕の鉄甲を使った受け流しを武術の師に徹底的に叩き込まれている。重戦士の大剣を避けられないと見るや、威力が乗る前に受けとめて攻撃を流し、威力が乗った攻撃が来ても後ろに回避しながら受け止めてダメージを最小限に抑えてしまうので決定打にならないのだ。
「それまで!」
審判役の女騎士の合図で模擬戦が終わりをつげる。結果は大振りの一撃を回避された重戦士が隙を突かれて武器を奪われたことで薬使いの勝ちとなった。
「焦れて大振りになって負けるとは情けないぞ」
「うるせぇ、お前も戦って見ればあいつの厄介さがわかる」
「無論そのつもりだ」
重戦士は女騎士が話し、薬使いはスレイと話しをしていた。
「どうだ?」
「今はまだ勝てる……けど将来のことを考えると末恐ろしいな」
薬使いは武術の師を持ち、5年をかけて今の実力に至った。それに対して重戦士は完全に我流、師もいなければ効率良い鍛え方をしたわけでもない。そんな重戦士の力任せの攻撃に薬使いは何度か冷やっとさせられている。
今でこれなら数年後には加速香などの強力な薬品を使わなければ手も足も出なくなる可能性が高いのだ。
この後も模擬戦は続けられ、最終的な結果は
薬使い 4勝1敗(槍使いに敗北)
重戦士 3勝2敗(薬使いと女騎士に敗北)
女騎士 3勝2敗(薬使いとスレイに敗北)
槍使い 4勝1敗(重戦士に敗北)
男戦士 1勝4敗(スレイにのみ勝利)
スレイ 1勝4敗(女騎士にのみ勝利)
となった。
「スレイは女騎士に勝ったか」
「運が良かっただけだ。もっと鍛える必要がある」
スレイは彼の柔軟な発想力からくる、型にはまらない動きを駆使して女騎士に勝利した。男戦士ともいい勝負したが、1戦目のダメージが身体に残っていたため力が出しきれず敗北
薬使いは槍使いの繰り出す中距離からの我武者羅な連続攻撃で、薬品が上手く使えなかったことにより敗北。
他のメンバーも相性の問題もあるが一度は負けているので敗北から学べることはあったようだ。
「よっしゃあ、次こそ全勝だ!」
「今度負けねぇ!鍛え直しだ」
槍使いと重戦士は次の模擬戦に向けての闘志を燃やし。
「どうやら、私は考え方が硬い様だ。もう少し柔らかくする必要があるな」
「……良い経験になった。だが、確実にゴブリンを殺せる様になるにはまだ足りないな」
女騎士とスレイは己を冷静に分析している。
「くそぉ、もっと良いとこ見せたかった」
「大丈夫。かっこよかったよ」
嫁さんに良いところ見せられずに落ち込んでいた男戦士に、慰める奥さん(彼女曰く、必死で戦う姿に惚れ直したそうだ)
「みんな…何か…学べた…よう…ね」
「すっすごかった。負けちゃったけど彼も頑張ったし、今日の晩御飯はシチューにしよう!」
魔女は笑顔で皆を見ており、牛飼い娘はスレイのために彼の好物を作ること決めた。
「お疲れ様です兄さん。やって見てどうでしたか?」
「疲れたけど得られるものも多かったな。そのうちまたやるかな」
「その時も呼んでくださいね。頑張ってお手伝いします!」
薬使いも大きな問題なく終えられたことに安堵し、医療班として来てくれた義妹にも何かお礼をしなければと考えていた。
こうして<対人訓練>が幕を閉じた。
この訓練は参加メンバーには好評であったため定期的に行われることになり、彼らの実力アップに繋がっていくのだった。
おまけ
「薬使い!次の模擬戦はいつだ!?」
「俺は明日でもいいぞ」
「まだ、1回目が終わったから1週間しか経ってない!もうすこし我慢しろ!やるとしても一ヶ月に一回だ」
前回の模擬戦で火のついた野郎2人に頻繁に詰め寄られることになった薬使いだった。
薬使いの勝率が良かったのは、参加メンバーの才能が開花していないからです。開花したらこうはいきません(なんでも有りなら話が違いますが)