「ゴブリン?恐いから会いたくないけど会ったら処理するよ」   作:ブランク蟻

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遅くなってすみません。まさかこんなにかかるとは(汗)

書けるだけ書きましたが何か物足りない気もする作者です。もしかしたら書き足すかも。


今回で閑話は終わりです。次回からゴブリンスレイヤーの本編に入っていきます。



第18話

 会社設立が決まってから数日後、薬使いのは最後の難関に挑むため学院を訪れていた。

 

 学院の幹部達にThe Goblin Truthの内容が正しいものであることを認めてもらうためだ。認められれば書籍に学院の承認印を付けることが許可される。これが有ると無いでは書籍の信用度は天と地ほどの差が生まれるのだ。

 

 学院に到着した薬使いは早速、説明会に挑むことになった(説明会に参加者は35名。その内は30人が学生)当初の予定では学院長も含めて5人の代表者に説明するはずだったのだが、何処から説明会が行われることを聞きつけた生徒達が、参加を希望してきたことで参加人数が増えたのだ。

 

 説明会(という名の討論会)は異様な緊張感の中で行われた。例え、最弱と言われたゴブリンに関する知識であっても、彼らは妥協することない。薬使いが1を話すと10の質問をぶつけてくるなど、納得するまで彼らは止まらないのだ。質問が止まらないため、時間もどんどん延長されていき、終わったころには6時間を経過していた(説明会を終えた薬使いは「…二度やりたくない」と呟いたと言う)

 

 その甲斐あってThe Goblin Truthはその内容が正しいものであることを学院に認められたのだ。

 

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ゴブリンの真実の姿を記した書籍<The Goblin Truth> 

 

The Goblin Truthの内容が正しいことを証明する<学院の承認印>

 

書籍の内容が広がることで発生するゴブリン依頼の増額分を相殺する<補助金>

 

書籍を広げる上で必要となる<各地の権力者や有力者とのつながり> 

 

ここに必要なすべてのものが揃う。これより薬使いによる総仕上げが始まったのだ。

 

 

 総仕上げと言ってもやることは簡単で、The Goblin Truthを大量に複製し、町や都市を中心に無料で配るだけなのだ。そうすることで書籍の内容は人から人へ、町から村へとゆっくりであるが確実に広がっていく。後は不測の事態に備えつつ待つだけだっだ。

 

 

 

 

 結論から述べるとThe Goblin Truthの内容は多くの人の耳に入り、世界に広がっていたゴブリンに対する間違った認識は現在進行形で修正し始めている。

 

 本が配られた当初、The Goblin Truthは当然ながら世界中で大きな波紋を生み出した。

                <ゴブリンは弱い>

 それは誰もが知っている世界の常識、それが覆されたのだ。本の内容を知ったある者は冒険者ギルドに駆け込み、またある者は国の機関に本の内容の正否を問いに押しかけた。

 その人数は時間が経つにつれて増加し、このまま大きな騒動に発展するだろうと多く人が予想した(本の内容が偽りであると騒ぎ立てる者達もいたが、全ての本に<学院が内容を保証する>承認印が押されてこともあり、すぐに何も言えなくなった)

 

 しかし、実際にはそうはならなかった。この騒ぎはある人物が動いたおかげで一ヶ月もたたずに収束したのだ。その人物とは剣の乙女だった。

 

 The Goblin Truthの内容を知る彼女は自らが持つパイプを使い、国のトップである国王と連絡を取っていたのだ。

  剣の乙女のもたらした情報でThe Goblin Truthが各地で大きな騒動を引き起こす可能性が高いことを知った国王は即座に動いたのだ。書籍が配られる町のトップと有力者に使者を送り、これから起こるであろう騒動の対策をさせ、騒動が起こったならば、即座に行動し事態の収束に協力するように勅命を出したのだ。これより騒動拡大の出鼻を抑えることに成功し、短い時間で収束させることができたのだ。

 

 書籍が配られると同時に冒険者ギルドも動いている。モンスターブックのゴブリンの記述の変更と討伐依頼料の増額(補助金の話も込み)を発表し、間違った記述を載せていたことを正式に謝罪をしたのだ。

 その責任を取って幹部の3分の1が退任することも伝えられた(全員が例の幹部達で、その内の1人は罪に問われて牢獄行きが確定)

 

 ギルドが正式に謝罪し、責任を取ったことで彼らへの風当たりは幾分か良くなった。それに加え、The Goblin Truthを世界に広げるに当たってギルドから多額の寄付がされたことや一部ギルド職員がThe Goblin Truthに製作に関わっていたこと事が書籍の最後に記述されていたのもギルドへの責任追及の手を緩める一因となったのだ(薬使いとしてはギルドに責任を負わせたいわけではないので、話し合いの結果この文が載せられることになった)

 冒険者ギルドの怠慢を責める声はまだ有るが暴動が起こる程ではなくなったのだ。

 

 

 これらの知らせを受けた薬使いは辺境の街の酒場に一角を貸し切って仲間達と喜びの感情に任せて飲みまくったのだった(この後、男は全員酔いつぶれて女性陣に介抱される事となった)

 

 

 

 The Goblin Truthは世に放たれた。この書籍の内容が世界の真実となるには10年単位の時間がかかることだろう。それでも確かに始まった。変化の波は確実に広がり始めたのだ。そしてそれを成し遂げた薬使いは今や時の人となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時の人こと、薬使いは

 

「GYAGYA!」

「GUGYA!」

「畜生ぉぉぉぉ!早くこい!ゴブリン軽視が完全に消えた世界!俺とこいつらとの接触率を下げてくれぇぇぇぇ!!!!!」

 

今日もゴブリンと戦っています。彼がゴブリンがと戦う回数が減る日は果たしてくるのか、それを知るものは(作者以外)いない。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ。

 

 

「なあ、女治療師さんよ」

「何よ?」

「この建設中の建物はお前達の仕事場と寮だよな?」

「それ以外に何があるのよ」

「そうだよな………何か規模がデカくないか?」

 

 薬使いの現在地は辺境の町の外れにある空き地である。会社設立予定地であるこの場所では建設工事が行われている。そこまでは問題ない。

 問題なのは今行われている基礎工事の規模である。普通の建物に建てるにしては大規模過ぎるのだ。

 

「そう?これくらい普通じゃない?」

「そうか、普通か………んなわけあるかい!!明らかにデカ過ぎるだろ!俺の渡した金額だと明らかに足りない規模の工事をしてるんだけどな!」

「…………(すー)」

「目 を そ ら す な。吐け!どこから足りない分は出した!?」

 

 仕事場を建てるに当たって薬使いは女治療師に一定の金額を渡した。そのお金の足りる範囲で他の子と話し合い、建物の形を決める様に頼んだのだ。そこで働くのは彼女達なのだから彼女達が建物の形を決めるのが良いと考えたからだ。だが、目の前で行われている工事の規模はどう見てもおかしい。どう見ても薬使いの渡した金額で建てられるものではない。明らかに渡した倍の金額がかかるものだった。

 

「……多額の寄付が有ったわ」

「誰から!?」

「…………………剣の乙女様から」

「あ の お 方 か!」

 

 剣の乙女はThe Goblin Truthの制作に協力してもらって以来、理由はわからないが毎回多額の寄付をしてくれている。そんな彼女に薬使いは彼女に頭が上がらなくなってきているのだ。それに加えて今回の寄付である。

 

「俺、本気であの人に足向けて眠れなくなりそうだ」

「それは……否定できないわね」

「とりあえずお金の出所はわかった。じゃあ何でその寄付が来たのを俺が知らない!?」

 

 女治療師が優秀なので、名ばかりとなる可能性があるが名目上の代表は薬使いである。知らないのはどう考えてもおかしかった。

 

「叫び続けて疲れない?」

「疲れるわ!肉体的も精神的にもな!いいからさっさと話せ!」

「……わかったわよ」

 

 女治療師の話を要約すると。寄付金が来たのは建物のデザインを決まる寸前で、どういう訳か薬使いではなく彼女の元に届いたのだ。

 寄付金と共に渡された手紙には、是非このお金を使ってより良い貴方達の居場所を作ってくださいと書かれていたらしい。そして女治療師達が良ければ少しでも大きい建物を作って欲しいとのことだった。

 手紙と寄付金を受け取った女治療師は同僚となる女性達と話し合い、建物のデザインを1から作り直した。そして感謝の手紙と共に完成予想図を剣の乙女に送ったのだ。黙っていたのは寄付金が薬使いでなく、自分に送られてきた時点で何かしらの意図があると考えたからだった。

 

「………成る程………一応聞くけど、剣の乙女様の意図はわかったのか?無理に教えろとは言わないけど」

「さぁ、でも予想は着くわ。アンタ、目立つのが好きじゃないわよね?」

「そうだな。規模によるがあんまり目立つたくはないな」

「そうよね。でも、この手紙に従って大きい建物を建てたら確実に目立つわよね?」

「……………」

「アンタのことだから、目立ちたくないアンタの意志と、剣の乙女様への恩義の板挟みになって苦悩するのは目に見えてるわ。それを気にしてアタシに送って来たってとこじゃない?

「あり得るな」

「お金を払って工事が始まれば、もう後には引けないから諦めるしかない。無駄な苦悩がないだけそっちのほうが幾分か気が楽ってことよ。予想だけどね」

「………これは感謝した方がいいのか?」

「好きにしたらいいわ」

 

こうして女治療師達の職場となる建物は建築されていくのだった。

 

「建物が出来たらお礼の手紙送らないとな」

「そうね。お礼に招待しないといけないわね」

 

 この時の薬使いは知らなかった。建物が完成し、お礼に剣の乙女様を招待した結果、彼女がそこを気に入り、定期的にやってくる様になることを(毎回、従業員達と楽しそうに談笑しては満足して帰って行くのだ)

 

 

 

 


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