「ゴブリン?恐いから会いたくないけど会ったら処理するよ」   作:ブランク蟻

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この時点では原作主人公はゴブリンスレイヤーと呼ばれていないので仮称をつけました。

ゴブリンスレイヤーの仮称はスレイか仮スレか迷った結果、スレイとすることにしました。


第5話

薬使いは教壇に立っていた。

 

 場所は神殿、周りにいるのは神殿所属の少年、少女たち(年齢10歳〜14歳)、手に持っているのは薬の材料となる花、目の前の机には調合に必要な器具。

 薬使いはこの場所で講師をやっている。

 

「以上が解毒香の調合時に気をつけなければならないことです。それでは皆さん、実際にやって見ましょう」

「「「「はい!」」」」

 

 薬使いが何故この様なことをしているのか、それは3週間まで遡る。神官長がわざわざ彼の元を訪ねてきたのだ。内容は神殿で薬品調合の講師をして欲しいとのこと。

 詳しい話を聞くと、薬使いが調合の基礎を指導した数人がレシピを見て再現できる様になったらしく、患者にも良い効果が出ているとのことだ。

 

 神殿としてはこの調子で調合をできる人を増やしていきたいらしい。しかし、ここで問題が発生する。神殿で調合できる人数はまだまだ少なく、必要な患者の分を作るので精一杯で人に教えている時間的余裕がないのだ。

 

 それに加えて自分ができるのと人に教えられるのかは別の問題。何とか絞り出した時間を使って教えようとするも、作る側としての経験もまだま足りず上手く教えられなかったそうだ。

 そこで白羽の矢が立ったのが薬使いである。作った本人である薬使いなら上手く指導できるのではないかと考え、頼みにきたのだった(ギルドを通して依頼を出すので実績にもなるそうだ)

 薬使いは了承し、週2で神殿に教えに来ることになった。

 

「1班は良い調子ですね。3班はもう少しゆっくり混ぜてください。5班は………えっと頑張りましょう!」

 

 薬使いは成人前の世代を中心に20人程を教えている。彼らが成人したときに選べる選択肢を一つでも広げてあげて欲しいと神官長に頼まれたからだ。

 参加を希望するだけであって生徒達は皆、真面目なので薬使いも気分良く教えることができている(初日はガチガチに緊張しており、自分に精安香を使用したことを記述しておく)

 

「本日はこれまでにします」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

「お疲れ様です。今日は夕方まで神殿にいるので質問がある人は探して聞きに来てください」

 

授業を終えた薬使いが教室を後にし、神殿の中を歩いていると後ろから声をかけられる。

 

「せっ先生!ご質問したいことが!」

 

 薬使いが振り返るとそこには金色の髪で10歳くらいの少女が走り寄ってきていた。薬使いは笑顔で対応する。実はこのやり取りは頻繁に行われている。

 

「今日も質問か相変わらず真面目だね」

「はい!少しでも人の為になる事を学びたいです」

 

 少女は薬使いの教え子の中でも特に真面目で、純粋に人の役に立ちたいと思える思想の持主だった。

 

「うん。偉い偉い。君みたいな生徒のためならいくらでも時間を裂こう」

「あっあの、はっ恥ずかしいです」

 

 少女の頭を撫でる薬使い。何度も話している内に無意識に撫でてしまうようになったのだ。少女は恥ずかしそうに顔を赤くするが振り払ったりはしないで受け入れている。その少女の様子を見る薬使いの表情はとても穏やかだった。そして内心では

 

「(精神が………いや、魂が浄化されていく様だ)」

癒され、心が表情以上に穏やかになっていた。

 

 命がけであることも多い冒険者の仕事。それだけでも精神的ストレスは溜まるのに、薬使いは会うだけで不快な気持ちになるゴブリンと頻繁に戦っているのだ。ストレスが溜まらない方がおかしい。

 

 ゴブリンの精神は残忍で不純、それに対して少女は慈悲深く純粋。薬使いはゴブリンと真反対の精神を持つ少女に癒しを感じていた。

 

「ってことだけどまだ、質問はあるかい?」

「大丈夫です。ありがとうございました!」

「お役に立てて何よりだ。それでは「あっあの先生、授業とは関係ないことでも聞いても良いですか!?」

「構わないよ。先程言った通り、時間はあるからね」

「でしたら冒険者について教えてくださいませんか?」

「冒険者の話か………わかった。教えよう」

 

 どうやら彼女は冒険者に興味があるようだ。薬使いは少女に冒険者の夢と現実(後者は少しオブラートに包んで)を話した。

 

「やっぱり冒険者は大変な職業なのですね」

「そうだね。大変なのはどの仕事でも一緒だけど、冒険者はそれに加えて命の危険がつきまとうから、なるならよく考えてから決めるべきだね」

「分かりました。兄さん!」

 

冒険者について話を終えると少女の口から驚愕の呼称が飛び出す。

 

「ぬ?今何て呼んだ」

「あっ!すっすみません。先生と接していたら、私に兄がいたらこんな感じかなと思ってしまって咄嗟に………」

 

少女の呼称に薬使いは数秒沈黙した。そして

 

「兄さん…兄さん………か、悪くないな」

 

口の中で繰り返す薬使い。その表情はとても嬉しそうだった。

 

「え?」

「うんうん、これからもそう呼んで欲しいくらいだよ。それにこんな可愛い子が妹になってくれるなら、これ程嬉しいことはそうはないな」

 

薬使いは珍しく豪快に笑って喜んでいた。

 

「でっでしたらこれからも兄さんで」

「ああ、よろしく義妹よ」

「よろしくお願いします。兄さん!」

 

 少女は顔をうっすら赤くしながら笑顔で受け入れる。こうして薬使いに血の繋がらない兄弟ができたのだった。

 数年後、少女は奇跡と薬(治療系)を操る神官にとなるがそれは少し先の話。

 

 

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 妹ができた次の日。薬使いがギルドに顔を出すと、賑わっている筈のギルドがいつもより少し静かで変な空間が出来ていること気づいた。

 

 薬使いが近づいて見ると空間の中心に1人男が立っていた。見覚えのある兜だったので薬使いは男の前に立った。

 

「おお、久々だな。怪我は治ったのか」

「お前か、問題ない」

 

 空間の中心にいたのは、少し前に1人でゴブリン討伐に行った男(以後スレイと呼称)だった。見た所、怪我はしていない様だがスレイの鎧に血がべっとりと付着しており匂いも強かった。

 

「えっとその血はゴブリンの血か」

「ああ、俺はゴブリンについて何もしらない。だから解体した」

「なるほど……ええっと、解体するのは良いけど、せめて血は落としきた方がいいな。他の人の迷惑だから」

 

 薬使いは血の匂いを中和する香水をスレイに振りかける。心なしか周囲の視線もましになった様に感じられた。

 

「善処する」

「そうしてくれ。それで今日はもう帰るのか?」

「そうするつもり」

「なら、しっかり休めよ。<休息を取らなかったから動きが鈍って死にました>じゃ同情すらできないからね」

 

 そんなんで死なれたら、流石に再会したばかりのスレイの幼馴染が可哀想だと思ったからなのは口に出さない薬使いだった。

 

「そうだな」

 

 スレイがギルドの入り口を出たのを見た薬使いは、これなら大丈夫だろうと思い、受付カウンターに向かおうと体の向きを変えた。

 

 その瞬間、ギルドの扉を乱暴に開けて入ってくる人物がいた。年齢は40代程で服装から見るに農夫だと思われる。農夫はそのまま受付に行き、報酬の入った袋を机に置き叫んだ。

 

「村かゴブリンに襲われた!報酬は出す。頼むから助けてくれ!」

「ゴブリン討伐の依頼ですね。こちらに必要事項を書いてください」

「わかっとる。わかっとるから早く誰かを派遣してくれ!」

 

 農夫の状態を見るに状況はかなり悪いらしく、焦りながらも必死に必要事項を書いている。それを見ている新人受付嬢は内心どうすべきか考えていた。

 例え農夫が書類を書き終えてもゴブリン討伐を受けてくれる冒険者がこの場にいるかわからないからだ。

 

「書き終えた!早くオラ達の村を!」

「確認します。え〜と「ゴブリンか?」あっはい」

 

 新人受付嬢はこれだけ切羽詰まっている農夫に<必ず冒険者が行きますからお待ちください>とマニュアル通りのセリフを出すことに躊躇してしまった。

 

そこに声を掛ける者がいた。帰った筈のスレイである。それを見ていた薬使いは頭を抱える。

 

「まだ、帰ってなかったか」

「ゴブリン討伐なら俺が受ける。場所は何処だ?」

「〇〇村だ!」

 

農夫は受付嬢が口に出すより、村の場所を教える。

 それを聞いたスレイはギルドの出入り口に向かって歩きだす。その道を薬使いが塞ぐ。

 

「ストップ。帰るんじゃなかったのか?」

「だが、ゴブリンだ」、

「今日のゴブリン討伐は2回目だろ。実践慣れしてないのに、日に2回もゴブリン討伐に出たら本気で死ぬぞ」

「しかし、ゴブリンは放置できない」

 

 薬使いは説得を試みるもスレイが引く様子はない。そこで薬使いは(やりたくないと思いつつ)最後の手段に出る。

 

「なら、俺が受ける。それなら文句はないだろ」

「だが、「300匹越え。俺が1人で倒したゴブリンの数だ」………それは本当か?」

「嘘だと思うなら受付で聞いてみてくれ」

 

仮スレが新人受付嬢を見ると、彼女は何度も大きく頷いた。

 

「現状なら俺のほうがゴブリンを狩れる。それならあんたが無理にでる必要ない」

「………わかった」

 

スレイをなんとか納得させた薬使いは依頼を受理してもらう為に受付に向かう。

 

「依頼の受注をお願いします」

「はい!確かにすぐに受理します」

 

薬使いの実績を知っている新人受付嬢は素早い動作で依頼を受理する。

 

「農夫さん。村の場所はわかるので先に行きます」

「わかった。オラ達の村を頼む!」

 

 農夫も先程の薬使いのゴブリン討伐数を聞いていたので、一人でも文句も言わずに了承する。彼はギルドを急ぎ足で後にした。

 

「場所は〇〇村。鉱山の近くか」

 

 この後、薬使いはこのゴブリン討伐が原因で、もっと面倒な魔物と遭遇することになるのだった。

 




薬使いに取ってスレイは危なっかし過ぎて口を出さずにはいられない存在です。
牛飼い娘との再会を目撃したのも放っておけない要因の一つです。
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