「ゴブリン?恐いから会いたくないけど会ったら処理するよ」   作:ブランク蟻

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イヤーワンはサクサク進めるつもりだったのですが・・・・・・・・話が進まない。
説明や描写を減らすべきなんだろうか。


第9話

薬使いは言葉には出さなかったが、内心で思った。

 

「(今 度 は お 前 か)」

 

 牛飼い娘の故郷訪問日の当日、彼女達(牛飼い娘、魔女、槍使い)を見送った薬使いはギルドでのんびりと座ってドリンクを飲んでいた。そんな彼の前に、彼にとっての問題児となりつつある男。スレイがやってきたのだ。

 

「頼みがある」

「ぬ?今度はどうした?」

 

なんの脈略も無く話しかけてきたスレイに、薬使いは気にすることなくで対応する。

 

 スレイが薬使いに話し掛けてきた回数はそれほど多くはないが、その少ない回数でも解ることがある。スレイの話は基本的に唐突であるということだ。

 

「ゴブリンから村を守りながら戦うときに、知っておいたほうが良いことがあったら教えてほしい」

「ゴホッ!コボッゴホッ!入っては……いけない方に、ゴホツ飲み物が」

 

 タイミング悪く、飲み物を飲んでいた薬使いは気管に入って水分に苦しめられることになった。

 

「ケホっ………苦しかった」

「大丈夫か?」

「問題ないってそんな事はどうでもいい!まさかお前、今度の依頼は村の防衛なのか!」

「ああ」

「依頼書見せてくれ!…………っっっっっっっう!」

 

依頼内容を確認した薬使いは、言葉にならない声を上げて頭痛のしそうな頭を押さえた。

 

「村の防衛依頼を一人で?マジか、マジなのか!?冗談ではなく死ぬぞ、本当に!」

「おいおい薬使い。たかがゴブリンだろ?なんとでもな「実際にやばい数のゴブリンと1人で戦ったことない奴が知った風にほざいてんじゃねぇ!死なないで程度に猛毒吸わせんぞ、こら!」はっはい、すみません」

 

 横から口出ししてきた冒険者を、薬使いは普段のキャラも忘れた圧力で脅して黙らせた(後日、菓子折りもって謝罪にいきました)彼がこうなるのも無理はなかった。今回の依頼はそれほど危険度が高いと予想されるのだ。

 

「そんなに危険なのか?」

「危険だ。青玉クラスのパーティだったとしも全滅しかねないくらいに」

 

 ゴブリン戦は、大きく分けると

 <偵察部隊などの数の少ない集団との戦いである遭遇戦><ゴブリンの巣や溜まり場を攻撃する襲撃戦><襲いかかるゴブリンから集落とそこにいる人達を守る防衛戦>の3つに分けられる

 

 その3つの中で薬使いが一番危険だと思っているのが防衛戦である。その理由は村を壊滅させられる規模のゴブリンの群れを、短い準備期間で向かい打たなければならないからだ。

 (襲撃戦も相手のテリトリーで戦かわなければならないなど危険度が高いがこちらが攻撃する側なので準備の時間や襲撃のタイミングをこちらで決めることができる)

 

 それに加えて、戦闘場所は平野で囲まれやすく、守る対象が多いので自分と仲間のことだけを考えているわけにもいかない。ゴブリンの数が多いので遭遇戦より遥かに危険で、慎重に行動したからといって襲撃戦ほど、危険度を下げることも難しいという厄介な戦闘なのである。

 

「ヤバイ…ヤバイぞ。このまま行かせると高確率でこいつは死ぬ。どうすれば………依頼に行かせない様にするか?催眠香を吸わせて監禁すれば可能だ。しかし、そうすると依頼者の村を見捨てることになるし、コイツも俺を一生許さないだろう。何か別の手は…」

 

 ぶつぶつ言いながらどうにかしようと考える薬使い。周囲はスレイを除いてその雰囲気にすこし引いていた。

 

 牛飼い娘のことを考えると、このまま行かせるなど論外。彼女とスレイはこれからだ。やっと彼女は前を向いて歩きだそうとしている。彼女の明るい未来にスレイがいるのは必須条件なのだ。

 

 スレイ自身も初めてあったときより若干だか余裕が出てきた気がする。そうでなければ薬使いに質問をしてくることもなかっただろう。ここで死なすわけにはいかない。薬使いは頭をフル回転させて解決策を探した。

 

「やはり俺が着いて行くかしか「ダメですよ。薬使いさん」わかっています受付嬢さん、わかっていますけど」

 

 薬使いが行けない理由、それは彼がもう別の依頼を受けているからである。それもギルドから出された指名の依頼を。依頼内容は遂に出された<ロックイーター討伐作戦>への参加要請だった。

 

 当初ロックイーター討伐作戦が出されたとき、薬使いは迷った末に参加しないつもりでいた。その理由はロックイーターと薬使いの相性の悪さと、討伐作戦の参加人数の多さにある。

 

 ロックイーターは奇襲攻撃を得意とする魔物で、壁や地面を掘り進み獲物を襲撃する。その強力なパワーに反して移動音や振動は小さく、音に注意していないと奇襲に反応できずにその場で生涯を終えることになる。

 

 薬使いに取って問題なのはロックイーターが地面の中を移動し、何処からくるのかを見極めるのか困難な魔物である点だ。

 

 何処から来るかもわからない相手に毒煙玉を使って視界を制限するのは危険極まりない行為であり、周囲には仲間の冒険者達がいるのでピンポイントで狙えない小瓶入りの薬品も使えない。下手な薬を使って周りの仲間に薬の影響を及ぼしては目も当てられない。

 

 薬使いの動きはかなり制限されまともな戦闘などできようもないのだ。以上の理由から薬使いは参加をしないつもりだったのだ。そこにギルドから待ったがかかる。

 

「あなたが参加するかしないかで怪我人の生存率が大きく変わるのですから、お気持ちはわかりますが今回は此方を優先していただきます」

 

 ギルドが薬使いに求めた役割、それは後方での怪我人の応急処置と奇跡を使用の有無の判断である。

 

 ロックイーター討伐作戦では多くの死者と怪我人が予想される。当然、この作戦には多くの回復系の奇跡を使える冒険者が参加する。しかし、彼らの本職は神官や魔法使いであって医療に深く精通しているわけではない。怪我を見ただけでは奇跡を使う必要があるかないかの細かい判断できないのだ。

 

 多くの怪我人がでる可能性が高い依頼では回復系の奇跡は生命線とも言えるもの、応急処置をすれば死なずに済む人にまで奇跡を使い、本当に使わなければならない人の時に奇跡の使用可能回数が尽きているということはあってはならない事態なのだ。

 

 そこでギルドは指名してでも薬使いに参加を要請したのだった。討伐作戦の決行は明日、薬の用意を終えているとはいえ、スレイの防衛する村は遠く、討伐作戦まで帰ってくるのは不可能。

助かるかもしれない多くの冒険者の命と、放って置けない問題児であるスレイの命(牛飼い娘の未来も含む)彼は選択を迫られていた。そして考えた末に薬使いは決断した。

 

「受付嬢さん。討伐作戦には予定通り参加します。ですが、その前にやって起きたいことがあるのでちょっと行ってきます」

「はい、時間までに戻ってきていただければ大丈夫です」

 

薬使いは受付嬢に討伐作戦までには戻ることを宣言し、スレイの方に顔を向けた。

 

「出発まで時間あるか?無ければ途中まで馬で送って行くから今は従ってくれ」

「時間はある」

「なら、付いてきてくれ俺の家に」

 

薬使いはスレイを連れて自宅へ向かった。

 

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辺境の町の外れにある家。そこに薬使いは住んでいる。

 

「ここがお前の家か、広いし悪くないな」

「ありがとう。中央エリアから外れているけど、その分家賃も安くて気に入っているんだ。それよりこっちに来てくれ」

 

 薬使いはスレイを一番奥の部屋に連れていった。その部屋は大量の中身入りの小瓶が置かれており、調合に使っていると思われる机にはすり鉢や計量器が乗っている。

 

「ここは調合室か?」

「ああ、俺の薬は殆どがここで作られている。そこの椅子に座っていてくれ、お前に渡したいものを持って来る」

「わかった」

 

 スレイが椅子に座って待つこと数分。薬使いは5つの小瓶を持ってくる。小瓶の中にはそれぞれ別の薬品が入っているようだ。

 

「これは?」

「俺が作ったゴブリン専用の毒だ」

「っ!」

 

 スレイが驚愕しているのが兜越しでも見て取れた。ゴブリン専用の毒。それはその名の通り、対ゴブリンの為に作られた物で他の生物には大きな害のない毒。ゴブリンを駆逐するのが目的のスレイからすれば喉から手が出る程欲しいものなのである。

 

「と言ってもまだ試作段階で、一定の効果は見られるがまだまだ改良の必要がある毒だ」

 

 ゴブリンと遭遇率の高い薬使いは人間に害がなく、ゴブリンだけを殺せる薬品をずっと研究してきた。その中で生まれたのがこれらの試作品達である。

 

「これらの毒なら素人であるお前でも使えるはずだ」

 

 一緒に行くこともできない。しかし、このまま行かせればスレイは高確率死ぬ。そこで薬使いはスレイの装備を強化して少しでも生存率を上げることにしたのだ。

 

 毒を使って戦う上で、必ず身につけなければないない技術は自分の毒を害されることなく戦えること。いくら解毒薬が有っても自分の放った毒を吸ってそのたびに状態異常になっていたのでは、まともに戦うことなど不可能。

 

 それ故に薬使いは何年もかけて毒の耐性や特殊な呼吸法を身につける必要があった。

だが、この毒なら人間に害はないので素人でも扱いやすいのだ。

 

「今からそれぞれの効果と簡単な使い方を教える。紙にも書くから、道すがら覚えてくれ。他に要望があれば聞くから遠慮なく言ってくれ」

「わかった。感謝する」

「お礼はいいから生きって帰ってこい。石に齧りついても、何に縋りついてでもだ」

「約束する」

「ならいい、とにかくやれることは全部やってから送り出すつもりだから覚悟しろ」

「問題ない」

 

 

 一時間ほどかけて準備させたスレイを送り出した薬使いは、今更ギルドの戻ってのんびり気が起きなかったため、明日使う医療系の薬品の再チェックを始めたのだった。

 

 

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