「こんのっ、オオバカヤロー!!」
ある快晴の初夏、部室から大声がした。
「まぁたやってんなあ、あいつら」
俺は辺りを見回した。
まだ授業が終わった直後ぐらいの時間な為、まだ部室棟には人が殆どいなかった。(今日は授業が午前半日だった為、俺はこの時間に来れた)
「よねやんのアレは、もはや病気の部類だよなあ」
俺はため息をついた。
「後輩の教育に悪いかもなあ。しょうがねえ」
部室のドアを開けて中に入った。
2×××年、大和国の伝統技能伝承者数は年々減少の一途を辿っている状態で、
特にカラクリ人形の継承者数は数人程度という状況だった。
これじゃイカン、途絶えてしまうと、カラクリ人形が盛んな
最初は細々とやっていたが、マスコミ等で大々的に宣伝し、現在では企業・大学・高校が参加するイベントとなった。
そして、我が
・・・1年前・・・
「カラクリ技能競技大会?」
昼休み、俺は蕎麦を啜る手を止め、相手の顔をまじまじと見た。
「そうよ! カラクリ技能競技大会!」
視線の先にいた恵子は、胸を張って答えた。
俺の隣で、よねやんが我関せずで、ラーメンを啜っている。
俺はため息を吐きながら、箸を置いた。
「そのカラクリ技能大会が何だってんだ?」
「このカラクリ技能競技大会に出場して、優勝するの!」
「なぜ?」
「大学宣伝の為よ!」
我が崎橋大学は、所謂Fランク大学に分類され、入学者数が、緩やかながらも年々減少傾向にあった。
なので、目玉となるような実績を作り、少しでも、入学者数回復に貢献したいというのは、素晴らしい考えなのだが・・・。
俺は、またため息を吐いた。
「愛しのイケメン事務員様から何か言われたのか?」
すると、恵子はキョドりながら、
「なっ、何の事?」
と、視線を逸らした。
こいつは、事務局のイケメン職員にホの字で、お手製のクッキー等を毎週渡していたりしている。
恵子は視線を戻すと、
「とにかく! アンタ達はあたしと、これに出るの! これは確定よ!」
と宣言した。そして、
「単位獲得のために!!」
俺はでかいため息を吐いた。
よねやんが、ラーメンの器を置き、ゲップした。
ああ、そっちか。お付き合いの条件かと思った。
っていうかまだ欲しいのか、単位。
(恵子は、こう見えても学年主席である)