もし風太郎たちが原作とはほんの少しだけ違う感じだったら   作:べるぬい

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俺も五姉妹と花火大会行きたい。


第10話 今日はお休み⑤

「一花が女優だって?」

 

 

何の冗談だ。他の姉妹にも隠していたのか…。一体何故?

 

 

「行こう一花ちゃん」

「待てって!」

「人違いをしてしまったのは本当にすまなかったね。でも一花ちゃんはこれから大事なオーディションがあるんだ」

「そんな急な話があるか。こっちの約束の方が先だ」

 

 

そうだ。こっちの約束の方が先のはずなんだ。お前は家族との約束を…。

 

 

「一花、花火いいのかよ」

「みんなによろしくね」

 

 

まただ。またその顔だ。お前のその顔を見るのは心底嫌になる。俺に限らずお前の妹たちも嫌がると思うが。

 

 

「一花ちゃん急ごう。会場は近い。車でなら間に合う」

「あいつ…」

「フータロー。足、これ以上無理っぽい。一花をお願い」

「だがここでお前を一人にするわけには…」

 

 

先程のように一人にしてまたナンパされてたら、俺は一花を追いかけてしまうから今度は助けることが出来ない。

 

 

「私はもう大丈夫だから」

 

 

三玖は笑顔でそう言ってくれた。やっぱり、やっぱり違う。同じ顔だが同じ顔ではない。花火が終わるまであと10分…どうすれば…。

 

 

「どうやらお困りのようですね…?」

「!お…お前は…!!」

 

バレバレェェェ!!と叫んでしまいたいくらいには一目で分かるやつが来た。頭に馬鹿そうな悪目立ちリボンをつけた四葉だった。

 

 

「三玖は私が連れて行きますのでご安心を!あと一花のことですが…」

「…!なるほど。サンキュ四葉!」

 

 

◇◆◆◇◆

 

 

「一花!」

 

 

一花は人気のないバス乗り場の近くにいた。大方あの髭のおっさんを待ってるのだろう。

 

 

「本当に戻るつもりはないんだな?」

「フータロー君。もう一度聞くね?なんでただの家庭教師の君がそこまでお節介焼いてくれるの?」

 

 

その質問に、俺はもう迷わない。

 

 

「俺とお前が協力関係にあるパートナーだからだ」

 

 

そう言うと一花は口角を上げ、スマホを俺に渡してきた。画面が開いており見ると…これは台本か?

 

 

「半年前に社長にスカウトされてこの仕事に就いたの。それからちょくちょく名前のない役をやらせてもらってたんだ。結構大きな映画の代役オーディションがある、って教えてもらったのがついさっき。いよいよ本格的にデビューかも」

「それがお前のやりたいことか」

 

 

やりたいこと。夢。一花は俺にはまだないものがある、のかもしれないな。

 

 

「そう!せっかくだから練習相手になってよ!相手役がフータロー君ね!」

「い、嫌だよ」

「協力関係でしょ?」

「………棒読みでしかできないからな」

「やったー」

「いくぞ?」

「うんお願い」

 

 

一花の雰囲気がガラッと変わった。これが女優、いや何でも誰でも演じる、という仕事に就く人にはできることなのだろう。俺をおちょくる為ではなく、本当にこの台本通りに一花はやるつもりなのだ。ならそれに応えるのも俺の役目だ。

 

 

「…卒業おめでとう」

 

 

俺は棒読みにならないよう、それでも気持ちを込めすぎないように抑揚を抑えつつ言う。

 

 

「…!先生。今までありがとう」

 

 

この台本。それはよくある学園モノの映画で、クライマックス感動の卒業シーンだった。

 

 

「先生。あなたが先生でよかった。あなたの先生でよかった」

 

 

…………!

 

 

「あれっ?もしかして私の演技力にジーンと来ちゃった?」

「あなたが先生でよかったなんて、お前の口から聞けるとは…」

 

 

このセリフにジーンと来たぜ。

 

 

「そっちか。あ、社長の車だ。じゃあね!」

「これだけでいいのか?」

「うんっ!とりあえず役勝ち取ってくるよ」

 

 

役、勝ち取ってくるだと?その顔で?冗談はよせ。俺は一花の顔を両手で挟む。パンっと音を立てる。少し強すぎたかな?そしてそのままほっぺを引っ張たり揉んだりする。

 

「!?」

「おい」

「ほえ?」

「その作り笑いをやめろ」

「ははは…え?」

 

 

「なんのこと?」と一花はとぼけて見せているが無駄だ。今日、あの時からずっと気になって仕方がなかった。

 

 

「お前はいつも大事なところで笑って本心を隠す。作り笑いでだ。ムカッとくるぜ」

「!」

「お前をパートナーだと言ったよな?」

「…うん」

 

 

こいつの秘密を知ってしまったんだ。俺も、隠しておきたかったが…この際だ言っておこう。

 

 

「俺の家には借金がある」

「…っ」

「その借金を返すために家庭教師をやってる。だがお前たち五人には手を焼きっぱなしだ。結局なんの成果もあげられないまま給料を貰っちまった」

 

 

俺は、本心を隠すことはしない。

 

 

「だから、せめて貰った分の義理は果たしたい。それが俺の本心だ!以上!」

 

 

これが俺の本心だ。

 

 

「お前はどうなんだ?余裕あるフリして。なんであの時震えてたんだよ」

「……この仕事を始めて、やっと長女として胸を張れるように成れると思ったの」

 

 

最後、なのだろう。今までとは違う、大きく綺麗で儚い花火が一斉に、これでもかと打ち上げられている。ラストスパートか。

 

 

「一人前になるまであの子たちには言わないって決めてたから。花火の約束あるのに、最後まで言えずに黙って来ちゃった。これでオーディション落ちたら…みんなに合わす顔がないよ」

 

 

一花は一花なりに葛藤に苛まれていたんだな。

 

 

「もう花火大会終わっちゃうね」

「あぁ」

「それにしてもまさか君が私の細かな違いに気が付くなんて思わなかったよ。お姉さんびっくりだ」

「俺がそんなに敏感な男に見えるか?」

「自覚あるんだ」

「別にお前の些細な違いなんて気付けねぇよ。付き合いも短いしな」

「じゃあなんで?」

「…ただ、あいつらと違う笑顔だと思っただけだ」

「…っ」

 

 

そうだ。一花の笑顔は二乃、三玖、四葉、五月と全く違うものだ。同じ顔だが同じ表情ではなかった。だからだ。俺が気付けたのは。

 

 

「まいったな…フータロー君一人騙せないなんて、自信なくなってきたよ」

「演技の才能ないんじゃね?」

「わーお直球だね」

「言っておくがその方が俺にとって好都合だ!よりみちせず勉強に専念してくれるからな!」

「よ、寄り道なんかじゃない!これが私の目指してる道だよ!」

 

 

ちょっとした口論になりかけたとき、車のクラクションが静かな夜に響き渡る。

 

 

「一花ちゃんなにやってんの!早く乗って!」

「は、はーい!」

「…あいつらに謝る時は付き合ってやるよ。パートナーだからな」

「…!」

 

 

❁❀✿✾

 

 

「では最後の中野一花さん」

「はい。よろしくお願いします」

 

 

ついに私の出番だ。

 

 

「卒業おめでとう」

「先生今までありがとう」

 

 

上手く笑えてるかな。フータロー君があんなこと言うから気になっちゃうじゃん。これで落ちたらフータロー君のせいだからね。あぁ…こんな時、みんならどうやって笑うんだろう。

 

四葉なら、三玖なら、五月なら、二乃なら……。

 

フータロー君なら。

 

 

「先生。あなたが先生でよかった。あなたの生徒でよかった」

 

 

❁❀✿✾

 

一花のオーディションはそろそろ終わる頃だろうか。

オーディション会場が近くて助かった。歩きでも行ける距離だったしな。出入口の真ん前で待っててやろう。さて…。

俺はらいはに電話をかける。

 

 

『はい!上杉さんですね!、こっちの準備はできてますよ!』




一花のほっぺ挟みたい。柔らかいんだろうな
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