鋭角パンツァー 〜エキセントリック・ファイヴ〜 作:jeux
「で、どうだったよ、今日の冷泉先輩特別授業は」
大洗の学園艦の上のある喫茶店。冷泉はレアチーズケーキの先っちょを頬張りながら言う。
「・・・しゅごかったです・・・」
1年生6人、異口同音に言うもんだから、冷泉はむせそうになった。
状況を整理しよう。冷泉が募集をかけた戦車道データシステムの本番環境へのデータ入力のバイトに応募したのが1年生6人組、「うさぎさんチーム」である。生徒会を半ば脅すような形で手に入れたバイト代を冷泉は予定通り6人に渡そうとするが、6人は「お金はいらないから、数学を教えて欲しい」と依頼。6人の中には数学が得意なものがおらず、6人でわからないものを教え合う、と言う形が通用しなかったのである。冷泉は最初は渋ったが、6人の熱意に圧倒されて承諾(低血圧の時にいつも助けてもらっていることへのお返しの意味もあった)。斯くして第一回冷泉自主講座が開催され、今は「頭を使った後に甘味は必須だ」と言った冷泉に連れられて喫茶店である。お代はもちろん生徒会から手に入れたバイト代である。
「なんだか、魔法を見せられてるような感じだったよね!『ベクトルの内積が謎です』っていう質問からこれだけ出てくるなんて!」
興奮気味にそう言ったのは坂口桂利奈。
「最初はなんだかすごく当たり前そうな話から入っていったけど、『逆にこれさえ満たせば全部ベクトルです』っていうアクロバットさがすごかったよね」
と、両手に握りこぶしを作りながら言ったのは山郷あゆみ。
「私は関数もベクトルだって言うのが衝撃だったわ〜」
と、感慨深そうに宇津木優希。
「内積の定義があれだけ簡略化できるなんてね!」
メガネをくいくいさせながら大野あや。
「最終的に相関係数の『種明かし』までされるとは思ってませんでした・・・」
やけに改まった表情で澤梓。
「具体的な『中身』を気にせずに、ベクトルと、その内積の抽象的な性質だけで、コーシー・シュワルツの不等式が示せちゃうっていうのには、抽象的な定義の強みを感じた・・・」
と、モンブランの栗をもきゅもきゅさせながら言ったのは丸山紗希。
「紗希ちゃん!?」
驚いた様子の澤。それを無視して冷泉が言う。
「ほう・・・なかなか言うじゃないか。実際、『中身』を
「なにそれ〜」
と宇津木。
「『対象』と『射』と『合成』だけで色々やるらしい。圏論の教科書をのぞいたことがあるが、文字と矢印を組み合わせた図がいっぱい載っていたよ」
「わー、やばそー」
と坂口。
「まあ、とにかく。君らが十分楽しんでくれたようなので、余は満足じゃ」
「はは〜」
6人同時。
こうして、半年に及ぶ『冷泉ゼミ』が始まったのである。
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Appendix
以下は、第一回冷泉自主講座にて使用されたお手製のテキストの一部である。