鋭角パンツァー 〜エキセントリック・ファイヴ〜   作:jeux

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実在の地名とそれをもじったものが出てきますが、ディスる意図は全くございません。


Interlude I

 以下は「大洗女子学園戦車道大会優勝記念祝賀会」にて行われた余興の台本の一部である。

 

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<舞台、明転。二人の女性(秋山、五十鈴)がある程度の間隔をあけて立っている。秋山が下手側、五十鈴が上手側。二人とも無表情で不動。そのまま10秒待機>

 

秋山「わっ」

 

<秋山のみが生気を吹き込まれたかのように表情が戻る。その場から動かずにゆっくり周囲を見回す。少し左を見て、次にゆっくりと右回り。270度回転したところで五十鈴の存在に気づく>

 

秋山「うおっ」

 

<その場から2歩ほど後ずさり。少し思案して、恐る恐る五十鈴に近づいていく>

 

<まずは顔を向かいあわせる。次に手を顔の前で振ってみる。目の前で指パッチンする。五十鈴は反応しない。再び思案する>

 

秋山「第二」

 

<徐に「ラジオ体操第二」の「腕と足を曲げ伸ばす運動」を始める。五十鈴は反応しない。途中でボディービルダー然としたポーズも入れてみるが、やはり反応なし。ここで秋山は何かを思いつく>

 

秋山「(観客に向かって)しーっ」

 

<自分がいる側とは反対側の肩を叩くという古典的な嫌がらせをしてみる。すると、五十鈴は叩かれた側でなく秋山のいる側を向く。顔は相変わらず無表情で>

 

秋山「きゃん」

 

<秋山は子犬のように飛び退く。転がる時、無駄に受け身を取る>

 

<仕掛けるつもりが逆にやられてしまった秋山は悔しそうな表情で五十鈴の前を行ったり来たりする。その行ったり来たりする動作が、滑らかに反復横跳びへと変化していく>

 

秋山「カバディカバディカバディ・・・」

 

<反復横跳びを続けながら一息分「カバディ」を連呼する。五十鈴の反応なし>

 

<横飛びから徐々にカニ歩きへと変化。カニ歩きで五十鈴の周りに円を描く。この時、秋山の顔は常に五十鈴の方を向いている>

 

秋山「月。わたし月。あなた地球」

 

<どこからか秋山は懐中電灯を取り出し、客席から見て左側から自分の顔に光を当てる>

 

秋山「これ太陽」

 

<五十鈴は無反応。悲しそうな顔で懐中電灯をしまう>

 

<カニ歩きのスピードを徐々にあげる>

 

秋山「加速」

 

<カニ歩きはついにダッシュへと変化。それまで続けていた円運動の内側へ入り込んだ後、全速力で五十鈴から離れていく>

 

秋山「スイングバイ!・・・からのー・・・停止!直ちに超信地旋回!」

 

<急停止した後、器用に足を滑らせて五十鈴の方を向く。右手をを五十鈴に向ける>

 

秋山「方位350、仰角4度。『五十鈴華絶対笑かす号』装填。打てっ!でゅーん」

 

<手は拳銃の形。五十鈴に向かって移動。人差し指が五十鈴の右頬に突き刺さる>

 

秋山「ここっ。ロシアの工業都市、ボロネジ!」

 

<無反応>

 

秋山「追撃!」

 

<今度は五十鈴の鼻の頭>

 

秋山「ここっ。カトリック総本山、()()()()市国!」

 

<無反応>

 

<渾身の一撃が通用しなかった秋山は、ついにその場に泣き崩れる>

 

秋山「うああああああん」

 

<泣き出されるとは思っていなかった五十鈴はようやくその場を動き、秋山の背中をさする>

 

秋山「うえあああ、あアあアああああ」

 

<ところが、秋山は余計に泣きじゃくる。裏声も混ざってくる>

 

秋山「あアあアあ!あアあアあ!あアあアあ!ピッ。はい秋山です」

 

<泣き声だと思われていたそれは着信音であった。秋山は携帯電話をとり出して何事もなかったかのように話し出す。五十鈴、驚愕の表情>

 

秋山「あ、どうもお世話になっております!・・・ええ、はい・・・。あっ、もう手配できたんですか、例のブツ!ええ・・・それでは明日、指定の場所で・・・はい・・・豚丼・・・豚肉抜きで・・・はい、お願いします、はい、はーい」

 

<秋山は得意げに五十鈴の方を見る。驚愕したまま固まっている五十鈴。それを見た秋山、ここぞとばかりに勝者のポーズ(ボディビルダー然)。観客に拍手を要求>

 

<不服げな五十鈴は、ジャスチャーで何かを要求。秋山、親指を上に向けて承諾>

 

<暗転。5秒待機>

 

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<明転。最初と同じ状態>

 

五十鈴「はっ」

 

<五十鈴はすぐに秋山に気づき、近づく。秋山の顔の前で手を振る、指パッチンするなどして秋山の無反応を確認。すると満足そうに、ゆっくりと歩き出す>

 

<秋山と十分距離を取ると、秋山へ向けて走り出す>

 

五十鈴「ふんっ」

 

<五十鈴は床を蹴ったかと思うと、空中できりもみ回転。そして・・・>

 

五十鈴「ビターン!(セルフ効果音)」

 

<うつ伏せで落下。受け身など一切とらない。秋山がビクッとする>

 

<五十鈴は寝そべりながらゆっくり、実にゆっくりと秋山の方を向く。ここで五十鈴の顔は観客からは見えていない>

 

<10秒ほどの沈黙>

 

秋山「ぶっ」

 

<秋山は顔を隠す。そして後ろを向く。肩が震えている>

 

<再び沈黙。五十鈴の顔はやはり観客からはわからない>

 

<秋山が再び正面を向く。その顔は目を剥き、口を最大限横に引っ張っている。何かを我慢しているかのようだ>

 

<突如五十鈴の右手が自身の頭を持ち上げる>

 

五十鈴「涅槃」

 

秋山「ぶーっ!」

 

<秋山、吹き出してその場に倒れ込む。五十鈴、立ち上がり勝利のポーズwithそれまでやっていたのであろう顔>

 

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<笑いをやめられない秋山と例の顔をやめない五十鈴の間から現れたのは西住である。眼鏡をかけ、バインダーを持っている>

 

西住「えーただいまの試合の結果を発表させていただきます。第一フェーズ、秋山オフェンス、決まり手『エア着信』。技術点54.667、芸術点123.5。総合178.167。第二フェーズ、五十鈴オフェンス、決まり手『かぶきブッダ』。技術点65.333、芸術点100.0、短時間決着ボーナス15.0、総合180.333。よってただいまの試合、五十鈴選手の勝利です」

 

<秋山、五十鈴、両者握手>

 

西住「本日の試合はこれで全て終了です。それでは来週も『全日本コンビで一人だけしか動いてなくてもコントになるんですか選手権』をお楽しみください」

 

<暗転>




某コンビを意識したが、私の力では劣化コピーにしかならな
かった
知るか


ほんとは動画化したいんだけどなぁ・・・

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