「黒騎士コーリス、救援に馳せ参じた。戦闘開始」
情報によると指揮官を含めた星晶獣の数は13匹。一般的な魔物は100を超えるが、これは平常時と変わり無い。
指揮官の能力は自他に対する疲労の無効化。直接攻撃力を向上させるものではない。長引くので先に叩くか。
「ケーニヒ・シルト、
巨大な防壁で他の騎空士の避難を補助しつつ、光線で動揺する獣達の数を減らしに行く。霧の感知によって狙いは正確だし、小さな魔物は一掃できるだろうな。
それと同時に俺は上空に飛び上がり、指揮官の元へ一気に加速する。
一瞬で用意できる破壊力なら、
「ケーニヒ・シュタンゲ」
剣に盾を重ね、巨大な棒に見立てる。
黒騎士の剣を有効活用するには、多少の強引さも必要だ。頼もしい仲間達考案のこの技は、どんな敵も等しく殴り壊す。
「ハァッ!!!!」
身体が壊れない様に魔力で極限まで強化し、殺意を込めて力だけを相手に叩きつける。
内に眠る剛力にも感謝しておこう。無事に指揮官である星晶獣の脳天を一撃で砕く事が出来た。再生は出来まい。
「フッッッッッ!!!!!」
そして相手の陣形に潜り込んだ俺は格好の的だ。最早逃げる騎空士達を追う事など眼中にない。
だから、気にせず暴れる。
霧で敵の動作を把握し、此方へ攻撃が当たる前に棒を振り回して阻害する。剣や槍、爪が襲いかかるなら腕を破壊し、飛び道具を使うなら距離を詰めて頭か胴を壊す。
この技を思い付いて以降、多数の敵と戦う際に苦戦する事は無くなった。例え星晶獣であろうと、防御に専念していればこの棒で容易く討伐出来る。
ヘカテーの様な掠め手特化か、魔力に依存しない防御力を持ったり、俺以上の身体能力を持つ敵でなければ全て問題無い。
「……けほ」
最近は黒い鎧が血に濡れ、緋色の騎士と勘違いされる事が多くなった。丁寧に洗わなければ見た目よりも鉄臭くなってしまう。
聖騎士時代から魔物の血を被る機会は多い為、慣れてはいるが…こればっかりは心すら擦り減らしている気がする。無宗教なのに、魂を穢す行為では無いかと疑い始めている程だ。
カリオストロは気に入った様だったが、それは合理性とある種の爽快感がそうさせただけで、あいつが残虐な嗜好を持っているとは思えない。
市民や敵から見た俺は、随分と業を背負った見た目をしているのだろう。
─────────────────────
「こ、これが七曜の強さ」
「あれだけの化け物共を数分で粉々に」
「名は知られていたが…あのコーリス団長はこれ程強かったのか…!?」
自慢になるかもしれないが、賛美の声には慣れている。
子供の時から周りの人間は皆、褒めて伸ばしてくれるタイプだったし、俺自身も褒められたい欲求は充分にあった。
しかし分かりやすい栄光や勲章は要らなかった。
今も欲しいのは実感と軽い労い。
「荒れに荒れた古戦場…緊急避難も考えていた所をありがとうございます……黒騎士様!」
「その言葉遣いは…まだ慣れませんね。駆けつけられたのは貴方が前に古戦場の仕組みを説明してくれたお陰です」
「そう言われると自分にも先見の明があったのだと少し調子に乗ってしまいますね…!」
「…やっばり、お変わりなくて何よりです」
晴れやかな笑顔で頭を下げるハーヴィンのラドライラさんは、かつて俺とゾーイで古戦場に参加した際に委細を説明してくれた親切な人だ。
その時は比較的新人の騎空団が古戦場に参加出来るように斡旋する役割だったが、今では運営そのものに携わっているらしい。出世したのだ、互いに。
俺の地位を知ってか、更に恭しい口調と態度を取っているが、微かに見えるユーモアは健在か。
「被害の規模は?」
「幸運にも死人は出ず……ただ、騎空士への復帰が見込めない重傷を負った者はいます」
「……そうですか。言い方に悩みますが、よく死人が出ませんでしたね」
「平時ですら星晶獣が絡む戦い…開催には以前より気を遣っています。それでも今回のケースは……我々の油断としか言えません」
多数の星晶獣が眠る古戦場では、その復活の周期を正確に把握する事で安全性を高めている。普段なら実力者を集めた上で、一体の星晶獣と他多数の魔物を戦略的に討伐するというものだ。報酬の多寡を決める貢献度システムは、競争性を誘発してしまうかもしれないが、協力した上での貢献度に文句を言える人間はいないだろう。
今回復活したのは『蜂起』の能力を持つ星晶獣アリスタイオスだ。
この能力は端的に言えば『勢いを付ける』もので、疲弊した精神と身体を再び立ち上がらせる補助魔法的な使い方だ。自陣の戦力を強化する指揮官の役割で、能力を受けた生物の心は決して折れず、休息を取らずとも一日中戦える様になるらしい。
対策は簡単で、敵陣の一体一体を堅実に殺すこと。
殺せば精神も関係ないし、再び立ち上がって来ることも無い。
しかし、今回の事件は恐ろしいものだ。
敵陣の殆どが星晶獣だったのだから。俺が緊急要請を受け、倒し終わって説明を聞いた時も意味が分からなかった。
『星晶獣復活の周期が狂った…と?』
『記録によれば、アリスタイオスの『蜂起』にそれ程強力な復活作用はありません。疲労を誤魔化せるのは羨ましいくらいのものですが……眠っていた星晶獣を叩き起こす事なんて無理です』
『つまり、復活間近の星晶獣が沢山いたって話になりますね』
アリスタイオス率いる軍勢で確認された星晶獣の数は13匹。
まさに地獄絵図だ。『蜂起』で強化された星晶獣を倒し切るのは困難を極める。唯一幸運だったのはそいつ等の気性まで荒くなっていて、自陣すら巻き込む攻撃を連発していた事だ。俺が来た時点で傷だらけの敵は沢山いた。
死者が出なかったのはそれが原因なのだろう。
今回の疑問点はアリスタイオスが星晶獣達を起こした訳ではないという事だ。復活の周期は厳重に管理されていて、纏めて起き上がる事などない筈なのに、こうなってしまった。
ラドライラさんは心当たりがあると言って、俺を連れ出した。
汚れた兜を脱いで、混沌とした曇り空の下で話をする。
「コー……黒騎士様」
「はい」
「以前発生したイレギュラー……ヘカテーを倒した時の事を覚えていますか?」
「あの魔女ですか。戦場全域に強力な幻覚魔法……夢の世界を作り出していました」
「……コアとして地中に眠っていた星晶獣にも、それが見えていた可能性はありませんか?」
可能性としてはアリだろう。
ゾーイにすら作用したあの世界が、寧ろ最初から眠っていた星晶獣に効かない道理はない。朧げな意識を保つと言われている星晶獣の休眠に、あの魔法はどう映ったのか。
少なくとも魔力を求めたヘカテーが狙ったものではない事は分かる。
「戦闘不能になって休眠する彼等の周期は一定のものですが、自ら眠った星晶獣の復活条件は精神に作用される様です。一定の休眠の中で傷が多少癒えていた彼等が、ヘカテーの夢の世界で復讐心を触発され、復活を早めていたとしたら…?」
「夢の世界程の強制的な干渉ならば、あり得ますね」
あの女め…余計な事を。やはり消しておくべきだった。彼女も人格を持っているからと有耶無耶にした過去の自分の浅い責任感に腹が立つ。
自らコアに還って眠る星晶獣は戦争で心を病んだか、只管に疲れた者達だ。生きる希望を持たない兵器。
一方、傷を癒やす休眠は復活を前提としている。復讐心を忘れない彼等は傷が癒えた瞬間に必ず復活する。
そこでヘカテーの夢を見てしまえば、復活への渇望も高まるかもしれない。傷が早く癒えた訳ではなく、癒える前に起きる気になってしまったのだろう。それも無意識に。
あの魔女の夢は無意識を刺激する。
「となると星晶獣達が負っていた傷も、同士討ちだけじゃなくて以前の物が残っていたと推測出来ますね」
「あくまで予想になりますね。しかし思い当たる節は同じイレギュラーのあの時なのです」
「ヘカテー…再び遭遇した際は必ず仕留めます」
「意思があると逃したのに…ですか?」
「遭遇するという事は黒騎士に喧嘩を売るという事──そう捉えられる逃し方をしましたから」
「おお、怖い怖い。かつての貴方は初々し………まぁ、魔物に対しては変わらず蹂躙しましたか」
初めての古戦場は散々だったが、得た物は大きい。報酬で作った杖はエニュオ戦で大いに役立ったし、こうして上手く棒を振り回す為の練習にもなっていた。
今は全て黒騎士の剣で事足りるが、手放した時の事を考えなければならない。
それよりも後処理だ。
騎空士達や運営側に過失が無い上での中止は前代未聞で、団によっては甚大な被害を受けただろう。
「…後に黒騎士の名の元で島の管理に間違いは無かったと宣言します。ヘカテーが原因かは分かりませんが、数百年間正しく古戦場を開催し続けた貴方達がミスをしたとは考えられません。それでも責任は追求されるでしょうが…」
「いえ…本当に助かります。我々も異常を察知する努力を怠っていましたから、その咎は受けて当然のもの。寧ろ数百年の徹底が傲慢に変わっていたのかもしれませんね」
「それなら頼みます」
その場を去ろうとしたら、慌てて止める声が聞こえた。
「何かお礼を!コーリスさんの時の様に依頼として頼んだ訳ではありませんが、黒騎士様へ何もお礼を申し上げないのは恥というもの!」
「じゃあ、鎧を洗わせてください」
「へ?」
一人で行動していた俺にノアさんの迎えは無い。
血塗れで彷徨く趣味は無いのだ。
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被害を受けた騎空士達の処置が終わり、ゆっくりと鎧の手入れをさせてもらってから、俺は次の目的地へ向かっていた。
それは河畔。
重要なのは位置だ。その場所に何の価値があるかは分からないし、何が必要化も分からないが、俺は一人でその位置にいなければならない。
それは決まってどうでもいい場所だ。森の中の安全地帯とか、山の外れ等、極力人が少ない地形と時間であればその様に。
指定だけされた場所に行けば、ほら。
「ご苦労、黒よ」
あっちから来る。
「戦闘に関しては滞り無く終わりました。責任の有無に関しましては私の名でメフォラシュから公文を出し、事実の誤認を防ぎます」
「構わん。メフォラシュには使者を遣わそう」
尊大な口調の少女だ。年季も入っている様に感じる。
そう、冗談でもなく真王だ。
星晶獣シビュラというらしい。イスタバイオンが管理しているその能力の一つに、『王の声を届ける』ものがある。
それを使えばこの様に、人畜無害どころか悪を知らぬ幼子にまで意思を代弁させる事が出来るのだ。洗脳にも見えるが、大きな動きは不可能な様で、喋らせるくらいに留まるらしい。それで許されるのかは甚だ疑問だ。
人選に関しては、迷子でも丁度良く使ったのだろう。
「次に行くべき場所はありますか?」
「数秒待て……」
真王は未来をピンポイントで見ているのだ。
これから俺の周囲で起こる事象。前もって確認していたとしても、古戦場での動きで未来が無限に変化する。だから今見るしかないのだ。
あどけない少女は苦い表情を見せた。
「変わりましたか」
「…うむ。前提として戦闘が起こるだろう。それは避けようが無く、お前が何処に向かっても先回りするかの様に現れる。つまり今日なのが問題だったという事だ」
「……はぁ」
「心中を察しよう。朝には見えなかった事だ」
真王少女の表情を見る限り、面倒な手合の様だ。
焦って対処すべきレベルの戦闘では無いが、避けられるものでは無いと言っている。ストーカーだろうか?
「必ず発生する戦闘でお前が苦戦する事は無い。敵もお前を殺す気は無く、お前に殺される可能性を考慮して動いている程だ」
「向こうから吹っかけておいて、ですか?」
「道化よな」
言葉に棘が目立つ。立ち回りからして敵も軽薄な人間には思えないが。
「そして、幾らかの可能性でこの戦闘は混沌と化す」
そして、それは教えてくれないのだろう。
変わらない事実は教えたところで問題ないのだが、確率が絡む事象は全てを伝えてしまうと分岐に繋がるらしく、枝分かれが加速する様だ。
俺に出来るのはその数パターンの混沌が来た場合に備える事。
「以降は好きにするがよい」
「了解しました。ところで陛下」
「む?」
「その子は?」
「迷い子だ。心配せずとも家には私が帰す」
理解ある陛下で良かった。
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「戦いやすい場所となると…やっぱりここになるな」
戦闘が不可避となっては仕方がない。なるべく俺が戦いやすく、周囲への被害が少ない場所を選ぶに限る。
元々覚悟はしていた。
黒騎士になってから俺が一人で動く事が増えたのは、依頼の増加なんて理由じゃない。こうして真王の任務をこなさなければならないからだ。治安維持に必要なのは騎士の実力と組織の規模。規模感が欠けている俺は真王のサポートが無ければ、危機に対して即座に駆けつけられないのだ。
選んだ場所はポート・ブリーズの平原。
街付近の平原が最も戦いやすいが、魔物がいない代わりに人間が多い。少し離れて騎空士も通らない、崖際でゆっくりと機を待つとしよう。
「不審者みたいだな。こんな所で鎧が一人なんて」
ポツリと呟いた。
ピクニックが好きな訳じゃないが、中々どうして落ち着くものだ。ポート・ブリーズの風は特別な力が宿っていると言われるのにも納得がいく。これが戦闘前でなければサンドイッチを片手に小説でも読んでいたところだ。団員がいれば過去を振り返ったりもしただろうか。
そう耽っていると──
「やあ。黄昏れているのかい?」
──不審者が出た。
「…ああ、そういう感じか」
「ん?どういう感じだい?」
「気が違っているのか、装っているのか分かりにくいタイプ」
「失礼だなぁ…僕は君が何をしているのか聞いただけじゃないか」
目の前の少年そう言って、劇団員の表情の様に調節された笑みを浮かべた。
そう、不審者だ。今どきの格好には見えない。やけに露出が多いし、民族的な装いだとしても都市で洗練されたファッションに見える。
つまりあれだ、お伽噺の妖精とか、劇に出てくる吟遊詩人だの商人だの道化だの……作り話の登場人物みたいな感じだ。
見た目で判断するなら星晶獣もそうだが、種や文化の違いでは無く、この少年は世界が違うかの様な印象を受ける。一般人と騎士を並べた時に感じる差異を空の民と星晶獣の差異に当てはめるなら、この少年は一般人と全身タイツのピエロを並べているの様な物なのだ。
「僕はロキ。君は?」
「名乗ろう。黒騎士のコーリス・オーロリアだ」
「やっぱり間違わなくて良かったよ。街から外れて一人堂々と歩く騎士がいたものだから、変に思ってね。ちゃんと黒騎士だったか」
改めて少年──ロキを見る。あ、連れがいた。
「彼女は?」
「ああ、少しシャイでね。フェンリルというんだけど」
その連れもまた凄い格好だった。
見た目はまさしく獣人。脚や拳が毛で覆われていて、肉球や尻尾まで丁寧に付いている。紺色の毛並みだ。
だが、最も注目すべき点は身体が鎖で縛られている事。身体に巻き付いているだけなら先程のロキと相まってそういうファッションなのかと流せたが、手錠付きで両手を拘束し、足首、首にすら重く巻き付いていると分かれば、もう何も言えない。ペットを通り越して奴隷扱いじゃないか。
オマケに俺を睨みつけている。ツッコめということなのだろうか、開放しろという事なのか。
「ごめんね。彼女、どうにも虫の居所が悪いみたいだ」
「…ロキ。オレはお前の喉笛から先に噛みちぎったっていいんだぜ」
「腹を痛めるだろう?やめなよ」
「チッ。こんな所まで連れてきやがって……目障りだ。お前諸共そこの鎧もぶっ潰してやるよ」
血気盛んな性格の推定星晶獣だ。
今聞いた通り、俺と戦う事が目的の様だが…フェンリルは不本意に連れられた不満をぶちまけている。矛盾しているな。わざわざ俺に喧嘩を売る理由が無い。
となると、こう見えてロキとフェンリルは主従関係にあるのだろうか。気安い会話に聞こえるが、実際に上下関係があるのだとしたら、全ての主導権はロキの方か。
此方が剣を抜きながら凝視していると、ロキは予定調和と言わんばかりのわざとらしい表情で語り始めた。
「あー…ごめんね?」
「心配ない。察していた」
「フェンリルは君が星晶獣を団員として扱っている事に我慢ならないようでね……八つ当たりになっちゃうのかな?」
「何故知っている…それに、彼女は空を嫌う星晶獣か?」
「いや、信用ならないのさ。だって星晶獣は兵器だろう?」
星晶獣は兵器だと、ロキは言い切った。それは常識を語る口ぶりで、彼自身の意思は全く含まれていないと分かる。案外、彼はフェンリルを仲間だと思っているのでは?
さて、邪推もここまでに。
フェンリルは…なる程。兵器と仲良しごっこしている俺が気に食わないと。力が目的の上辺だけ団長だと、そう思われているわけだ。
「八つ当たりなら止めろよ。
喧嘩は買う事もできる。
こういう手合は正面から心を砕くのが最善だ。二度と近寄って来ない程に屈辱を与え、自身の浅慮を悔やませる。
それでも絡んで来るのなら団単位で相手をし、キリが無いなら最終的に殺すしかない。星晶獣と共生している島が多いファータ・グランデにおいて、彼女の様な星晶獣は古戦場にでも埋めなければどうしようもない。
俺の言葉と意思は正確に地雷を踏んだようだ。
「………ロキ」
「なんだい」
「──殺させろ。このガキは飯にならねぇ。千切って豚の餌だ」
「ふぅん……いいんじゃない?」
よく見れば憤っているのはフェンリルだけでは無かった。
本人は自覚しているのだろうか。『飼い主』という言葉を聞いた時、一瞬だけ眉を
どうやら、気狂いではない様だ。
トリックスター気取りで、何かを内に秘めた少年というのが本当の正体という訳だ。
「ところでさ、黒騎士くん。僕は君に興味があるんだよ」
「俺に?」
「だって、面白いじゃないか。類稀な力を持った若者自体はありがちストーリーだけど、星の兵器と交流を広げ、苦難が待ち受けたと思えばこうして更に力を高めて七曜──星がかつて与えた最高位の騎士になって帰ってきたんだから」
「要領を得ないな」
「つまりさ、色々な経験をすれば新たな価値観を知れたりするのかい?僕が聞きたいのはそういう事だ」
「とすると、お前は自分探しの旅をしているのか」
「ちょっと恥ずかしいけどね…その通りさ」
今度は打って変わって表情を和らげ、頰を指で掻いて照れた様子を見せた。
自分探しは図星だったか。それに、俺への興味も真摯な物だ。
え、普通に話しかけてくれれば良かったのに。
「僕の兄も空に触れてから変わってね。元々冷たい人ではなかったのだけど、生命に対して慈愛…かな?それを持つ様になったんだ」
「その言い方からすると…お前は」
「あ、分かるよね?僕がどういう存在なのかって。星晶獣は珍しく無いけどこっちはそうそう見れないでしょ」
「…こんがらがってきた」
かなり重要人物だった。
普通に考えて、空にいるべきでない存在だ。
もう少し話をしたいが、相方がそうさせてくれないだろう。案の定、我慢ならないと叫んだ。
「ロキ!話が長いんだよ!!早く殺らせろ……ッ!!」
「ああごめんごめん。察しがいい人と話すの好きなんだよね。兄さんみたいだから」
「ぶっちゃけ、戦闘は必要か?」
「君の強さにも興味があるし、そういう点ではフェンリルの苛つきをぶつければ丁度良かったんだ。だからちょっと付き合ってよ」
「……」
「僕は何もしないからさ、普段の君を見せてよ」
コイツ…。
仕方ない、全力で潰そう。真王の言っていた殺意の無い相手とはロキの事で、戦闘はフェンリルを表していたのだろう。だから微妙に認識とズレたが、これなら予定通りか。
──いや、まだ来る。
「…!?フェンリル!」
「ッ──ガルァ!」
空から高速で降下した炎。地面に向かって垂直に大砲を発射したのではないかと思う程の威力と、無茶苦茶な角度を見せていた。
真王の言っていた混沌。
第三者の一撃。矛先は敵である主従が立つ位置で、先に気付いたロキがフェンリルに正面から攻撃を防がせた。
だが、防いだのはただの炎だ。武器や人が降ってきた訳でも無い。狙いは俺の目の前──つまり、牽制代わりの賑やかし。
すぐに下手人が降りてきた。
俺の横に、先程以上の衝撃で以って。
「久し振りだねぇ!!!!」
ついでに、派手な大爆発を伴って。
こ、コイツは………。
「マーズ…………………」
「覚えてくれて嬉しいよコーリス。まさか七曜候補の立場であのゴリラの側にいたとは思わなかった。ちゃんと黒騎士になったんだね。うん…何処か誇らしいよ」
「何をしに来た」
「勿論リベンジさ。前回も熱い戦いが出来たが、邪魔が入った。互いにやり切れない所があっただろう?」
「寧ろもう来ないで欲しいと思った」
「ハハっ!照れ屋だね!より強くなった所を見せてもら──」
タルヴァザさんと共に撃退した炎将マーズ。
相当の強さを持つ槍使いだ。あの時の俺なら単独で討伐するのに命を危機を感じさせる程の戦士。
それが巡り巡って、俺の臨戦態勢で力を感じ取ったのか……。
こんな所にまで突っ込んでくるとは、筋金入りの戦闘狂。本当の意味でのストーカーだ。
かつて逃した面倒がここで牙を向いてきた。
混沌と表現した真王にも納得だ。
「──ん?」
そんなマーズは、ロキとフェンリルの位置から溢れる土煙を凝視していた。
少し待つと、叫び声が聞こえた。
「なんだってんだよ…ロキ!これもお前のお遊びか!?」
「知らないよ……ん?」
炎を何らかの方法で消し飛ばし、フェンリルは空に向かって怒りを顕に吠えた。宥めるロキも煙に
三者が、見つめ合う。
「ロキ、誰だこの女」
「誰だろうね」
「アンタ達誰だい?」
勝手にやってろクソが。
コーリス
・七曜になってから定期的に真王のおつかいがある。かと言って面倒事は自分のせいなので不満には思ってない。面倒事自体には不満しかないが。
ロキ
・トリックスターさん。原作より100年前だからちょっとイキイキしてる。
・コーリスに絡んだ理由は本当に興味本位。
フェンリル
・基本的にロキに着いていくが、コーリスが変に煽らなかったらそこまでやる気じゃ無かった。
マーズ
・面倒事。